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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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184/197

184:換毛期?

「山じゃないね。あれは岩だ」


 捜索を再開して、まず向かうのは遠くに見えた岩山だ。目印にもなるし、そこまでの地図を埋めて共有するために向かった。

 上空を飛ぶブライトが降下してきて、あれは岩だと告げる。


「一個の岩なん?」

「あぁ、そうだ。えぇっと、テレビで見たな。オーストラリアにあるっていうアレに似ているねぇ。アレよりかは小さいけど」


 エアーズロックか?

 近づいても、あれが一つの岩だとは到底思えない。確かに大きさはテレビで見るエアーズロックよりかなり小さいけど。

 見上げる高さは五十メートルぐらいだろうか? 横幅も同じぐらいある。


「ブライト。真上から見てくれるか? 奥行きはどのくらいあるのか確かめてくれ」

「了解だよ。任せときな」


 バサっと羽ばたくと、ブライトは一気に上空へと舞い上がる。

 空……これも実際は天井なわけだけど、どのくらいの高さがあるんだ?


「よし、到着っと」

「ねぇ悟くん。どうせなら日陰になる場所へ行きましょうよ」

「賛成たい。もう暑くって暑くって、うちら夏毛になりそうばい」

「え? ここで毛が抜けるの?」


――[冬気になって一、二カ月で抜けるか?]

――[ここで抜けても日本に戻ってきたらクッソ寒いぞww]

――[もこもこのままでいてぇぇぇ]


 サクラちゃんとヨーコさんを下ろし、少しでも涼しくしてやる。

 それから日陰を探そうと思って歩き出すと――。


「いたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉっ」


 物凄い形相をしたブライトが急降下してきた。

 い、た……まさか。


「生存者か!?」

「いたっ。何人かは動いてたが、動いてないのもいる! ボクを見て悲鳴を上げていたし、モンスターと勘違いしたんだろうね」

「悲鳴? そんなの聞こえなかったが」


 高さがあると言っても、これぐらいなら聞こえたっていいはずだ。


「この上じゃない。これと同じような岩が、綺麗に一列になって並んでいるのさ。三つ先の岩の上だぜ」

「並んでるの!? こんなのが?」


 サクラちゃんが岩を見上げ、仰け反り過ぎて後ろへ倒れてしまった。


――[ぐああああぁあぁぁぁぁ]

――[は、破壊力が強すぎる!]

――[ぽて]

――[たぬきってこういうのあるよな]

――[お前! にわかだろうっ]

――[レッサーパンダだぞレッサーパンダ!]

――[未だにたぬきっていう奴いたんだ]


「ブライト、案内してくれ! 聞こえますか、地上。生存者発見です。状況はまだわかりませんが、いました!」

『聞いてる。登れそうか? 上れるならヴァイスを連れて登ってくれさえすれば、あとはチェンジで救出できるだろう』

「えぇ、そうですね。なんとしても登りますよ」


 やっと。やっと見つけた。

 岩の上ってことは、人数はそういないだろう。

 だけど見つけた。

 同時に、この階層に巻き込まれた人が多数いることも判明した。


『こちら曽我チーム。三石、地図を送ってくれないか』

「了解しました。でも現場はすぐわかると思います」


 オートマッピングされた地図を写真に撮り、捜索隊のサーバーにアップ。

 こうしておけば冒険者も見ることが出来る。


『確認した。この丸いのは?』

「その丸いのは岩です。といってもエアーズロックのような、巨大な岩の山なんですよ。縦横高さ五十メートルほどの巨大岩です。それが一列に並んでいるそうで」

『冒険者、榎木です。三階に下りてその岩の方に進むと、一目でそれってわかるのが見えますよ』

『ありがとうございます、榎木さん。行けばすぐわかるってことだな。迷わないで済むからそれは助かる』


 岩を回り込むと、ブライトの言う「綺麗に並んでいる」のがハッキリとわかった。

 まったく同じサイズの岩が、奥にずらーっと並んでいるんだ。ここから見ても十個ぐらい並んでるように感じる。


「三つ先ってことは、四本目か。これか、ブライト!」

「あぁ、そうだ。もう何言ってんのかわかんないってのっ」


 ブライトは翻訳機付けてないもんな。


『三石。スノゥがそっちに行くそうだ。ついでにアルジェリア出身だっていう冒険者も何人か送る』

「スノゥがこっちに? 助かります。ヴァイス、広いところに頼む」

「母ちゃんも来るのかっ」


 ヴァイスは嬉しそうだが、チェンジするからスノゥには会えないんだよな。

 まぁその次のチェンジで会えるけど。


 チェンジでツララとスノゥ、それから五人ぐらいの冒険者がやって来た。

 なんか早口で喋りかけられてるせいで、翻訳が追い付かない……。


「手伝うって言ってるのよ」

「あ、ありがとうスノゥ。通訳頼むよ。翻訳機を使ってるから、一度に話しかけられても機械の翻訳が追い付かないって」

「えぇ」


 スノゥが流暢なアラビア語を話し、それから五人のうち年長の男性だけが俺に話しかけてくれた。


「――この岩の上か?」

「そうです。動いている人もいるようですが、動いてないって人もいるようで。この暑さですから、脱水症状とかも考えられます」


 と、スマホのアプリを介して言葉を伝える。


「この垂直の山を登れるようなスキルを持っている方は?」


 と尋ねたが、挙手する人も、首を縦に振る人もいない。

 俺は壁走りのスキルで登れるだろうけど、この人たちを抱えてとなると何往復もしなきゃならないな。

 だが思いがけない方角から声が上がった。


「せやったら、ウチの背中に乗っていく?」



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― 新着の感想 ―
最近は【エアーズロック】じゃなくて【ウルル】って言いますよ
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