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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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183/197

183:水。

 後続部隊の到着まで、そう時間もない。

 一階と似たような広さなら、壁にぶち当たるまで走って戻ってくるのに一時間はかかる。


「ひとまず階段付近をぐるっと回ろう」

「そ、そうね」

「ふぅ~。にしても、暑いねぇ」

「ねぇ~」


 そりゃサクラちゃんとヨーコさんは、モフモフの毛に覆われいるしね。

 あ。


 足元を見ると、げんなりした顔のブライトが。


「サクラちゃん。保冷剤を出してくれ」

「わかったわ」


 保冷剤と聞いてブライトが振り返り、目をキラキラさせた。リュックの中のヴァイスもだ。

 その保冷剤をブライトのジャケットとリュックの中に入れる。


「クゥ~。きんもち良いぜ~」

「ピィィ」

「いいわね、あんたたちは」

「ウチら保冷剤なんてあったって、毛に覆われてるから冷たいのが肌まで届かないし」

「まぁそこは仕方ないさ」

「毛をカットすりゃいいんじゃないか?」


 というブライトの一言に、サクラちゃんとヨーコさんが「「キィィィィィィィッ」」と腹立てた。


――[乙女心がわかってない]

――[よくそれで結婚できたな]


 水分補給をし、それから走り出す。

 今度はサクラちゃんに走ってもらい、彼女のスピードに合わせる。

 上空からブライトに見てもらいながら、階段の建造物がギリギリ見える距離をぐるっと一周。

 森と違って視界は良好。遠くに大きな岩山も見えた。


「ブライト。人影はどうだ?」

「んー。いや、モンスターしか見えないね。サソリだとかムカデ、カマキリ、あとトカゲが見える」


 昆虫系か。砂漠や荒野タイプのダンジョンのお馴染み構成だ。


「あの岩山まで行ってみるか。それなら往復してもそんなに時間がかからないだろうし」

「目印になるものね、いいと思うわ」

「後から来た冒険者には、地上で待っとってもらったらいいばい」

「行くのかい? だったら保冷剤、新しいものにして欲しいんだけど」


 ブライトの希望通り、保冷剤を交換。

 それから俺たちの水分補給も……水分補給?


「みんな、喉乾いてるか?」

「え? そりゃそうよ。こんなに暑いんだもの」

「カラカラばい」


 ヨーコさんが頂戴のポーズで水を待つ。ヴァイスに至ってはストレートに「水よこせ」と言っている。

 喉が渇いてる。俺もだ。

 でもついさっき飲んだじゃないか。


 それに──汗。汗をかいてる。


「この暑さ……錯覚じゃなく、本当に暑いんだっ」

「何言っとーと。そんなんあたり前やん」

「そうそう、暑いもんはあつ……ここはダンジョンじゃないか!」


 ブライトが気づいた。

 そう。ここはダンジョンだ。


――[どゆこと?]

――[あ……そういうことか!]

――[だからどういうことだってばよ]


「ダンジョン内だと、どんな構造でも気温はだいたい一定に保たれている。寒そうな構造、暑そうな構造でも、意外と気温はそう変わらない」


 だいたい20℃前後だ。


「でもこの前の氷ダンジョンは寒かったじゃない。すっごく」

「あぁ、そうだね。あれは特殊な方なんだ」

「けどよ、辺り一面氷の世界だったわりに、気温は高い方だと思うぜ」

「まぁね。現実だと、マイナス60℃とか、そんな世界になってるだろうね」


 実際にはそこまでなかったはずだ。


「あの時みたいな雪に覆われてるとか、氷の世界だとわりと見たまんまな気温であることが多い」

「寒そうなところは寒いってことね。ここは暑そうだから暑い?」

「それが、意外と暑い構造のマップって、もっと極端なんだよ。溶岩が流れてるとか、そんなさ」

「極端すぎるばい」


 だから荒野程度で暑いと感じることは、特殊マップでもない限りあり得ない。

 しかも『寒い』より『暑い』構造のダンジョンの方が、統計的にも少ないんだ。

 

「サクラちゃん、水の在庫ってどのくらいある?」

「えっと、備品屋さんが用意してくれたのは、500mlのペットボトル二十四本よ」


 もしこの階層に生存者がいた場合、二十四本じゃ確実に足りない。

 直ぐに地上と連絡を取って、ダンジョン構造を伝える。


『ザッザザに、水ザ──か。わかザザザ。クソ、ノイズがザだな』

「ちょっと上に上がりますね」


 聞き取りにくい。一階の森構造が電波の通りを悪くしているんだろうな。

 一階に戻って改めて報告。


『第二陣を送るのを一旦止めザ、水を確保しザッザー待ってろ』

「一階の捜索をするチームだけ先に送ってはどうですか? あと二階にもアンテナ立てた方が良い気がしますが」

『そうだザザ。そっちの準備はもうザてる。そっちはどうだ?』

「いつでも大丈夫です。ヴァイス、ツララと交代するぞ」

「ケッ」


 そうしてヴァイスとツララがチェンジ。

 それを往復で行い。技術部スタッフ三人と冒険者が十三名やってきた。


「で、では、下の階へ行きましょうか」

「俺たちは一階の捜索を始める。お互い気をつけて」


 それぞれが自分の役割を実行。

 技術部は後続隊の準備が出来るまで、俺たちが護衛することに。

 地図埋め作業の前に、十分な水分を用意して動く方が良いという指示だ。


 アンテナ設置後、二十分ほどして。


『直ぐに用意出来るだけの水をかき集めてきたぞ。まだまだ集めてる最中だが、とりあえず送る』

「了解です。ヴァイス、チェンジするぞ」

「わかったよ。いってやらぁ」


 このチェンジで他県の捜索隊メンバーも合流。


「あ、倉庫担当の岩城です。水、持ってきましたんで階段に並べてください」

「あ、どうも」


 倉庫担当ってことは、アイテムボックスのスキル持ちだろうな。水なんてどこにも持ってないし。

 案の定、彼女はサクラちゃん同様の箱を出現させ、そこからダンボールを取り出した。

 出るわ出るわ。階段の踊り場だけでは積み上げきれず、階段そのものにも並べていく。


 最終的には、横に二人並べる程度の隙間を残し、ペットボトルの入ったダンボールが階段を埋め尽くした。


――[いくら使ったんだ……]

――[社長。ポケットマネー大丈夫か?]




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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 そう言えば今までのダンジョンは『環境が体力を削ってくる過酷さでヤバい』みたいなのはなかったですね。 動かなくても生命力を削ってくる暑さや寒さは、救助する側にも影響凄いから厄介です…
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