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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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180/197

180:一階。

「まさか一階からこれとは……」


 階段下に広がる光景。

 それは――森だった。


 いきなりオープンフィールドになっているなんて、こんなダンジョン初めてだ。

 日本では一階からいきなりっていうダンジョンはないけど、外国にならあったんだろうか?


「仕方ない。とりあえず横に広がって真っ直ぐ進むか。おい三石、お前のチームは裏側を全力疾走していろ」

「了解――って、社長、まさか一緒に行く気ですか?」


 遺体回収を終え、ダンジョン一階入り口で出発の指示を出す社長。


「んなわけあるかっ。お前らの足手まといにはならんさ。俺は安全な所で指示を出すだけだからなっ」


 そう言うと、社長は階段を上って地上へと出た。


「本当は行きたいんだろうね。あの人は誰かを救いたくて、赤字になるのがわかっていながら捜索隊を立ち上げた人だから」

「誰よりも分かっているはずさ。自分の手で成し遂げたい、でもそれがかなわないってことを」

「赤城さん、白川さん」


 俺が生まれた東区のダンジョン。

 あの日あの時、あそこでは社長のお母さんとお兄さんが亡くなった。

 その後、お二人の仇を取ろうとでもしたのだろうか。社長のお父さん――前社長は、そのダンジョンでモンスターと戦って命を落とした。

 スキルを持っていないにも関わらず、中へ入って行ったんだ。

 それはきっと執念だったんだろう。


 社長にもその執念はある。

 だけど自分を見失わず、自ら中に入るのではなく、別の方法を考えた。

 それがこの捜索隊だ。


「だからま、俺たちがあの人の代わりになって人助けするんだよ、三石」

「そうですね、青山さん。それじゃ、出発しますか」






「ウチはー、妖狐にならんでぇー、いいとぉー?」


 ヨーコさんを担ぎ、森の中を走る。

 足場が悪いから全力疾走は出来ないが、サクラちゃんの神速と同じ程度には走れた。

 ブライトは余裕で着いて来ている。飛べるっていいよな。


「ヨーコさんは救助者を発見した時のために、魔力を温存してもらいたいんだ」

「そうよヨーコちゃん! 一度に何人も運べるんだからー、その時に魔力はとっといてー」

「うぅん、そういうんだったらー、いいんだけどー。でもせっかくの森やのに、ウチも走りたかったばーい」

「ところで二人は、なんでさっきからそんな大きな声で話しているんだ?」

「「こんなスピードで走ってて、聞こえるわけないでしょ!!」」


 え、そう、なの?


「それよか、そろそろ配信のカメラを起動してもいいんじゃないかい?」

「あ、忘れてた。サクラちゃん、一度止まるよ」

「わかったわーっ」


 一度止まってから、サクラちゃんとヨーコさんのベストに装着された小型カメラを起動する。

 

「映ったかな?」


――[キチャアアァァァァァァ]

――[映ってまーす]

――[お疲れマジお疲れ]

――[サクラちゃあぁぁーん]

――[みんな大丈夫? しんどくない?]

――[うへぇー。なんだかんだ捜索始まったの五時じゃん]

――[今日が土曜日でマジよかったな]

――[視聴者数がだいぶ減ってるな]

――[寝落ちしたんだろしゃーない]

――[今北産業おおおぉぉぉぉ配信始まったらアラーム鳴るようセットしてた]

――[禿同]

――[え、待って。森?]

――[悟くん以外が野生に帰っちゃう回?]


 い、一気にログが流れるから、見るのは無理だな。


「みなさん、ご覧の通りここは森です。一階は森タイプのオープンフィールドでした」


――[ま?]

――[いきなりオープンフィールドかよ]

――[オープンフィールドって、捜索するのが難しいんじゃ?]

――[しかも視界が悪いしなぁ]


「木々に囲まれた地形なので、俺たちの目だけじゃいろんなものを見落とすと思います」


――[任せろ]

――[覚悟は出来てる。なんでも見てやるよ!]

――[ブライトのサーモ点けっぱなしがいいんじゃないか?]

――[魔力消費するから温存した方がいいだろ?]

――[あー、消費するのか]

――[ある程度『いる』って確証があればいいんだろうけどな]


 その通りだ。いるかどうかわからない場面で、サーモセンサーを使い続けるわけにはいかない。

 特に生成に巻き込まれた人の捜索ともなると、どこにどれだけの人がいるのかもわからないからな。

 長期戦になるのは必須。少しでも温存してもらわないと。


――[そういうことだったら、カメラガン見しちゃうぞ☆彡]

――[よーし。捜索開始!!]


 ひとりでも多くの人を見つける。

 ここからは無駄に走らず、ヨーコさんの速度に合わせた捜索の開始だ。


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