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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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179/197

179:ご注意ください。

「翻訳機は人数分用意出来ないから、各パーティーのリーダーだけ装着してくれ」


 アルジェリアの国際空港に到着した。ここからはバスでの移動だ。

 そのバスがなかなか動かない。

 首都から脱出しようとする車で、道路が混みあっているからだ。

 最終的にはバスを下りて徒歩で移動した。

 幸い、空港からダンジョンまではそう遠くなく、三十分ほどで到着。

 そこからバタバタと準備が始まった。


「確認しました。入口のモンスター溜まりはもうなくなっているそうです」

「よし。技術部、中に入ってアンテナを設置してくれ」

「はいはい。じゃあ念のため、誰か護衛にぃ」

「あ、じゃあ僕ら行きますよ」


 と、技術部と冒険者数人が中へ入る。

 その間に現地の警察から話を聞いたが――もちろん翻訳機越しに――外国から来た結構な人数の冒険者が中に入ったが、戻ってきた人はいないという。

 だから中の状況はわからない。わかるのは入口から入ってすぐの階段下まで。


 まぁ冒険者だ。入口のモンスター溜まりでやられるような低レベルの人は、そもそも中に入ったりしないだろう。

 そんな話をしているとだ。


「おええぇぇぇっ」

「む、無理……」


 中へ入ったばかりの技術部と冒険者が戻ってきた。


「どうした!?」

「……社長さん、配信するんですよね? 視聴者参加型とかって機内で言ってたけど、あれ無理っすよ」


 ん? 無理って、どういう?

 確かに、俺が掲示板のことを社長に伝えて、視聴者も参加できるようにって提案して、社長も「それでいこう」って張り切ってたけど。


「階段下、死体だらけです……」

「……あ、あぁ。そういうことか。って、警察はご遺体の回収をしてないのか! おい、金森、通訳っ」

「はぁ……――――――。モンスターがいるのに出来るわけないだろ、だそうです。クソだな」

「クソかよ!」


 いったいどれだけの人が中に入って、そのまま亡くなったんだ。

 周囲には大勢の市民が駆け付けている。警察や軍隊が侵入を防ぐために銃を構えて立っているが、中には不安そうにこちらを見つめる子供たちもいた。

 親が中に……そんな子たちじゃないことを祈りたい。


「ちっ。まずはご遺体の回収からだ。おい、警察や軍にも手伝わせろ。護衛はこっちで引き受ける」


 直ぐに金森さんが通訳する。


「冒険者諸君、申し訳ないがしばらくは入口付近で遺体回収作業のための護衛に務めてくれ。アンテナを設置するまでは遠くへいかないよう頼む」

「了解。通信出来ない状態じゃ、俺たちも迂闊には動けないっすからね」

「お前ら吐くなよ。覚悟して中入れ」

「冒険者歴短い奴はここで待ってた方がいいぞ」


 先に中へ入った人たちがそう声をかける。

 よっぽどなんだろうな。技術部スタッフは真っ青な顔で蹲ったままだ。


「サクラちゃん、ヨーコさん、ブライト。覚悟はいい?」

「いいに決まってるでしょ」

「野生で生きとったら、死体なんてしょっちゅう見るばい」

「むしろ野生で生きてた場合、僕らは狩人側だからね」


 はは、確かにそうだ。

 覚悟をする必要があるのは、実は俺の方か。


「サクラ。ご遺体の回収用の袋をお前に預けておくから、逐一周囲の奴にヨーコと一緒に配ってくれ」

「わかったわ、社長さん」

「ウチも一緒に配ったらいいんやね。わかった」

「ボクはモンスターの警戒をしておくよ」

「そうしてくれ、ブライト」


 役割分担を決め、深呼吸をひとつしてから中へと入る。

 渦を巻く禍々しい光の中へと入ると、その先で最初に感じたのはむわっとした空気。

 血のニオイが充満し、それだけで階下の惨状が想像出来る。






――[配信はじまった!]

――[これって現地?]

――[ニュースで流れてるのと同じっぽいから現地だな]

――[なんでまだ中に入ってないんだよ!]

――[いや待て。ダンジョンから南下運び出してない?]

――[うわ……死体運び出してんじゃね? あの袋、そういうのだろ?]

――[我先にって飛び込んで行ってた連中じゃね?]

――[うわぁぁぁ……]

――[無駄に救助隊の仕事増やしただけじゃんバカじゃねーの]

――[なんで飛び込むかなー? 危険だってわかってるだろ]

――[元々ダンジョンのない国だから、ダンジョンがある国より個人の危機管理能力も低いんだろ]

――[だからってこれはないだろ……]

――[救助のためにはるばる日本から来て、最初にやるのが遺体回収とかやるせない]

――[最初から絶望のどん底かよ]


『視聴者のみなさん。ご覧の通り、現在捜索隊、及び冒険者は現地警察や軍と協力して、ご遺体の回収を行っております』

『作業が終わり次第、救助活動を開始しますが、この先、惨い状態のご遺体を発見する可能性も十分あり得ます』

『そのことを念頭に踏まえ、救助活動へのご協力をお願いします』

『耐性の無い方はご覧いただかない方がいいと思います。ご注意ください』


――[まぁそうなるよな]

――[うえー、どうしよう。ちょっと自信なくなってきた]

――[でもさ、入口のところに集中はしただろうけど、奥に進めばそうでもないんじゃないか?]

――[生成に巻き込まれた人も死んでんの多いだろうけど、入口程渋滞はしてないだろうしな]

――[生きてる人を探すんだよ! もうそれだけ考えて俺はやるぜ!]

――[だよね。無理だったらその時閉じればいいし]

――[やる前からじゃなんもわからん]

――[とにかく今は遺体回収作業が終わるのを待つしかない]



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