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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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173/197

173:仕事早すぎいぃぃぃ。

 アニマル隊の紹介配信動画を撮影した翌日――。


「三石さん、見てくださいよこれっ」

「何をですか、佐々木さん?」


 佐々木さんが待機室までやって来て、抱えていたノートパソコンを俺の前で開いた。


「仕事早くないですか!」

「仕事って……え、マジで?」


 モニターに映っていたのは、アニマルズグッズの受注画面。

 いや待って。受注生産するかって話を、一昨日してたよね?

 昨日は動画と写真撮影してたけどさ、もうグッズサイト出来上がってるってどういうこと?


「昨日、あの後でサンプル作ったってこと? さすがにないよねそれは」

「あ、それはですね。グッズ制作している会社のサイトで、プレビュー画面作れるんですよ。たぶんそれだと思います」

「そ、そうか。実際に作った訳じゃないんだね」

「はい。とはいえ、画像は用意しなきゃいけないので……」


 撮影した写真の中でどれをグッズ化するのか決めて、画像ソフトなんかで修正、切り抜き加工をしてプレビューに登録する必要がある――と、佐々木さんはなかなか詳しく説明してくれた。

 撮影、十六時には終わったけどさー、早くない?


「あ、公式に出てるんだね」

「赤城さん。まさかチェックしてた?」

「もちろん! 昨日ね、十八時には公開されてたんだよ。グッズの一覧だけね。まだ注文は出来てなかったけど」

「待ってください。撮影終わって二時間後に公開されてたの!?」

「はははは。凄いよねぇ」


 いや凄いってもんじゃないだろ。


「わぁー。かわいく出来てる? ねぇかわいい?」

「かわいいよサクラちゃん。ヨーコちゃんもステキだよ。二匹ともサンタコスがとっても似合ってるねぇ。でも僕はこっちのトナカイもかわいくていいと思う」

「ふふ。レッサーパンダなのにトナカイなんて変よねぇ」

「知っとるサクラ。トナカイって物凄く大きいんばい」

「妖狐モードのヨーコちゃんより?」

「……そ、それよりかは小さいやろ」


 比べる基準がおかしい。妖狐モードのヨーコさんは、象より大きいのに。


 にしても、いっぱい出すなぁ。

 そしてこの大量にあるグッズページを二時間で用意したって……。

 努力の方向性が間違ってない?


「あ……もう受注開始してるんですね」

「え、真田さん。おはようございます」

「おはよう、ございます。えっと、それって俺も買って、いいんですかね?」

「……え?」

「えぇーっ。真田先生も買ってくれるの?」

「せ、先生!?」


 サクラちゃんに先生と言われ、真田さんは無表情ながらも顔を真っ赤にした。

 つくづく自分以外のダンジョンベビーを見て思うんだけど、俺もあんな風なんだろうか……。

 ずっと鏡を見ているわけじゃないから、普段自分がどんな顔をしているかなんてわからないし。

 昔から表情が変わらないとは言われてたし、ダンジョンベビーは全員そういう傾向にあるっていうのは知識としても知っている。

 知ってても実際自分はどうなのかなんてわからないし。


「別に買っちゃダメなんて規則もなにもないですよ。捜索隊の社員も買ってますから」

「社員割引もあるんですよぉ~。それに発売日の前日に貰えるんです。いいでしょ~」

「そうだったんだ?」

「三石くんは買ってないから知らないでしょ。買いなよぉ、自分のチームの分ぐらいぃ」


 いや買ってどうするんだ。実物が目の前にいるってのに。


「いいなぁ……」

「真田さん、動物好きなんだ?」

「え? あ、いや、特別ってわけじゃなく、普通です。でも……尊敬しているんです」


 そ、尊敬?

 え?


「俺、攻撃スキルばっかりで、ダンジョン生まれってのもあって小さい頃から『お前は歩く破壊者』だって言われてて」


 そう言えば真田さんのスキル、トール・ハンマーの他は『スター・ライト』『炎舞』ってあったな。

 スター・ライトは光のシャワーを降らせ、それに触れたモンスターにダメージを与えるとかなんとか。『炎舞』は小さな火球を自分の周囲にいくつも生み出し、それを飛ばして火柱にするとかなんとか。

 テキストの情報だけじゃどういうスキルなのかいまいちわからないけど、確かに攻撃特化スキルばかり持っている。


 同じダンジョン生まれなのに、ここまで差が出るとは……。

 俺なんてマッピングとかナビとか、お役立つスキル程度なのにさ。


 でも、このスキル構成でも冒険者レベルは155だった。

 スキル的にオーランドよりも凄そうなんだけど……いや、日本のダンジョンが全体的にアメリカより温いからだろうな。


「先生が私たちを尊敬? あらどうして。先生、すっごいスキル持ってるじゃない」

「……スキルで人助けしてる。俺はモンスターを倒すことしか出来ないから、だから……その力で人助けが出来る君たちは、尊敬に値するんだ」

「なーに、それ。モンスターが倒せるんなら、人助け出来るじゃない。ね、悟くん」

「あぁ、そうだね。捜索隊のメンバーって、何も救助特化スキルばかりじゃないんだ。俺は総合身体能力強化とマッピング、ナビスキルを最初に持ってて、むしろモンスターを倒すスキルがまったくなかったしね」

「でも走るだけで蹴り飛ばしてたわよね」


 ……いや、自分ではずっと気づいてなかったんだってば。

 石を蹴飛ばしたかなって程度にしか思ってなかったし。それに蹴飛ばしてたのは小型モンスターだけだったろ。中型なんかは目視して避けてたんだし。


「真田さん。捜索する時、モンスターを素早く倒せるスキルを持っている人は捜索隊でも重宝します。俺たちはチームで動いているんで、ひとり戦闘特化がいれば他が捜索や救助に専念出来るんですよ。だから、真田さんのように戦闘特化のスキル構成でも、人助けは出来ます」

「お、俺みたいなスキルでも……」

「あー、三石くんが口説いてるぅ」

「は? え? なんでそうなるんですか佐々木さん!?」

「悟くんと関わると、気づいたら捜索隊に入社してる人いるわよねぇ~」

「ウチも就職したばい」

「ボクもだな」

「オレも! オレもだぞ!」

「うわっ。ハリー!? い、いたのかっ」

「うん! あのな、あのな。みーんな一番の会議室にこいってさー」


 第一会議室?

 大部屋且つリモート会議が出来る大会議場じゃないか。

 何かあったのか?


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