165:ハリー⑧
オレたちは猫の手を呼んだ!
「か、返してくれ! それがないと帰れないんだっ。せ、せめて新幹線の切符でもっ」
「切符? あ、ダメに決まってるだろ。切符も金になるんだよ」
あのビルの前の道で、悪そうな男が二人、道を歩いていた人を捕まえてお財布を盗んだぞ!
「そんなっ。け、警察に――」
「そんなことしたらどうなるか、わかってんのか? あ? 俺のバッシュが火を吹くことになるんだぜ」
男が持ってるナイフが光った!
「言質取ったぁぁーっ!」
「「え?」」
「突撃ぃぃぃぃーっ!!」
ウオオォォォォォォ!
悪い奴、オレ捕まえる!
「にゃーっ!」
「みにゃあぁーっ!」
「ね、猫おぉ!?」
「ワオォーンッ」
「犬ぅぅーっ!? ど、どうなって「ピヤアァァァーッ」げはっ」
あ、またキコに一番取られた!
キコのミサイル早すぎて追いつけないぞ。クゥゥーン。
二人を捕まえた後、お財布を盗られた人間にそれを返したぞ。
すぐにお巡りさんが来て――。
「お巡りさんよぉ。俺らがカツアゲしたって証拠なんて、どこにもねえだろ。あぁ?」
「証拠ならあるぜ。――上映!」
クロスケのスキルは「録画」と「上映」。
目で見たものを録画して、上映スキルでそれを映し出す。
ビルの壁に映し出された二人の男の悪行は、ぜーんぶバッチリ映ってるぞ!
「暴行恐喝窃盗、及び一般市民へのスキル使用の現行犯で逮捕する」
「「そんなーっ!!」」
悪党二人、退治だぞ!
数日後――。
「毎度あり。じゃ、取引中の記憶は消させてもらうぜ」
「えぇ。しかしこの方法のせいで、毎回あんたの顔を忘れてしまうから、毎回取引の度にビクビクすることになるよ」
「はっは。悪いな。けどこっちは覚えてるから安心しなよ」
ビルの中で物々交換している連中がいたぞ!
片方が白い粉を渡してて、片方がお金だ。小麦粉を買いに来た人か!
それから小麦粉を渡した男の手が光って――。
「言質取ったぞぉーっ! かかれぇーっ!!」
「にゃーっ!」
「ウ、ウオォン!!!」
「な、なんだ!?」
今度こそキコより先に――。
「カァッー!!」
『警察だ! 大人しくしろっ』
『警察だ、警察だーっ!』
「さ、さつだと! くそっ。野郎ども、ズラかるぞ!」
『警察』『警察だ』『ウゥゥゥー』『カァー』
あ、クロベェ、カラス語になってる。
クロベェは拡声器ってスキルで、声を響かせることが出来る。それを使えば、警察の人がマイクで喋ってるように聞こえるんだ。
これを聞いた悪い奴は慌てて逃げようとする。
そこへ――。
「ピヤァァァァァァッ」
「な、なんだこの音は――」
「んぎっ」
「酷ぇおと――」
キコの怪音波でほとんどの悪い奴が倒れる。
また……またキコに負けたぞ!
ウオオォォォーン!
またある時は――。
「ふぅ。サツは撒いたみたいだな。武井のやつはしっかりやったんだろうな?」
「兄貴ぃ。こっちだぜ、こっち」
「お、武井。もう来てたのか。それで、ブツはちゃんと盗めたんだろう……な? なんでカラスが?」
「カァーッ。ピリっとするぜ、ピリっと」
「イテッ。イテテテテテテ。な、なんだ? 静電気? あイテテテテテテ」
カンクロが声マネスキルで悪党をおびき出し、静電気を動けなくしたところを――。
「うにゃーん」
「カァー」
「ポッポー」
「ワオォーン」
噂を聞いて、住む家が欲しい猫カラス鳩犬がやって来て手伝ってくれた。
オレ……悪党捕まえられてない。
それにしても、悪党減らないなぁ。
「クロベェ。悪党何人、警察に連れて行ってもらった?」
「んー、あの二人で四十七人目だ」
「四十七! 凄くいっぱい!」
「そうだな。ったく、ごみ溜めかよここは」
ゴミ? ゴミは……オレたち毎日お掃除しているから、ゴミはないぞ!
「でも私らのおかげで、最近は夜でもバカな人間が減って治安が良くなってきてるって噂になってるそうよ」
「減っただけじゃダメだろ。悪党は根こそぎ刈り取らねえと。カーカッカッカ」
ク、クロベェなんか怖いぞっ。
でも悪党は雑草だったのか。雑草はすぐ生えてくるから大変なんだぞ!
オレ知ってる!
雑草を枯らすには、根っこから引っこ抜くか除草剤をぶっかけなきゃいけないんだ!
そんなある日……ついに悪党の親玉、雑草の根っこが来たんだぞ!
「やいやいやい、このクソ犬猫どもめ! 出て来やがれっ」
工事現場で見る壁みたいなので囲まれたビルの敷地内に、真っ黒い車に乗った人間たちが来た。
車は四台。そのうち二台は大きくて、人間がいっぱい降りてきた。
「にゃっにゃ」
「わふっ」
「出て来やがったなクソ犬猫め! おい、やっちまえっ」
「おぉーっ」
何をやるんだろう?
あ、なんか取り出して――うわっ。パンパンうるさいぞ!
よく見ると火花が出て、ビルの壁とか地面に何かが当たってる。なんだ?
「はっはっはっは。人間様を怒らせるとこうなるんだよ! ここは元々わしらのシマだ。動物どもに好きにはさせん! 皆殺しにしろっ」
「ここは島じゃないぞ! 陸だぞ!!」
髪の毛のないおじさん、何を言っているんだ。ここは島じゃないのに。
「おいハリー! まだ出ていくなってっ」
「そもそも島も陸だろ」
「え?」
「もっと言えば、日本が島国だからな。ここも島だろ」
「え……島は陸で、ここも島? え?」
「あそこにもいたぞ! 撃て撃て撃てぇーっ」
パンパンダダダダパンパンダダダダッ。
人間たちは向こうの壁に向かって何かを撃っている。
あっちにはオレたちの映像が映し出されていて、それを撃っているんだ。
クロスケのスキルがパワーアップして、ライブ中継っていうのが出来るようになったらしい。
先にビルから出ていった猫と犬は、新しく仲間になったラスティってカラスがスキルで出した幻だ。
本物そっくりの幻を出せるラスティって凄い!
それに羽根みたいな黒い光を出して、それで悪い奴を攻撃出来るんだ。あと怪我をしたら治してくれる。
パンパンいっぱい撃った悪い人間たち。
弾がなくなったみたいだ。
「よぉし、それじゃあお仕置きタイムと行こうか」
「フッ。羽が鳴るね」
「あっち、今日はいつもよりいっぱい爪とぎしたにゃ」
「わふっふ。みんな、ぼくがスキルで守るから、思いっきりやるだよ。あ、でも効果時間は三分ね」
犬のトミーがそう言うと、オレたちはビルから飛び出した。
三分! 三分って……どのくらい!?
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
新作はじまっております!
異世界ファンタジーな世界に転移した主人公が、チートスキルでコツコツ開拓&冒険するお話。
そちらもよろしくお願いします~
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滅びかけの異世界で、万能クラフトと解析眼による再生スローライフ~古の魔法王朝をめぐる開拓譚~




