164:ハリー⑦
「おーぅ。みんなご苦労だったな。集まってくれやぁー」
今日は原っぱのゴミ拾いだぞ!
この前は警察の人がいっぱいいて出来なかったから、今日やったぞ!
家に帰ろうと思ったけど、キコたちにご飯貰ってたし、そのお礼が終わるまでは帰るなって言われて。
でもオレ、帰るなって言われて嬉しかった。なんで嬉しいかわかんないけど嬉しかった!
だからもうしばらくここにいることにした。
家がどこにあるのかわかんないし。
カンクロが「飼い主がお前を探していれば、迷い犬欄に載るから、そうしたらわかるさ」というから、迷い犬欄ってのに載るまでみんなと一緒にいることにしたぞ。
「どのチームが一番だったの!?」
「あー……お前ぇんとこだな」
「ピピピュルルル~♪ 当然の結果ね!」
「そりゃハリーが分身でゴミを集めまくってたんだ。つえぇーに決まってるだろ」
「あたしだってゴミを見つけてやってたわよ!」
「キコがゴミの場所教えてくれるから、オレ、探さなくてよくて楽だったぞ!」
「ほらみなさい。あたしのおかげなんだから」
「……まぁそういうことにしとくか。ほらよ、今回のバイト代だ。うちのばーさんが鞄を縫ってくれたからよ、そん中に入れとけ」
オレ知ってる! これ巾着袋っていうんだ! でも紐が長くて、オレの首にぶら下げられる長さだ。
その袋の中に、秀さんが紙を三枚入れてくれた。あれがお金!
「オレんところにくりゃ、ペットフードも安く売ってやれるが」
「でも置いておく場所もないしなぁ」
「雨とか降ると濡れちゃうしねぇ」
「そうそう。どっかに屋根付き物件でも借りれればなぁ」
ゴミ拾いに来たのはオレたち以外にもいた。犬とか猫ばっかり。猫が一番多い。
みんなお家がないのか。キコたちと一緒だな!
「物件か……そうだな……あるにはある」
「「え?」」
お家あるの!?
「ここだ。西区のダンジョンから近くてな。ダンジョン生成後に、ここでモンスターを見たって報告があってな」
ビル? ちょっとちっちゃいビルだ。でも凄くボロボロだぞ?
「え!? ちょっとちょっと。モンスターはダンジョンから出てこないんじゃないの」
「スタンピードの時以外はな。が、西区じゃスタンピードは一度も起こってない」
「じゃあどういうことなのよ」
どういうこと?
「元々ここは廃ビルでな。競売――売りに出されてたんだ。そんな時にだぞ、モンスターがいた、なんて噂が立ったらどうなると思う?」
「どうなるんだ!」
「あんたは黙ってなさいっ」
「クゥーン」
「つまりどういうことなの!」
オレと同じ質問してる!?
「つまりは、入札の競争相手をなくすため、ね」
「あと、モンスターが出るなんて噂がありゃ、建物の価値も下がるからじゃね?」
「その通りだ」
クロベェとクロミ、凄い!
「その上、噂の信憑性を上げるためにここで――ひとり殺してんのさ」
「うわぁぁ」
「人間汚い」
「ほんと、人間ってのはロクな生き物じゃねえな」
「あっ。じゃあその殺人で入札した奴が捕まって?」
ん? ん?
「あぁ。入札して土地と建物の権利を手に入れた後に捕まったのさ。で、所有者は刑務所ん中ってな」
「じゃあ、今は管理人なしってこと?」
「区が管理してんだが、一度変な噂が立って、しかも実際にここでひとが死んでるからな」
その後の買い手がつかず、こてーしせんぜーっていうのは刑務所に入った悪い人間のぎんこーこーざってところから払われるからいいやってことになって、もうずっと放置されたままなんだって。
難しいことはよくわかんないや。
「ここ、使っていいってこと?」
「区の職員に頼まれてたんだよ。ここいらは夜になると治安が悪くてな。近隣に暮らす住民も恐ろしくて近づかねぇって」
「治安を悪くしてる連中がいるってことだな」
「そいつらをぶっ飛ばせばいいのね! このキコ様に任せなさいっ」
悪い奴ぶっ飛ばす!
オレもオレも! オレも悪い人間、懲らしめるぞ!
「だがな。その連中の中にゃスキル持ちもいやがる。そう簡単じゃねえぞ。そのせいで俺も手を出せねえでいるんだ」
「スキル持ちの人間って、冒険者じゃないの?」
「いや。スキルを持ってる人間みんなが冒険者になるわけじゃねえ。元々悪人だった奴が、スキルを手に入れることだってあるんだ。そういった奴は、スキルを悪いことのために使うのさ」
許せないぞ!
秀さんの話だと、スキルを持っている悪い奴はひとりじゃないらしい。
オレたちあキコやクロベェたち、一緒にゴミ拾いした犬猫合わせて……えっと。
「共同戦線と行こうじゃないか、鳥チーム」
「そうね。いいわよ。これで戦力は一六ね。まだ足りないかしら?」
「喧嘩スキルを持ってるのが何匹かによるな。こっちは俺とマックの二匹だけだ」
「私のところは六匹中三匹よ。でもそんなに強いスキルじゃないから……」
「インコ、あんたんところは?」
「カンクロがピリっとする静電気と、クロミが霧を出せるスキルだから使えるけど……ま、大丈夫よ。あたしが最強だから!」
「猫の手増やすか」
「ちょっとー!」
ん? 猫の手?
よくわからないけど、悪者退治をするっていうことはわかったぞ!!
*本日19:10に新作を投稿します。
https://book1.adouzi.eu.org/n1096lj/
新作は異世界転移(転生込み)の開拓系スローライフ。いやスローというには冒険要素ありだけど。
ぜひ、よろしくお願いします。
タイトルは
【滅びかけの異世界で、万能クラフトと解析眼による再生スローライフ~古の魔法王朝をめぐる開拓譚~】
です!




