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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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163:ハリー⑥

「あら、珍しいわね。その子のスキルはひとつだけで『餓狼分身』だって」

「分身ってことは、忍者犬か」


 にんじゃ? なんじゃ?


 悪い人間を捕まえたあと、シェパードと一緒にいた警察の人にいっぱい撫でてもらってジャーキーももらって、その次の日に秀さんがスキルの鑑定をしてくれるとこに連れて来てくれたぞ!


「んー……秀さんこれ、もしかして複合型スキルかもよ」

「複合? じゃあ餓狼と分身か? 分身はまぁわかるが、餓狼ってのはなんでぇ」


 ここは強い人間がいっぱいだぞ!

 よくわからないけど、わかるぞ!


「オイラ、冒険者ギルドなんて初めてだ」

「私もよ。ついでに私のスキルも鑑定して欲しいわぁ」

「クロミのスキルはわかってるじゃねーか。霧発生とポカポカだろ」

「私のスキル、絶対そんな名前じゃないと思うのよ。もっとステキでカッコいいはずだわ」

「アタシが最強なのは変わらないわ」


 みんな自分のスキルの名前、知らないのかな?

 オレは知らないけど!


「おい、聞いてんのか。お前ぇのスキルだぞ」

「ウォン。聞いてなかったぞ!」

「元気に答えてんじゃねーよ。ったく」

「あっはっは。面白いワンちゃんね。えっと、君のスキルは餓狼分身っていってね、そのスキル名だと日本には同じスキルを持ってる人はいないの」


 いない!?

 いないと、どうなるの?


「分身はそのまんま。自分と同じ姿、同じ能力のシベリアンハスキーを作れるの。今はたぶん一頭だろうけど、スキルのレベルが上がると頭数も増えると思うわ」

「オレがいっぱいになるってこと!?」

「そう。でもスキルを使った時だけよ。スキルの使い方は……んー、必要だと思った時に、出て来て欲しいって思ったら分身出来る……のかな?」


 人間のお姉さんが首を傾げてる。

 ワフ?


「ふふ。それで餓狼の方はね、このスキルを持ってる人なら冒険者にいるの。能力は、スキル発動中の身体能力強化。狼のようなパワー、敏捷性を発揮するってスキルなんだけど、この狼のようなっていうのがクセものでね」


 クセもの……くさいもの?


「実際には狼よりも強いってこと。たぶん君のスキルは、分身している間は自分と分身の両方で凄く強くなるっていう能力じゃないかな」

「格闘系にちけぇーのか」

「えぇ。そうだと思う。まぁ私の解釈なんだけどね」


 オ、オレ、強い!?

 狼より強い!?

 狼みたことないけど!


「ハ、ハリーが……ハリーがあたしより強いわけないわ! あたしのスキルも調べてよっ」

「セ、セキセイインコ……インコのスキル持ちは初めてみたかも」

「ふっ。そうでしょうそうでしょう。あたしは唯一無二のキコ様なんだから! さぁ、スキルを調べて!!」

「い、いいけど……秀さぁん、ちゃーんとお礼を頂きますからねぇ」

「ちっ。しゃーねぇなぁ」

「キコもスキル調べるのか! キコも自分のスキル知らなかった?」

「知ってるわよっ。ピイヤァァーッ」


 うわぁあぁぁぁぁ。キコミサイル来たっ。怖い怖い怖い。

 

 キコたちも一羽ずつ、機械の中に入ってスキルを調べてもらった。


「うっわ……その子が最強って言うのも納得なスキルよ」

「ふっふっふ。ほぉらみなさい。あたしが最強よ!」

「で、どんなスキルだったんだ」

「『怪音波』『マッハ弾』『精霊召喚・風』よ。怪音波は、自分の前方、扇状に広がる範囲で、そこにいる生き物を昏睡させるもの。範囲はそう広くないし抵抗可能だけど、それを持ってる人がパーティーにいたら、生存率がぐんと上がるの」


 キ、キコすげぇ!


 マッハ弾。いつもキコがミサイルみたいに飛んでくるあのスキルだって。

 本人が物凄い勢いで敵に向かって走る――キコの場合は飛んでいくことが出来る。

 ただ飛ぶだけじゃなく、その衝撃は――えぇっと。


「その衝撃は、術者の体面積に比例して……強く……なる、んだけど……」

「ぷはっ。キ、キコに体の面積を期待したって、無駄じゃない」

「じゃあ大して強くねぇってのか?」

「いや、でもさでもさ、キコのミサイルって、本気出した時にどっかのお店の窓ガラス割ったじゃん? オイラたち、慌てて逃げたじゃん」

「窓ガラス割ったの!? お、お店のガラスを……うぅん。お店のガラスって、普通のお家のガラスより硬いと思うんだけど……」


 キコすげぇぇーっ!


「そんなの簡単よ。あたし、本気の時は風を纏っているんだもの」

「風……そうか。精霊召喚で風を纏わせて威力をあげてんのか」

「えぇー、凄いじゃない。訓練を受けて、冒険者に雇ってもらったらいいのに」

「そりゃ止めとけ。悪い人間に雇われちまうと、ロクな目に会わねえからな」

「そんなのわかってるわよ。伊達に野良ってんじゃないわ」


 野良……キコたちは野良なのか。

 オレは……オレは飼い犬。飼い犬だ!

 でもアキラたちが見つからない。迷子になったオレを、アキラたちは探してくれているのかな?

 探しているよな。うん!


「キコ。オレ、そろそろ家に帰るぞ!」

「え? 家にってあんた……」

「オレは川の側の原っぱで迷子になったんだ! アキラたちと一緒に車でドライブして、いっぱいドライブして、それで原っぱについてからパパさんとアキラとタケシがボールを投げてくれて、それを取りに行ったらオレ、迷子になったんだぞ」

「あんた……それって捨て「わぁー、キコ! キコのスキルはすっごいなぁ!!」あ? なによクロスケ」

「しーっ。ちょっとキコ、こっちこっち」


 ん? どうしたんだみんな?

 人間のお姉さんも秀さんと内緒話してる。


「――迷子――ないわね」

「だろうな。話せるように――が煩わしくて――る人間は多いからよ」


 ん? ん? なんだろう。うまく聞き取れない。

 クウーン。


 あ、キコたち戻って来た。


「キコ、オレ!」

「か、帰るですって!? 世話してやった恩を返さず、帰るっていうの!」

「え? い、いや、オ、オレ……」

「ダメよ!」


 か、帰っちゃダメなのか!?



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