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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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157/197

157:野望。

「ん? 着信……サクラちゃん!」


 ニューヨーク州、ハンターギルド『ブラッディ・ウォー』が所有するビルの一階ロビー。

 たった今、ダンジョンから帰宅したばかりの青年オーランドが、表情はそのままに、弾むような声を上げスマホを操作する。


「悟たちも捜索に出ていたのか。ん? な、なんだ……なんだこのフォックスは!?」


 オーランドのスマホには、連続して写真が送られてきている。

 どんどん、どんどん。

 送られてくる写真には、見慣れない狐が映っていた。


 背景はダンジョン。狐はサクラちゃんと同じ、捜索隊のジャケットを身につけている。

 ということはスキル持ちなのだろう。

 メッセージ一通に五枚ほどの写真が送られ、最後にテキストが添えられていた。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 はーい、オーランド。サクラよ。

 今ね、隠しダンジョンで行方不明になった冒険者の捜索に来てるの。

 一緒に映ってるのはヨーコちゃん。新しい仲間よ。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 メッセージは短いものだったが、彼女が今どこで何をして、そして狐は誰なのかというのがわかりやすく伝えられていた。

 なお、送られてくるメッセージはまだまだ続いている。


「ヨーコ……キュートだ」


 食事をしているサクラとヨーコ。ブライトも映され、たまに悟。

 いや、よく見ると他にも動物が映っていた。


「シベリアンハスキー! oh、黄色いパラキート……シ、シベリアンハスキーにアタックしている!?」


 シベリアンハスキーとパラキートことセキセイインコが仲睦まじく食事を楽しんでいる写真からの――インコがハスキーに向かって急降下し、特攻する写真へと変わる。

 次に、しょんぼりした顔のハスキーの写真が展開した。

 オーランドはスマホに映るハスキーの頭を(スマホ画面)撫でた。


 羨ましい。

 悟は動物に囲まれている。

 羨ましい。憎い。


 やっぱり次来た時には勝負をしよう。

 ボクが勝ったらアニマル隊を一日レンタルする。

 よし、そうしよう。


 などと考えながら、送られてきた写真をじっくりと見た。


「隠しダンジョンでの捜索か。厳しい状況だな」


 救助者の容態次第になるが、もし重傷を負っていた場合、次の扉が開くまでもつかどうか。

 怪我であればポーションで治癒出来るだろうが、ポーションでは解決できない状態もある。

 それに、そもそも到着が間に合わないことだってあるだろうし。


「見つかるといいな、悟――ん? こ、これは!?」


 一階のロビーで、金髪碧眼の、絵にかいたような美青年が大きな声をあげ、スマホを天にかざす。


「なんて……なんてベリーキュートなんだ!」


 そこに映っていたのは、赤いポンチョを着たサクラとヨーコの姿。

 襟や裾は白いもこもこ。胸元にも白く丸いぽんぽんが付いた、サンタクロースをイメージしたような子供用のポンチョだ。


「悟……やはりどちらが強いか、勝負するべきだ。あ、アトラ社長に電話しよう」


 電話して、サンタコスチュームのサクラちゃんとヨーコちゃんのグッズを制作してくれ――と頼むつもりでいる。

 

 アメリカでの捜索隊支部設立時に、ATORAの社長の連絡先を聞いてある。

 オーランドは記憶している番号に、すぐさまかけた。


『あー……誰?』

「オーランドです」

『あぁ。どうした?』

「グッズを作ってください。サクラちゃんとヨーコちゃんの、サンタコスのグッズを!!!!」


 暫く無言が続いたのち、電話はガチャ切りされた。


「オーマイガッ」


 すぐさまかけ直す。


『今から飯なんだよ! くだらん用件で電話するなっ』

「くだらなくない! 重要なことだ!!」

『重要じゃない! 飯の方が重要だ! じゃあなっ』


 と、再びガチャ切りされてしまった。

 悔しいオーランドは、サクラとヨーコのサンタコス写真をハンター仲間にも送信する。

 件名には『グッズ化希望の署名を集めたい』とした。


 ――数時間後。


 オーランドの元にはオンライン署名のサイトへのリンクが送られてきた。

 既に数千人の署名が集まっている。もっと拡散すれば、数万人分になるだろう。


 ちょうどそのタイミングで着信音が鳴る。


「悟? ――Hi」

『あ、オーランドか? ちょっとさ、聞きたいことあったんだけど。今いいか?』

「ヨーコちゃんを出せ」

『は?』

「ヨーコちゃんだ!」

『なんでお前がヨーコさんのことを……あぁ、サクラちゃんから写真が送られて来たのか。ヨーコさんはもう寝てる』


 ね、寝てるだって!?

 何故それを悟が知っている!?

 ま、まさか隣で寝ているのか!?

 サクラちゃんも? サクラちゃんもそこに!?


 と、声にも表情にも出ていないが、やや興奮気味である。


「そ、それで、何を聞きたいんだ」

『あぁ。アメリカってさ、隠しダンジョンが見つかったあとはどうしてんのかなと思って。実は今回の捜索がさ――』


 と、悟から今回の捜索の経緯と、救助内容を聞いた。

 五年もの間、隠しダンジョンの存在を知るのは少人数の冒険者だけであったこと。

 それ故、捜索願が出されたのが遅く、十二人中七人も亡くなっていたこと。


『隠しダンジョンの方が稼げるから、それで五年も扉の存在を隠していたみたいなんだ。アメリカでもやっぱりそうなのか?』

「答えはNoだ。アメリカでは隠しダンジョンが発見されたら、複数の他のギルド幹部立ち合いの元、本当に開くのか、開いたとして何分開くのか、次に扉を開けるのは何時間後なのかを確かめる」


 そして隠しダンジョンの扉発見と認定されると、州から報奨金が支払われる。

 その金額はそう多くはない。だが――。


「他の冒険者が隠しダンジョン産の資源や素材を売却すると、その3%分が発見者に支払われるんだ。ずーっとね」

『なるほど……。自分たちが隠しダンジョンに入らなくても、継続的に収入が見込めるってことか』

「Yes」

『なかなかいい案だな。社長にかけ合ってみるか。あの人なら国のお偉いさんにも話を通せるだろうし。ありがとう、オーランド』

「社長……そうだ、悟! あとでリンクを送るから、君も署名してくれ!!」

『は?』

「頼んだぞ! あと悟。アニマル隊の写真をもっと送れ。それと勝負しろ。じゃ」


 と、今回はオーランドの方からガチャ切りした。

 

「よし。祭壇用のケースを追加注文しよう」


 どことなく、ほんのり笑みを浮かべたオーランド。

 それを見て、ロビーにいた女性たちが黄色い悲鳴を上げる。





**************************

アメリカにもセキセイインコってペットとして飼育されているのかなと思って

ググってみると・・・

あちらではセキセイインコという名称ではなくパラキートというそうです。

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― 新着の感想 ―
アメリカのダンジョンも多数在るのに、スキル持ちのアニマル居ないのかなぁ~?  白頭鷲やアライグマやビーバーなどたくさんダンジョンに落ちててもおかしくないのになぁ~?  オーランドの牧場の場所にダンジョ…
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