表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/197

156:ただいま。

 扉が開いた後は慌ただしかった。

 真っ先にハリーたちがボートを引いて駆けだし、残った俺たちも慌てて移動。

 技術者の人が「工具箱おぉぉぉぉ」という悲鳴を上げたが、その彼を担いで扉を潜った。

 行きよりバタバタしたな。


 そこからもバタバタは続く。

 すぐすぐに技術部持参の転移装置を使って地上へ。

 地上では救急車ではなく、数台のワンボックスカーが待機してくれていた。

 

 1時間前の単発通信後、ボスがいつリポップするかわからない状況で救急車は呼べなかったのだろう。

 後部座席のシートを倒し、そこに生存者を寝かせて病院へ出発。

 更に病院で七人のご遺体をアイテムボックスから取り出し、医師に引き渡した。

 一応、検死をするとのことだ。


 それから本部に到着し、シャワーを浴び、温かいお茶を飲みながら報告会。


「悟くん。おばさまに連絡した?」

「え? いや、してないけど」

「だろうと思った。さっき私の方から電話しておいたわ。だって帰ったらすき焼きって言ってたじゃない。連絡しないと、お肉買いにいけないでしょ」

「……あ、そうか。ありがとう、サクラちゃん」


 すっかり忘れてたな。

 そうか、すき焼きか。楽しみだ。


 報告会で、ご遺体をアイテムボックスに入れられることが話し合われた。

 アイテムボックス――というスキル名もあって、人をアイテム扱いすることに抵抗があってこれまで検証されなかった事案だ。

 でも入る事がわかったのなら。


「上に報告して、会議が開かれるだろう。その結果次第だが、まぁこれからは遭難者のご遺体をアイテムボックスに入れて運ぶことになるだろう。以上だ」


 と、後藤さんが報告会を〆た。


 ヨーコさんの件は、ゆっくり体を休めたあとだ。

 それと、ナースのスキル経験を上げるために、ATORAの病院へ研修に行った方がいいんじゃって意見が出た。

 診断系スキルを持っている人は、冒険者であれ、病院に研修に行くそうだ。

 実際にどんな診断をしているのか、処置をしているのか、目で見ることでスキルの効果が上がるらしい。


 ただヨーコさんは動物だ。

 動物が診察室に入れば、患者が嫌がるだろう。

 そこをどうするかって話も上がったが、すぐに解決した。


「あんたたちバカなの? 人間なんだから頭使いなさいよっ。リモートがあるでしょ!」


 と、一部では毒舌キコと呼ばれる彼女の一言で、全てが解決した。

 見るだけでいいなら、確かにリモートで十分だ。

 これから今後、その手のスキルを得る人も病院に通う必要がなくなる。

 映像を録画し、参考になるものを冒険者ギルドと共有すればいいのだから。


 もろもろの話が終わって、俺たちは帰路へ着いた。

 約三日ぶりの帰宅か。もう少し短いかな?


「ただいま」

「ただいまぁ~」

「帰ったよぉーっ。ツララァ、ヴァイスゥ、スノゥ」

「た、ただいま」


 ヨーコさんはまだ、この家に慣れていないようだな。

 ただいまがぎこちない。


 靴を抜いて家に上がると、リビングの方から母さんがやってきた。


「あらあら、おかえりなさい。みんな疲れたでしょ? 悟、さきにお風呂入る? お父さんが沸かしてくれたけど」


 会社でシャワーを浴びてきた。

 でも。


「うん、入るよ。ご飯はまだ大丈夫?」

「えぇ。今から火を入れるわ。サクラちゃんとヨーコさんも、地下のお風呂使ってね」

「「は~い」」


 ふぅーん、地下にお風呂が――え?


「待って、地下にお風呂ってどういうこと!?」

「あら、言ってなかったかしら。あなたたちがアメリカに行ってる間に、サクラちゃん用のお風呂を地下に増設したの。換毛期なんかが凄いでしょ? だから排水が詰まらないように、お父さんがいろいろ作ったのよ。あとサクラちゃんが安全に入れるようにね、跨ぐ浴槽じゃなくって、床に埋め込みタイプにしたり」


 今年に入ってこの家は、いったいどんだけ魔改造されたんだ……。

 まぁ、サクラちゃんとヨーコさんが、お風呂の順番待ちしなくてよくなったのはいいことだけど。


 三日ぶりの風呂にゆっくり浸かって、もう一度頭と体も洗って、また浸かって。

 のぼせない程度に温まって出ると、既にすき焼きのニオイが廊下にまで漂っていた。


 それから母さんと二人でサクラちゃんとヨーコさんを乾かす。

 父さんはカセットコンロに掛けられた鍋の番だ。

 ブライトは水風呂で軽く浴びただけ。乾かす必要もない。


「悟にぃに、おかえりー」

「ただいまツララ。そういや、どうやって帰って来たんだ? まさかもう飛べるようになったとか?」

「ふふ、違うわよ。後藤さんが送ってくださったの」

「あ、そうか。よかったよ」

「ケッ。でもオレは飛べるぜ」


 といってヴァイスが翼を広げる。


「こらっ。食事の席で羽ばたくんじゃないの。それに飛べるといっても、まだほんの数メートルじゃない」

「で、でも飛べるもんっ」

「にぃにだけ飛べて、じゅるーい」

「うっ。ツ、ツララもすぐ飛べるさ。に、兄ちゃんが教えてやるから」

「やった~! にぃにに教えてもらうぅ」


 ほんとに兄妹仲がいいな。

 でもツララ。兄ちゃんに教えてもらうのはやめとけ。その兄ちゃんも飛ぶ練習中なんだからな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ