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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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154/197

154:走れヨーコ。

 妖狐モード。

 体毛が青白く光り、体は巨大化。まさに妖狐・・だ。

 ただ大きくなるだけなのか、他にも何かあるのかは今はわからない。

 だけど巨大化するということだけで十分だ。


「じゃあブライト。周囲の警戒は任せるぞ」

「あぁ、僕に任せな!」

「サクラちゃん、二人が落ちないようしっかり見てて」

「わかったわ!」

「よし、じゃあ行くよ、ヨーコさん」

「走るけんね。サクラ、しっかり掴まっとき」


 ヨーコさんの尻尾は、器用に動いた。

 二本ある尻尾でそれぞれひとりずつくるんっと包み、三人は背中で寝かせ、落ちないようにテントを被せて胴に巻きつけた。

 そして俺はヨーコさんの隣で走る。前方に立ちふさがるモンスターをぶっ飛ばすためだ。


「行くばい!」


 タンっと地を蹴ったヨーコさん。

 ん? ヨーコさん、地面を……地面から少し浮いて走ってる!?

 よ、妖怪、だから? 飛べる?


「ヨーコさん、飛べるのか!」

「え? ウチ走っとるけど?」


 無自覚!?

 でも確かに、飛んでいるというよりは走ってるな。

 だけど浮いているおかげで、運んでいる人たちへは振動がないはずだ。 

 それにしても早い。

 ブライトが結構必死で飛んでるから、百キロぐらいは出ているはず。


「さ、悟ぅーっ。前だ、前っ」

「了解!」


 前方に雪だるまがあった。いや、氷だるまか。あれもモンスターだ。

 容赦なく拳で殴り飛ばす。


「あっ。粉砕したら破片がっ」

「私がヨーコちゃんを守るわ!」


 サクラちゃんの『見えざる鎧』か。助かった。

 この調子で走り続け、時々ブライトがヨーコさんの上で休み、そして。


「洞窟だ! 上り階段のある洞窟が見えてきたぞ!」


 と、ブライトの明るい声が聞こえた。


「はぁ、はぁ……到着? ウチ、もう走らんでいいと?」

「あぁ、お疲れ様ヨーコさん。ゆっくりしていいよ」


 洞窟の中へと入り、そこからはゆっくり移動。

 体が大きくなったヨーコさんじゃ、ここは走れない。

 それでも階段まえまで到着し、そこでヨーコさんの体力と魔力が尽きた。

 尻尾にくるまれた二人が地面に横たえられ、急いで背中の三人を下ろす。

 途端、ヨーコさんの体は元のサイズへと戻った。


「ち、小さくなったと?」

「小さくというか、戻ったのよヨーコちゃん」


 魔力切れ目前ってとこかな。

 妖狐モード中は魔力を消費するみたいだな。だいたい四十分弱走ったはずだ。

 これから妖狐モードをお願いするときは、時間に注意しないとな。


「サクラちゃん、水を出してやってくれ。ブライト、この人たちを運ぶ間、警戒を頼む」

「了解だ。全員運び終わったら、上の階に行って他のチームが来ないか見てくるよ?」

「あぁ、頼むよ」


 サクラちゃんとヨーコさんに階段半ばまで行くよう言ってから、俺は五人を階段へと運んだ。

 全員を運び終えると、ブライトが階段上に飛んでいく。


 直ぐにサクラちゃんにカセットコンロと水、鍋、ゼリー粉を出して貰って栄養ゼリーを作る。

 出来上がったゼリーを五人の口へと流し込み、ブライトが戻って来るのを待った。


 七人……七人救えなかった。

 到着した時には亡くなっていたんだから仕方がない。

 仕方ないけど、命が失われたんだ。仕方ないだけで済ませてはいけない気がする。


 捜索依頼が出た時点で手遅れだったのなら、依頼を出さなくても済んだ状況が作れれば……。

 隠しダンジョンを見つけたなら、旨味を独占したいと思うのは当然のこと。

 他の冒険者に扉を開く条件を話せば、当然だけど、旨味は独占できなくなる。

 だから隠そうとするのだ、情報を。


 他に国ではどうなっているんだろうか。

 日本は捜索隊があるから、戻ってこない仲間を心配して捜索依頼を出せる。

 でも他の国に救助組織はないからなぁ。


 アメリカで捜索隊が出来たけど、向こうはどうやって救助するだろうか。

 今度聞いてみよう。


「サクラちゃんとヨーコさんも、ここで休んでおいてくれ。全員と合流したらすぐに移動になるだろうから」

「ちょっと休んだらすぐ行けるばい。みんなこっちに向かって来とるんやろ? 地図あるんやし、道も間違わんとすれ違う事ないやろうし、ウチはまた大きくなって運ぶけん」

「いや、ダメだ。ヨーコさんは魔力切れ間近だし、回復するまで妖狐モード禁止だ。それに馬場さんは最初から二階にいたんだし、そろそろ合流するころだ。それに――」


 ノーマルな迷路状の洞窟ダンジョンでは、あの巨体だと角を曲がるのもきついだろう。

 大型モンスターに匹敵するサイズだ。そのサイズのモンスターが生息する階層やオープンフィールドでしか妖狐モードは無理だと思う。


「ヨーコちゃん。休めるときに休むのも仕事の内よ」

「サクラ……」

「サクラちゃんの言う通りだ。今無理をして、明日明後日の勤務に支障をきたすのも大変だ。君に頼れなくなるからね」

「た、頼れる? ウチ、頼りにしてくれるん?」


 そう尋ねるヨーコさんに、俺とサクラちゃんは頷いた。

 そうして彼女はようやく、階段に腰を下ろしてくれた。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 救えなかった命がある…今回は仕方ないですぞ悟くん、気に病むことはない。 人間は神様じゃない=絶対に手の届かない範囲は有りますし、人一人が抱えられる容量なんて限られてますからね。 …
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