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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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150/197

150:隠しダンジョンB3

「沢木さんの話だと、彼らは二階層までしか下りていないそうだ」

「五年もかかってたった二階か?」

「そりゃ十人ぐらいでしか探索していないからね。それに」


 一度入れば次のボスが湧くまでは出られない。逆に言えば、次のボスが湧いた時に出なければ、強制的にまた数日出れなくなると言う事。

 ボスの湧く時間は決まっているわけではないから、最短リポップタイムに合わせて出口で待つしかない。


「探索に掛けられる時間は、意外と短いからなぁ」

「それに、自分たちの都合で隠しダンジョンに行けるわけでもないんでしょうしね」

「まぁボス狙いの冒険者は、他にもいるだろうしな。なるほどねぇ」


 六時間、しっかり休んで食後に曽我さんチームと別れ捜索を再開した。

 俺たちはそのまま二階を目指すことにし、階段へ向かっている。

 地図はかなり正確に描かれ、迷うことなく進めた。

 

「月に二回か三回しか隠しダンジョンには通えなかったって言ってたけど、一階と二階しか探索していないからこそ、ここまで正確な地図が描けたんだろう」

「せやけど戻ってこんってことは、もしかして三階に下りたんやない?」

「沢木さんはそんなハズないと言って。これまでずっと慎重に行動してきたのだからって」


 そう。これまで慎重だった。だからこそ、ここまで正確な地図が描けたんだろう。

 そして一階と二階、全ての通路を走破し、描きこむところのなくなった地図……。


 探索にも慣れ、効率よく稼げるようになってきたら次はどうするか。

 冒険者ならきっと、その先を知りたくなる。


「ヨーコちゃんの言う通り、三階に下りてたとしたら大変じゃない? こっちは地図がないんだもの」

「何言ってんだサクラ。地図がないのは向こうも同じだろ」

「あぁ、それもそうね。悟くん、どうする? 二階の地図も完璧なんでしょ?」

「うん。階段の位置も描かれているから、下りるだけなら簡単だ」


 しかもこれなぁ、一階から下りた階段から次の階段まで、意外と近いんだよ。

 五年も通い続けて慣れてきたから自分たちは大丈夫って、過信したんじゃないかな。

 冒険者が遭難する一番の原因は、だいたいそれだし。


「二階を素通りして三階に行くか……でも二階で遭難している可能性も……」

「あるか? そこまで完璧な地図を持ってて、遭難?」

「そうよねぇ」

「知らんとこやけん、遭難するんやない? ウチみたいに」


 と、ヨーコさんがどこか遠い目をする。

 北海道から東京まで遭難した本人がいうんだから、説得力あるよな。


「よし……こちら三石です。俺たちのチームは三階に直行します」

『こちら曽我。了解した。オートマッピングがあるお前のチームが先行するのがいいだろう』

『秋山、了解だ。定期連絡は忘れるなよ。忘れるなよ』

『馬場チームも二階に移動します。ちょうど階段の近くなんで。秋山さん、なんで二回……』

『三石はすぐ忘れるからだ。大事なことだからな! サクラ、ブライト、ヨーコ。お前たちも三石が報告忘れてたら言ってやってくれ』

「「は~い」」「任せな」


 ……なんか俺、信用されてない?






 ヨーコさんを抱え、少し駆け足気味に二階へと向かう。


「コォーン! 早いばい。すごーい!」

「ヨーコちゃん、楽しんでいられるのも今の内よ」

「なんで?」

「悟くんが全力で走ると……なんでもないわ」

「ちょっと、途中で止めんで!」

「ここじゃ全力出せないよ」


 階段を下り、次の階段へと向かう途中で馬場さんのチームに出くわした。

 お互い、手掛かりになりそうなものは何も発見出来ていない。


「大きくはないが、資源岩がゴロゴロしているな」

「そうですね。何の資源だろう」

「根元が鑑定している。どうだ、根本?」

「電気エネルギーと原油だ。同じ階層で違うエネルギー資源があるのは珍しい。あと宝石の類もちらほら落ちてるしね」


 そりゃ稼げるわけだ。

 そしてモンスターからドロップする素材も質が良い。

 隠されていない普通のダンジョンにいるモンスターと同じ種でも、隠しダンジョンに生息する方は質のいいものを落とすからなぁ。


「じゃ、俺たちは三階目指します」

「あぁ。こっちは念のため、二階の奥の方まで行ってみるよ」


 馬場さんたちと別れて三階へ。

 ここも洞窟タイプか。沢木さんからもそう聞いている。

 彼らは三階に下りてはみたものの、地形がどういう構造なのか確認だけして二階に戻ったと。


「じゃ、オートマッピングを開始しますか」


 白紙の紙を握り、三階を歩き始める。

 角を一つ、二つ曲がると、通路の先が明るく……あぁ、これは。


「オープンフィールドだ」


 階段から僅か百メートルほど先はオープンフィールド。

 見渡す限りの雪原が広がっていた。


 ……寒い。

 気温を感知できるスマホアプリを起動して……マイナス15℃……。


「きゃっ」

「コンッ」


 サクラちゃんもヨーコさんも、温かそうな毛があっていいよなぁ。

 せめて抱っこしてれば、俺にも恩恵が……。


「ブライト、あんたスキル使いなさいよ」

「ボクのスキル?」

「そうよ! ホットスポットよ! もう、これじゃあ歩けないわっ」

「でもさぁ、ボクのスキルでこの氷、溶けやしないか?」


 氷?


 辺りを見る。真っ白だ。

 足元を見る。真っ白だ。


 ……いや。雪ならズボっといくはずなのに、その上に立っている。

 足踏みをしてやっと気づいた。


 雪原だと思っていたけど、これ、氷原か!?


*本日も20:10にもう一話更新します。

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