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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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147/197

147:待ってるからね。

「食料は各チーム三週間分だ。カセットコンロのガスも、予備を十分に持って行け」


 すぐに準備に取り掛かった。

  

 日本にはアメリカのようなハンターギルドなんてものはない。

 冒険者ギルドがあって、『ギルド』が被るからだってのが理由だという。

 でも実際はハンターギルド的な、大人数のグループってのはある。

 複数のパーティーが合流した形のものだ。

 連合――クランと呼ぶ人もいるんだとか。


 今回はそういった、複数のパーティーで役割分担をするチームのような組織だ。

 二つの六人パーティーが隠しダンジョンに入った。

 入ってから三回、ボスが湧いて討伐されている。にもかかわらず、パーティーは戻って来ていない。


 ボス討伐担当のパーティーは、ボス討伐後に地上の彼らの事務所で待っていたそうだ。

 一回目に戻ってこなくても、ちょっと遠くまでいったんだなと思って心配はしなかったそうだ。


「さすがに二回目も戻ってこないと心配になったのね」

「けどよぉ、だったらその時に捜索依頼だしゃいいじゃねえか」

「後ろめたいことがなければ、ブライトの言う通りにしたんだろうな。けど彼らは、隠しダンジョンのことを誰にも知らせていない。それが悪いってわけじゃない。でもいいことでもない」


 美味しい稼ぎ場は誰にも知らせたくない。

 そう思う冒険者の気持ちは、一般知識としては理解できる。

 でも捜索隊としては理解したくない。その結果がこの状況なのだから。


「みんな、自分の食料は足りるか確認するんだぞ」

「三週間って、どれくらい? ウチのご飯足りる?」

「ヨーコちゃんは私と同じ量でいいと思うから……これが一日分。これをえっと……」

「二十一個用意すりゃいいんだよ。あと水も忘れんなよ、サクラ、ヨーコ」

「ってことよ。わかった、ヨーコちゃん?」

「に、二十一ね。数字は習ったけん、たぶん大丈夫ばい」


 そういえば、ヨーコさんはスキルを得る前まで野生動物だったな。

 言葉は冒険者をストーカーして学んだようだけど、基礎学習はまったくやってないはず。

 これが終わったら訓練施設に連れて行ってやろう。


 食料、そしておやつ、ポーション類に救助道具一式、そして――。


「隠しダンジョン内には、通信機器のアンテナが設置されていない。技術部から三人が同行する。それでも外との通信は不可能だ。中に入ったチーム同士でしか連絡は取り合えないから、あとは各自の判断で行動しろ」


 その技術部スタッフには秋山さんのチームが護衛につく。

 捜索担当は俺のチーム含め、四チームが動く。秋山さんのチーム以外、今回はアイテムボックス持ちがいることが絶対条件だ。

 長期による捜索になるから、荷物は持ち歩けない。


「ヨーコちゃんの初任務なのに、大変な捜索になりそうね」

「た、大変なん?」

「俺も行ったことがないダンジョンになるからね。まず地図がないんだ。こういうね、道が描かれたヤツ」


 ヨーコさんには実際に地図を見せ、これがあれば迷わないんだってことを伝えた。

 だがそれがない。まったく未知のダンジョンだ。

 しかも自由に戻れるわけじゃないから尚更悪い。


「ヨーコさん。とにかく先走りしないこと。必ずみんなの側にいること。これだけはしっかり守って」

「私たちと一緒にいるのよ」

「なぁに。一匹で迷子になっても、ボクのサーモセンサーですぐ見つけてやるさ」

「うっ……な、なんか緊張してきたばい。サクラ、手ぇ握って」

「え、なんでよ!?」

「だって昨日一緒に見たドラマってのでやってたやん! 緊張をほぐすのに、相手の手を握るって!」

「それは好きな子の手を握りたかった主人公の言い訳よ!」


 なんのドラマを見ていたんだ。

 サクラちゃんとヨーコさんは、ワーキャー言いながら荷物をアイテムボックスに入れる作業をしている。

 向こうではブライトが、スノゥとツララ、ヴァイスと話をしている。下手したら三週間は戻ってこれないからなぁ。


 あぁ、福岡からもうひとりのダンジョンベビーが来るんんだっけ。

 戻って来た時に、まだいるかなぁ。


 荷物入れを手伝い、全チームの準備が出来たら西区ダンジョンへ出発だ。


「あ、悟くん。お家に電話した?」

「ん? あぁ、まだだな」

「んもう。ちゃんと連絡しなさいよ。おじさまもおばさまも、心配するわよ」

「ダンジョン行くときは連絡すると?」

「日帰り出来ない時はね。だって連絡しないと、おばさま、悟くんや私たちのご飯を用意して待ってるのよ」

「ご飯が無駄になるってことやね。それはいけんよ、悟。ご飯を無駄にしたら勿体ないけん!」


 ご飯の問題だったのか……。まぁ連絡しておこう。


 母さんに電話で、長期間の捜索になると話す。

 俺の仕事がどういったものなのか理解している母さんは、それだけで伝わる。


『じゃあ終わったら連絡しなさいね。ご飯作ってまってるから』


 やっぱりご飯の問題だったのか。


『すき焼きがいいかしら。それとも寄せ鍋?』

「すき焼き、かな」

『そう。じゃあすき焼きにしましょうね。言ってらっしゃい。気をつけるのよ』

「わかった。じゃあまた」


 そう言ってスマホを切る。

 すき焼きか。早く見つけて、早く帰ろう。



ブクマや★の応援も待ってるからね☆彡

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