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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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140:次、停まりますⅡ

『次、停まります』

「秀さーん。秀さんいるかー?」


 トラック泥棒を捕まえた翌日。さっそく秀さんが住むたばこ屋へとやって来た。


「あー、なんでぇ。三石じゃねえか。アメリカに行ってたんじゃねえのか」

「戻って来たよ。それより秀さん。ツララのスキルの封印、解けたみたいなんだけど」

「あぁ? そんなバカなことあるか。まぁいい、お前ら上がれ」


 俺とサクラちゃん、ブライト一家で家の中へとお邪魔する。


「あらあら。まぁまぁ。以前見たかしら?」

「おばあ様こんにちは。前に一度来てるの」

「まぁ、そうなのね。あ、お水出しましょうね、お水」


 秀さんと一緒に暮らしているからか、おばあさんはサクラちゃんたちが来てもまったく驚いたりはしない。

 お茶ではなくお水というのも、動物相手によくわかっていらっしゃる。


「それで、封印が解けたって?」

「そうなんだ。ツララ」

「あい! んんんんーっ」


 何故かお尻を振りながら、ツララは翼をパタパタさせはじめる。

 あれでスキルを使うぞーっと、気合を入れているらしい。

 実際にツララは光り、頭上に光球が浮かび上がる。


「たまげた……こいつはアレだ」


 秀さんはちゃぶ台に両手をついて立ち上がると、でも直ぐにまた腰を下ろして鰹節を手に取った。

 あのかつおぶしは猫用。さっきおばあさんが袋を持って来て、入れていったものだ。


「アレってなんだ! アレってっ」

「あなた、静かになさい」

「だけどスノゥ。ツララのことなんだぞ。心配じゃないかっ」

「静かにしてくんねぇと、俺の声が聞こえねぇだろうがい。はぁ……まぁ別に心配するこたぁねえよ。おチビちゃんが俺より魔力が高けぇだけだからよ」

「魔力が?」


 秀さんがこくりと頷く。


「他人にマイナス要素を与えるスキルってのはな、その相手より自分の魔力が劣ってると、ミスすることもあんだよ」

「あー、まぁわかる。でも今まで封印出来てたじゃないか」

「成長してんだよ。おチビちゃんはまだ、孵化して数カ月だろ。前に俺が封印したときよか、魔力が成長してんだ。兄貴の方はどうなんだ」


 秀さんがヴァイスを見ると、ヴァイスは何故か視線を逸らした。

 こいつ……まさか。


「にぃに、ブーンって出来るのぉ」

「ツララ! 内緒だって言ったろっ」

「あっ。い、今のはないちょなの」


 もう遅い。


「ヴァイス、どういうことなの?」

「お前、父ちゃんと母ちゃんに内緒で、何かやっているのか!」

「こりゃ兄貴のスキルも封印が解けてんな。どれ、ちょっと見てみるか」

「見る?」

「あぁ。俺が封印したんだ。スキルが掛かってるかどうかぐらい、触ればわかる」


 秀さんがツララに触れる。


「解けてんのは片方だけだな。もう一個には封印したまんまだ。んじゃ兄貴の方は――」

「オレは封印されてるぜ!」

「嘘おっしゃい。悟くん、ヴァイスを捕まえていて」

「んあっ。悟てめーっ」

「にぃに、悟にぃにに抱っこされていいなぁ」


 もがくヴァイスを抱っこして秀さんに差し出す。

 ヴァイルの横からちょこんと秀さんが触れると、途端に大きなため息を吐いた。


「こっちはダメだ。どっちも封印が解けてらぁ」

「どっちもって、トール・ハンマーも!?」

「あぁ。解けてるな。こりゃ早めにスキルの使い方を学ばせた方がよさそうだ。しっかしショックじゃねえか。まさかこんなチビっ子どもに魔力で負けるなんざ」


 まぁ確かにショックだろうな。秀さんも結構長い間、スキル持ちだったわけだし。

 この二羽の潜在能力は、いったいどれだけあるんだ。






「トール・ハンマーとウィル・オー・ウィプスのスキルを持っている冒険者……と。あったあった」


 スキルの使い方を学ぶなら、同じスキルを持っている人に学ぶのが早い。

 同じスキルを持っている奴を探すなら冒険者ギルドだ。


 そう秀さんに教えられ、本部近くのギルドへとやってきた。

 スキルは個人情報でもある。中にはスキルを他人に教えない人だっている。

 冒険者もまたしかりだ。


「では連絡してみますので、あちらでお待ちください」

「あーい」

「お手数おかけします」

「いえいえ、いいんですよ」


 事情を話し、その内容をギルドの職員から相手に伝えてもらう。

 

 しばらくして、職員に呼ばれて受付へと戻る。


「どうだった?」

「まずウィル・オー・ウィプスを使える方ですが、東京にいました。スキルの使い方の件ですが、OKだそうですよ」

「よかったわねぇ、ツララちゃん。先生が出来るのよ」

「ちぇんちぇー?」

「そう。何かを教えてくれる人はね、みーんな先生なの」

「うわーい。ちぇんちぇー、ちぇんちぇー」


 ピョンピョン跳ねるツララ。

 気付けば周囲の視線が集まっていた。


「オレは!?」

「トール・ハンマーね。それがその……福岡の人だったの」

「ん?」

「あー、福岡っていうのはな。あ、サクラちゃん、スマホで日本地図出してくれる?」

「はーい。えぇっと……はい、これが日本よ、ヴァイス」

「福岡はここ。結構遠いんだよ」


 ということは、指導してもらうのは難しそうだな。


「半月ほど待ってくれって。そしたら東京に来てくれるそうよ」

「えぇ!? ふ、福岡から東京に!?」

「えぇ。実はその……ダンジョンベビー……なの」


 ……え?

 まさか日本にもうひとりいるダンジョンベビーなのか!?


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