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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
6章

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128/197

128:出動だぜ!

「船だぜ!」

「いちいちうっさいわね!」

「クゥン……」

「はいはい。喧嘩しないように。仲間なんだから」


 仲間! 仲間っていい響きだぜ!

 キコは怖いけど。


 姉御はアイテムボックスの中に、船を入れているんだぜ!

 木の船だ。俺たち全員が乗ってもまだ余裕があるぜ!

 その船を姉御のスキル『浮遊』で浮かせた後、俺たちが乗る。

 俺たちが乗ってるのに、船は浮かんだままだ!


「で、こうやって押すと――楽に移動出来る」

「うおおおおぉぉぉぉ!!」

「ねぇそれって、力がいるのかしら?」

「いや。軽く押すだけで動くんだ。でも滑っているわけじゃないから、手を離せばその場で停止する」

「なるほど。怪我人がいても、船に寝かせたまま移動出来るってことか」


 これなら兄貴たちが怪我人を背負って歩く必要がない!

 凄いスキルだぜ姉御!!


 しかもこの船は、押す人が走れば同じスピードで動かせるそうだ!

 大きすぎない船のサイズだから、ダンジョン内でも使うことが出来る!


「人は浮かせられないの?」

「う、浮かせることは出来るんですが、その……じたばたすると動いてしまって。あと高く浮かんでしまったり」

「それだとどこに行っちゃうかわからなくなるわね」

「そ、そうなんです……ごめんなさい」

「あなたが謝る事じゃないわよ。もっとしっかりしなさい!」


 と言ってキコは翼で姉御をバシバシしばいている。

 キコ、怖い。






「俺の仲間は凄いぜ!」

「うちの仲間も凄いぞ」

「オレんとこだって」


 お昼は食堂で犬仲間とご飯を食べる。

 スキルを手に入れてから、俺たちはよくお腹が空くようになった。

 秀さんの話だと、賢くなったこととスキルを使うことでエネルギー消費が増えたからだって。

 誰か意味わかる? 俺はわからない!


「おぅ、犬の」


 猫グループもご飯か!

 捜索隊に勤務しているアニマル隊は、何も俺みたいに人命救助を直接する奴らばかりじゃない!

 計算、をする奴もいるし、一階の受付ってところで案内をする奴もいるし、マイク持って通信する奴もいる。

 持ってるスキルで、適材適所に配属されたんだぜ!


 今こっちに来てるのは、俺と同じ人命救助チームに配属された猫三匹だ!


「やぁ、猫の。新しいチームはどう?」

「あぁ……なんでだろうな……」

「ウォン?」

「なんで……なんで人間は俺たちを吸うんだ!」

「ほんとよほんと! もうっ。またブラシしないといけないじゃない!」

「人間ーっ。人間のニオイついニャーっ!」


 猫……大変だぞ。


「じゃあさ。今度からひと吸いちゅ~る一本って言えば?」


 シェットランド・シープドッグ種のシエラ姉御がそう言うと、猫たちは目を輝かせた。


「その手があったか!」

「シエラ、あんた賢いわね!」

「さすが血統書付きだニャ」

「ふっ。それほどでもないわよ」


 シ、シエラの姉御、カッコいい!!

 うおおぉぉぉぉぉ! 俺も頑張るぜ!


「あ、でもなんで人間は猫を吸うんだ? 猫はいったい何を吸い取られているんだ?」

「え……す、吸い取る?」

「オイラたち、何かを吸い取られているのかニャ?」

「やだ。怖いこと言わないでよっ」


 吸い取られている……人間は猫の何かを吸い取っている!?

 も、もしかして俺も吸い取られるかも!?






「いや、何も吸い取ってないと思うが……」

「本当か!? 本当に何も吸い取ってないか!? 大塚の兄貴、正直に言って欲しいぞ!」

「あ、あぁ。正直に言って、何も吸い取っていないから安心しろ」

「そっかぁ。よかったぜ!」


 でもそれなら何故、人間は猫を吸う?


「に、人間が猫を吸うのは、い、癒しを求めてなの」

「癒し? 怪我をしているのか?」

「う、ううぅん。怪我を癒すんじゃなく、疲れた心、かなぁ。あと、単純に猫が好き、だからとか」


 疲れた心……。心って疲れるのか!?

 よくわかんないぜ!


 お! スマホってのが鳴った!!


「出動か? 出動なのか!? うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「しゅ、出動要請、き、来ましたっ。おお、お、大塚さんっ」

「あぁ。そう緊張しなくていい。西区の十五階層……あそこか」


 あそこか!

 どこだ!


「みなさんっ。出動します。準備をしてください。花園さんは三階の備品室へ行ってください。担当の人が必要なものを用意してくれるんで、それをアイテムボックスへ入れてください」

「は、はいっ」

「曽我の兄貴! 出動か!」

「あぁ。でもそんなに張り切らなくても大丈夫だ。迷って進めなくなった人たちの救助だから」

「うおおおおぉぉぉぉぉぉ! 迷子の捜索だぜ!」


 迷子?

 そういえば昔、迷子の子猫がなんとかって歌ってた子がいたな。

 あれは……あぁあぁ、そうだ!

 俺の昔の飼い主だったぞ!


 元気にしているかなぁ。

 俺が話せるようになって、嬉しくって色々話しかけてたけど、ある日突然、車に乗って遠くに出かけて……。

 そうだ!

 俺が迷子になって離れ離れになったんだった!


 うおおぉぉぉぉぉ!

 ダンジョンで迷子!

 俺が絶対見つけてやるぜ!!





しかしハリーたちのお話はここまで。

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