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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
6章

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126/197

126:子離れ。

「スタンピードの発生条件、か。確かに上野の場合でも、階段が原因に含まれるんじゃないかとは言われている」


 ダンジョンから戻って来ると、何故か社長がバスローブを着てミルクたっぷりのアイスコーヒーを飲んでいた。


「進。やっぱりダメだ。日本から取り寄せるぞ」

「そこまでするか、お前」

「社長命令だ」

「はぁ……承知しました」


 なんだかよくわからないが、金森さんには同情しておこう。

 アイスコーヒーを一気に飲み干すと、スマホを取り出しどこかへ電話をかけ始める。

 内容はダンジョン生成時のスタンピードについてだから、うちの技術部とか研究部かだろう。


「でもダンジョンが生成された時に、そこにビルがあったからって階段を塞いだからどうかなんて誰にもわからないわよね」

「そうだな。ダンジョンの生成場所をこちらで指定するわけにもいかないし、対策の仕様がない。ま、出来るのはうちの社員や冒険者に、今回はビルが生成に巻き込まれたから気をつけろ~って言えるぐらいか」

「そうよねぇ」

「けどよ。スタンピードが起こるかもってわかってりゃ、突入する時に十分な備えが出来るんじゃねえか?」

「ブライトの言う通りだ。その備えは社長たる俺に任せろ。……はぁ。なんでアメリカにはコーヒー牛乳がないんだ。クソ」


 さっきダメだと言ったのは、ミルクたっぷりアイスコーヒーがコーヒー牛乳の代わりにならないからダメってことだったのか?

 この人、本気で銭湯を作る気か!?


「父ちゃん、おかり~」

「お、ツララァ。いい子にしてたかぁ?」

「ちてた~。しゃちょとお散歩ちてたのぉ」

「散歩? おい社長。僕の娘に手を出したんじゃないだろうな!」

「おいおい、人聞きの悪いこと言わないでくれよ」

「触ってたけどな」

「進! おい、余計なことを言うなっ」

「娘は嫁には出さねぇからな!!!」


 ピヤァーっとブライトが羽を逆立てる。

 そのブライトの後頭部を、スノゥが突いた。


「やめなさい、あなた。今日は社長さんと一緒に、あちこちビルを見て回ってたのよ。あと飛ぶ練習もしてたの」

「へぇ、もう飛ぶのか」

「もう、じゃないのよ悟くん。少し遅いぐらいなんだから」


 ツララは孵化後三ヶ月ほどだ。

 スマホで検索してみると、フクロウの雛って生まれて一ヶ月ちょっとで巣立つ!?

 え???


 ツララとヴァイスは、スノゥとよりまだ少し小さい。雄の方が大きいので、ブライトと比べると半分ほどのサイズだ。

 ふわふわしていた羽根は抜け、単純に小さくしたような姿にはなっている。

 だけどツララの舌ったらずなところや、天邪鬼なヴァイスを見ていると、とても大人には見えない。

 ツララは幼稚園児、ヴァイスは小学校一年生ぐらいな、そんな印象だ。


「あぁ、その件で日本にいる罹りつけの獣医に聞いてみた。確かに遅いと」

「なんでしょうね? ダンジョン生まれが関係しているんでしょうか?」

「その点について調べてみました。おそらくそうだと思われます」


 と、お仕事モードの金森さんが、タブレットを俺たちに差し出した。

 ダンジョンで生まれた動物の前例が、他にもあったのだ。


 アフリカ大陸の方で、町に出現したダンジョンから、飼い犬と共に助けられた少年がいる。

 その飼い犬というのは成犬と子犬で、二年後、子犬の方は亡くなっている。


「成長しない、変な声を出す。気味が悪いっというので近所の者たちに殺されたそうだ」

「なんて惨いことを……」


 少年がダンジョンの生成に巻き込まれたのが四歳の頃。

 あまりの恐怖に上手く話せなくなったというのもあってか、その子犬が言葉を覚える機会が少なかった。


「そう。その子犬こそが、ダンジョンで生まれたアニマルベビーだ」

「変な声ってもしかして、人の言葉だったってこと?」

「そうですね。その子犬なりに必死に言葉を話そうとしたのでしょう」

「未だにダンジョンの知識がほとんどない国と地域が案外あるもんだ。スキルを授かるのは、選ばれた人間のみ――なんてのを信じている国すらあるのだからな」

「スキルを手に入れるだけで英雄視される地域もあります。それが素行の悪い人間だったら、もう目も当てられない」

「実際にそうだしな。数人のスキル持ちが町を支配し、好き放題やってるなんて話も聞く」


 最悪な状況だな。


「あ、でも。俺の成長は普通でしたよね?」

「あぁ。三石は普通だ。他のダンジョンベビーもな」

「動物に限っているのですかね? ほら、スキルを手に入れた動物は、成長が普通に遅くなるじゃないですか」

「そうだな。ダンジョンで生まれたのなら、当然、生まれた時から成長が遅くなるのも当然か」


 動物がスキルを手に入れると、そこから先の成長が緩やかになる。

 ツララとヴァイスは生まれた時からそうなっていると考えると、今の成長速度でもおかしくはないのか。


「じゃあ、この子たちは孵化して三ヶ月ぐらいだし、巣立つのはまだまだ先ってことかしら?」

「そうだろうね。飛ぶ練習を開始する、今が丁度いい時期なんだろうさ」

「ツララァァァ。巣立ちなんかしなくていいんだぞ。これからもずっとパパの娘でいてくれぇぇぇ」

「うんっ。ツララ、父ちゃんのお嫁ちゃんになるのぉ」

「ツ、ツララァァァァァ」

「あー、親父ウッゼ。ウッゼ」

「ツララァァァァァァ」


 巣立ちの前に子離れしないとな。



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― 新着の感想 ―
思春期になってツララに「お父ちゃん キリァイ!」なんて言われた日にはブライト大泣き❨(。≧Д≦。)❩するんやない
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