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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
6章

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125/197

125:スタンピードの発生原因。

 結論。

 階段は機能していなかった。


 最初に住人が階段に入り、次に科学者が続く。そして残り十人のハンターが階段を降りようとしたら、最初に入ったヒューが出て来た。


「は? なんで? どうなってんだ?」

「おい、なんで上って来るんだよ」

「いやいや、俺はずっと下ってたんだって。なぁ?」


 ヒューは後ろのハンターに言い、その彼は頷く。

 どうなっているんだ?


「あぁ、やっぱりダメですね。本来の階段というのは、ちょうど中間地点で波長が変わるのです。それが変わらず、ずっと同じままになっています」

「波長? えっと、それは……」

「ダンジョン内に流れる特殊な電波のようなものだとお考え下さい。階層内と階段でも違う波長なんです。まったく別の空間であることを意味しているんですよ」

「それで、階段もまた二つの波長がありましてですね! 異なる空間が二つ、それが同じ階段という外見で繋がっているわけですね!」

「は、はぁ……それが変わらないっていうのはつまり」

「つまり下の階側の階段が存在していないってことです!!! だから我々はループする!」


 そう言ってひとり、科学者がハイテンションで階段に飛び込んで行った。

 ハンターが二人慌てて追いかけて、そしてハイテンション科学者、ハンター二人の順で出てくる。


「どうです! ループです、ループ!」

「わかったから落ち着け。はぁ……で、次のとこにも行くか?」

「えぇ。行きましょう。次はえっと……三十階ですね。はぁ……十五階も下りるのか」

「さっきよりはマシでしょ」


 科学者たちは、全員溜息を吐いて歩き出した。

 





「これは無理じゃないか?」


 俺たちの目の前にあった階段らしきものは、さっきよりも更に狭かった。


「ジェニファー、どうだ? 行けるか?」

「ん。んん~……ダメね。胸が閊えちゃって」


 ……確かに大きいもんな。


「あら、私なら行けるわよ」

「僕も、まぁ飛べないが歩けばどうってことない」

「お、おい、サクラちゃん。ブライト」

「心配すんなって悟。もし下の階に行けてモンスターがいたとしても、僕なら対処出来る」

「私も防御スキルがあるもの。すぐ引き返すなら安全よ」


 そりゃそうだけど……。


「ちょーっと待った君たち!」

「二匹で行くのなら、ぜひこれをっ」


 科学者たちに装着させられたのは、カメラと何か小さな装置だ。


「波長の測定器だ。データが残るから、二匹が戻ってきてから見させてもらうよ」

「頼んだよ」

「えぇ、任せなさい。さ、行くわよブライト」

「おう」


 地面に下りたブライトが、トコトコとサクラちゃんに続く。

 待つこと数分――。戻って来た!


「大丈夫か!?」

「どうだった!?」


 俺と科学者が同時に駆け寄る。


「心配性ねぇ、悟くんは」

「やっぱ下にはいけないみてぇだな。僕らはずっと階段を下りていたはずなんだ」

「さっきと同じってことだね。測定器を貰おう」


 彼らは記録されたデータを見て、やっぱりかとため息を吐いた。


「同じだ。階段として機能していない」


 という結論だ。


「デンゼルさん。もしかして二つ目のスタンピードって……」

「ここからビル四階下の階だと思われる。ビルのガラス窓から見える景色だと、オープンフィールドだ」

「オープンフィールド……日本のダンジョンでも、スタンピードのスタート地点はオープンフィールドだと言われていますっ」

「えぇ。これまで発生したスタンピードは、全てオープンフィールドがスタート地点です。一度に多くを発生させやすいからだと思われますが」


 スタンピードの原因となるは通常、資源の過度な採掘だ。

 その場合に発生するスタンピードは、どれもその現場から始まった。

 オープンフィールドではない。

 そのことを科学者に話すと、彼らは首を振る。


「オープンフィールドなんだよ」

「え? でも洞窟ですよ!」

「そう。洞窟タイプのオープンフィールドだ。現実にだって鉱山があるだろう。まさに『鉱山』を模したオープンフィールドなんだよ」



 オープンフィールドって、空が見えて開けた空間という定義だと思っていた。

 いや、少なくともそう言われていた。


「最近わかったことなんだ。トルコで生成されたダンジョンにね、資源が採掘できる階層があって――」


 その階層は世間で知られている、洞窟タイプの構造。そこに資源が取れる岩オブジェがあるのだが……。


「その洞窟には出口があった。そこを出ると、まさに君が言うオープンフィールドが広がっていた」

「じゃあ……資源が取れる階層って……洞窟を模したオープンフィールド……ってことですか?」

「恐らくそうだろう。そしてスタンピードはオープンフィールドから始まる。そのきっかけはこれまで、採掘量が原因だと思われていた」

「だが日本とこことのダンジョンでは、採掘ゼロの状態でも発生している。その原因はおそらく、ダンジョンの機能を破壊したからだと思われる」


 階段を貫いたから!?

 そして原因となった階層の直近にあるオープンフィールドが、発生現場になったってのか。


 このダンジョンで発生したスタンピードのうち、最後の一つは地下四十階だとされている階層。

 そこもオープンフィールドで、原因になっているのはビルの一階だ。そこから二つ下のダンジョン階層が四十階になる。


 もしそれが当たっていたとして、対策なんて立てようがない。

 ダンジョンはいつ、どこで生成されるかわからないのだから。



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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 うわぁクソ面倒臭い(直球) 所変われば何とやらとは言いますが、条件が変わるとこんなに変化するんですなダンジョン…。 それでは今日はこの辺りで失礼致します。
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