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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
6章

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123/197

123:まさか新グッズが

「うわぁ……」

「な、なんだか異様な雰囲気ね」


 翌日。生成されたばかりのダンジョンの調査隊に、同行させてもらえることになった。

 調査隊自体はアメリカの政府機関に所属する科学者で、その彼らを護衛するため、講習会に来ている数人が参加することになっていた。

 その人たちのご厚意で加わらせてもらったってわけ。


 ニューヨーク市のマンハッタン。

 高層ビルが立ち並ぶ一角にポツンと現れた、『何もない』空間。

 その中心部に黒い渦があった。


 何もない空間の外側には、地上五十階を超えるようなビルが建ち並ぶ。

 まるでビルに見下ろされているような錯覚すら覚えた。


 何もないと表現したが、実際にはいろいろある。

 まぁ重機と人だな。

 今この場所は、急ピッチで工事が進められている。


 日本と同じで、ダンジョンの周辺を分厚い壁で囲む作業だ。

 万が一スタンピードが発生した時、その壁が最終防衛ラインとなる。

 まぁスタンピードは発生したんだけどね。


「なんかあそこ、大きな建物を建設していませんか?」

「ん? あぁ、アレか。あれはヘリポートだ」


 地面にヘリポート作るんじゃなく、鉄筋コンクリートの建物をわざわざ作ってるのか!?


「ちなみに建物内はハンター用の宿泊施設や飲食店が入る」

「あんなの建ててたら、時間かかりませんか?」

「建設中もダンジョンには入れるからな。ヘリでの着陸が出来ないってだけで」

「でもタクシーや電車は使えるでしょ? 今の時期は遠方のギルドが来ないから、地元ギルドの独占場ってわけ」


 といっても、ニューヨークだけで二十を超えるハンターギルドがある。未所属ハンターだっているんだ。独占ってわけにはいかない――と彼らは笑いながら話す。

 

「こちらの準備は整った。さぁ、中へ入ろうか」


 白い作業服を着た人が声を掛けてくる。

 この人は科学者だ。さすがに白衣を着てダンジョンに入る人はいないが、一目でそれとわかるよう、学者さんは白い作業着を着るそうだ。

 他にも白い作業着の人は十人ほど。それを護衛するハンターは倍の人数がいる。


「やぁ、タヌキさん。よろしくお願いするよ」


 なっ!?

 し、しまった。日本じゃ配信の影響か、サクラちゃんをタヌキ呼ばわりする人がほとんどいないって状況だ。

 迂闊だった。

 ここは日本じゃないんだ。サクラちゃんの事情を知る人なんていないだろう。


「んまっ。タヌキだなんて失礼しちゃうわね!」

「oh?」

「まぁまぁ、サクラちゃん。えっと……」

「ヘイ、ケリー。彼女はレッサーパンダだぜ」

「レッサー? いやどうみてもタヌ「レッサーパンダだ、ケリー。アメリカじゃタヌキを見る機会なんてないから珍しくて勘違いしたんだろう。レッサー! パンダ! だ!」


 ブラッディ・ウォーとは別のハンターギルド『女神の王冠』の幹部で、ヒュー氏が慌てて科学者に詰め寄る。

 あれ? サクラちゃんのこと、知っているのか?

 エディ氏やトム氏に聞いたんだろうか。それともオーランド?

 

 なんか向こうで耳打ちをしている。

 科学者がハっとした表情になって、それから戻って来た。


「ソーリー。レッサーパンダのお嬢さん。実はアメリカでは野生のタヌキが存在していなくて。毛色が似ているし、日本から来ているからてっきりタヌキだと思っていたのだよ。タヌキに出会えるといいなぁと思っていてね。激レアだからさ」

「あ、あら、そうなの。タヌキってアメリカにはいないのね。レッサーパンダはいるの?」

「いやぁ、あれも動物園だけだねぇ。でもタヌキの方がレアだよ」

「そうだったのねぇ。ま、まぁ私ってば、毛色が他のレッサーパンダと少し違って、レア毛だから。見間違われても仕方ないわね」

「Yes。君はレアなレッサーパンダだね」


 タヌキ上げをして、見間違えたってことにしたのか。


「はぁ、危ないところだった。悪かったな、サトル。事前に他のメンバーにも伝えておくべきだった」

「いえ。急に同行させてくれと言ったのはこちらですし。サクラちゃんのこと、ブラッディ・ウォーの誰かから聞いたんですか?」

「いや?」


 そう言ってヒュー氏はスマホを見せてくれた。

 そこには小さな女の子がぬいぐるみを抱っこしている写真が。


「娘だ」

「あの、このぬいぐるみって……」


 アライグマかタヌキかって感じのぬいぐるみだ。何故か紺色のベストを着ている。


「サクラちゃんだ」

「え? いやなんでサクラちゃんのぬいぐるみが!?」

「先月、発売されたんだ。知らなかったのか? 自分の会社だろう」

「知りませんでした! え、新商品の開発してたのか!?」

「サトル、お願いがある。次の講習会の時、娘を連れてくるんだ。その時、サクラちゃんと握手させてやってくれ。な? 頼むよサトル」

「そんなの本人に頼めばいいでしょう。別に嫌だとか言わないと思いますよ」


 と話すと、ヒュー氏はさっそくサクラちゃんの所に向かった。

 俺の隣で――。


「ブライト人形もうられているわよ」


 と、ジェニファーさんが言う。

 彼女ともうひとり、デンゼル氏も講習会の参加者で、ハンターギルド『ナイトメア』の幹部だ。


「母を亡くしたタヌキに、我が子を失ったレッサーパンダ……うぅっ」

「ちょっと泣かないでよデンゼル。キモぃわよ、おっさん」

「年取るとこういうのに弱くなるんだよぉ」


 デンゼル氏、まだ四十前だって聞いたけど、おっさんと言うには早いような。

 というかサクラちゃんって、外国でも知られている!?


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