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幼馴染みだよ  作者: 塔子
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【13】省吾②

中学3年になれば、進路先を決めなければならない。


志望校調査書を手に智美の部屋へと向かった。



「…智美」

「ん?あ~、志望校?う~ん、省吾には内緒」

「!」

「省吾は、県内一の私立男子校でしょう?」

「!?」

「おばさんに聞いたよ。省吾は勉強出来るし、頑張ってるから行けるよ、きっと」



いつの間に、俺の志望校が決まったんだ?


母親に訊くと「智美ちゃん、教えてくれなかったでしょう」と言われ、頷く。



「智美ちゃん、高校は省吾と別の所に行きたいって」

「!!」

「3年間、別々に通うって出来る?」

「!!」



俺は首を振っていた。



「そうよね~。省吾、智美ちゃんが居ないと…、ヘタレだもんね~」

「……」

「という事で、省吾の志望校を表向きは男子校という事にして、智美ちゃんにはギリギリまで内緒にしましょう」

「……?」

「ちゃんと智美ちゃんの受験する高校を史恵(ふみえ)さんに訊いておくから」



さすが、俺の母親だ。


智美を目標と定め、俺にやる気を出させ、ここまで出来るように仕向けたのは全て母の作戦だと言ってもいい。


こうして、高校入学式の日、智美へのサプライズが俺と母親、そして、智美のおばさん(史恵さん)の手に寄って成功した。










異世界召喚は、俺にとってどうでもいい事だった。


一緒に魔王討伐へ智美も行くんだと思っていたのに、召喚に巻き込まれただけだからという理由で、大神殿預かりとなった。


それって、人質扱いかよ!って叫びそうになったが、神官長は何があってもお守りしますって、言ったくせに、神官長の息子にあっさり奪われてしまった。


智美は“サコ”と呼ばれ、しかも神官様の奥さんになっていた。


行き場の無い想いは、どうすればいいのだろう。


智美が“頑張って”と言うから。


智美が“待ってる”と言うから。


一緒に元の世界に帰るんだと思っていたのに。


俺は魔法使いから無理矢理異世界渡りが出来るアイテムを奪い、帰った。


両親は俺の無事を手放しで喜ぶ事はしなかった。


智美と一緒じゃないという現実が、おじさんとおばさんの悲しみを深める事になった。



「省吾くん、智美は幸せなのね」



幸せか、どうかなんて、俺には――。



「どこに居ても、元気で、幸せなら…」



智美は幸せなのか、あいつの傍で?



「会えなくても、幸せで、いてくれれば…」



智美が幸せなら、俺だって――。


俺だって――!



「おばさん、俺の話す事、信じてくれる?」



誰も信じないと初めから決めて、異世界での出来事は話さなかった。


智美と二人して消えたという、この町だけの小さな事件になっていた。


でも、戻って来たのは俺だけ。


俺は何も話さなかった。


何一つ、覚えてないと言い続けた。


だが、おばさん達の事を思うと――。


話し終わるとおばさんは、大きなトランクをゴロゴロと引き、俺に託す。



「省吾くんの話が本当なら、このトランクを智美に渡して欲しい」

「――はい」

「そして、省吾くんはちゃんと戻って来て、智美の様子を伝えて欲しい」

「はい」



意識を集中して、思い浮かべる場所は、あの小さな村の小神殿前。


重力を感じなくなったかと思えば、すぐに身体が地に降り立つ感じに目を開ける。


目の前には二つの影。



「やはり、サコは帰りたいですよね。ご両親にも会いたいですよね」



と、神官が智美に話し掛けている。



「ラウルは私が帰ったら泣いて、行かないで!、って言うくせに!」



智美が神官に向かってそう言うから――。



「――なら、泣いている所が見れるな」



と、俺は答える。


本気で智美を連れ帰り、この神官を泣かせてやろうかと頭の中で作戦を立てる。



「智美――迎えに来た」

「省吾…」

「と、言ったら、どうする?」

「!」



智美が「帰る」と言えば、迷う事無く今すぐにでも連れて帰る。



「先に、荷物」

「あ、それ、私のトランク」

「おばさんやおじさんには、俺から話はした」

「そう。それで、信じてくれたの?ウチの親は」

「目の前で消えて見せた」

「………」



トランクを開けて、智美は中身を確認する。



「省吾、ありがとうって、お母さんに伝えてくれる」

「智美…」

「異世界に行ったり来たりって、自由に出来るの?」

「出来る。魔法使いに習った」



習ったなんて嘘だ。


俺の持ち物の中でインクの要らないペンとそのインクを消す道具と称して筆記用具の中から、シャーペンと消しゴムを見せた。


それを見た魔法使いが興味を持ったのをいい事に、交換条件を付けて無理矢理異世界渡りのアイテムを頂いた。


この話は智美には内緒だ。



「おお、さすが、省吾!凄いね!」

「来ても、いいか?」

「勿論、省吾の来たい時、いつでも来ていいよ」



智美は、何が有っても変わらない。


変わってしまったのは俺の方。


なのに、どんな俺でも智美は受け入れてくれる。


それは、俺が幼馴染みだからなのだろう。


智美の傍に居られるのなら、俺は、ずっと、幼馴染みでいよう。







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