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なろうの国のアリス  作者: 夕月 悠里
9章 ダンジョンの奥にて
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ダンジョンの裏側

「なんとか逃げ切れたようだな」

「もう走れないわ……」


 なんとかアリスとゴブリンは真っ黒い化け物に捕まらずにすんだ。逃げ込んだ部屋はボス部屋と呼ばれる物で、一度入ってしまえば中のボスを倒さなければ扉が開くことはない。


 逃げ切れたことに安心した二人は座り込み安堵のため息をつく。しばらくして落ち着いたアリスはボス部屋の探索を始めた。


 ボス部屋は大きな広場のようで、中央に円形に平らな場所があってその周りに松明が置かれている。奥の方にはガーゴイルの石像があって、最奥にはボスが待機しているであろう思わせる台座があった。今は誰もいない。ただその台座周りにはゴミがあるだけであった。空の酒瓶や何かの骨などが散らばっていた。


「それにしてもここのボスのブラックドラゴンはどこにいったんだ? もしかしたらあの化け物に食われたのかもしれねぇなぁ」


 ゴブリンが辺りを見回していった。本来のボスたるブラックドラゴンがいる台座には誰もいない。


「……酒っていうのは恐ろしい」と転がる酒瓶を眺めながらゴブリンがつぶやいた。


「ねぇ、こっちに扉があるけど何かしら」と探索していたアリスが台座の裏側に扉があること発見した。


「ん、あぁ、管理人室だ。ここでダンジョンの様子がよく分かるようになってるんだ。そうだなちょっと見てみるか」


 そういって、アリスとゴブリンは部屋のなかに入っていく。ボス部屋の隣室には、いくつかのモニターとかパソコンに似たハイテク機器があった。いくつものハイテク機器が積み上げられ、いくつものモニターが鎮座しているその部屋の様子は、原始的な石の壁でつくられたダンジョンには似つかわしくない物だった。明らかに飛躍したテクノロジーがそこにはあった。


「わー、すごい。私たちが来た道が映っているわ」


 モニターにはB1F、B2F、B3Fと分かれており、アリスたちが進んできた道が表示されている。どうやらここでダンジョンの管理をしているようだ。アリスが見ているモニターにはアリスが動作させたトラップなどが映し出されていた。それぞれのモニターの端の方にはその階の見取り図が書いてあり、そこにモニターにあるカーソルを合わせると、その場がみれる仕組みのようだ。


「へぇ、ダンジョンの裏側ってこんなんになってるんだね、。すごくハイテクじゃない。わたしもっと適当に管理しているのかと思ったわ」


「まぁな。昔ながらの魔王はそうだろうな。こんなモニターが無くてもボランティアで魔物が集まってくれるんだ。でもな、新参な魔王は集まった魔物がきちんと働かない場合もあるからな。こうやって見張ってないとだめなんだよ。ダンジョンも安い買い物じゃないからな。まぁ、あの新参魔王はその管理も適当だからこんな設備があっても猫に小判だけどな。最近はこういったセキュリティ管理もしっかりしとかないとな」


「へぇ」とアリスが感心したようにうなずく。いろいろなボタンがあって、虎ばさみの絵が描かれたボタンを発見した。


「ねぇ、もしかして罠とかも遠隔操作できるのかしら」


「ああ、できるぞ。難易度調整だったり、パーティ分断のタイミングを計るにはこういうギミックも必要になるからな。相手のレベルに合わせてダンジョンの難易度を変えるのも入場者を増やしたり、リピーターを増やすのには必須なんだよ」


 ゴブリンがモニターを操作し、画面を切り替える。画面にはトラップの位置と、作業中の魔物の姿が映っている。


 さきほど、さぼっていた魔物だろうか


「あぁ、まったく。さぼりがばれちまったよ。なんだったんだ、あのちんちくりんなガキと裏切り者のゴブリンはあいつがいなければもっと、遊んでいられたのにな畜生」


 愚痴を言いながら作業をしているが映し出される。しゃべり声もきっちり聞こえるようだ。


「……あぁ、あれで試してみるか」


 ちょっとお怒り気味のゴブリンはモニターをトラップ画面に切り替えながら、アリスにボタンを押すようにいう。適当なボタンを押してみるアリス。


「うわ! なんだ」


 槍のボタンを押すと、モニターに映し出されている魔物の目の前に槍が飛び出す。魔物がびっくりする様子が映し出される。


 アリスと、ゴブリンがにやにやしながら、色々なボタンを押していく。


 アリスがボタンを押す旅に「うわっ」とか「ぐえ」とかいう声がスピーカーから流れてくる。


 アリスのおもちゃに選ばれたかわいそうな魔物は、何が起きているか分からずに右往左往しながら、びっくりしたり驚いたり、忙しそうである。


 それを見ながら遊ぶアリス、何度目かのトラップボタンを押していたとき、「そろそろやめておけ」とゴブリンにたしなめられた。画面の魔物は泣き顔だった。まぁ満足したのか、すぐにやめるアリス。単に飽きてきただけなきもする。


「それにしてもおかしいなぁ、ここには管理人のドラゴンがいるはずなんだけど。もしいないんだったら、魔王に報告しないといけないんだよな」


 アリスとゴブリンは管理人部屋を出て、ボス部屋に戻る。


「あぁ、さっきの日記の人?」


「あいつはブラックドラゴン、ここのボスとして、魔法商事から派遣されているはずなんだけどな。無断欠勤とかしたら派遣切りに合うっていう噂だし。首になること恐れていたから、あんまりいいたくないんだけどな……」


 ゴブリンはボス部屋の台座のゴミを片づけながら悲しそうにつぶやく。


「え、ボスって派遣されるの?」


「最近はな、色々と予算が限られてるんだよ。倒されることが分かっていて、ボスになりたがる奴はよほどのドMだな。一応ダンジョンでは復活できるようになってるけど、志願して死ぬ奴なんか滅多にいないな。俺だってごめんだよ」


「そりゃねぇ。痛いもんね。でもそれじゃどうするの?」


「だから派遣してもらうんだよ。そういった人材派遣の会社もあるんだよこれが。まったく便利なもんだ」


「あんまり聞きたくなかったファンタジーの裏側ね」


 ちょっと興味をもったアリスがゴブリンに色々と質問してみる。


「そういえばダンジョンの収入ってどうなっているの? こんなにハイテクな機器とか維持するのも大変でしょ……」


「あぁ、収入ね。あれだよ、放送されるんだよ。動画で。Zチューブっていう番組があるんだよ。視聴者数が多ければその分が収入になるんだ。ダンジョンに物語性があったりすると視聴数が延びるんだよな。俺ツエー型の無双攻略もいいけど、限界ぎりぎりの熱いバトルも視聴数がいいんだ。だからダンジョン運営は面白可笑しくしないといけないんだ」


 どうやらダンジョンの人気ランキングもあるらしい。そういった動画サイトのPVやチャンネル登録、ブックマーク、コメント数によってランキングがつくられる。


 ゴブリンがタブレットに似た電子機器を操作しながら、ページを開いていく。


「これが今のランキングだ。正統派のダンジョンが人気だよな。このクラスだとすごいぞ。地下1000階のダンジョン、裏面やいろんなルートを仕込んでいる」


 画面を見ると、数字とダンジョン名がずらっと並んでいる。


「口コミもあってな、レビュアーと呼ばれる人に書かれるとすごくpVがのびるんだ。そういったレビュアーは神様と呼ばれていたりするな。まぁそんな感じで最近のダンジョンはテーマパークだよ」


「なんだか世知辛いわね」とアリスが、同情するようにいう。


「まったくだ、俺そろそろ転職しようかな」


 はぁ、とゴブリンがため息をつく。そのときだんだんだん、と扉をたたく音がする。

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