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悪役令嬢は騙されない!  作者: サイコロ
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第16話


 2日目の朝、リリと朝方近くまで話し込んでいたせいかラティユイシェラはぐっすりと寝入っている。


「ギークをいつ異性の目で見るようになったの?」

「え!そんな王子様みたいなことをしてくれるかたなのね?絶対リリだから体が動いたんだわ」

「素敵な人とパートナーになれたのね、本当におめでとうリリ」


 深夜の令嬢トークは弾丸である。

 ネグリジェについての興奮気味な褒め合いから、今日会ったことへの報告会、どんな化粧品を使い何が好きか、好きな殿方のタイプは?なんて多種多様に気がつけば朝日が昇ろうとしてた。


 眠気眼でリリは起き上がると、まだ幸せそうに眠るラティユイシェラの姿がすぐ隣にあった。


「あのまま2人で寝ちゃったんだ。ラティユイシェラってば、寝てる時は少し幼いのね」


 クスクスと新しい発見に思わず笑みが溢れる。朝日に差し込まれた光が、柔らかい白金の髪をキラキラと照らし神秘的な空気だ。名残惜しくも起こさなければいけない。


「ラティユイシェラ、そろそろ起きないと、アーサー様がお待ちになっているのではないかしら」


 優しい声音に揺すられ、もぞもぞと起きようとするのだが、あと一歩のところで寝てしまう。

 リリはもうっなんて言って続けて優しく起こした。


「おはよう、ラティユイシェラ」


 眩しい笑顔と波打つ赤髪が可愛いリリが、漸くラティユイシェラの瞳に映った。

 朝から可愛いの暴力である。もはや聖女のようにラティユイシェラの頭を撫でていた。


「結婚しよう、リリ」

「っふふ、もう寝ぼけてないで支度をしましょう?」


 半分は本気だったのだが、夜に散々惚気を聞いたので、結婚はギークに譲るとしよう。

 昨日で大体レポートは終わらせたので、今日はアーサーと1日早い街の探索だ。アーサーと一緒なら大体どこの道を通っても安全なのでラティユイシェラはワクワクしていた。昨日あれだけシンドリアについて調べたので、次は自分の目でみるシンドリアを見たいわけである。


 顔を洗って、歯を磨いて、軽い朝食を食べると、白のセーラー服へ袖を通す。


 リリはギークとシンドリアの街を回るらしく、ラティユイシェラが髪を編んであげた。


 いつものポニーテールはもちろん可愛いのだが、薔薇色の髪を緩く巻いて、サイドをふんわり編み込みすればお嬢様ヘアーの完成である。


「色んな髪型をアキさん…侍女長にしてもらったのだけど、この髪型がリリには似合うと思ったの。白粉(おしろい)も少しして、紅を引けば、いつものリリじゃないみたいでしょう?楽しんでね」

「ラティユイシェラありがとう!」


 リリの喜び方で気に入ってくれたのだと嬉しく思うと、ラティユイシェラは昨日と同様リリにポニーテールにしてもらった。




 リリと共に1階のフロアへ降りると殆どの子息達は各パートナーを待っていた。

 リリがパートナーを見つけたのか小走りになる。


「ギーク!」

「リリ嬢?!」


 勢いつけすぎたリリを抱きとめる形で、受け止めたギークは今日も寡黙そうに見えて純粋だ。


「いつもの髪も凄く魅力的でしたが、下ろした姿も雰囲気がガラリと変わってお美しいですね」


 ギークは見上げるリリの、おろした髪をひと束掬いその髪に軽いキスを落とす。

 西洋の王子様のような姿に、先ほどの寡黙さは消え失せた。

 ーーー彼は、黙っていると寡黙なんだけど偶に私をお姫様みたいに扱ってくれるの。


 昨日の弾丸トークでの話が思い出される。



「・・・素敵ね」

「ラティユイシェラ嬢だってどの髪型でも魅力的だよ」


 ポソリと呟くラティユイシェラに聞き耳を立てていたアーサーは、ぶっきらぼう気味に便乗した。


「ふふっ。ありがとう。アーサーも王子様みたいだけど、貴方はやっぱり騎士様が似合ってるわ。とてもかっこいいもの」


 ラティユイシェラをときめかせたかったはずなのに、なぜかボールを打ち返された。

 いとも簡単にアーサーを褒めるラティユイシェラには人を褒めるのに照れがないのだろう。

 滅多なことでは褒めないアーサーの渾身の褒めは、ラティユイシェラにとってはフォローしてくれたのねくらいにしか思われていなさそうである。

 微笑むラティユイシェラはアーサーの前髪に触れ、後ろに撫でた。

「・・・少し伸びたんじゃない?」


 白魚のような手首が目の端に映り、女性らしい香りがして心臓が跳ねた。

 アーサーは折れてしまいそうな手首を掴んで、自身の口元に持っていくと細く長い指先に口付けをする。


「無闇矢鱈と異性に触れるものではありませんよラティユイシェラ嬢」


 アーサーは、やけになってしてしまった行為だが、ラティユイシェラは一瞬ぽかんとした(のち)首まで赤面して、アーサーが掴んでいた手を引っ込めた。

 そんな可愛らしい反応が返ってくるとは毛ほどにも思っていなかったアーサーは、動揺してこちらを振り向かないラティユイシェラを覗こうとする。


「ラ、ラティユイシェラ嬢?すみません、急に」

「・・・・」


 返事がなく内心焦っていると、小走り気味にクラスメイトが2人を呼びにきた。



「アーサー様、ラティユイシェラ様、おっ、お客様が!!」

(・・・びっくりした)


 アーサーの琥珀色の瞳が見えないなと思って前髪をあげたら、今までにない男らしい表情で叱られて、不意に絵物語の騎士様のような真似事をされたものだからーーー。


 不意の強引さに赤面してしまったラティユイシェラの内心だった。

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