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大阪の戦いEND

チラッと横目にホロボスカミの方を見る。

流石に『菊』が居るだけあって、あちらは順調だ。


問題はこっち。


「くっ…!」

「『紫陽花』姉さん。無茶はしないでね」

「分かってるわよ…でも、あなた一人で抑えるのは厳しいでしょう?」

「別に大丈夫。それよりも、若作りはしなくていいの?」

「そんな軽口が言えるあたり、まだまだ大丈夫そうね。…でも、一人で相手されるわけにはいかないわ」


…この人も頭が堅いからなぁ。

中々言うことを聞いてくれない。


「心配しないで…もう慣れた」

「そう?なら、反撃といこうか…!」


私は《加速》の出力を最大まで上げ、超高速でコワスカミの体を真っ二つにする。

コイツはこの程度じゃ死なないし、なんだったらもうほとんど再生してる。

バカみたいな量の魔力を、イカレ出力で活用して瞬時に再生するんだ。


すぐに私に攻撃しようとこちらを向いた瞬間、背後から『紫陽花』姉さんが仕掛ける。

それを察知したコワスカミは、恐ろしい破壊力を秘めた裏拳を放った。

しかし…


「もう見えてるのよ。そんな攻撃!」


『紫陽花』姉さんは華麗な剣技で裏拳を受け流すと、コワスカミの懐に潜り込んで体を真っ二つにし、さらに瞬きの時間で10回近く斬りつけた。


鍛錬を怠らず、がむしゃらに剣を振り続けた『紫陽花』姉さんの剣は、ステータスと魔力制御だけで私の剣に匹敵する速さがある。

…しかし、それだけではコワスカミは止まらない。


「大したタフネスね…でも、対処はできる」

「一人で戦わないでよ?私も居るんだから」


怒涛の連撃を2人で叩き込む。

切ってすぐに再生するから、何度も切れて気持ちいい。


コワスカミは抵抗こそしてるけど、私は速すぎて捉えられないし、『紫陽花』姉さんはゾーンに入ってるから簡単に攻撃を捌かれてる。

このまま行けば、コイツは魔力切れで戦えなくなるだろう。

…でも、倒せる気がしないんだよね。


「『菊』と『牡丹』がなんか言ってたけど…まだコイツの魔石の気配は感じられないからな…」

「そう言えば、魔石が無いんだったわね」

「即復活を犠牲にした覚醒。私はそう見てる。そっちはどう思う?」

「……その線も全然あり得るね」


戦いながら『菊』に聞いてみる。

『菊』も私の考えは一理あるみたい。

ホロボスカミと戦いながら、その可能性を考え始めた。

…まあ、別にそんな本気になって考える内容でも無いと思うけどね。

どうせこいつらの魔石はヒキイルカミが持ってる。

なら、本当の意味でこいつらを倒せることはない。

とりあえずボコボコにして、すぐに復活できないように出来れば私達の勝ち。

なら、やる事は単純だ。


「遅い遅い。それじゃ私を捕らえるなんて夢のまた夢」

「何度も効かない攻撃を…無駄だって事が分からないと?」


2人でひたすらコワスカミを切り続ける。

あっちと違って、こっちは反撃をかなり警戒しないといけないからヒヤヒヤするけど…それでも有利に立ち回れてる。

目に見えて魔力の量は減ってるし、あと数時間コレを続けたらこっちは大丈夫そう。


なんだったら、ホロボスカミの方はもう魔力が半分近く削れてる。

もうすぐしたら2人がホロボスカミを倒してしまう。

そうなったら4人でコイツを倒すだけ。

何も怖いものなんて無いし、絶対に勝てる。

これは勝ったね。


「……とは言え、最後まで油断しない。こいつらは脅威じゃなくても別の場所に特級の脅威があるんだから」


カミなんかが比較にならない程の脅威。

蝶の神が何か介入してこないとも限らない。

絶対に何かしらの妨害や介入をしてくると想定して戦わないと…

最後まで気は抜けない。


蝶の神の介入を警戒しながらコワスカミと戦う。

精神的にかなり疲れたものの、戦闘を始めて1時間。

コワスカミはついにその膝を地に付いた。


「終わったわね。…さて、蝶の神はどう動くのかしら?」

「今のところ何かしてそうな気配は無いけど…まあ、さっさと倒して終わらせるか」


両腕を失い、それを再生させる事も出来ない程弱ったコワスカミ。

私は最後まで気を抜かず全力を尽くす。

今自分が出せる最高最強の技を構え、放つ。


魔力の奔流が動けないコワスカミへと襲い掛かり……まるで何も起こらなかったかのように消滅した。


「……は?」


訳が分からず困惑していると、突然空間に大きな黒い穴が開く。


もっと訳が分からない。

でも、訳が分からないからこそ分かる。


「蝶の神…!」


こんな事が出来るのは蝶の神だけ。

やっぱり仕掛けてきた。

でもこれは一体…


「なにあれ…」

「空間のゆらぎを感じる…ポータルだ」

「ポータルって…何処に繋がってるのよ…」

「そんなの一つしかないでしょ?」


この状況でも冷静な『菊』が真剣な目つきでポータルを見つめる。

そのポータルが輝き、2体のカミが吸い込まれた。


「……私達も飛び込むよ。そこが、決戦の地だ」

「ええっ!?」


決戦の地……そうか、これがシナリオの。


「生きて帰れるかは私達次第。そうだよね?」

「もちろん。…何より、誰が生き残るかも分からないし、そもそも勝てるかも分からない。……でも確かな事は、蝶の神の用意した刺客がこの先に居る。そして、先に主君とあの2人が先に戦ってるんだ。疲れてるかもだけど、休んでる暇はないよ」


休みは無しと…

まあ、いつもの事ね。


「だからなんだって言うの?休みがないのはいつもの事。最終決戦…勝ちに行こう」

「…それ私が言いたかった」

「ふっ!言ったもの勝ちよ」


私がドヤ顔でそう言うと、溜息が2つ聞こえた。


「出た出た厨二病…『菊』そんなの無視して行くよ」

「その歳でそんな事やって恥ずかしくないのか……もはや尊敬するわ」

「『牡丹』はともかく、『紫陽花』姉さんにだけはマジで言われたくないね」


…やっぱり緊張感無いなぁ。

まあ、同期と先生の馴れ合いみたいなものだし、そんなものか。


『菊』がかっこいい事を言ってたけど、真剣な雰囲気は消えた。

逆にプレッシャーが消えてやりやすいし、結果オーライ。


私達もポータルを使うと……正直に言うと、使った事を後悔するような現場に立ち会うこととなった。


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