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68.第二章エピローグ(2)

「それではアンサスランの冒険者御一行様、ここより先も良い旅を。我等王都の騎士団一同、再会の日を心待ちにしてお待ち申し上げております」



 王都に来る際にも通過した河川港のある街。


 相も変わらぬ胡散臭い笑顔と態度で、ロノム達の行きと同じく見送りを担当した白竜騎士団の団長ハーネートは恭しく一礼をした。



「ええと、ゲンさん。少し騎士団長と二人で話がしたいので、みんなを連れて先に船着き場に行って貰っていいですか?」


「ああ、構わねえよ」



 ロノムに言われたゲンさんが、皆を率いて船着き場に向かう。



「二人での話と言う事ですので、君達も下がっていてくれませんか?」


 ハーネートも部下の面々を街の出口の方へと下がらせた。



「言いそびれるところでした。私の事は王都のどなたにも話していないようですね、御礼申し上げます」


「ああ。シルヴィルさんが話さない限りは、王都であなたの事を知る者は誰もいない筈だ」


 ハーネートは尚も仰々しく礼をし、ロノムは少し緊張した面持ちでその礼を受け取る。



「確認の為に、あなたに時間を取って貰った。王都レイ・トレリスはあなたにとって子供のようなもの、守護すべき対象と言う事で間違いはないんだな」


「ええ、そうですとも。何も嘘はございません」


 ハーネートの礼から一拍置いてロノムが質問をし、ハーネートがそれに答えた。



「アンサスランを襲撃しようとしたのも利用するつもりであるアンサスランの冒険者の力を試すため……決して破壊の意図はないと言う事も合っているか?」


「その通りでございます。ああ、その節はご迷惑をお掛けいたしました。それについては謝罪いたします」


 再びハーネートは恭しく頭を下げる。



「だったら、今回の件は俺達があなたに対して大きな貸しの一つを作ったと言う事でいいな?」


「え? はあ、まあそういう事になりますかねえ……」


 ハーネートは何か風向きが変わってきたな……と言った顔をした。


 ロノムは更に続ける。



「なら、今この場で誓ってくれ。アンサスランに何事かあった時、俺はあなたに援軍を要請する。その要請があった時、有無を言わず俺の助けになって欲しい」


「あー……そういう事をおっしゃいますかー……いえ、はあ……」


 ハーネートは困ったような仕草をし、頭をかいた。



「仕方ありませんねぇ……私にできる事であれば、お約束いたしましょう」


 その申し出は予想外……と言った風な感じで、ハーネートはロノムの助けになる事を同意する。


 その言葉に「約束だぞ」とロノムは念押しした。



「ああ、それとひとつ。アンサスランにも人の(なり)をしたドラゴンが一人いる。本人曰くまだまだ赤ん坊も同然と言った年齢らしいのだが、いつか会いに来てくれ」



 ハーネートにとって、ロノムのその言葉は更に予想外だった。


「人に混ざったドラゴン……それも年若い者が……? ええ、ええ。分かりましたとも。それは是非お会いしなければならないかも知れません。時間を見つけてまた、アンサスランにお邪魔いたしましょう」



「その時はドラゴンの恰好ではなく人間として頼む。いや、あなたの為なんだ。アンサスランの冒険者は血気盛んな連中が多い上に、魔物相手の戦いに慣れているからね」


 そんな会話をしながらロノムはハーネートに別れを告げて、ゲンさん達を追いかけ船着き場へと向かって行った。





*****************************





 華麗な装飾で彩られ、豪奢ともいうべき立派な長机が配置されたアンサスランの冒険者ギルド役員議事室。


 役員議事室の最奥に座る一人の老人が、言葉を発する。


「では、本年のアンサスラン最高の六人の冒険者達について、かの者達で異論はないか?」


 冒険者ギルド役員の筆頭「賢僧(けんそう)のマルシヴァス」が役員に問うた。


「異議ありません」


 役員の一人が答える。



 ロノム達一行は王都の旅からアンサスランに無事帰りつき、半年以上の月日が流れた。


 彼等は変わらず冒険者として戦い、ダンジョンに挑み続けている。




「ゲンディアスも、それで良いか?」


「マルシヴァスの爺さんよ。俺は今回利害関係者に当たっちまったもんだから、発言権は無いものって考えてるぜ? まあ、俺からしてみたら喜ばしい事だから異論は全くないけどよ」


 役員の一人である「剛盾(ごうじゅん)のゲンディアス」がマルシヴァスに答える。



「ひとつのアライアンスから……それも少人数のところから二人もSランクが出るのは異例中の異例だがな。あの者達の働きを考えれば妥当と言えるであろう」


 役員の中でも重鎮の一人である「瞬詠(しゅんえい)のフィスケル」も同意した。



「ええ。私も彼女等の働きに文句のつけようはありません。最高峰のSランクとして、推挙いたします」


 役員の中では若手である「雷光(らいこう)のシーリア」も静かにフィスケルに追従する。



 ゲンさんもシーリアも、王都から帰還した後は冒険者ギルドの役員として多忙な日々を送っていた。


 今日も役員の重要な会議のひとつに、二人とも出席している。



「では、防衛士のSランクはアライアンス『シルバー・ゲイル』のメルティラ、そして治癒術師のSランクは同アイリスとして、本会議において決定する。追って内々に『シルバー・ゲイル』団長の承諾を取っておこう。発表は例年にならい次の祝祭の最終日、冒険者ギルド前の大通りで行う」

ここまで読んで頂きありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 話がスッキリしている。 [気になる点] いつティーリ君は爆発を起こしちゃうのだろうか。 [一言] キャラそれぞれに個性が立ち、それでいながら見事に会話している情景が目に浮かぶのが素晴らしい…
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