表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏庭ダンジョンで年収120億円  作者: 三上康明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/54

ついに第4層へ

 瑠璃ちゃんは興奮気味に、どこにあったのか、どれくらい魔結晶があったのかと矢継ぎ早に聞いてきたけれど、あの小さな魔結晶しかなかったこと、その小部屋はほんとうに小さくて、一度閉じたらもう開かなかったことなどを適当に話した。

 瑠璃ちゃんが目を輝かせているので——もう開かなかったと聞いて一瞬しょんぼりしたけど——そこは罪悪感があったけれども。


(でも話を聞く限り、そう簡単に見つかるものでもないっぽいな……『秘密の小部屋』とやらは。やるなら1回で決めなきゃ。1回で、なるべく多くの魔結晶を売りさばく。2回3回と『秘密の小部屋』を見つけたらさすがに怪しまれる)


 その日から、俺は毎日相模大野ダンジョンに潜り続けた。

 NEPTの職員さんからも、1度風邪を引いて3日ほど空けたときには「月野さん、いよいよダンジョンで死んじまったのかって話してたんですよ。その割に入場記録もないから『あれ〜?』って首をかしげてましたけど」なんて言われたほどだ。

 居酒屋の常連かな?

 急に来なくなると「死んだか?」って言われるヤツ。

 ともかく、できれば深層に行きたいと思っていた。

 浅いところで見つけたら、「あの辺、昨日自分が調べたけどなにもなかった」とか言われかねない。なるべく人のいないところまで行くべきだ。

 2層のカッパを銃で消滅させまくり、3層に出現する天狗と、宙に浮くナマズの対処にも慣れた。

 4度、体当たりで吹っ飛ばされて、ひやりとした。

 1度、衝撃でオイルランタンが消えてヤバかった。その事態は想定していたのでオイルライターを取り出してすぐに火を点けたけど。

 そんなギリギリの毎日を送りながらも、弾丸の消費と、魔結晶の収入が割に合わず、貯金はじりじり減っていく。

 夏はダンジョン通いに費やした。

 家では畑をいじり、ダンジョンに関する知識をつけた。

 瑠璃ちゃんたち、チーム「ルピナス」——という名前らしい——とは何度か会ったけれど、ロビーで金髪の男に、


「お前、瑠璃ちゃんのなんなん? 近寄るなよ。次瑠璃ちゃんに話しかけてるの見たら殺すから」


 とあからさまな脅迫を受けた。それがエース「人生バラ色」だというのだから、実力(異能)というものは人格に伴わないものだなと実感する。

 その内容を一言一句違わずに瑠璃ちゃんに伝えてからはなるべく彼女たちと接点を持たないようにした。

 どうも、彼女たち「ルピナス」のような若くて可愛いマイナーはアイドル扱いされるようで、勝手に「ルピナス親衛隊」みたいなのが立ち上がっているようだった。直接「ルピナス」になにか言ってくるわけでもなく、さらには「人生バラ色」に彼女たちが絡まれていても助けてくれないという連中なので、瑠璃ちゃんたちも迷惑だし気味が悪いようだ。

 その一方、俺はソロで潜っているらしい青年やオジサンたちと知り合い、軽い世間話をするようになった。また、初日に声を掛けてきたハゲマッスルマンとも言葉を交わすようになり、


「お前もいっちょ前の顔をするようになったな」


 とか言われた。まだ潜り始めて2か月程度なんだが。

 そんなこんなで残暑が薄れ始め、9月も後半となった。


「着いたぞ……着いた!」


 俺は、ついにソロで4層にまで到達した。

 4層に流れている空気は——これまでと違った。

 濃密な気配というか、ニオイもなにもないのに、空気の密度だけは違う——その感覚に、身体中から汗が噴き出した。

 冷や汗だ。

 これ以上は無理だと思った。ひとりでは無理だ。

 つまり、


(そろそろ売り時だ)


 と思ったのだ。

 4層、いや、5層に行ったことにして、そこで「秘密の小部屋」を見つけたことにしよう。

 で、24時間ぎりぎり掛けて、地上に戻って売却する。

 あとはいつ決行するかだな——そんなことを考えつつ、ほどよい疲れと、興奮する頭をもてあましながら軽トラで家に帰りついたのは、ちょうどお昼時だった。

 俺は夜に潜り、明け方に戻る生活をしていたのだが、今日ばかりは足を伸ばして4層まで入ったために時間を大幅に食ったというわけだ。


「ん……?」


 俺は、宅配と勧誘以外、誰も来ることのない家の前にひとりの人物がたたずんでいるのを見た。

 遠目には女性。

 白のTシャツにスキニージーンズという服装は、年齢も20代というところだろう。

 ははーん、これは宗教勧誘だな?


「月野さん!」


 違った。


「えっ、松本さん……?」


 10か月前に退職した、アドフロストの同じチームにいた松本さんがいた。

瑠璃ちゃんたちのチーム名は「ルピナス」でした。

響きだけで決めたのですが、Wikipediaを見たら吸肥力がすごくて貪欲なオオカミにたとえ、オオカミの名前から由来している名前のようです。

瑠璃ちゃんは貪欲です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版はアーススターノベルより2022/2/16発売します。イラストレーターはttl先生です! https://www.es-novel.jp
― 新着の感想 ―
ルピナス。毒持ってるぞ〜  瑠璃ちゃんという毒持ち m(_ _)m
[良い点] 月野のおっさん良かったなぁ。多分おっさんが思ってるより松本さんに頼りにされていたぞ?会いに来るとかエモいやんな。 松本さんはどんな人生になってたのか興味津々ですわ~。 [一言] ルピナ…
2021/04/11 22:56 退会済み
管理
[良い点] おおっ! 松本さんが登場してくれましたね! これは楽しみです。 どんな話になるのかな〜 [気になる点] 松本さんからすれば、 会社に出社したら主人公が辞めていて 腫れ物に触るような扱いをさ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ