たけのこ
特に読者の方の要望はないですがキャラが動いたので気が済むまで結納中編を投稿します。
今回はウィオラ視点
今日は早朝に家を出て人生初めてのたけのこ掘りへ来た。そもそも私は竹林を外から眺めたことはあるけど中へ入ったことがない。
ネビーはもう二週間近く帰ってこない。エルと私は屯所が通いをしている。
昼と朝晩の食事を届けたり洗濯物を回収して届けたりして連絡用の筆記帳も私と家族用と二冊用意。
総合案内の事務官が私達のような家族の対応で多忙になったので道場の半分が荷物置き場になり、泊まり込み職員の名札が置いてあるのでそこで受け取り。
休みなしの過密勤務でもおかしいのに、残業で勤務がめちゃくちゃになり毎日一日中勤務状態とおかしいことになっている。
多くの兵官は家の近くの小屯所勤務を中心とした編成班にして休憩や仮眠をやり繰りだから家に帰れる人は帰れている。
下っ端幹部のネビーは他の幹部と同じく煌護所、小屯所回りに書類や会議が多いらしくて帰ってこない。
他の仕事よりもとにかく失踪事件の捜査。そこから埃をとにかく叩けということで地区兵官の聞き込みや事情聴取をあちこちで見かける。
ネビーは捜査ではなくて勤務調整や業務報告処理や監視などなど幹部の仕事だそうだ。
お隣さんなので毎日お見合いではなくなるとは。しかもこの激務は私に起因している。
どうかネビーも含めて兵官達が倒れませんように。私は出来る限りのことをする。あと注意を守って海蛇達が過剰に怒らないようにする。
今日のたけのこ掘りはレオとエル、ルカとジンとジオ、それからロカと私と祖父で行う。
ひくらしの大旦那から許可を得てこのくらいまでは掘って良いといわれる分だけ掘る。
竹林管理のためにある程度たけのこを掘らないといけないから、毎年職員関係者家族でたけのこ掘りをして食べたり売ったりするという。
竹林に到着して中を進みながらまっすぐ伸びる青々とした竹に見惚れた。
なにこれ、なにこれ、楽しい世界!
「素敵な光景で……。気持ちの悪い毛虫がいます!」
ひゃあ!
上から糸でぶら下がっているので危うく顔につくところだった。薄朱色に黒い点々が沢山なんて毒々しい。
「ウィオラ。子どもじゃないんだから前を見て歩きなさい」
転びかけて祖父に支えられた。
「すみません。ありがとうございます」
「ウィオラ先生、ジオより落ち着きがないです」
「しっかりします。ロカさん! あちらに大きなたけのこがあります! 掘りますか?」
お店で売っているようなたけのこを発見。店頭にあるものよりも大きい気がする。
「先生。伸びたたけのこは硬いし苦いから食べられません。掘るのはこのくらいのたけのこ。そういうのは竹管理のためにお父さんやジン兄ちゃんが様子を見て間引きします」
「えっ。そのくらいって……。たけのこは土に埋まっている時からこのようなたけのこなのですか?」
「そうです。だから斧で切るのは無理です」
数日前に日曜にたけのこを採りに行こうと言われて、たけのこは形からして斧で切ると思って位置が低いからしゃがんで短く持った斧を振ると思って練習。
ルカとロカに何をしていると言われて説明したら違うと呆れられた。
たけのこ掘りだから掘るに決まっているでしょうとルカに言われてたけのこは掘るものと知った。
根本が太くて紡錘形では売ってないのに掘ったら採れるのならお芋みたいってこと。お芋掘りは体験学習でしたことがある。
たけのこの本来の姿を知らなかったとか、驚いたと言ったらまた違うと言われた。
「違うので行ってのお楽しみです」である。
「ロカ先生。埋まっているたけのこ探しからですね」
「はい、そうですウィオラさん。先生がお手本を見せます」
あまりレオ達から離れない。ロカと祖父と私で組になる。そう決めてきたのでロカに続く。それで大変な時はレオやジンを呼ぶ。
「ウィオラさん。初めてはこれにしましょう」
「はい。頭が少ししか出てないです」
「この緑の葉っぱがこういう方向になって左に反っているからこの向きで掘ります」
「埋まっているたけのこも愛くるしいですね」
ロカはクワでどんどん土を掘っていく。
「周りを全部掘るのではないのですね」
「周りを全部掘るのは重労働になるだけです」
ある程度掘ると根っこがこうだからこうやって、とロカはクワを強めに振って外側へ倒した。
「はい。掘れました」
「こんなに早いのですか⁈」
それなりの曲を一曲演奏するくらい時間が掛かると思っていたのに早い。ロカはたけのこを拾って地面に置いた背負いカゴに入れた。
「これは見事だ。たけのこ掘りをして良いか尋ねて友人としたことがあるけど周りを掘っていた。知識はやはり宝だな。これは本当にロカ先生だ」
「えへへ。小さい頃から教わって毎年何回もたけのこ掘りをしているんで」
「クワの持ち方も全く危なっかしくないしな」
「ロカ先生、お見事です」
「はい! たけのこ掘りは私の特技の一つです!」
穴は埋めると教わってロカが土をクワで戻したので私はふみふみしておいた。ロカはルルみたいな半お嬢さんに成長するだろう。
学校では大人しめで凛としているお嬢さんで溌剌元気さやペラペラお喋りではない。登下校中はわり元気溌剌だ。
「次はウィオラ先生です。次のたけのこをさがしましょう。広い世界へようこそぐんぐんと」
「たけのこの歌があるのですね。広い世界へようこそぐんぐんと」
「じめじめさよならぐんぐんと」
「じめじめさよならぐんぐんと」
「たっけのこ、たっけのこ」
「たっけのこ、たっけのこ」
「ぐんぐん、大きくなった」
「ぐんぐん、大きくなった」
これは楽しい歌だ。最初に戻って歌いながら少し頭が出ているたけのこ探し。
「ありました!」
「ロカさん、さすがです」
次は私の番なので土掘り開始。ジンとロカに付き合ってもらってクワの使い方の練習をしてきたので土くらい掘れる。
問題は振りかぶって根っこに刺すことだ。あまり振りかぶるとよたよたして怪我や事故に繋がる。最初に大きく振ろうとしてジンに怒られた。教わった通り、教わった通り……。
「……外しました」
「あはは、先生下手ー。もう一回」
「はい」
次こそ!
多分、ロカがこのあたりを狙ってというところにクワが刺さった気がする。
「力が弱そうなので蹴っときます」
蹴る?
蹴って刃を奥へ入れるってこと。ええです、と言われたので指示通りにクワを外側へ動かした。
「先生、もう一回ここにブスッと刺すように振りましょう」
「はい」
言われた通りにしてまたクワを外側へ動かす。多分取れると言われてクワを祖父に預けてたけのこを持ち上げた。採れた!
「採れました!」
「おお。ロカさんより長いけどウィオラでもわりと早かった。次は私だな」
「ラルスさんのたけのこを探しましょう!」
クワを持つ祖父が穴埋め係。それでロカが足でふみふみ。
私は背負いカゴにたけのこを入れようとしたけどカゴが持ち上げられた。顔を上げると制服姿で髭面のネビーが微笑んでいた。
「ネビーさん!」
「兄ちゃん! うわあ。すごい髭。ここまで生やしたのを見たことがない。なんか痩せたね。目の下に隈がある。寝てる?」
ロカの言う通り明らかに疲れている様子だ。
「おおおおお、ネビーさん。ロカさんの言う通りやつれています。大丈夫ですかと言いたくなりますがどう見ても大丈夫ではないです」
「ラルスさん、お久しぶりです。結納早々お孫さんにお世話になっています。ありがとうございます。可能なら少し二人で散歩してもよろしいでしょうか。休憩時間があってないようなものなので仕事の通り道に寄りました。そろそろ無理と思って」
「見えなくなるところまで消えて構いませんので好きなだけどうぞ」
「いや、あの。ラルスさんは見張りですよね? お孫さんと少し話したいだけです。お借りします。ロカ、次はお前と散歩だ。たけのこ料理を差し入れしてくれ。ご飯も煮物も食べたい」
「お父さん達を呼んでくる。皆顔を見たいよ」
「おお。ありがとう。親父達もやっぱりいるんだな。先にロカ達を見つけたんだ。三人で来たのか? って謎だった」
ネビーは背負いカゴをロカへ渡すと私が持っていたたけのこをそっと奪ってカゴへ入れた。
それで私に目配せをして歩き出したので祖父とロカに会釈をしてネビーへついていった。
「ウィオラさん。お久しぶりです」
「はい」
笑いかけられて涙が出そうになった。心配していてやはり疲労の濃い姿で悲しいし、予想外に会えて嬉しい。
「あっ、毛虫。避けましょう」
「また毛虫です!」
ひゃあ! 気持ち悪い!
慌てて毛虫を避けたらよろめいてネビーに軽くぶつかってしまった。
「おっと」
「すみません。ありがとうございます」
軽く支えられて嬉しいけど恥ずかしい。
「距離があったのにそんなに慌てなくても。あはは」
「初めての景色が楽しくてきょろきょろ歩いてソワソワして転びかけておじい様に落ち着きなさいと怒られました」
「たけのこ掘りが初めて。竹林に入るのが初めてと書いてありましたから楽しげかと思ったら楽しそうでなによりです。ロカと歌っているところから見ていました」
「えっ。まるで気がつかなかったです」
「たっけのこ。たっけのこって懐かしいです。ルル達が歌ってルカやリルがたけのこを持ってこう、踊ったり」
斜め上下上下とネビーが軽く動いた。
「大丈夫ですか? と言いたくなるけどはおじい様と同じ気持ちです。どう見てもお疲れです。お髭を剃る時間もないのですね」
「髭は時間が惜しいのと面倒で。風呂もそうで井戸水で烏の行水。どこでも寝られるから隙を見て寝ています。休憩まで長くても腹減り耐性あり。昔の貧乏生活が役に立ちまくりです。おかげでその分休めています」
これは休めてない。ネビーはあはは、と笑っている。
「明らかに痩せました。完食していると思っていたけど食べる時間がないですか? 量が足りないですか?」
「座って弁当を食べる時間が無い腹減り同僚におにぎりを渡す時はあるけど時間を見つけてしっかり食べています。おにぎりが足りない時は筆記帳に書きます」
「食べたいこともして欲しいこともなんでも書いて下さい」
「ウィオラさんは新生活だけど大丈夫ですか? 疲れてないですか?」
こんなに疲れているのに私のことを気遣えるなんて優しい。
「疲れていても楽をさせてくれるおじい様もネビーさんのご家族もいます。なので心強くて元気です。その分ネビーさんにあれこれ出来ますから遠慮しないで下さい」
「あまりにも帰れないから屯所に連続宿泊者は家族を小一時間特定の場所に招ける。会議でそういう話が出たから全力で婚約者もって主張して通ったのであとは担当煌護省の認可待ちです」
「行きます。仕事終わりから真夜中までは毎日大丈夫で日曜日は一日空いています。空けます。行って良い日が分かったら筆記帳に書いて下さい」
「……。その気持ちに甘えたいです。辞職は死罪令が無くても辞めないけど癒されないとやってらんねえ。誰だよこんなことにした奴は。ああ、ここにいた。もっと区民が住みやすくなるように大掃除をするんで助けて下さい」
へにゃっと笑いかけられて頭を撫でられて少し泣きそうになった。
「はい。甘えられたいです」
「俺も甘えられたいです。私のせいだと思わないのは無理な性格な気がするから俺や同僚を助けて下さい。すり抜けていた小悪党退治をして人が沢山助かるようにするんで」
「休憩時間に芸披露。道芸で資金を確保して皆さんに差し入れ。そんな風に出来ることをするのでこれはしても良いとなったら教えて下さい」
今のところあれこれ禁止で何も出来ない。差し入れくらい、も対応する事務官がもっと忙殺されるから禁止になっている。
屯所内に関係者以外は立ち入り禁止で荷物の受け取り者のみ特殊規定に則った方法で、みたいに通常の屯所や小屯所ではなくなっている。
「ありがとうございます。まあ、そうなる前に帰りたいです。せっかく婚約したのに。でも婚約してよかでした」
「はい。道場へ荷物を届けられるのも婚約者だからです」
屯所の門横に簡易小屋が出来てそこで身分証明書を見せて照会されると関係者札を渡されるので屯所に入れる。
屯所内に区民は基本的に出入り禁止。牢獄から人が失踪したから検証とか家族や友人知人の兵官が心配みたいに人が押し寄せて事務官が大変だから緊急措置。
何か相談したい者は最寄りの小屯所のみで対応となっている。本来は小屯所では受け付けないことを受け付けてくれるけど屯所の相談窓口は閉鎖中。
ネビーは幹部なのでその小屯所が機能しているか確認や監査に勤怠管理側。下っ端なので先輩にくっついていると筆記帳に書いてあった。
「その緊急会議の時も俺は婚約者もって主張しました。他にもいたから通りました。お見合いさせて下さいだったら延々と会えなかった。近いうちに小一時間会えるかもってだけで元気が出たのにこうして少しサボりです」
私もとても会いたかったからこうして会えて元気が出た。
一昨日、心配と寂しさで日の出と共に起きて張り切って朝食とお弁当を作って届けた後、出勤に間に合うまで結構長めに屯所の門近くで待った。
しかしネビーは屯所へ出入りはしなかった。
中に居るのか外に居るのか分からないし聞けない。事務官の仕事を増やさないように質問は受け付けない仕組みが出来ている。
怒られない程度の回数と思って三回道場へ行って、荷物の受け取りがないから心配だし会えなくて寂しさが増して落ち込んで帰宅して出勤。
昨日は逆に祖父を付き合わせて夜長めに屯所近くの酒処に居てちょこちょこ道場へ行って荷物確認。祖父に諭されて渋々帰った。だから余計に心配だった。
「私もこうしてお会いできて元気が出ました。見ていたように楽しんでいました。初めてなのでウキウキしたのもあるけどネビーさんに張り切ってたけのこ料理と思って」
「たけのこご飯のおむすびを期待しています。串焼きみたいに持って食べられるのも嬉しいし助かります」
それは落ち着いて食事をする時間がないって意味。
「ネビーさん! たけのこが竹になっています!」
衝撃的なものを発見して近寄って気になるのでぐるっと一周。高く伸びたたけのこの皮が剥けてその中から青竹が覗いている。
「たけのこの皮は着物だったのですか⁈」
「えっ。着物? どういうことですか?」
「このくらいのたけのこの頭に笹が生えていました。それもあってこう、花のように咲いて真ん中から竹が生えていくのだと思っていました。ずっとそう思っていました!」
手を使って想像を表現。剥けかけの皮を引っ張るとやはり中に竹があった。
たけのこはたけのこのまま伸びて竹に変身するなんてまるで想像していなかった。
「あはは。そうか。知らないとそうなるのか。かわゆい。そもそもその汚れてもよかな貧乏着物なのにキチッとしていて動きがお嬢様なのがまた」
「ほ、褒められて嬉しいです。着物はお母様がこういう時用のものを借してくれました」
照れて落ち着かないし、気になるのでたけのこの着物を脱がすことにする。
「上はダメです。弄ったり皮を剥くと曲がった竹になります」
頂上はどうなっているのか気になって背伸びして皮を剥こうとしたら怒られてしまった。
「曲がってしまうのですか」
「そっ。人と同じ。成長中に変な教え方や叩き方をするとダメになります」
ネビーは伸びたたけのこに背を向けて私を抱き寄せた。
ひゃあ、と思ったらキスされて、何度かされて、笑いかけられて頬にもキスされた。
「照れ照れ真っ赤。かわゆい。帰るというか仕事に戻らないと。次はロカと散歩って言うたけど無理でした。ウィオラさんとつい長々です」
「えっ。もうですか?」
「体感的にサボり過ぎです。コソッと行ってこいって言ってくれた竹藪の外で待っている先輩に怒られそう。でも寝てないから許されたいです。今朝の差し入れのおむすびを賄賂にします」
手を繋がれてその手を後ろへ回された。早歩きのネビーについていく。心臓がバクバクしていて喋れない。
私は戻る方向がイマイチ分からないのにネビーは分かるみたいでロカ達と合流。
ネビーは口々に心配される前に「わりと元気だ。引き続き助けて下さい! ロカ、竹林の外まで散歩してくれ」と笑顔で告げてロカと遠ざかっていった。
ここは出入り口からあまり遠くないところなので皆で待っていたらロカが戻ってきた。
「兄ちゃん、帰らないとか髭剃りとかの時間分寝てるし食べてるけど慣れない仕事で少し疲れてる、だって」
「うちの店もやたら兵官が来て必要あるとも思えない聞き取りをピリピリした顔でされるって大旦那さんが言うてた。俺ももう二回聴取された」
レオは顔をしかめてネビーが去った方向を見つめている。
「一回は作業場に来た分ですよね。ルカさんが若干絡まれて。龍神王様が連れていった奴の奥さんの友人の友人の娘の友人の妹の友人の姉の友人だからって」
「ジン、よく覚えてるね。私が忘れてるし今のも覚えられないわ」
「別の兵官は別の繋がりで俺のところへ来た。そんなのもう他人だって言うたら組織犯罪調査なので関係者を厳しく洗い出していくって。次は事情聴取って話すことは何もないのに」
「お父さん。ネビーに筆記帳で聞いたら彩り屋全員に事情聴取になってひくらしの家宅捜査までいくかもって書いてあった。日々掃除していたら埃はないはずなので堂々にって。朝読んでまだ言うてなかった」
私も読んだ。そんな風に調査捜査対象はどんどん広がっていく。
(約束の思い出飾りは今月はたけのこって言える。約束を守るために少し寄り道してくれたのかな)
私に会いたかった、という様子や口振りだったからそれも当然あるだろう。
唇を指で少しなぞって気合を入れてたけのこ掘りをしてたけのこ料理を作るぞ、と来た時以上に大決意。
この日の夜、お弁当とおむすびと洗濯済みのものを屯所へ置いて回収した私への連絡筆記帳にウィオラたけのこ、と書かれた竹の絵が描いてあった。私が説明した竹の成長図。私の想像に近いへたうまな絵で愛くるしい。
俺は曲がらないから頭を弄ってよかですとか、ロカに聞いたけどしゃがんで斧を振る練習はきっと変でかわゆかったから見たかったです、など嬉しいし笑ってしまった。
忙しくて疲れているから連絡は短めでお互い状況説明みたいになっていたので今回は雑談。
(恋すてふわが名はまだき立ちにけり、なんて言うけど俺は全く忍んでないです。親父に婚約指輪をせっついて下さい……。今日いただいたから明日からつけてもらえる)
私の実家から帰ってきた翌日にレオに二人で頼んだ品物。私の左手薬指にはネビーにはめて欲しいけどいつ会えるか分からないのでもう自分でつけた。
意匠の希望は特にないので指の大きさを測ってもらってあとはレオ任せ。
結果、輪っかに一部編み込んだものが結び目のようになっていて着色もしてある。結び目のようにしたのは縁結び指輪だから。レオはそう言ってくれた。
しかもその結びは桜っぽくて名付けて桜梅指輪とレオはそう言ってくれた。
梅結びみたいだな、と思ったけどやはりそうで固い絆や長寿などの意味が込められている結び方。
色をつけられるならとレオに二人で頼んだ時にネビーの羽織りに因んでと告げたけど本当は運命の糸の色。
どうかずっと切らないで太くて固い縁になって、たけのこから竹に変身するように婚約者から夫婦になれますように。




