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お見合い結婚します「紫電一閃乙女物語」  作者: あやぺん
本編

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 女学校の講師も私が励んで下地を作ればガイがツテで贔屓(ひいき)支援をしてくれると先程そう言ってくれた。

 ネビーは私のためなら家族と少し離れて東地区で働いても良いと言ってくれてそれはガイの為にもなる。


「私達は寂しいけどええね。いつも半分以上は譲らない兄ちゃんらしい。家族から絶対離れないくらいだっけどウィオラさんの家族も家族って考えたいってことなんだね。兄ちゃんはどこでも暮らせるよ。空き部屋管理とかお世話係が必要なら私は自分が出来る範囲で手伝うよ」


「寂しいけど事情があって一緒に過ごせなかったウィオラさんのご家族も寂しいもんね。私も旦那さん達に頭を下げて春風亭で下っ端仕事とかしながらお世話係とかする。南地区の空き部屋管理でもええし、それならお母さん達も皆する」


「ありがとうルル、レイ。親父達が大きな家は今さら疲れそうとずっと言うてるし思ったより稼ぎが増えていってるから複数家を建てるとか仮住まいを建てるのもよかかなと思ってる。引っ越したければ売ればいいというか売れそうな場所や家を大工達に相談出来る。お前らが結婚するとか仕事が固定されるまでは家を建てるのは乗り気じゃないのもある」


「兄ちゃん、私達の家は建てなくてええからね。前から言ってるけど」


「俺は夫婦2人の家はあまり。賑やかな生活にすっかり慣れてるからだ。俺が家事が下手なのもあるから母ちゃんとかお前らをこき使いたい。知らない人を雇うよりお金を払って家族の方。ウィオラさんは賑やかなのはよかだと言うてくれたし半分くらいは働きたいそうだから余計にそう思う」


「まぁそれは知ってる。ウィオラさんもなんだ。個人にもなりたいけど家事食事は一緒がええ。並びで住みたいのは皆一緒だよね。まとめての方が楽だもん。だから長屋富豪してるんだし。離れたい時もあるからそれぞれの部屋とか家があると便利」


 ここに私も参加して良いのかな、と感じた時に3人が私に注目して唇を結んだ。


「半年ごとや1年ごとなどを2人とも希望したらきっとこの家に住まわせてくれる気がします。生まれたばかりの時の子育ては実家が良いけど側に居てもらえたら嬉しいです」


 瞬間、ネビーがむせた。けほけほと小さな咳をしてお顔が少し赤め。それで口元を手で隠した。

 ……子育てと口にしたから子どもが欲しいということになり、つまりそれで照れた?

 子育て子どもの話は気が早いけどネビーも子どもが通学って口にしたよね。

 自分なら平気だけど私が言うと違うの?

 わりと無意識に話したのでこのような反応をされたら私も意識してしまってはずかし!


「あの、その、私も輝き屋の支援をしたいです! 私は芸妓から離れられる気がしません。それ、それから、それからおじい様が南1区花街に住まわれていたのなら長屋暮らしも検討してみて下さい。1人暮らしでも私はあの長屋暮らしをしたいです」

「ああ、それは考えていた。他の家族は動けないけど私はそうでもない。この通り今のところ元気だしな。プライルドがこの調子なので必要ないけど見張り役。離れていたウィオラと長く過ごせるしその長屋も気になる。ご家族やルーベル家の方々も知りたい」


 祖父は私からガイ達へ顔を移動して軽く頭を下げた。


「環境が落ち着けば我が家に同居はいつでも歓迎です。元々の結納契約関係を基本として今の半年ごとに両者の生活を行うことなど条件を修正。まずは孫娘から。途中で何も問題なければ半年後に祝言日や住居などを本格的に検討開始。まずはそれでどうでしょうか。ウィオラ、構わないか?」


「……私は長屋住まいを半年過ごせたらきっとその後もと思えます。祝言日に新居生活ではなくて長屋で構わないので祝言予定日は可能なら出会った日が良いです。相談して変更可能なのは前提として」


 祝言してもネビー相手なら「まだ無理です」と言えるし逆かもしれない。

 家が建ってからみたいになって祝言日がどんどん遅くなるのは今の時点だとかなり嫌。


「そうか。だそうです。そちらはいかがでしょうか?」

「息子に任せます」


「はい。どう考えてもどう見ても祝言したからといって気軽に触れませんのでいつでもよかです。新居建設や引っ越しに挙式も同居も全て祝言後に出来ます。覚悟は出来たぞと思ってくれたら自分の両親を連れてエドゥアールへ新婚旅行。この件はウィオラさんは了承してくれています。そちらのご家族が増えるのは構いません。我が家も増えるかもしれません」


「新婚旅行の話なんてもうしているの」


 母にしげしげと見つめられてしまった。ずっと恥ずかしいけどこれはさらに恥ずかしい!


「つまりウィオラお嬢様が了承したらすぐに祝言したいってことか。ルルさんが口にしたようにまるでロイだな。母親の理想通り平均的な結婚をするから縁談は全て時期がくるまで断ります。からのいきなり結婚したいと大騒ぎしてお申し込みから1週間後に結納して3ヶ月で祝言。気迫に押された俺も悪いが今思うとあれは人(さら)いだ」


「1週間で結納の勢いだからロイさんと同じですね。姉ちゃん、結納後にあっという間に花嫁修行にいってそれっきりでした。理解出来ていなかったのもあってうんと寂しかったです」

「私達姉ちゃんはどこって大暴れしたよね。ケロッと忘れたりもしてたけど」


 それは確かに人(さら)いみたい。


「それを知っているというかそこそこ苦労したので譲れないと思うまでは東地区から完全には(さら)いません。俺も逆にずっとこちらとはまだ言えません」

「今思えばお父さんやお母さんもメソメソしんみりしたり働きまくってたから兄ちゃんとルカ姉ちゃんが親状態だったよね。ありがとう」

「勉強を教えてくれたり叱ってくれたり遊んでくれたりルーベルさん家とやり取りしてくれたり……。皆の学費にもう貧乏じゃないから旅行もだし送り迎えも……。兄ちゃんは兄なのにずっと私達の親で苦労してるよ……」

「仕事もすぐ他の人に休みを譲って、怪我した人がいるから自分だけ旅行に来られなかったとか兄ちゃんはいつも自分のことは後回し……」

「いや貯金を優先して親父の補助と俺が食い潰した分を返してるだけだからルルもレイも泣くなよ。今はやめてくれ。俺は俺中心で生きてる。伝え方が悪かったんだろうから俺が悪かった」


 よしよし、とネビーは涙目になったルルとレイの頭を軽く撫でた。羨ましい。

 それにしてもネビーは本当にちび親というかレイの言う通り親みたい。この話を聞いたらルルが酔って泣いた意味をより理解出来る。


「私達のせいかと思ったら単にお嬢様を選り好みでした」


「よく考えたら絶対に嫌なことはしないし喚いても半分以上譲りません。次の食事会分を支払うからこのお店の予算は無いので出さないみたいにはっきり言います。お嬢様達に一方的な条件を突きつけてさらに袖にされたいからと追加と拒否したい時は結構酷いです」


「周りに人が集まるし誘われる事も沢山あるけど気が向いたらって言うし、自分から会いに行く人は少なくて後から誘われても会いたい人を優先して容赦なく先の誘いを断ります」


 そうなんだ。それでも好かれるなら断り方が上手いのだろう。


「兄は意外に薄情です! ウィオラさんのことはうんと優先したいみたいで嬉しいです!」


「いきなり別居でも良くて挙式も後で良い祝言は意味不明です。でもとにかくウィオラさんが良いみたいなので祝言時期は少し考えてもらえたら欲しいです」


 既にわりと知っている話が多かったな。

 本人発信もあるけどルル達は私へ情報漏洩したように私の家族にもそうするみたい。

 少しメソメソしながら笑っているから素だろう。特にネビーと同じく正直者のレイ。


「性格はかなり違うのになんだか時々ロイさんにそっくりなところを見つけます。女性にもう祝言したいですと言わせるものではないので3ヶ月ごとに本人に確認したいです」


 祝言しても別居で構わなくて挙式は後で良い。祝言しても私に手を出すのは私が覚悟を決めた時。

 それは祝言なの? 


「そもそもそれは祝言なのですか?」


「お互いあまり家を背負っていないので結納破棄も離縁もあまり変わらないのではないかと思いました。1年後に祝言してまだ恥ずかしくて手も繋げませんだったら結納中と同じなのでイマイチ違いを見出せません。家はウィオラさんの希望を沢山入れたいので急げません。この歳まで地蔵できたので気が変わる気がしません」


 そうかな。言われてみたら私達の場合の結納破棄と離縁の差はなんだろう。

 新居は後から疑惑でお互いの地区で交代で住んでみようだから実家に居場所がなくなる訳では無い。特に私。私はこの家に帰れる限り仕事を失うことはないので離縁されたからといって生活には困らない。ネビーも同じく今の地位評価にガイのツテがあればどこででも働ける。

 気が合わなくて結納破棄と気が合わなくて離縁の差は何?

 ネビーの肩書きなら離婚歴なんて無傷みたいなもので私も家柄家業的にそんなに。

 ちょこちょこ聞く結納中に我慢出来ずだったら……私はまたそういう発想。本当にキスとか手を出されたいんだな……。


「兄ちゃんそれ単に手を出しても良い雰囲気があったら即座にそうしたいってだけでしょう! かめ屋の1番良い部屋を取るとかすぐエドゥアールへ行くとかそういうことをしてさ! 絶対そうだ! それしかないもん! 結納で構わないのにわざわざ先に祝言が良いって、籍だけはすぐ入れておきたいって絶対にそうだ! 今気がついた!」


 ルルのこの叫びに私は全身を熱くした。私の頭に少し過ったこと。そういうこと。

 あらあら、みたいに母や姉が笑ったけど父は物凄い不機嫌さ。祖父と義兄は愉快そうでウェイスはなぜかふむふむ、と頷いている。

 ネビーは無言でルルから顔を背けた。これは肯定の意味だろう。彼の耳は少し赤い。

 結納中は未婚で子どもが出来るのは常識的ではないから手を出すつもりがないけど祝言してしまえば関係ないって考えかな。

 理性や常識優先の人だからゆるゆるの人もいる結納中でもそういうことはしないってことだろう。

 子どもが出来たから祝言決定や時期を早めたよりももう祝言していましたの方が私も気持ち的にその方が……私はやっぱり早く手を出されたいの⁈

 頭は撫でられたいし手繋ぎもまた挑戦したいというか早くまたされたい。キスも試しに挑戦されたい。つまり……手を出されたいだ。

 今日の格好良さが凄まじくて惚れ惚れしているからかな。

 その先はとんでもなく無理というか既にカチンと固まり気味。


「リル姉ちゃん達がそうだから、とりあえず祝言して最初は散歩やお出掛けから始めたから真似しようと思ってるんだ! 披露宴で初めて喋ったのにおしどり夫婦だから自分もそうかもって! お父さん達に怒られるよ! 運命的な日に祝言したいって素敵な夢を無視してこれは却下! 当たり前でしょう!」


 運命的な日に祝言。それは憧れ。それは憧れる!


「……」


 ネビーは無言でさらにルルに背を向けた。


「そもそもロイさんの真似でも挙式は先でしょう! 今日明日祝言したいくらいの勢いなんでしょう! 絶対にそうだ! ロイさんだって3ヶ月は待って先に挙式したでしょう! これは非常識! あっ、だから3ヶ月ごとって言うたんだ!」


「……一応そのくらいはと思って」


 ネビーはこちらにほぼ背中を向けた状態だけどチラッと拗ね顔が見える。

 彼は今すぐくらいの気持ち。私は1年後に気が合えばという風に伝わっているからそれで拗ね? 


「面倒者ですが地道にコツコツしっかりとした事前練習をお願いします。それで3ヶ月ごとに旅行出来るかご確認下さい。3ヶ月ごとの出会った日と同じ第3土曜日の前に。それで前向きなお返事の場合にその土曜日に書類上入籍して先に旅行。祝言が先でも後でも1年後の運命の土曜日に挙式が良いです。遅くてもその日には入籍でお願いします」


 口にしてから「はっ!」として両手で顔を覆った。大勢の前で私は何を言っているのだろう。


「えっ? コツコツにしっかり? それなら最短3ヶ月でなくてもたの……」


 ネビーは満面の笑顔を浮かべてこちらを向いた瞬間、彼は視線を彷徨わせて父を見て青ざめた。

 たの、は楽しいな気がする。その台詞を口にせずに止まってくれて良かった。


「おい。結納中に何をするつもりだ」


 いくら娘が可愛くても、特に何年も離れていて心配をかけていたからといっても、恩人相手に失礼だからせめて敬語で尋ねて欲しい。

 ネビーは気にしなそうでガイは……愉快そうに笑ってる!


「結納の常識の範囲内のことです。よく考えてみたらそれは……常識の範囲内です」


 一瞬へらっとして即座にキリッとしたネビーの今の言葉と表情で何が言いたいか分かった。

 私は彼に見張り付きのお出掛けは子どもが先に出来たりしたら世間体ってことなので、という話をした。

 先程私はコツコツしっかりなんて口を滑らせたというか本音を漏らした。つまりそういうこと。

 結納中の常識は私が嫌がらなくて最後まででなければ全て。

 普通は2人でコソコソそうなるとかなのに、事前にそういう事もありますみたいな話をしてしまって、こんなのとんでもなく恥ずかしい状況!


「その常識の範囲を説明しろ。こちらと意見の相違があるかもしれない」

「お互い嫌ではないことです。例えば近年は婚約したり夫婦なら支えるなどの必要が無くても出掛けている間は手を繋ぐ方が常識、お互いを大事にしているみたいなことです。それは結納前にはしません。祝言前に子どもは非常識です」


 そうっとネビーの視線が父から壁の方に移動。嘘はついていないけどこの動揺というか目線は父的には悪印象だろう。

 しかしその父こそこのような場でやめて欲しい。裏でネビーにコソコソ言うとか配慮して! かつて自分も通った癖に!

 そのネビーにもこの流れは回避して欲しかったと言いたいけど私も私で浮かれなのか口を滑らせたから非難できない。


「白々しい。気軽に触れないってお互い分かっているからおかしい。娘に何をした。そもそもそれが気になっている。何もしていないのに付き添い付きで出掛けてすみませんとはなんなのか。仕事とはいえ出会いが花街なのも説明されても気に食わない。娘に何をしたか全部吐け! 話はそれからだ!」


 こんなのやめて欲しい……。

 ドスのきいた怖いお声。ネビーは気まずそうに頭を下げて「全部吐きます」と口にした。怒って良いと思うのに怒らないみたい。

「全部吐きます」だなんてあけすけないネビーの場合だと辱められそうな予感。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます [一言] 娘がどんなにいい男を連れてきても重箱の隅を突いて反対するお父さん、ロイさんの時と反対ですね。 ネビーとウィオラさんの内緒素敵思い出が白日に!?となると……
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