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お見合い結婚します「紫電一閃乙女物語」  作者: あやぺん
本編

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 不穏な雰囲気なのでどのくらい経過したか不明。半刻も経ってないだろうという時に農村地区担当の兵官、馬に乗った警兵2名が来た道の方から到着してほぼ同時に前方からもう1名も来てくれた。


「やたら野菜を持っているやつがいたので念の為他の奴が追いかけています。逃げるのはおかしいので。今のところ被害者は見つけていないのでそれも探しています」

「茶摘み作業の応援者を狙った賊が出没しているのでそいつらかもしれません。他の道も警戒中ですけどあっちにでたらこっちと狡賢いか別集団なのか」

「そいつら弓は使っていますか? 他の飛び道具も」

「この辺りで最近は今のところないです。女性狙いで襲いかかって男を先に集中攻撃して誘拐。おか……」


 警兵はチラッと私達を見た。


「満足したらそこらに放置です」

「昼間からですか? 見通しも良いし集まったり男を増やしたりしていますよね?」

「昼間はたまに。危険なのは帰宅時です。夜まで励まれた疲れた方々を狙うから泊まって帰るとか勧めています」

「応援者達は金銭は持っていないので交換や差し入れする野菜などをついでに強奪ってところです」

「連れを馬に乗せて歩いても問題なさそうですね。まあ念のため歩かせますけど」

「見回りついでに森を抜けるまで護衛します」

「1名だけお願いします。左右に人が欲しいので。警備が薄くなるのは良くないし俺ともう1人で問題ないと思います」


 それで警兵シダスが護衛についてくれることになった。2人は馬を引いて外側。私達は馬と馬の間。


「兄ちゃん頼もしいね。警兵さん達もだけど」

「煙を出してそんなに経たないで来てくれたから頼もしいよね」

「発煙筒って農家の人達には配ったり売れないのかな?」

「材料とかよく分からないけど農家が被害に合うと私達が困るからどこからか税金を増やして何かしてって言おうよ」

「自分もネビー君も出勤したら視察報告書を作成するから2人とも安心してくれ」


 ルルとレイがガイを褒め称えてガイはデレデレ顔。私も少し参加。ここまでの道のりでも感じているけど自分の本当の娘だ、みたいに可愛いみたい。

 自慢の養子の妹達で性格もどこか似ていて美女だから懐かれたらそりゃあ悪い気はしないだろう。

 こうして誰かに襲われることなく森を抜けた。すぐ近くは村でここでシダスとお別れ。

 青い風車のある家へ行きネビーだけが挨拶に行ってしばらくして全員縁側へ迎えられた。

 休憩場所と厠を借してくれるそうでお水を出してくれた。

 

「手紙を読んだら護送仕事の途中なのに仕事を手伝ったんだってな。そんな警兵は初めて見たし聞いた。そこらの警兵と違う派手というか格好つけなこの羽織の警兵をたまに見るけどふんぞり返っていたり気に食わん。でもあんただとこの羽織は似合いに見える」

「ありがとうございます。旅行みたいなゆるゆる護送なので手伝えました。農村区警備をしながらは出来ません。大事な農民を守れないと困ります。大勢を気にかけるのと4人を安全に移動させるのでは違います」

「あたい達なら王都の通路を旅するのに。たまに6区へ買い物に行くけどうんと楽しい。いつも思うけど農村地区を見たいなんてお金持ちさん達の感覚は分からないや」

「この辺りの農村地区は王都ですよ」


 ルルは縁側から立って「闘う用」と途中で拾った棒で土に王都の絵を描いて今いるこの家の女性3人を手招きして見せた。

 お昼だからと帰宅した3人の嫁の1人はルルくらい若くてもう2人はパッと見30代。


「形は忘れたけどこんな風に砦があってそこまでは全部煌国王都です。だからここも王都。王都の外だと作物は徐々に育ちにくくなると聞きました」

「不作とか滅多にないけどそうなんだ。へえ。砦って何? この漢字が砦でこっちは何?」

「砦はこの国を守ってくれる大きな壁と兵官達のための建物がくっついたものです。この漢字は王都です」

「私はひらがなしか書けない。というかひらがなは覚えた。書き置きとかお手伝い時に何か言われたら書いておくためにさ。他は興味なかったけどこの絵を見たら気になる」

「私は12歳になる年から読み書きを始めてその時勉強は何歳からでも出来ますよって先生に言われました」

「毎日忙しいし空き時間はゴロゴロとか遊んじゃうけどけどもう少し勉強してみるかな」


 ルルと若い嫁は話し続けて残り2人は縁側へ戻ってきた。私とレイに「皇女様の話とか知らない?」と質問。勉強よりも噂話が良いらしい。

 私達は今朝買ったおにぎりをここで食べさせてもらうことにして食事を開始。

 時計はないし時告げ鐘はないけど「太陽の高さやお腹の減り具合でもうお昼時」とネビーが言ったのでそうなのだろう。

 私は興味あるかな? と皇居の恋愛はどう始まるのか少し話してみた。食いつかれたのでそのまま有名縁談話に龍歌を少し教えた。


「分かんないことなのに分かりやすくて面白い。ずっと教えて欲しいなあ。寺子屋のよぼぼ先生より先生だ。そろそろ若いの来るかなあ」

「お金持ちさん達は何の家の人達?」

「そちらのたぬき美人は琴を教える家の親玉で俺と結納をするので父と東地区にある実家挨拶に行く途中です。美人の妹2人はおまけです。父は煌護省という兵官を取り締まったり助ける役人で俺は南地区のてっぺんの兵官の1人なので旅費を仕事先から横領です。視察なので報告とかしますし東地区の兵官と情報交換したり少し勤務します。なので警兵への不満や感謝や威張り散らしの地区兵官は俺と父に教えて下さい」


 ネビーは少し仕事をするつもりみたい。


「結納ってお金持ちがする祝言の約束だよね? 何だいあんた。自分の恋仲を美人だなんて自慢して。確かにこちらのお嬢さんはたぬきだね。琴を教える家の親玉ってスドラ家となんか関係ある? たまに東地区へ行くし祭りの時に東地区から演奏する人が来る時がある」

「スドラ家って何してるんですか?」

「奉納演奏をするおばあとかに音楽を色々教えてくれる家だね。働くのが大変になってきたらそういう仕事をするだろう? 踊ったりは働くのが早い子ども達だし後は体力のある若いやつは何でも掛け持つけどさ」


 そうなんだ。農村地区の村の暮らしを私は知らない。うんうん、とネビーは頷いていてレイは「へぇ」と口にした。


「彼女の家はスドラ家を大きくした家なので何か関係あるかもしれません。ウィオラさん何か知っていますか?」

「門下生には農村地区の奉納演奏者もいますのでもしかしたら位置関係からして我が家と関係あるかもしれまん。関係あれば寄付先かと」


 この国では稼げば稼ぐ程納税や寄付の義務が増えていく。他の国はどうなのか知らない。寄付先は事業関係のところや農家組合や漁家組合のどこかで役所から指定される。


「寄付してくれるくらいのお金持ちさん達かい」

「いや彼女の家だけです。ああ。俺は少しだけ。でも兵官関係にです。警兵や兵官に不満はないですか?」

「なんだその話くらいしてくれれば味噌汁くらい出すのにさあ。向こうの家で荷運びをしてくれた時点で作るんだけどね。もう少し待っててな。そりゃあ不満はあるさ。そういやさっきもなんか言ってたね」

「そうそう。今下っ端嫁が作ってる。不満は私らより男達が知ってるというかあるよ。愚痴とか聞かされるから」

「それなら父が活躍します。出発するまでなら話を聞きます。味噌汁が嬉しいんで薪割りとかあればバシバシしますよ。力が取り柄なんで。それかまた荷運び」


 あはは、と笑いながらネビーはまたしてもどうぞやりますよと縁側から去った。バシバシ薪割りをして蔵から台所近くへ小麦袋運びと水汲みをするそうだ。

 レイとガイとしばらく雑談をしていたらお味噌汁登場。焼いた塩振り青豆も出してくれた。それで1度ネビーが戻ってきた。

 お味噌汁は野菜が沢山入っていて滅多に食べないお肉入り。衝撃的というか悲しいことに兎肉だそうだ。

 愛くるしいのに食べられてしまったというか私も食べる。命は巡り巡るものなので感謝していただく。食べてみたら美味しくてそれもなんだか衝撃的。

 肉料理は力仕事の人優先で安く売られて私みたいな者は高値でしか買えないし兎肉なんて聞いたことすらなかった。

 レイが「このお味噌は美味しい」と感激して豆やら何やら色々質問をしてお味噌を少しお裾分けされた。


「この青豆も味がええです」

「俺もよかだと思う」

「ええとかよかってよすって意味?」

「私達の近所ではええって使って兄ちゃんは北区地区言葉をよく使う義兄の口調がうつりました。義兄は北区旅行でうつったそうです」


 そうなんだ。あまり気にしていなかった。そんな風に食事をして朝は川で歯磨きだったけど家の中で歯磨きを出来た。

 この家の人達も昼食時間らしく家の人達がどんどん戻ってきて同じような会話が繰り返されて気がつけば手伝いを終えたネビーは子ども達とちゃんばらを開始。

 見ていたけどなぜこうなったのかよく分からない。人数的にこの家の子だけではない。きちんと整列してネビーに次々と襲いかかってシュッと枝を払われている。


「おお、今のは筋がよかだ!」

「次は俺だ!」

「遊びで目を狙うな!」

「ひっ!」

「突きは危ないからこうやって振れ。おお、沢山働いてそうな腕だな! さてはお前は家族の自慢だな!」


 怒る時はビシッと怒るけどすぐ褒めて1人に長く構わないでひょいひょい流れ作業みたいに次の子だけど皆楽しそう。

 弱そうというか無理矢理誘われたか仲間外れが嫌そうな子には「お前はなんか賢そうだな! ルルを手伝ってくれ!」と近くの土で女の子達にひらがなを教え中のルルの方へ誘導したり「喉が渇いたから水が欲しい。頼む」みたいにやんわり追い出し。

 そんな風にネビーは男の子達を中心に遊んでいて、ルルは私の近くで子ども達にひらがなを教えていて、レイは台所へ招かれたというか乗り込んで不在。

 私は「琴を持ってくるから弾いて」ということで縁側で待機中。

 ガイは私の背後にある部屋で「警兵を増やせないのか?」とか男性達に取り囲まれて何やら書を書いている。


 私達は東地区への荷運びのために走る牛車に乗せてもらえることになった。いつの間にかガイとネビーが話を付けていたみたい。そこへ琴が運ばれてきてスドラ家の当主妻に紹介された。

 何となく予想していたけど実家に関係あった。

 スドラ家は門下生の家。2人の娘が分家で指導者としての修行中。

 それとなく聞いてみた私の噂は「北地区で修行中」と知られていたのでのらくら話してそそくさと演奏を開始。私は北地区にいるなんて噂話もあるのか。

 子どももいるし牛車のお礼も兼ねて踊りはないけど初獅子踊りを琴で演奏して歌をつけた。


「今日からこちらの村は縁起良し!」


 皆楽しげで子ども達は踊ってくれたので大満足。それで私達は牛車5台と共に村を発った。

 牛車1台の後ろにガイ、ルル、レイが座って私はネビーと馬に2人乗り。

 演奏途中からひらりひらひらと桜の花びらが空を舞っていたけど増えていく。

 見慣れない農村地区の世界に桜の花びらが踊っていて空には丸い雲がたくさん。幻想的とはこのこと。


「ネビーさんが漁師さん達に好かれた理由が分かりました」

「何でですか? 何にもしてないと思うんですけど」


 今日出会った農民達にも好かれたと思う。それでルルとレイもネビーと似ているところがあるから彼女達、いやネビーの家族皆があちこちで好かれている。

 逆に羨ましいから妬まれ嫌われ踏みつけられたこともあっただろう。今も。昔なら貧乏とか今なら成り上がりとか難癖をつける人がいるはず。

 妬ましくて毒を撒くのにより煌めくと言われそうなのは彼等もだと思う。


「荷物持ちや薪割りに子どもと遊んだり色々していましたよ」

「ウィオラさんもお礼にすこぶるよかな演奏をしました。ガイさんが意見書らしきものを書いていたので俺のおかげって思われたら棚からぼた餅。意見を文にまとめるのが少し苦手なのでガイさんに押し付けです。肉料理を食べられるとはこの経路にして良かった。景色も楽しいし」


 私やガイが何かするようにごくごく自然に話を振ったのはネビーだ。するようにしなさい、という感じでもなく自然としかいいようがない。


「はい。ありがとうございます」


 今朝は格好良いところ、今日は長所を沢山見られていて昨日より私の恋心はつのり、積もり中。

 桜の花びらがさらに増えて吹雪みたいになった。桜吹雪(おうふぶき)を弾く際は今後この景色を思い出したい。

 花びらがきらり、きらきらと光って見える。


「そういえば。コホン。大事なことを言うていませんでした」

「何でしょうか?」

「この光景は俺としてはうんと綺麗ですけどどう思いますか?」

「私もそう思います。次に桜吹雪(おうふぶき)を弾く際……」


 乱暴にではなくてそっとだったけど何も言われずに垂れ衣笠を外されたので驚きと少し嫌でネビーの方へ顔を向けた。

 でも優しげな微笑みを見たら私もヘラッと笑ってしまった。顔を近づけられて思わずギュッと目を閉じる。

 キス⁈

 広々とした場所だけど!

 桜の花びらだらけだけど多分ルル達から見えているけど!

 いや見えないかもしれない。私は横向きで座っているからネビーの方を見たらというか手でそうされたら見上げて喋っているみたいになる。

「やめてください」という台詞も感情も湧かない。きっと違う。多分違う。結納前にはそれはしない。

 ……この景色だけどされないのか。


 頬に肌が少し触れた。唇ではないと思って目を開いたら多分ほっぺた。今は肌は触れていない。

 彼の顔が真横にある。


「好きです」


 耳元で囁かれて放心。

 それで私は垂れ衣笠を頭に乗せられた。最初は何でも綺麗なところってこういうこと……。

 胸が破裂しそう。恋に狂って死にそうなくらい辛くなるという話もあるけど逆に心臓が働き過ぎて止まりそうとかこんなに嬉しいが止まらないこともあるのか。

 ネビーは「よおし」と言って桜の花をパシッと捕まえて私に贈ってくれた。花びらではなくてたまたま舞っていた花そのもの。まるで宝石みたいだと感じた。

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