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お見合い結婚します「紫電一閃乙女物語」  作者: あやぺん
本編

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28/137

19

 海から帰宅でかめ屋を目指し中。行きの街並みをなんとなく覚えているから間も無くだろう。

 ネビーの背負いカゴの中にはレイに頼まれた魚と貝にツツボタイ。

 かめ屋で頼まれた珍しい魚として顔大魚——とネビーが言うから名前を忘れた——に毛むじゃらカニとイシカニをもらった。どれも買っていない。全部貰い物。

 かめ屋に到着してネビーが女将に声を掛けたら店の裏口近くで旦那と話すことになった。表でご挨拶をしてカゴを見せたら裏へ案内である。


「6年ぶりの毛むじゃらカニだ。今度は君か。同じ相手に売らないと聞いたことがあるけどリルさんではなくて君だから売ってくれたのか?」


 毛むじゃらカニは縁起カニで怖いバチあたりがあるから漁師によって隠されているけど理由があると売ってくれるカニ。ネビーに「後は忘れたからリルに聞いて下さい」と言われている。


「ウィオラさんへです。大漁になる証の変な虹生物が彼女の演奏か歌か踊りで現れたからくれました。カゴの中身は全部無料。頼まれた珍しい魚はこの顔大魚です。少し長かったので名前を忘れました。滅多に獲れなくて美味いと言うていました」


 はい、とネビーはカゴから魚を出して旦那へ差し出した。まだ生きているので動いて私は後退り。


「おお銀目オオタダラウストだ! かなりの高級魚なのに無料って……。変な虹生物とは海の大副神の遣いのことか。それは漁師の中は大吉兆だ。本人もだけど妹も恋人も漁師に好かれるとはとんでもない男だな。何でまた彼女は演奏したり歌ったり踊ることになったんだい?」


 ネビーが軽く説明すると旦那にしげしげと見つめられた。何者? と顔に描いてある。


「ネビー君の恋人は何者なんだい?」

「東地区の琴門宗家のお嬢さんです。家出娘だから出会えました」

「……。それは色々気になるけど今日は忙しいので今度テルルさんかリルさんに聞いておく。ウィオラさん。今度1泊して良いから受付部屋で同じことをしていただけませんか? 日にちはいつでも。出来れば本日。大吉兆が出た日に同じことをこの店でしていただいたら繁盛しそうです。もちろん1泊は安部屋ではありませんし食事付きです」

「繁盛してるじゃないですか。まあウィオラさんが良ければ旅館で1人贅沢はよかかもしれませんけど」

「まさか。2人でどうぞ」


 私とネビーはほぼ同時にむせた。旦那は愉快そうに笑っている。


「しゅ、祝言前です! 俺が泊まる訳ないじゃないですか! 彼女1人です!」

「冗談です。まあ別にネビー君が手を出さなければ良いだけかと。宿泊は祝言後まで取っておいて良いですからね」

「2泊お願いします。祝言前と後。本当に律儀な方か知りたいです。違ったら投げて逃げます。芸を披露するのでその後に決めて下さい。今日にします」


 ゲホゲホとネビーが咳き込む。私はまたしても何を言ってるんだか。素敵な部屋で初めてのキスをされたら嬉しいなと思ったせいだ。キスはまだ無理なので手繋ぎかな。


「彼を投げて逃げるのですか? 投げられますか?」

「一応護身系の合気道を(たしな)んでいました。優しいから逃してくれると思います」

「真っ赤な顔になってその顔を隠して震える女性が男と泊まるなんて無理に決まっています!」


 全くもってネビーの指摘通りである。


「2間ある部屋にしましょうか」

「冗談を続けないで下さい!」

「ネビー君。顔に嬉しいって描いてあるぞ」

「当たり前です!」

「お、おお。潔いな。当たり前なのか」

「恥ずかしいですけど違いますって言うて誤解されたら困ります。色々と口説き中です」

「どう見ても口説き落とした後みたいだけどまぁ口説いている最中なら頑張れ。是非この店で宴席をお願いします」


 私ももう口説き落とされた後だと思うけどこれ以上どうなれということなのだろうか。分かりやすいのに分からない人。


「そのつもりなのでお遣いしてきました」


 こうしてかめ屋の女将の娘さんの着物に着替えさせてもらって化粧直し。受付部屋の1箇所に赤い絨毯が敷かれて琴と三味線が準備されてそこで演奏。

 積恋歌(つもるこいうた)は琴で演奏と歌。初華蝶行列は三味線と歌と踊り。海蛇王子と歌姫から1曲も三味線と歌と踊り。

 せっかく春なので桜吹雪(おうふぶき)は少し疲れたから琴で演奏のみ。

 宿泊客なのか料亭客なのか分からないけどどんどん増えて大勢に披露になったけど拍手喝采だったので大満足。

 着替え後に応接室で旦那と女将とネビーとお話ししてかめ屋を後にした。


「ウィオラさん、本当に2泊獲得しましたね。かめ屋でも働くなんてお体持ちますか?」

「女学校の勤務日を減らせるか聞いてから正式にお返事なので平気です。土曜日半日は趣味会の補助なのでそこを無くして土日休みにしようかと。教えるだけでは満足しなそうだと思ったので渡りに船です」


 繁盛している旅館で芸妓とは万々歳。学校帰りに来られる日。遠い代わりにお風呂と夕食付き。

 芸妓日の予告はしない。当日来られなくなっても良いという優遇条件。休み前の金曜日の夜、週1回が今の目標。


「コホン。それでその本気ですか? 明日泊まるって。俺も。明日と明後日は休みって言うたことを覚えていたんですね」

「律儀な方か知りたいです……」

「その様子だとどう見ても……うーん」

「違ったら投げ飛ばして逃亡します」

「まあそうならないようには出来ますけど……まぁ、ほら。うん」


 ネビーはネビーで断らないっぽい。チラリと横目で確認したら困り照れ笑いみたいなお顔。それで唸っている。


「それにまあ、その、鉄は熱いうちにとも言いますし指で触る練習をするなら素敵な部屋でが良いなぁなんて……」


 自分で提案して誘って照れて両手で顔を覆う私はアホ娘。

 ロメルとジュリーの逢瀬から濡れ場になる場面を見ながら「舞台だからサクサク話を進めますよね」という冷めた感想を抱いていたのに掌返し。


「密室で触らないで下さい。いや触られたいけど拷問です。素敵な部屋でか。うーん。いやいや。うーん」

「それなら触りませ……触ります。つつくくらいです」


 私はそれで限界。彼の方から手を繋いでくれるとかそっと触れるだけのキスをされるとかあれば良いのに。……キス⁈ やはりそれは無理!


「いやいやいやいやいや。まあいいか。固まって倒れそうになるから押し倒そうとか組み敷こうとする前に我に返るし。いやダメだろう。それが常識……。確かに手を出さなきゃ良い訳で……」


 似たようなやり取りを繰り返してルーベル家に到着。かめ屋周辺は繁華街。長屋周辺は下街。この辺りは実家周辺に少し似た雰囲気。1つ1つのお屋敷の敷地が実家周辺より小さい。


「建物の形はかなり違いますけど雰囲気は実家周辺に似ています」

「やはり実家は大きなお屋敷なんですね」

「ご近所さんも大道場や大店酒蔵などでもう少々広いです」

「……多分少々ではないですね。俺が8歳から今も通っている剣術道場は大道場です。多分あのくらいのが並ぶ地域ってことでしょう」


 ネビーは神社の鳥居に馬を繋いで町内会長の家に向かい玄関へは1人で行った。聞こえてきたのは「神社の鳥居に馬を繋ぎました。糞をしたら片付けて掃除して帰ります」という台詞。

 それで2人でルーベル家へ向かった。ネビーが右側を歩いているので右半身がくすぐったくてまた左手の手の甲をつんつん。

 腕を組まれてしまって残念と思ったらかなり軽く体当たりされた。


「練習ではなくて悪戯みたいです」

「練習です」

「子どもが恐々かまきりのたまごをつつくとか、だんご虫をつつくとかそういう感じがします」

「怖くないです。うんと恥ずかしいだけです。かまきりやだんご虫ってどのような虫ですか?」


 尋ねたら多分狩る虫とまるまり虫。そんな風にルーベル家に到着。見たことのない家紋なので質問したら鬼灯(ほおずき)家紋だそうだ。


「魔を除けし幸照らす青鬼灯。俺もウィオラさんに贈ろう。一応俺もルーベルだし意味がよか」

三連光苔(みつりこうたい)は魔を祓いて幸をもたらす。青白い提灯と青鬼灯を重ねたのでしょうか。2連ですけれど」

「みつりこうたい?」

「岩窟龍王が三連宝玉(みつりほうぎょく)を人へもたらして光苔が生まれたという逸話があります。岩窟龍王はご存知ですか?」

「いえ。龍王神様の知り合いですか? 岩窟龍国って少し西にある同盟国だったかと。皇族の血筋は始祖皇帝様より古いと。確かフィズ様の国に岩窟龍国の皇子様が婿入りして国王になる予定だった気がします」


 私は首を横に振った。育ちが違うから話が合わない訳ではないと再認識。

 私が知らない事を彼が知っていて私が知っている事を知らないとお互いに尋ねるから会話になって楽しい。


「そのお話は知らなかったので知れて嬉しいです。岩窟龍王は龍王神様のお父上という逸話と対立兄弟という話があります。フィズ様の娘様は絶世の美女で皇帝陛下の息子の側妃として縁結びのはずが関白候補と祝言したという噂を聞きました。関白候補は同盟国の皇子様だったのですね」

「そうそう。母親似のこの世の美を集めたお姫様らしいです。ルーベル家は昔年末年始に席取りをしてフィズ様とお妃様を見たそうです。光り輝いていたと」


 自分で絶世の美女の話をしたけど「お姫様かぁ」みたいなデレデレ顔をしたのでイラってしてしまった。これが世にいうヤキモチ。初めての感情。


「つい立ち話をしてしまいました」


 ネビーはカラコロカラ、カラコロカラ、カラコロカラと玄関の鐘を鳴らした。知らない音で楽しい。


「こんにちは。ネビーです。どなたかご在宅ですか?」


 しばらくして「はい。ただいま」という返事。ルカと似た声だけどもっと静か。玄関がガラガラと横に開いた。


「兄ちゃんどうした……こんにちは。こちらのネビーの妹のリルです。初めまして」


 リルはちんまりリスだった。例えるなら凛としたリス。彼女をブサイクとはネビーは大変失礼者。しかし5人姉妹を並べるとそうなるかもしれない。

 私と並べたら彼女の方が……ネビーは自分自身の容姿を悪く言ったから自分に似ているリルも低評価?

 花魁でさえ男性から「あの顔は苦手」と言われることもあったなと思い出す。人の好みは十人十色。

 リルにはエルの猫顔系のはっきりした要素が見当たらない。ネビーに似ていて眉毛の形なんて同じだ。


「初めましてウィオラ・ムーシクスと申します」

「昨日皆に話したお隣さん。桜並木見学と海に散歩と買い出しに行ってた。テルルさんはご在宅? 相談があって。レイスとユリアはいるよな。馬で来たから2人に馬を見せたり触らせてやりたい」

「2人はお義母さんと3人でカルタしてる。どうぞおあがり下さい」


 玄関に入ると高齢女性が3歳前後の男の子と女の子を連れて登場。この3人がテルル、レイス、ユリアってことになる。テルルは想像していたよりも年配に見える。

 テルルに三つ指をついたお辞儀をされて「いらっしゃいませ」という挨拶をされた。返事とお辞儀を返す。

 随分と丁寧だなと思ったらテルルが「レイス、ユリア、おばあ様と同じようにお客様にご挨拶をしましょう」と告げたので教育のためだと判明。かつての姉や私に弟と同じ。

 愛くるしい2人に「いらっしゃいませ」と「いらたいませ」と挨拶をされた後に家に上がった。

 居間に通されて内装も家具も違うけど実家の居間を小さくした空間だなと感じた。

 お茶を飲みに来たのではなくてご挨拶と相談に来たので下座側の隅近くへ行って正座。少し戸惑い気味のネビーが私の左手側に正座した。

 正面にテルルが正座をしてそれを見たリルは子どもを連れて居間を去ろうとしてテルルに呼び止められた。


「リルさん。2人がぐずるまで居させなさい。おそらくあなたも聞くべき話です」

「はい」


 リルの返事はそんなに大きくなくてゆったりめ。彼女は顔立ちもだけどロカと似た雰囲気がある。ルカ達と姉妹なのはピンとこない。


「お初にお目に掛かります。ウィオラ・ムーシクスと申します。卿家ルーベル家3代目ご当主ガイ・ルーベルさんの奥様テルルさん及び娘様のリルさんにご挨拶とご相談がありまして参りました。事前連絡無しでの突然の訪問で大変失礼致します。本日海へ散策と買い物に行きましたので後程リルさんへ魚介類をお渡し致します」


 舞台より余程緊張する。花街で5年過ごして雑になったので心配。


「……おお。すみません。俺です。俺が事前に決めていなくてというか、突然決めたので勝手に連れて来ました。昨日も勝手に来ました。テルルさんがご不在ならまた後日と気軽な気持ちですみません。せっかく馬で出掛けるからレイスとユリアに馬を触らせたりしようかと」


 卿家の娘は女学校の同級生にもいたけど珍しかった。親しい友人ではなかったので卿家の成人と深く関わった事はない。

 総宗家直々に稽古するのは華族が大半で後は大豪家。私が教えた子どもにも卿家の子はいなかった。

 テルルは母みたいにピシッとしていて柔らかな微笑みを浮かべている。かめ屋の女将は品性は感じるけど商売人の妻という雰囲気だった。

 同じ女学校へ通っても幼馴染でも家柄が違うと(まと)う空気が異なるものだな。

 女将とテルルが長年親しくしている友人なのが今のところの印象だと不思議でならない。


「失礼致します。テルルさん。分からないところがあり……あらまあお兄さんとウィオラさん。いらっしゃいませ」


 居間にルル登場。テルルの後ろの襖を淑やかに開けて座ったまま入ろうとして私達に注目。この家の中だと兄ちゃんではなくてお兄さん呼びみたい。


「テルルさん。例のお隣さんになったロマン娘のウィオラさんです。来るなんて聞いていなかったです。何のお話ですか? 私も聞きたいです」

「ご挨拶をしたところです。ウィオラさん、ネビーさんやルルさんから少々お話をうかがっています。初めましてテルル・ルーベルでございます」


 お辞儀をされたのでお辞儀を返す。


「すこぶる見本になるお二人です。私も練習します。初めましてルルと申します。兄がお世話になっています。本日は私達に挨拶をするためにわざわざお越しいただいたようで誠にありがとうございます」


 ルルもお辞儀をした。


「テルルさんどうですか? 本物のお嬢様と何が違いますか?」


 テルルはすまし顔。ルルを無視するみたい。


「改善していきたいので教えて下さい。鏡がないので教えてもらわないと直せません。どこですか? 何ですか? どうしたら良いですか? 今のは及第点と合格と失格と何になりますか?」

「……今は言いません」


 テルルはルルを無視出来ないと思ったみたい。


「ウィオラさんどう思いますか? 蛙達から助けたお礼に教えて下さい」


 ニコッと笑いかけられて戸惑う。微笑んでいるけど隠さないでほんの僅かに困り笑いになっているテルルが口を開いた。


「無理矢理背中を伸ばしすぎなのと手の形と速度に腕の角度です。扇子は我が家の格では不必要ですけれどあればこのようにより丁寧です。それから先に挨拶をするのはリルさんとレイスとユリア。次に貴女です」


 テルルが一瞬私を見て軽く会釈をしたのは「すみません」という意味だろう。細かい。昔を思い出す。扇子は要らなかったのか。

 ルルのおかげでわりと気さくに迎えられるかもしれない。朗報。


「細かいです。難しいです。ウィオラさんもう一度手本をお願いします」

「話の腰が折れます。折れました。ルルさん、貴女は私が良いと言うまで黙っていなさい。そう言わないと喋り続けるその悪癖をどうにか自制しなさい」

「和むかと思いました。はい。許可が出るまで沈黙します」


 確かに緊張が緩和した。カニだけに。カニがいないから違うか。ネビーのしょうもなさが私にもうつったみたい。


「破天荒な娘ですみません。ではリルさん。妹と子ども達に見本をお願いします」

「はい。ウィオラさん初めまして。リル・ルー……玄関でご挨拶をしたので2度目ましてです」


 すまし顔のリルはお辞儀を半分して首を傾げてテルルを見据えた。


「先程玄関口で軽くご挨拶致しましたが改めましてリル・ルーベルでございます。あとはいつもの。なんですかいつも何も問題ない貴女まで急に。ルルさん、貴女のせいですよ恥ずかしい。昨日もこの方に蛇を投げさせたとかあれやこれやしたそうですみません」


 ルルは返事をせず。黙っていろと言われたから黙っているのだろう。愉快そうな笑みを浮かべている。


「すみません。妹に釣られて急に分からなくなりました。ぼんやりです。先程玄関口で軽くご挨拶致しましたが改めましてリル・ルーベルでございます。こちらは娘のユリア、息子のレイスです。レイス、ユリア、お客様にご挨拶をしましょう」


 さあ、とリルは子どもを促した。


「レイスです……。初めましてこんにちは」


 つたないお辞儀で小声だけど小さいのに正座して手をついて頭を下げられて立派。弟ウェイスはこのくらいの時に「正座はいたい」みたいにぐずっていた気がする。

 レイスは見た目よりもう少し年齢が上なのかな?


「……ユイアです。はちめちて」


 ユリアは舌足らずみたい。つまりレイスが兄でユリアが妹。

 こちらもつたないお辞儀で小声だけど小さいのにやはり正座して手をついて頭を下げられて立派。2人ともお上品で愛くるしい!


「おばあ様とお母様とお姉様と同じように大変立派なご挨拶で歓迎されたと感じました。とても嬉しいです。レイス君、ユリアちゃん、ありがとうございます。2人とも偉いので落雁(らくがん)を……すみません今のは癖です。お菓子は渡しても良い教育方針でしょうか」


 遊楽女(ゆうらくじょ)にご褒美をあげるみたいにするところだった。慌てて頭を下げる。菊屋を出たのに小さい缶にお菓子を入れて持ち歩いているからとつい。


「お菓子とはありがとうございます。レイスとユリアはお利口さんだと褒められましたよ。良かったわね」


 リルは立ち上がってスススッと品良く私の前に移動してきた。意味は分かるので手提げから缶を出して懐紙(かいし)も出して簡単な花と兜に折って落雁(らくがん)を包んでリルへ渡した。

 ふと気がつくとテルルは「ふーん」みたいな探り顔。


「リルさん。隣で2人を見ながら話を聞いていなさい」

「はい。ウィオラさん。1度失礼致します。ユリア、レイス、隣で沢山遊んでいましょうね。それからお菓子をありがとうございましたと言いましょうね」

「ありがとうございした」

「ありたいです」


 ありがたいですかな? 2人ともやはり愛くるしい!

 私は女学校の講師を選んで良かった。こういう子達が成長して入学してくるから絶対に話が合う。

 ルル達みたいに私を揶揄うことは出来ないというかしないだろう。かつての私や友人達のようにかなり控えめなはず。

 ルル達は楽しいけど昨日や先程みたいだと仕事にならなそうなのでこれは朗報。

 我が家は常に長男ウェイスの名を先に呼んでいたけどリルは長男長女は関係なく交互に呼ぶみたい。

 こうしてネビーと私はテルルに相談をすることになった。

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