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お見合い結婚します「紫電一閃乙女物語」  作者: あやぺん
おまけ「結納中編」

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西瓜割り

 夕食を食べ終わって片付けはエルがしてくれると言うので任せて私達は西瓜(すいか)割り。

 目隠しをされた人が棒を持って声掛けしてくれる人に従って西瓜(すいか)を叩けたら切ってある西瓜(すいか)を食べられるという規則。

 林の隣の広間にゴザや椅子になる丸太を配置して灯りも用意。

 最初は子ども達で祖父が三味線で華添え。私は未来のお嫁さん仲間二人とイオ達と一緒のゴザでお喋り中。ネビーは家族と一緒にいるけどたまに来たり子どもの父親——彼の幼馴染——と一緒にワイワイ。

 私は子どもが好きだしみんな愛くるしいから楽しくてならない。子ども達は二周して、子どもではないのにルルも参戦。

 子どもが成功すると——誘導するから成功しかないけど——親も食べられるという規則で、見学者も普通に食べているので楽しく騒ぐのが目的の遊びだ。


 その後は大人組。孫と娘息子に頼まれたガイとレオやエル。

 さらにその次は「俺らは全員で一気にする」と言い出したネビー、ジン、イオ、ヤアド、ガント、ニックが二手に分かれて棒と声掛けに分かれた。

 西瓜(すいか)狙いではなくて目隠ししている友人を狙わせたり、子どもの方へ誘導して「そこで抱っこ!」みたいにやりたい放題だったので愉快。

 

「今夜は予行で本番は俺らの息子達を参戦させます。ネビーの休みか勤務に合わせて企画して招待します。遅くなるとあれなんで次が最後でウィオラさん。俺が声掛けします」


 イオにそう言われて棒を渡された。いつそう決めたのだろう。私の時の声掛けはネビーだと勝手に思っていた。


「分かりました。お話ししたように始めてなのでワクワクします」

「ネビー! ウィオラさんに目隠し」

「おう」


 ひゃあ! 近寄って来る! と思いながら俯いてネビーに背中を向けた。時間が経っても恥ずかしくてならない。


「失礼します」

「お願いします」


 触られる訳ではないのにドキドキが止まらない。今夜の私は眠れないような気がするけどなんだかんだ神経が太いから多分寝る。

 

「シャオさん、ウィオラさんをあの辺りにお願いします」

「メイホは俺が抱っこしてる。はしゃいで食べて寝て俺の娘は今日もかわゆいな」


 ニックは妻のシャオが抱っこする娘の頬を指でつつくのが目を隠される寸前に見えた。


「もうっ。可愛がるのは良いですが起こさないで下さいね」

「はーい」

「ニック。はいは短く」

「それはお前の親父の台詞だ。はいは短くだネビー。ついでにニックも、あはは」

「懐かしいなそれ。ついでにニックも。あはは」


 シャオが「両手を失礼します」と告げて私の両手を取った。誘導されるままゆっくり歩く。


「こちらが開始地点のようです」

「はい」

「あの方達、何か企んでいますよ」

「そうなのですか?」

「私も結納中や新婚時に悪戯されました」

「何だと思いますか?」

「ウィオラさんをネビーさんにぶつける、とかではないでしょうか」

「……それは困ります。今夜は困ります。て、照れが凄くて」

「そういう話をしましたから様子を見て私やリンさんで声を掛けますね」

「ありがとうございます」


 こうして私の西瓜(すいか)割り開始。イオに指示された通り体の向きを変えてゆっくり歩いてまた体の向きを変えてと繰り返す。


「よし、そこで軽く叩いて下さい!」

「はい!」


 棒を軽く振ったらコツンと固いものにぶつかった。悪戯は特にされなかった。安堵したけど少し寂しいような気がする。


(私は悪戯されたかったの?)


 棒を片手で持って目隠しを外そうとしたら「ウィオラさん、そのままで! 続きがあります!」とイオに声を掛けられた。


「今、目の前に切ってある西瓜(すいか)があるので西瓜(すいか)割りならぬ西瓜(すいか)食べです」

「えっ?」

「リン、これを持ってしっかり持ってろよ」

「しません。ウィオラさん、目隠しを外して良いですよ」

「はい」


 リンに言われた通り目隠しを外す。ヤアドが切ってある西瓜(すいか)を持っていて目の前にはリンがいた。


「ああっ。ウィオラさん。足元に変な虫がいます」

「えっ?」

「あっ、蛙だ」

「愛くるしい雨蛙(あめかえる)のようですね」


 ガントが持っている薄灯りで着物の裾に雨蛙(あめかえる)がくっついているのが見えた。触れないけど見るのは平気。棒でヒョイっと払った。


「なんだ。平気なのか」

「残念だな。ルルちゃんに蛙事件を聞いたからコレだって思ったのに」

「蛙布団とネビー布団。究極の選択だよな」


 ルルは何を喋っているの!

 言うと揶揄(からか)われるから言わないけど泣くほど嫌だった春イボ蛙布団とネビーならあの時点であっさりネビーだ。


「なんだその話を聞いたのか。小賢しい妹に図られて気がつかないどころか泣くほど嫌な蛙よりマシだったってニヤニヤした俺はバカだ」

「バカだから仕方ない。日頃の妹孝行のおかげで得して良かったな」

「泣くほど嫌な蛙よりマシだからニヤニヤじゃなくてお嬢様布団になるからニヤニヤだろう。お前は昔からお嬢さんの握り飯とか、お嬢さんの手拭いとかお嬢さんとかお嬢様がつくと弱いからな」

「そんな風に弱いけど、今思えばウィオラ布団になるからニヤニヤの方だ。バカな上に気持ち悪いな俺は。あはは」


 次の瞬間、首筋がサワサワっとしたので「ひゃあ!」と軽い悲鳴をあげて振り返る。誰かにふわふわしたもので首を撫でられた!


「おいイオ。ウィオラさんに何をしてるんだ」


 振り返ったらネビーが居たので私は再度悲鳴を上げた。


「ち、ちか、近いです! ひ、ひゃあ!」


 またイオにくすぐられた! 使ったのは猫じゃらし!

 身を捩ったらヤアドに軽く押されてネビーに激突。


「蛙が平気なのは予想外ですけど蛇ももう平気ですか?」

「ひっ、ひゃあ! ネビーさぁん! やめさせて下さい!」


 イオに顔の前に蛇を出されて私は背後にいるネビーにしがみついた。前には行けない!


「大人しく西瓜(すいか)割りを終えたと思ったら子どもみたいなバカはやめなさい!」

「ニックさん! これは流石にやめて下さい! ニックさんもですが皆さんはいくつですか! 大の大人が何をしているのですか」


 リンとシャオがそれぞれの夫に怒ってくれた。怒られた二人は怒られて嬉しそう。特にニックは「久々に怒られた。怒ってもかわゆい」と嬉しそうな顔の理由を口にした。


「お前らこれはふざけ過ぎだ」

「そう言いながら顔が緩んでるぜネビー。あはは。楽しかった!」

「あはははは。ウィオラさんは俺の嫁よりも首が弱いかも」

「ひゃっ! お、おやめ下さい!」


 また猫じゃらしでふざけられた!


「俺もしてないことをするんじゃねえよイオ」

「ならほら、やるから好きなだけしろ」

「……。するか!」


 今の間は何。


「今考えただろう。目隠しの時と同じで。何を考えてるんだか。よし! 最後はネビーの疾風剣だ。その後家への土産用に綺麗に切ってくれ」

「イオ、切るのはお前がしろ。知ってるだろう。包丁で野菜や果物を切るのは下手なんだ」

「刀だと器用な癖に変なやつだよな」


 ネビーは何をするのかと思ったら包丁片手で西瓜(すいか)を持つイオと離れた。皆で注目。


「行くぞネビー!」

「おう!」

「土産が少なくなるから落とすなよ!」

「任せろ!」


 イオは遠くから前方に西瓜(すいか)を大きく投げた。そこへかなり離れたところで構えていたネビーが西瓜(すいか)に向かって包丁を一突き。

 見事に命中してネビーは包丁に刺さった西瓜(すいか)を夜空へ向かって持ち上げて軽く動いて停止。これには皆で大拍手。格好付けたと分かるけど格好良くて素敵。


「ウィオラさん。まだあんまり見られていないと思うんですけどああいう格好良いところもあるんですぐには見捨てないで下さい」

「そうそう。今夜見たように子どもにもうんと優しいです。次の西瓜(すいか)割りで息子達と遊んでいる姿も見られるんで是非参加して下さい」

「またふざけますけど」

「俺ら、あいつと同じくバカなんで」

「むしろ貴方達が足を引っ張るんじゃないの?」

「なんだよリン。そういうバカな俺を必死で手に入れたのはお前だろう?」

「そ、そういう言い方はやめてよ」

「未だに照れるってかわゆいな。よし、イオが切った西瓜(すいか)を貰って帰宅だ帰宅」


 ネビーの褒め慣れみたいなところは確実に幼馴染達の影響な気がする。どっちが先なのかは分からないけど。

 イオとネビーが戻ってきて合間机へ移動して用意してあったまな板でイオが西瓜(すいか)を四等分して挨拶をして解散。

 次の西瓜(すいか)割りの時は逆にネビーにお土産西瓜(すいか)を一つ用意すると言われた。

 ふと見たらゴザなどの片付けは終わっていてネビー家族も祖父ももう居ない。残ったのは包丁とまな板と私とネビー。


「目の前のことに夢中で片付けが終わっていることに気がついていなかったです」

「ルーベル家は帰りました。親父とジンが送りに行って多分ガイさんとルルと少し晩酌して帰りに風呂屋だと思います。明日、遅く出勤とかにして。それか送ってそのまま泊まりです」

「今から飲むのですか? 明日は金曜日なのでルルさんもガイさんと一緒にお仕事ですよね?」


 レオは仕事さえこなせば出勤中でジンも日によるけど融通が効く。一方、ガイは毎日決まった時間に出勤だ。

 それで金曜日のルルはガイの職場で雑務仕事の日なので同じく時間厳守。ガイと違って遅れてもお咎めはないみたいだけど。


西瓜(すいか)割り中も楽しげに飲んでいたんでロイさんも増やして飲み会の続きをする気がします。リルが叩き起こすでしょう。あいつ、叩いたり蹴ったりは苦手だから鼻の下にからしを塗るとか怖いことをするらしいです」


 その起こされ方は嫌だな。でも確実に起きそう。


「そうなりたくないので必死に起きそうです」

「新婚当時にロイさんを上手く起こせなくてテルルさんに雷を食らって怖かったそうです。ロイさんもお仕置きだったって聞いています」

「そうなのですか。それは余計に気をつけそうです」

「ウィオラさん、わりと普通になりましたね。これを片付けたら風呂屋へ行きますか? 護衛ついでに俺も今夜はのんびり風呂屋にします」

「少し落ち着いたようです。まだその、ドキドキが普段よりも強いですけど……。おじい様に声を掛けてお風呂屋へ行きます」


 ネビーは口を開きかけて何も言わずに唇を結んだ。


「ラルスさんはご近所オジジ達と酒盛りしています。先に風呂屋まで二人の許可を取ってあります。許可なんて要らないと相変わらずです」


 途中から音がないと思っていたら祖父は確かに飲み会中。


「あちらにも気がついていませんでした。視野が狭かったです」

「それだけ楽しかったですか?」

「はい。楽しかったのです。次回は本番らしいのでそれも楽しみです」

「俺の休み次第ですけど休みがあるのは確実なのでなんとかします。その前にウィオラさんと出掛けられるように日曜か祝日休みですけど。月曜祝日のところがいけそうです」

「私が休むという話もしていましたが大丈夫でした?」

「学校や役所勤めくらいしか関係無くて子どもの行事がある日でもないから何にも問題無かったです」


 まな板と包丁をエル達の部屋で洗って片付けてお風呂屋へ行く支度。遊び終わったらすぐに行けるように事前に準備してあったので荷物を持つだけ。

 部屋に鍵をかけてネビー部屋に声を掛けると彼もすぐに出てきた。


「行きますか」


 しれっと荷物を持ってくれた。


「ありがとうございます」

「三味線は持っていかないんですね」

「はい。ネビーさんとお喋りを優先します」

「普通の勤務だったら日勤の日は毎日こうして一緒に風呂屋だったのにようやくです。よっしゃあ!」


 万歳をするとネビーは歩き出したので私もついていく。祝言頃にはそういう生活になっていると良いな。


「おじい様は酒盛りをしていてレオさんとジンさんがルーベル家ならお母様達のお風呂屋はどなたが付き添いですか?」

「他の家と一緒に行きました」

「ネビーさんは周りを良く見ているのですね」

「俺は家族と一緒の席にちょこちょこ居たんで見ていたんじゃなくて話を聞いていた、の方です。あいつら、変なことを言いませんでした?」


 手は空いているけど今夜は手を繋がれないようで少々寂しい。


「ネビーさんがようやく冬眠から目覚めた、とおっしゃっていました。それで確認したら慌てていまして、ネビーさんが話したような内容を教わりました」


 屯所でネビーの同期とした会話の流れと似ていた。イオ達を軽く問い詰めたらニックはその頃はそこまでの仲間ではなかったそうで、遊び人達は残りの三人。

 妻のリンが一緒に居るからかヤアドは「イオだイオ。常にイオ。あいつも妻以外に対して今は冬眠したけどその頃の諸悪の根源はイオ」とあたふたしていた。

 リンは「年頃の火消しはそんなものです。大人しい部類でド派手な人はド派手です」と冷ややかな目。


「ほらあ。どうせ隠したって無駄です。誰が知ってて誰が知らないのか分からないので黙っててくれって頼む気にもなりません。十年くらい前のことですし」

「でも隠しましたね」

「言った通り俺は都合の悪いことやわざわざ言わなくても良さそうなことは隠します。これは明らかに隠したら非常識ってこと以外は。自分を良く見せたいです」


 これを開き直りと呼ぶ。


「私もそうします」


 私には隠したい過去はないけど知られたくない恥ずかしい話などはある。


「質問されたら答えます。今夜、俺の友人達からまた俺のしょうもない過去を聞いて何かありますか?」

「無いです」


 女性に興味を抱くのが遅かったのに早々に冬眠したとか、自分達が照れ屋を小馬鹿にするからムキになったとか、自分達に説教をするようになったとか、そういうネビーからは聞けなそうな話は聞けた。

 それとは別にシャオとリンから潔癖冷え冷え話が追加されている。


「ウィオラさんも俺に隠したいことがある、と。なんですか? と尋ねても答えませんね。答えなくてよかです」

「とんでもない秘密があるかもしれなくても、ですか?」

「最低限の確認はしたつもりですから言いたく無いことは言わなくてよかです。紫陽花鑑賞の時のように今なら話したいとかそういうこともあります」

「隠したい事はないですし話して嫌がられそうな事も思い当たらないですけど、またふと話すかもしれません。過去のことでは無くて未来のことかもしれません」

「悲しかったこと、惨めだったこと、悔しかったこと、腹を立てたこととか俺もそれなりに話したく無いことがあって、でもこう気持ちの整理がついたら聞いて欲しい話はあります」


 ネビーは少し遠い目をして私の手を取って繋いでその手に力を込めた。


「待っています」

「うん。バカ正直だけど家族にもかなり親しい幼馴染にも話したくないことがあるんで」

「私なら良いのですか?」

「この人だけには、ということはあります。ウィオラさんには絶対に言わない話もありますよ」

「話さないと嫌だと言ってもですか?」

「言いたく無いのは男同士の下衆な色話とかです。聞きたいですか?」

「……聞きたく無いです」

「俺はウィオラさんとのことは喋りません。そこは安心して下さい。人の話を聞くのはよかだけど自分の婚約者とか妹のことは嫌なんで。妹にはお子さま並みの色話でも言いたくないのにロカはあれじゃないですか」

「お年頃だからですかね。私も婚約者の家族にそういう話はしたくないです」


 私がロカぐらいの時に姉に……少し尋ねた。結納したから手を繋ぎました? と質問していたな。

 同級生が早くも婚約者とキスしたと聞いて破廉恥(ハレンチ)だと皆でヒソヒソだけど内心大騒ぎしてジエムには絶対に教えないと心に固く誓った。

 例外もいると教えたら襲われると怯えた。教えなくても普通だろうと襲われかけてた。あれも稽古とか練習は建前で普通に口説かれていたのか。遠い目。不細工とか嫌とか言われ続けて鈍感さに拍車が掛かっていた……。


「なんなんだって聞いたんですよ。俺は色話を妹にしたく無いって前にも言ったぞって」

「ロカさんはどのような返事でした?」

「それがかわゆい事にキスしたら幻滅される話を聞いたけど逆に仲が深まって気持ちが大きくなるって事も聞いたから俺達がもっと親しくなって婚約破棄にならないとよかだと思ってって」

「ふふっ。それは嬉しい話ですね」


 その話は当たっているかもしれない。


「つい、イオ達にロカ達をケイジュと会わせてやりたいって言うてしまいました」

「つい、なので頼みたくなかったのですね」

「嫌ですよ。でもなんか今日の文通お申し込みの方が怪しいんでケイジュって奴は別によかだなと思って」

「怪しいってロカさんと上手くいきそうで嫌とかそういうことですか? 礼儀正しい学生さんでしたよ」

「金魚草は金魚が流行りだとしても桜の君。練習ではなくて本気そうだから見張らないと。変な男なら追い払います」


 私はロカからコソッと聞いたけどネビーは家族の誰から聞いたのかな。ネビーには隠したい様子だったからロカからではない気がする。

 

【たえて桜のなかりせばと言いますが春が過ぎても桜の君がいます】と書いてあったそうだ。


「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし。ですよね」

「ええ」


 世の中に桜というものがなかったら春になっても桜の花の咲く楽しみ散る悲しさなど心騒がすこともなくてのどかな気持ちでいられるのに。

 そう言うけれど桜のような貴女が居るのでずっと落ち着かないです、みたいな口説き文句。

 私は素敵と思ってロカも「練習では無い気がします」と照れつつ困惑してお父さんには言わないで私と一緒にお母さんに話したいと口にした。

 エルは一言「男を見る目は男を知らないと養えないから練習したら」で終了。

 それで私にコソッと「それとなく見張るというか気にかけて非常識そうな時は知らせて下さい」だった。


「母にロカが文通お申し込みされたと報告したら内容を教えてくれました。親父はうるさいんでそれよりマシな俺とジンに調査や軽い見張りを任せたって。ルカは皮肉屋だからかロカは言わなかったみたいなのでウィオラさんもお願いします。リルは聞いたそうです。ルルには言わないように」


 ロカが隠しても結局わりと広がるってこと。ルルには言わないようにって、私はそのルルに最初に目をつけられたというかたまたま最初に親しくなったっていう。

 私のネビーへの気持ちを過小評価されているようなので今夜は恥ずかしくても少し語ったらルルが一番驚いていた。

 私の気持ちが小さくてネビーが悩んだのはどうやらルルがそういう心配を彼に言ったからのようで謝られた。

 しれっとしているとか、ユラが来ている間一日くらい会いに行かなかったからとか色々言われて誤解の理由判明。

 ルルのせいで私が泣いたとロカとルルが若干喧嘩した。家族が多いと話が捩れたり話を知らないから一部で誤解が起こるのは昔からで大家族、しかも別居もいるからその弊害とルカやリルに言われた。私も恥ずかしい、ばかりではいけないと反省。今夜もそこそこ視野が狭かったので成長していきたい。


「雅ですしあの照れっぷりでお申し込みしてきたので好感度は高いです」

「俺もそう思います。火消しと練習って言われる方が嫌です。桜の君かぁ……」

「ロカさんと桜はどういう連想でしょうね。字を見てあっと思いましたが私はネビーさんを桜の君だと思います」

「えっ? ああ。春に出会って桜を使って口説きまくりましたからね」

「ええ。それでその桜の中でいつも笑顔で笑顔に囲まれていましたので。特に南東農村地区でそう思いました。ニコニコしながらひょいっと誰かを手伝って、身を守る方法を教えて、周りの方も笑っていて……。花が咲く笑顔と言いますよね。す、すとき……好きだなぁと……」


 最後の台詞は背伸びをして耳元で囁いた。ネビーの友人達や妹達にポロッと言ったのに本人に言わないのはおかしい。あと単に言いたくて仕方なかった。

 風呂屋から帰ったら言えないかもしれないし、先に言ったらネビーが同じことを言ってから出勤するかもしれないのでこの往復でと思っていた。


「……」

「……」


 ネビーは無表情。それで喋らない。嬉し過ぎて無表情だと良いけどどうだろう。私も照れて喋れないのでそのまま無言でお風呂屋へ到着。

 別れる前にネビーは片手で目頭を押さえた。


「ロカが……ロカが嫁に行く想像をしたらこれです。疲れもあるんでしょうけど涙腺が緩いって年寄りみたいだ」

「いつも思っていますが妹想いですね」

「……桜の君はロカらしいんで俺のことは何か別の呼び方をして欲しいです。もちちさんみたいに。あはは」


 もちちさんまた後で、とネビーに頬をつつかれて男湯と女湯へ分かれた。

 なんだか違和感というか気になったけどそれがなんなのか分からずにお風呂を出て、帰り道はネビーがもちち音頭を歌い始めてちょこちょこ頬をつつかれて、帰ったらしれっと部屋に招かれてわりとキスされたので何がどう気になったのかサッパリ分からなくなった。

 抱きしめられて好きだ、と囁かれた後にさらに抱きしめられ続けたからさらに。

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[一言] 時折本編共々読み返しております。 更新があると嬉しくなります。 今後も楽しみにしています^ ^
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