8-2.竜の目撃者ユーリとゼスト(中編)
俺はできれば体を洗いたいのだが、俺がテントを出ていると、その間雨漏りしまくりになるので、雨の間は出られない。
せっかく水と時間があるのに、何もできないとは……
そう思っていることを見透かされたのか、リナがこんなこと言った。
「たまにはこんな日があっても良いじゃないか」
「ん?」
「こうして、一緒に仕事するのはいつぶりか。3人で長期仕事なんて、いつ以来か」
ああ、そうか。
俺は以前も長期の3人仕事をした記憶がある。
巨人標本運んだときだ。
あのときはテーラとルルだった。
「巨人運んだときはリナは居なかったからな」
「ああ、そう言えば、テーラはあのとき一緒に旅したのか」
テーラは無言で頷いた。
そう考えると、今回の人選はどういう基準なのだろうか?
リナはわかる。リナがそう感じているように、リナと一緒に少人数の長期行をした機会が少ないからなのだと思う。
テーラは刃物の町に行った時も一緒だった。巨人標本でも一緒だった。
でも、あのときは特別大変だったように思う。
テントはビシっと立たないし、何故かテーラがパンツ見せようと迫って来るし。
「あー、あの時は大変だったな」
これが俺の素直な感想だったが、この言葉にテーラが反応した。
「嫌だったの?」
あ、”地雷”を踏んだか? これはまずいパターンだ。
慌てて訂正する。
「嫌じゃないです」
「何かあったのか?」
「トルテラは私のパンツが好きなの」
リナは察して話を逸らす。
「私は今の暮らしには満足している」
話を逸らしてくれたのは有り難いが、これはこれで妙な気もする。
「急にどうしたんだ?」
「私はトルテラと会う前は、冒険者として、ただ日々の糧を得るために働き続けて、
年を取るだけだと思っていた。
今は多少なりとも余裕のある暮らしができている」
まあ、確かに暮らしはだいぶ変わった。以前はとても貧乏だった。
「ああ、あの頃は貧乏だったからな」
「でも、私は狭いテントでトルテラと一緒に冒険者の仕事をするのも好きだった」
そうか。はじめはリナには嫌われてると思っていたのだが。
狭いテントで一緒に寝たのはリナが一番はじめだった。
確かに今はあんまり、こういう仕事はしなくなった。
リナは少し寂しく感じているのかもしれない。
俺はこの世界に来てすぐ、いきなり凄い老人扱いされて困ったが、
神様とか勇者とかそういうのと比べるとずっとマシだった。
「そうだな。あの頃が良かったかもしれないな。
俺は勇者とかそういうのじゃなくて、ただの老人で良かったんだが」
そこで、テーラが脇をツンツン突く。
「なんだ?」
「勇者じゃないよ? 森に飛んでくる竜だったんだよ?」
まあ、謎の予言通り俺はいきなり森に飛んだ。
今も何かイベントを消化しているのだろうか。
やはり、今回の依頼は何か特別な意味があるのだろうか?
……………………
「外に何か居る」
リナが気づいた。
俺も少し前から気付いていたが、襲ってくる様子は無いので、特に口にしなかっただけだ。
多分あっちも気付いている。
こちらの様子をうかがっているようではあるが、意図が分からない。
この距離だと、こちらの気配察知に引っかかる。
こっちは気配を隠さずに3人まとまっている。
隠れて観察するつもりなら、もう少し離れた場所から観察するはずだ。
雨が降ると気配察知できる距離が短くなる。
この雨では、普通の人間だとこんな距離になるのだろうか?
「なにしてるの?」
それは俺にもわからない。謎の行動に思える。
「俺に聞かれても。見張り……にしては妙だな」
「襲って来る気配は無いな」
この大雨の中、盗賊が襲ってくるとも考え辛い。
何をしているのか。
しばらくすると、近付いてくる。
「こっちに来るみたいだな」
大雨の中、夜なのに人の気配がするな……と思っていると、しばらくするとバシャバシャと足音がして「助けてください」という声が聞こえた。
リナが外を見ると、全身ずぶ濡れの女の子が2人立っていた。
「どうした、こんな雨の中で」
「盗賊に襲われて、お願いします、一晩雨宿りさせてください」
見たところ嘘では無さそうだ。
しばらくこちらの様子を見ていたのは、頼っても大丈夫かどうかを一応この2人なりに観察していたのだろうと思う。
「そうか、それは災難だったな。まあ入れ」
2人をテントに入れると、テント内がビシャビシャになった。
「これで拭いて。1つしかないから、順番に使ってくれ」
そう言ってタオルを渡す。
俺的にはタオルというより手ぬぐいに見える。
駆け出しの冒険者なのだろう。
リナたちより若い……というか、俺的には完璧に子供の括りだ。
「盗賊に持ち物全部盗られて、逃げてきたんですけど」
「寒くて、休める場所を探していたら明かりが見えて」
リナもテーラも、近付いてくる冒険者は好きではなかった。
だいたいトルテラを誘惑するからだ。
とは言え、今回は放っておくと死にかねないので保護した。
「そちらの方は? 男の人ですか?」
おお! ”爺さん”ではなく男の人と言われた!
「珍しいか」
「はい。冒険者でも男の人を連れてるんですか?」
「ああ。普通男は連れていないと思うがトルテラは特別だ」
「男の人ってこんなに大きいんですね」
「トルテラは特別だ」
「特別?」
「それより、何があったのか教えてくれるか?」
2人は盗賊に荷物を取られたと言う。
雨を凌げる場所を探していたけれど見つからず、寒くて震えていたが、明かりが見えたので、様子を窺っていたが、安全そうに見えたので助けを求めたと言う。
特に安全そうにも見えないような気がするのだが。
2人は”ユーリ”と”ゼスト”というそうだ。
「すごい、雨の中でも雨漏りしてない」
「テントの生地も濡れてない。なんでだろう?」
雨なのに凄い快適だ、熟練者は雨でもなんともないんだと大はしゃぎ。
いつもならエスティアのシールドが凄いことにしているのだが、今は居ないのでテーラのシールドが凄いということにしている。
「テーラはシールド魔法が得意だから。普通はこんなに効かない」
リナが説明してくれた。
テーラのシールドが特別で、普通はこんなにシールド効かないという話を聞かせる。
俺的には、床が濡れてる時点で凄く不快なのだが。
一晩で放り出しても野垂れ死にそうなので、とりあえず保護はする……が、どこかの街まで送るだけという約束をした。
「濡れた服は体が冷える」
リナがそう言うと、
「そうですね」と答え、2人は、いきなり服を脱ぐ。
「うわっ」
あまりの思い切りの良さに驚く。
「服が濡れてるから」
いや、それは見ればわかる。
そうじゃなくて、”少しは俺に配慮しろよ!!!”と思った。
このテントは3人でも狭いのだ。5人入ったら、もう非常事態みたいなレベルで狭い。
しかも裸の少女が2人。この2人はだいぶ小さいが、それが子供であろうと俺は裸の女は駄目なのだ。
端の方に縮こまる。
これじゃ、俺がお子様怖いみたいじゃないか!!!
これが小説とかだったら、俺が喜んで、リナとテーラに怒られたりするような場面なのだろうが、実際は俺が困るだけのシーンだ。
それにしても、シールド魔法が苦手なのか、びしょびしょだ。
普通の冒険者でも、肌に触れてる服くらいならシールドである程度雨を防げる。
それがびしょびしょ。絞ると水が滴る。
相当低レベルと言うことだ。
そんな練度で遠出するなんて、自殺行為だと思った。
リナとテーラは、タンガレアに逃げてた頃に、現地でもらった給仕の服を寝間着に使ってる。
それをユーリとゼストに着せておいた。
ふんふん匂って、「なんかいい匂いがする」とか言ってる。
どうせ俺は、衣類の芳香剤ですから。
ユーリとゼストには関係ないが、アイスははこの服上だけ着るのだ。
たぶん俺にパンツを見せたいからだろう。
勝負下着とセットで着るとか自慢してたが、勝負下着を日頃から使ってるので。
だいぶ使用感が出ていて、それはもう勝負下着では無い、と俺は思うのだ。
そのうちまた勝負下着買いに行って、使い古したやつは勝負下着にならないから、勝負下着は勝負の時だけ着るように言っておこうと思った。
ただ、勝負相手は俺以外にして欲しい。
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今まで、夜営で合流した冒険者は、俺に良く話しかけてきたが、この子達は何も話しかけてこなかった。
まだ知らない人、特に相手が男では、話しづらいお年頃なのかもしれない。
寝るときは、俺がテーラとリナに挟まれて、ユーリとゼストはその横。
リナとテーラは、”着る服がない”といってそのまま寝た。
くそ、寝間着貸したのは、このためだったのか!!!
肌着は着てるけど、くっつかれると匂いが出るからまずいのに。
絶対匂ってると思う。
ユーリとゼストが、もぞもぞして悶絶してた。
リナとテーラは、わざとやってるんだと思うが、子供には刺激が強すぎると思うのだ。
足にピトっとたぶんリナの足が絡んできて、俺はもう駄目だと思った。
次の日「男の人ってすごいね、大きいね」とか、「何か匂いしたね」とか言ってて、アイスとだいたい一緒だなと思った。
俺の除湿パワーでも、一晩ではユーリとゼストの服は乾かず、乾くのを待ってから出たため、この日はあまり移動できなかった。
水が大量に使えたので俺は体を洗えたし、リナとテーラのパンツも洗えた。
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昨日の雨で下が水浸しで嫌なので、低地を避けて高台で野営してたのだが、目立つので盗賊に見られていたようで、襲われた。
気配察知も、高台の方が効きやすく。容易に察知できたから、それ自体はさほど困らなかった。
ユーリとゼストを襲ったのと同じ連中だろうか?
「荷物は置いていけ」
ユーリとゼストは、怯えて木に隠れていたので、怪我の心配はなかったが、威嚇のつもりだったのか撃ってきた盗賊の矢でテントに穴が開いた。
「お、テントに……」
「命は見逃してやる、早く行け」
”見逃してやる”は、こっちのセリフだ。
そういうことしなければ、見逃してやるのに!
俺を撃ってくれば被害が出ないのに、なんでわざわざテント壊すかなと思った。
いや、威嚇なんだろうけど、テント無い方に撃てよ。
テント撃ったやつを蹴り飛ばす。矢が来るが、リナとテーラは、矢に強い。
囲まれて四方から撃たれなければ、まず当たらない。
相手の人数が少なければ、だいたい、一番目立つ俺に矢を放つ。
はじめに何人いたかはわからないが、5人くらい蹴って転ばせて、足でゴロゴロ転がしまくった。
下が濡れてるときは、これだけでもけっこう効果がある。
泥だらけになって「くそ、化け物だ!」とか言って盗賊が逃げて行った。
俺は凄く腹が立った。
勝手に襲ってきて、人のテントに穴開けた上に、化け物呼ばわりするとは、なんてやつらだ!
と思ったけど、武器をたくさん置いて行ったので、若干怒りが収まった。
たぶん、盗賊にとっては、けっこう高価で大事なもののはずだ。
また、盗賊に盗賊行為を働く、不埒なやつとか、”守り神”とか、わけのわからない評価が上がりそうな気もするが、仕方がない。
「ユーリ、ゼスト、好きなやつ選びな」と言って、逃げた盗賊が置いていった武器をユーリとゼストに選ばせる。2人は全部盗られて丸腰だったのだ(ホルダーは持ってるが)。
2人が使うものだけもらって、残りは捨てて行こうと思ったが、ユーリーとゼストが全部拾って集めた。
まあ確かに、手ぶらだからいっぱい持てる。
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ユーリとゼストは大変驚いた。
自分たちが、持ち物全部奪われて、危うく死にそうになった程度の盗賊なんて、この大男にとっては何でもないのだ。
襲ってきたことに対してではなく、テントに穴が開いたことに怒っているのだ。
盗賊なんか、赤子の手を捻るくらいの扱いに衝撃を受けた。
ユーリとゼストは、男というものに興味がわいてきた。
この世界では貧乏人に男は回ってこない。
駆け出しの貧乏冒険者にとっては、男と言うのは伝説の生き物みたいなものなのだ。
こんなに力強くて、安心できるような存在だなんて思ったことも無かったのだ。
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ユーリとゼストは、毎日髭を剃るのを、不思議そうに見ていた。
そうだ。男には髭が生えるのだ。
髭が生えて何の意味があるのだろう?
でも、髭が生えるのだ。凄い!ユーリとゼストはそう思った。
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テーラとアイスで相談して、今回の髭剃り役はテーラになったのだ。
このナイフは黒金のやつで、凄く良く剃れる。
黒金というのは、俺が日本に居たとき”鉄”と呼んでた金属で、この世界の”鉄”とは別の金属だ。この世界で鉄と呼ばれている金属は、ほとんど錆びない。
ステンレスのような、鉄の合金なのだろうが、曲がる性質はあまりなく、固くて割れやすい。
もっと材料系に詳しければ、高い精度で推測できるのだろうが、俺はあまり詳しくない。
黒金はすぐ錆びる。
でも、黒金の方が切れ味が良い。
テーラは、冒険中の作業はあまり真面目にやらない。
薬の調合や薬草集め、髭剃りくらいしか真面目にやらない。
炊事洗濯はするか。
やらないのはテントの設営、撤収や燃料の薪集めなど、冒険関係だ。
こだわりがあるようだ。
それに対して、この二人は、力は無いが、いろいろやってくれるので、そこは助かる。
リナはリナで、駆け出しの冒険者の苦労を知っているので、自分とエスティアが出会った頃のことを思うと、あまり邪険にもできず、なんだかんだで一緒に数日を過ごした。
ある夜、「ご主人様方は、どこでトルテラさまを、手に入れたのですか?」とリナとテーラに聞いてた。
俺は、この世界では、ご主人様って言うと、女の方なのだな……と今更ながらに思った。
リナは、「村の近くの森で拾った」と答えた。
テーラは、「リナ達が家に連れてきた」と言った。
すると、ユーリとゼストの目がキラキラと輝いた。
これは勘違いしてる!と思って
「普通は、森に出会いなんか無いから」と言っておいた。
確かに俺は森で拾われたが、たぶん、相当珍しい。
子供の夢を壊すのは良くないが、これが普通だと思う方が後でダメージが大きいと思うのだ。
駆け出しの冒険者、ユーリとゼストと言う2人組の女の子を保護している。
この子たちは、そこらで自分の食べ物を調達するにも四苦八苦している。
冒険中に持ち歩ける荷物の量は限られる。
だから、現地調達能力で、任務の難易度がだいぶ変わってしまう。
ユーリとゼストは、ガリガリに痩せていた。
そりゃそうだ。この食料調達能力じゃ、食費で赤字になっていく。
とりあえず、味はともかく、腹は膨れる大芋がいくらでもとれるトート森周辺ならともかく、ここで良く生きてこれたなと思った。
「えー? なんで実が取れるの?」とか言って驚いていた。
俺は、木の実を落とせるので、見つけると落とす。
落とせるのは俺だけの特技だが、見つけるのは誰にでもできる。
この子たちは、そもそも見つけることも難しいようなのだ。
男は木の実を落とせるとか勘違いすると困るので、リナがトルテラがいかに特別な存在か説明しまくった。
「普通の人間は、木の実落とせないからな」と言っても、イマイチ反応が悪い。
「そもそも普通、男は女と一緒に冒険できないから」と言うと、凄く悲しんだ。
俺が何をできるかより、男と一緒に冒険する方に憧れてるようだ。
テントを建てて、夜営の準備をしてから、再度、言い聞かせる。
「男ってのはな、普通は、冒険者と一緒に行動できない」
リナとテーラ……主にリナがしつこいほどに説明する。
懐に十分な余裕も無いのに、中途半端に男、特に、老人なんか抱え込んだらたちまち困窮するから絶対やめろとか言う。
「男の老人は産廃扱いだ。それは知ってるだろ?」
ユーリとゼストは頷いた。
そんな話がしばらく続く。
俺を見て、老人でも動けると思われると困るのは確かなんだけど、そうやって老人、産廃、言われ続けると、俺はなんだかとってもやる気が萎えてシールドが弱まってしまった。
くてっと倒れて、テントが狭すぎるので、リナの膝枕でいじけてた。
タイミングの悪いことに土砂降りで、テント内も洪水に見舞われた。
でも、ユーリとゼストはなんか膝枕を羨ましそうに見てた。
いや、望んだわけじゃ無くて、お前らが増えたから場所がないんだよ!!!と思ったけど口に出す気力が無かった。
それでも、トルテラが特別だと言うのはよく理解できたようだ。
言葉ではなく、トルテラが熊を殴り殺すのを見て。
トルテラの趣味は、熊を殴ることなのだ。
次の日復活していたトルテラは、趣味の熊殴りをしていた。
熊を虫でも潰すかのように軽々殺す。むしろあんな人間が存在するのかと驚いた。
「なんで熊が嫌いなんですか?」ゼストがトルテラに尋ねる。
トルテラは「前に、熊のせいでリナが怪我したから」と答えた。
リナはその言葉を聞いて電気が走った。
そうだ。トルテラが、熊を殺しまくるのは、私があんな目に遭ったからだ。
元々トルテラは熊を殴るような男ではなかった。あの事件の後、熊を殴るようになったのだ。
実際は、リナが怪我したのは、熊を避けて遠回りしただけで、熊は直接関係ないのだが、ユーリとゼストはリナが熊に襲われたからだと思った。
「リナさまは、大事にされてるんですね」
その言葉を聞いて、リナは安心した。
そうだ、治療魔法の効きは良くないが、トルテラはいつも行動で示していてくれたのだ。
熊を殴ると言う行動によって。
するとトルテラが言った「ひっつき虫からも守ってくれるから」
「ひっつき虫って何ですか?」ユーリとゼストが揃って聞いた。
リナは「トルテラにひっついて取れなくなる……女のことだ」と答えた。
リナさまもテーラさまも寝るとき、トルテラさまにひっついてると思ったので、たぶん、2人以外でひっつく女と言う意味なんだと考えた。
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ユーリとゼストは今ノーパンだ。
ユーリとゼストを保護したとき、いきなり裸になるので、困ったが、そのときパンツが泥水吸ってて汚かったので萎えたのだ。
替えが無いと言うので、洗って乾くまでの間ノーパンで過ごせと言ったのに、間違って伝わってしまった。
パンツが汚いと嫌だから洗濯しろと言っているのに、
”汚いパンツは嫌い” → ”きれいなパンツが好き” → ”好きなのはパンツ”
と自動で変換されるのだ。
テーラが俺の手をそっと握り「大丈夫。私も履いてないよ」と言った。
俺はもう駄目だと思った。
「お前ははけよ!!!! 換え有るだろ!!」
すると、リナが何か言いかけたので、リナなら何とかしてくれると思って期待した。
ひっつき虫から守ってくれるのもリナだ。だから俺はリナを信頼している。
するとリナは「私も履いてない。約束したからな」と言って頬を赤く染めた。
なんだよ、その約束、ぜんぜん記憶に無い。
そして、「抜け駆けはダメだから」と付け足した。
ああ、俺との約束ではなく、あいつら同士の約束か。
いや、それ解釈間違ってるから、1人だけパンツ履いてると抜け駆けではなく、普通に考えて、履いてない方が抜け駆けだと思うんだが。
俺はもう本当に駄目だと思った。
パンツが装備されてない状態で、事故で何かが見えてしまったら、俺は心臓発作で死んでしまうかもしれない。
咄嗟にダッシュで逃げようとしたがリナに捕まった。
いや、おかしいから、俺の方がずっと重いし力あるから。と思うのに逃げられなかった。
たぶん、誰かが抜け駆けしないように見ておけということなのだとは思うが、俺的にはそれは抜け駆けとかじゃなくて生死にかかわる一大事なんだよ!!!
俺は、何かが事故で見えてしまったらと思い、心労で倒れてしまった。
すると、女たちが寄ってきて、「まだパンツ履いてないのに、はしゃぎすぎ」とか勘違いしたこと言ってて、俺は死にたくなった。
俺が行動不能になったので、この日は休息日になった。
ちょうどきれいな川もあり、水浴びもできる。
俺は既に倒れているので、水浴びでも何でも勝手にしてくれと思った。
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俺が、テントの中で寝ていたので、女達にはテントの外で着替えてもらった。
周りに人はいないし、そもそも、この世界は女の着替えに需要が無いので問題ない。
パンツ装着時に、誰かがテント倒して丸見えになったり、何故か裸の女が、俺の上に倒れてきたりとか、そんな絶対にあり得ないような事故が起きたら、俺が死んでしまうかもしれないと思って、超恐れていたが、無事パンツは装着された。
良かった、これで一安心だと思ったが、ユーリとゼストが、やっぱりパンツ姿を見せにきた。
「ちゃんと洗ったから、だいじょうぶです」
いや、パンツ姿自体、俺は大丈夫じゃねーんだよ!!!
それに、それは俺が好きなパンツじゃないぞと思った。パンツ以外は可愛いと思うけど。
それより、上半身の方が危険だから何とかしてほしかった。
でも、ちょっと匂い出ちゃったみたいで喜んでた。
まあ、確かに自分が男から見て魅力的である証拠みたいなもんだから、嬉しいのかもしれないなとは思った。
それを見て対抗しようと思ったのだと思うが、
テーラがあの勝負パジャマみたいなの持ってきてて、あれを着てくっつくのでダッシュで逃げた。
俺が倒れてしまう。
今度はリナも見逃してくれた。




