6-15.それは白馬の王子さまじゃなくて、白髪交じりの老人です(後編)
今回やっとリーディアが妻仲間に入ります。そして一区切りついたので6章は終わりです。
次の章は竜の話になっていきます。
「俺は、トート森では、”大鎧の遣いの竜”ってことになってるんだが」と言うと、
アイスが「大鎧の書はトルテラのことが書かれてるんだろ? トルテラが大鎧に決まってるよ」と言った。
俺は驚いた。
「は? 大鎧の書が俺の書? その話どこから?」と聞くと、
「テーラが言ってたから」とエスティアが答えた。
「大鎧の書に、何も書かれてないから大丈夫だって、勇者迷宮行ったとき説明しただろ」とアイスが言う。
あのときの話か。何を言ってるのか意味が分からなかったが、そういう話だったのか。
「大鎧の書は、森に飛んでくる竜の話なの」とテーラが言った。
なんだよそれ、そんなの初耳だぞ。
やっぱ俺、【一番大きな竜】が生まれ変わった異世界転生で日本で暮らしてたのか!
異世界人に生まれ変わったのに戻って来ちゃったんだ。
どうせだったら、日本で無双する話にしてくれよ!
しかも、こんな歳になってから戻ってきて、この世界覚えてもいないし、いったい何の意味があるんだよ!
と考えていると、テーラが優しく俺の手を取った。
どうせまた酷いこと言うんだろうと思ったら、「私は待ってたんだよ」と言った。
超驚いた!なんだよ、それ、普通のヒロインみたいじゃないか!
あまりの驚きに、心がオーバーヒートして俺はその場に倒れた。
「テーラがヒロインみたいなことを……」と言うと、テーラが優しく、「ヒロインだよ」と言った。何で会話が成立するんだよ!と突っ込みを入れつつ俺は気を失った。
テーラはヒロインだったのか……
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トルテラが倒れてる隙に、今後どうするか作戦を練ることになった。
【大鎧の書】に新たな文字が浮かんだ。
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勇者は神に力を与え
神の子は残った。
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ここに書かれた子というのは、人の子ではない可能性が高いのだ。
「この先のことは知らないの。
でも、人の子を残さないとしたら、トルテラはいつ消えてもおかしくない」
とテーラが言う。
「消えてしまうってどういうこと?」
「竜の世界に行ってしまうから」
「行く前に何かできるのか?」
「わからない。でも、消える前に子を残せって」
「誰が?」
「お母さんが」
「ああ」
エスティアとリナは思った。
つまりシート(テーラの母)がトルテラが消える前に(性的な意味で)襲えと言っているのだ。
「竜の世界に行くのは本当だと思う」とテーラは言う。
「それを導くのが迷宮の竜?」とエスティアが言うと、テーラは頷いた。
竜は人間に関わらない。なのに、迷宮の竜は扉を開ける者……つまりトルテラが勇者装備を持つのを待っていた。
理由は、そのタイミングでトルテラを竜の世界に連れ去るため……かもしれない。
「竜の世界には自分から行くのか? それとも、無理やり連れて行かれる?」
「竜は、いつでも人間の世界にこられるって」
「でも、それだったらトルテラはいつでも帰ってこられない?」
「竜は必ず、つがいで子育てすると書いてあった。子ができれば帰ってこられないだろう」リーディアが言う。
テーラが頷いた。
トルテラに竜の子ができれば、帰ってこられないかもしれないのだ。
エスティアが言う
「あの人、竜でも殴って倒しそうだから、
たぶん何か理由があって自分から行くのだと思う」
リナが「私もそう思う」と言い、リーディアを見る。
リーディアも頷いた。
おそらく、トルテラは攫われるのではなく、自身の意思で竜の世界に行く。何かしらの理由があって。
「俺たちが全員死んだら?」とアイスが、
「寿命だったら問題ないね」とリナが返す。
「その前にトルテラが死ぬだろ」とアイスが言うが、
「でも、トルテラ竜かもしれないでしょ。
何歳まで生きれるんだろうね?」とエスティアが言った。
「子供作れば寿命削れるんじゃないか?」とリナが言う。
予想で話をしているので、どうにもまとまらない。
そのタイミングで、リーディアの従者が、最新の正伝書の最後の部分の写しを持ってきた。
鎧の名前はゴーデンタイムになっている。
ところが、子供のことは書かれていない。
勇者が子を残すなら、勇者より前に子を作れば、他の女も子を持てるかもしれなかった。
ところが、正伝書に子のことは書かれていなかった。
「でも、当然だよね。あの人、絶対私たちを妻だと思ってないし、倒れちゃうし」
「そうだな。私は抜け駆けはしない。
約束しよう。正伝書に子のことが書かれても書かれなくとも」
リーディアが答える。
そこで話がきれいにいまとまったように見えたが、そのタイミングで「俺、子供欲しかった」と言ってアイスが泣き出してしまった。
皆気持ちはよく分かった。神の子の字を見た時、人の子を残すのだと思ったから。
期待させておいて、やっぱり駄目でしたとなると、諦めきれないときもある。
「子供は別として、とりあえず、なるべく長く一緒に居られるようにしよう」とリナが言う。
すると、テーラがアイスに優しく寄り添い「トルテラにパンツ姿見せてあげたら?」と言った。
アイスは「そうだな、トルテラ俺のパンツ姿大好きだから、どこにも行かないよな」と言った。泣きながら。
でも、もちろんテーラは心の中で”トルテラは私のパンツの方が好き”と思っていた。
すると、リーディアがまた残念なことを言い出した。
「そうだな、ここは私が最高のくっころを披露して、人間の世界を去る気を無くさせてやろう!」と言ったが、くっころは止めた方が……と皆思った。むしろ愛想尽かしてトルテラが旅立つ日が近付いてしまう……そんな風に思って、テキトーにいろいろ言って、くっころ披露はやめさせた。
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ところが問題はあっさり解決した。
リーディアは、正伝書の中身にはだいぶ詳しかったが、もっと基本的な部分が抜けていた。
ベルタナ勇生会の残念さんがいたので捕まえて、どういうときに正伝書の内容が変わるのか聞いてるうちに判明したのだが、そもそも、正伝書は預言書の要約であり、預言書は勇者の子孫に向けて書かれたという位置付けのものなのだ。
書かれた時点で予言だったので預言書と呼ばれているが、勇者の子孫向けに書かれた歴史書なのだ。
そこで、先代勇者と2代目勇者の、どちらの子孫に向けたものか問い合わせをした結果、元の預言書の解釈で揉めた末、先代と2代目の2人の子孫でないと辻褄が合わないとして、先代勇者と2代目勇者の間に産まれた子と、その子孫という記載が追記された。
正伝書が正しいとすれば、これでリーディアとトルテラの子が産まれる。
リーディアに子ができるまでは、トルテラはこの世界に留まるはずだ。
正伝書も、勇者本も、もうこの先は書かれていない。あとは、子を残せれば終わりだ。
それまでの時を大事に過ごそう。
皆、そう思った。
アイスも笑顔が戻った。
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「これが新婚初夜というわけだ」とリーディアが言うが、「妻じゃないけどな」と却下する。
延び延びになっていたリーディアの添い寝デビューの日がやっと来たのだ。
「このように大人の男女が一緒に寝る仲を夫婦というのだ」とリーディアが言う。
「じゃあやめるか?」と答えると。「まあいい、今は」とリーディアが答えた。
リーディアは発言はいつも通りだったが、見るからに緊張していた。
ずっとお預けになっていたことに加え、誠意を見せてくれたので、エスティアたちはリーディアを尊重して、今日はトルテラと2人で寝る権利を与えたのだった。
通常は添い寝は両側につくので3人で寝る。この日だけは特別に2人で寝る。
リーディアは、はじめは夫婦は裸で寝るものだとか言っていたが、その割には寝間着姿もなかなか見せず、モジモジしていた。
恋愛に関しては、言うことに行動が、全く伴っていなかった。
外野も、はじめは応援しつつ警戒していたが、こんな感じなので、今は生温かく見守っていた。
もちろん、いきなりそんなことは起きないだろうとは思いつつも、リーディアとトルテラの間に子供ができると、トルテラに残されたイベントはすべて終わってしまうのだ。一応監視はしていた。
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俺は、ベッドに寝転がるが、足がはみ出るので急遽延長した部分に段差があって寝づらい。
リーディアは隣にいるものの、けっこう離れていて近寄ってこない。
これで良いのだろうか?とは思ったが、今日が最初で最後ということも無いと思うので、とりあえず放置しておいた。
すぐ横のベッドで、リーディアの従者がたぶん俺に呪いかけてる感じだった。
俺は呪いやめさせてほしい気持ちでいっぱいだったが、リーディアはそれどころではないようで、気付いてくれない。
微妙な感じでいると、テーラがやってきて、リーディアをズリズリスライドさせて俺の横にくっつけた。そして、片手片足を俺の体に乗っける。
「おお、顔が近い」とリーディアが言った。
背が違いすぎて、日ごろは横に並んでも顔はかなり離れているのだ。
そして「こうだよ」と言ってリーディアをぐいぐい押した。
リーディアは「やめろ、やりすぎだ」とか言いつつも、あんまり抵抗してるように見えない。
押すとリーディアの胸がぷよんぷよん当たる。
でかいと当たるのか! 普通サイズくらいだと、案外胸は当たらないのだが、リーディアのはでかかった。鍛えまくってるので腕とか足は筋肉で硬いのに胸だけは無駄に柔らかいので触れるとすぐわかるのだ。
俺は、早くも動悸が激しくなってきた。思わず「テーラ、やめ、やめ!」と言った。
押すのをやめてくれたが、すごい深刻そうな顔をして、テーラが「トルテラは大きなおっぱいが好きなの?」と言った。
あれ? デフォルトで勝手に胸でかいのが好きって思われるんじゃないのか?と思いつつも、息を整える。
リーディアが「おお!この匂い。そうか!気に入ってくれたか、この胸を!」とか言って抱き着いてきて胸を押し付けてくる、俺は動悸と眩暈でやばくなってきた。
リーディアは「おっぱいが、おおきくて!」とか言いながら泣いた。
”なんですぐ泣くんだ、この女は!”と思った。
泣きながら抱き着いて顔を押し付けてくる。
鼻水拭いてるんだか、匂い嗅いでるんだかわからないけど、それをやられると俺は力が抜けて、もう駄目だと思ってるところに、なんかテーラが絶望してる姿が見えた。
違うんだ、俺はでかいのが好きなんじゃなくて、でかいから当たりやすくて困ってるんだ!……と思いつつ気を失った。
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リーディアはすごく幸せだった。
大好きで本当はすぐにでも抱き着いてしまいたくて仕方なかったのに、今までずっと我慢していたのだ。実際に一緒に寝ると思った以上にでかかった。
でかくて強い男は良いものだ。心底そう思った。
そして、その大好きな相手が自分の胸が当たっただけで興奮してダウンしてしまったのだ。
たったそれだけのことがすごく幸せに感じた。
この幸せをなるべく長く味わっていたい。そう思った。
だから、子供はもう少し先にしよう。そう思ったのだった。
この日はでっかい抱き枕で幸せに寝られた。
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テーラは、絶望した顔をしてアイスのところまでトボトボと歩いていくと、アイスの肩をバンバンと叩いた。
すると、テーラの絶望感がアイスにも伝染した。
テーラの胸は控えめだが、少し丸みがあって女の子っぽい体つきだった。
それと比べてアイスは筋肉質で高身長だが、胸はその身長に見合わないかなり控えめなものだった。
アイスは、テーラに肩を叩かれるまでは、さほど気にしていなかったのだが、肩を叩かれると、すごく心配になってきてしまったのだ。
誰かの胸がでかいと、そうでない娘たちのイベントフラグが立ってしまうのだった。




