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6-9.水洗トイレは神フラグ

勇者鎧を取りに行ったら、リーディアと言うとっても残念な勇者が添付されてきました。捨てるコマンドを選択しても、”それを捨てるなんて とんでもない!”と表示されて捨てることができません。この勇者、キングボンビーなのです。

このキングボンビーが軍に喧嘩売ってきたせいで、しばらくタンガレアという外国に逃れることになりました。

挿絵(By みてみん)


俺が【日本】に住んでた頃、”ゴールデンタイム”という言葉があった。

俺には、この世界とは別の場所に住んでいたという記憶がある。


”ゴールデンタイム”という言葉は、俺が若いころは使われていたが、

もしかしたら、既に【死語】だったかもしれない。


【死語】というのは、かつて盛んに使われた時代があったが、

今では使われなくなった言葉という意味だ。

つまり、若い人には通じない言葉。


俺の国には”ゴールデンタイム”、そんな言葉があった。


あの世界には、テレビという映像を映し出す機械があった。

俺が子供のころからテレビはあったが、当時はテレビは放送を視聴する専用の機械だった。

まだテレビに繋いで使うゲーム機も普及しておらず、ビデオも普及していないのでテレビ放送の録画もできなかったころ、テレビはリアルタイムでテレビ放送を見る専用の機械だった。


あの時代、娯楽の王様は間違いなくテレビだった。

その威力は凄まじく、テレビ放送を見るというのは多くの人にとって最優先すべき項目だった。


「今日はテレビ見るから早く帰る」……とか、そんなのが帰る理由として通用するくらいだった。

そんな時代で、多くの人がテレビにかじりついて見てた。


そんな状況でも、昼間は多くの人が学校や職場に行くので、テレビを見ることができない人が多い時間というのが存在する。

そんな時間にテレビを見ているのは、暇な老人が多いので、時代劇の再放送を流しておく。

だいたい、どの時間にどういう層の人がテレビを見るかはある程度分かっているので、金をかけても意味のない時間帯には、昔作って既に1回以上流したものを再度放送する。


その逆に、最も多くの人がテレビを見てる時間帯を、”ゴールデンタイム”と呼んでいた。

学校や職場から家に戻ってきたころなので、夕食時くらいの時間を指していた。


テレビは、1度に1つの番組しか表示できない。一番見たいものを選んで見ることになる。

そのため、なるべく多くの人に見てもらうために、ゴールデンタイムに最も人気のある番組を流すことが多かった。そのため、面白い番組はこの時間帯に集中していた。


”ゴールデンタイム”

たぶん、あれは、テレビ放送があったから生まれた言葉だと思うのだ。


この世界にはテレビ放送なんて無い。だから、”ゴールデンタイム”という言葉も無かった。

ところが、何故かこの言葉が世に広まってしまった。


その経緯がまた、よくわからないものだった。

俺の国(日本)では、すぐ流すからトイレが清潔であることを説明したら、流れたものがどこに行くのか聞くので下水の話をすると、地下にう〇こが流れる川がある国になってしまった。


俺は下水管の話をしたと思うのだが、下水は川になってしまった。


「地下に住む人がかわいそう」と言うので、下水に人は住めないと言ったのだが、貧民や奴隷は地下に落とされて、そこに住む者は人間とは認められない、覇者と下層に分かれる修羅の国になった。


日本は、そんな国じゃねーよ!!!と思った。


こいつら好き勝手に解釈するからな。


俺は、何故か”ゴールデンタイム”の国から来た男ということになっている。

確かに、「ゴールデンタイムの国から来たんだろ」と言われたので、そうだと答えた。

俺は、ゴールデンタイムの言葉が有った国、テレビがある国から来たと言う意味で答えたんだよ!!

すっかり、意味がねじ曲がって伝わってしまった。


俺は”ゴールデンタイムと言う言葉のある国”のつもりで言ったのだが、”ゴールデンタイム”と言う名の、修羅の国から来たことになっているのだ。


俺の国はそんな修羅の国ではない。


そんなわけで、正しい意味に近付けるために、夕食時の皆が揃ってる時間をゴールデンタイムと呼ぶようにした。


ゴールデンタイムの意味を、修羅の国から、本来の意味に矯正するためだ。

大した話ではない。言葉の意味を正す。

ただ、それだけで終わるはずだった。


ところが、

しばらくしたら、リーディアの勇者鎧の名前が”ゴールデンタイム”になっていた。


俺は”なんでだよ!!!!!!”と全力で突っ込みを入れた。

俺の心の中で。



理由を聞いたら、こんな感じだった。


元部下が勧誘に来てうるさいので、あるときリーディアがどこかに出かけて行って、演説をかましてきた。

そのとき、何故か、”ゴールデンタイム”と言う言葉を、夕食時の意味で使ったらしく、勇者の鎧を着て胸に握り拳を当て、「このゴールデンタイムに」と言った。兵士たちは当然”ゴールデンタイム”なんて言葉は知らないので鎧の名前が”ゴールデンタイム”だと思った。


巡り巡って公式文書にもそのように記載されてしまった。

公文書に記載されれば、それが真実になる。


まあ、経緯はわかった。


さらにおまけがある。


俺は、ゴールデンタイムの国から来た男ということになっていて、勇者の武器を作れる神の国から来たことになった。

伝承で、勇者の装備は神の国で作られたことになっているためだ。


情報は伝聞で伝わる世界では、話は好き勝手に変わっていくのだ。


これじゃ、俺は神の世界から来て、勇者を選んだ神になってしまう。もう絶望しかない。

俺は、水洗トイレが引き金になっても神になる駄目な男なのだと思うとヘナっと倒れてしまった。


「あれ? どうしたの?」

俺は気力が萎えて、しばらくへなっとしたままだったが、

無事エスティアに発見してもらえて、エスティアが介抱してくれたので、俺のエスティアに対する忠誠度が少し上がった。


========


しばらくタンガレアに逃げることにした。


タンガレアと言うのは、外国みたいな意味で、トート森もダルガノードも全部一まとめで連合領。

そして、連合領の外の地域をタンガレアと一括りで呼んでいる。

少なくとも、連合領の南側はタンガレアと呼ばれている。


タンガレアも連合領みたいな感じで、小さな領ごとに分かれているようだ。


長期の旅に出るので、いろいろ準備が必要だ。

消耗品をいろいろ買い足さなきゃならない。


軍を辞めて一般人のはずなのに、何故かリーディアには付き人が居て、いろいろやってくれる。

その付き人に俺が直接言っても無視されるが、俺の言葉をリーディアがリレーすると動く。

なんか腹立つ。


俺達には、軍の見張りがついていて、出発準備しているとバレる。

このリーディアの付き人は相当できるやつで、いろんな情報を持ってきてリーディアに伝える。

リーディアはそれを俺にリレーする。なんか腹立つ。


それはそうと、リーディアの読みは当たりで、軍の先遣は騎士隊で志願したからだそうだ。


って、ことは、コイツらを真正面から撃破しちゃうと、次にでかいのが来るかもしれないのだ。


まあ、説得が目的らしいから、希望としてはリーディアを引き取ってもらって、俺達がタンガレアに逃げることで手打ちにして欲しいのだが。


でも、どうせリーディアは帰らないので、来る前に逃げよう。そう思っていた。


ところが、あっさり迎え撃つことになった。

さんざん”軍は来ないからゆっくりでいい”とか言っておいて、リーディアが直前まで情報止めてやがった。


騎士隊の皆さんが、いつも通りリーディアに軍に戻るように説得する。

「今日こそは隊長にお帰りいただく」

「我々が失敗すれば、次は上が動きます。もう後がありません」


俺は、どうぞどうぞと思ったのだが、何故か俺に言ってくる。


「リーディアに言えよ」と言うとリーディアは、

「我が(あるじ)が軍に行くなら同行しよう」と言う。


「おまえ一人でいけよ」と言うと、リーディアの元部下が「忠誠を誓ったリーディア様になんという扱いを」とか言ってやっぱり俺が悪者になるのだ。

実は、こいつらの目的は、“俺を悪者にする事“で、リーディア連れ帰る気無いだろと思った。


その割には「リーディア様を返せ!」とか言うし、

だから、リーディアに直接言えよと思ったが、めんどくさくなった。


騎士隊が「力ずくでも」とか言い出すと、

リーディアは「あなたを討つために練った技です。是非とも受けていただきたい」と言う。


なるほど。はじめからそれが目的だったのか。

リーディアなりの、けじめなのだろう。

「そういう事なら、受けなきゃならんのだろう」


蹴散らして終わりで何の意味があるのかと思ったが、なかなか見事なものだった。


リーディアが対巨人用に対策練って育てまくったのだ。

この技があれば、前の2.5m巨人とでも、俺が押さえた状態なら余裕で倒せそうだった。


もちろん俺が勝った。だが感動した。

鍛えればここまで強くなれるのかと。


俺は10秒くらいで崩れると思ってたのに3分くらい耐えやがったのだ。

勝つのが目的であれば、防御に回ってる騎士と長槍はテキトーに相手せずに横に回って、端から切り崩していけば良いのだが、正面から行くと、けっこう侮れないものがあった。


攻撃のタイミングが絶妙で、長槍避けると、同時に矢が来る。

こいつら本気で撃ってくるのだ。


矢がなければ、即終わるが、このタイミングでやられると、攻撃まで手が回らない。


なかなか考えてある。さらに、強引に寄ると剣が来る。

そして、その状態から蹴り入れても、耐えるのだ。

まさか蹴りに耐えると思わなかった。


この世界では俺はかなり大きい。体重もある。

なので、蹴れば簡単に崩れると思った。

手加減はしたかもしれない。それでも、十分驚くレベルだった。


俺は正直こいつらを見くびっていた。


これは真正面から当たらないと失礼に当たると思い、真面目に相手することにした。

矢が切れるか長槍を疲れさせれば、簡単に行けるが、そんなことはせず全力が出せてる状態を正面から突破しないと失礼だろうと思ったのだ。


わざわざ正面から行く。


まずは、槍がくる。槍をかわすと矢が来る。これを避けるのは、相当難しい。

槍のせいで、動きが制限される。


その体勢では十分な体重を乗せれず、蹴りを入れるが倒れない。


完璧に蹴りが決まるのを妨害してきて、倒し切れないのだ。


騎士隊のブロックも堅く、1人を狙っても、集団で支えるような工夫があるようだ。

なかなか倒れない。

俺に蹴られて耐えるって、どんなんだよと思った。


とは言え、同じ盾を狙って何度か蹴ったら、潰れたので、その左右を衝撃でよろけた隙に盾で掬って放り投げる。


盾を持った騎士の壁が無くなれば、槍兵は剣に持ち替えるが、掬っては投げで終わった。

一度寄られると長槍持ったままでは攻撃できない。それはわかる。

剣のリーチでも盾に乗った状態なら攻撃は届くかもしれないけど、体重の乗ってない攻撃受けても、あんまり痛くない。

この世界の剣、直撃したら相当痛いけど、鋭利ではない。


踏みつけたり、放り投げたりはしたが、大怪我はさせてないはずだ。


べつに頼まれるまでもなく、殺すつもりはなかったが、元残念騎士隊長のリーディアになるべく怪我させないで欲しいと頼まれたのだ。

※”殺すつもりはなかった”と書いてますが、実際は大怪我しないように配慮してます。


残念さんは残念だが、部下思いの良い子でもあるのだ。


俺は感動したので、褒めた。

「お前らすげーな、ビックリするほど強くなってるぞ。よく頑張った」


よく知る者なら本気で誉めてるのが分かるのだが、騎士隊のメンバーは皮肉だと思った。


そりゃそうだ、リーディアと共に考案し、さんざん訓練を積んだ対巨人兼トルテラ必勝布陣で挑み、真正面から撃破されたのだ。


そのとき


「くっ、殺せ」と、騎士の1人が言った。


おお、ここで出るのかこのセリフが!

俺は、そんなに特別好きなセリフでもないと思っていたが、実際に聞くと感動だ。


心が満足感で、いっぱいになった。


これが本物のくっころなのか!

凄い威力だった。感動のあまり声がでない、指でリーディアに解放を促す。

”ありがとう、名前も知らないくっころさん”、あとで残念さんに名前を聞いておこう。


リーディアは

「私は軍に戻る気はない。伝えておいて欲しい。

見ての通り、この男を撃破するのは無理だ。

 我々は去る。軍は独自に新たな勇者を探して欲しい」

と言った。


そして、「強くなったわね」と付け加えると、騎士隊が笑顔になった。

こんなに慕われてるのに、辞めて俺のとこ来る必要無いのにと思う。


「ほら、早く帰った、帰った」なかなか去ろうとしない騎士隊をリーディアが追い払う。



俺は、余韻を堪能しつつ「でも、女騎士のくっころはいいな。男のロマンだよ」と口にしてしまった。

すると、

「ねぇ、くっころって何?」とエスティアに聞かれた。


この世界では、くっころはあまり知られていないようなので説明する。


「”くっ殺せっ”って言うやつだ。さっきの騎士が言ってただろ」


そして俺は、心の中で、この”くっころ”を一生の宝にして生きようと思った。

例えボケても、この”くっころ”の記憶だけは忘れない。


「そんなに”くっころ”が好きなんだ」

とかエスティアが言い出したので、理不尽なお説教フラグが気になったが、俺の感動は止まらなかった。


「力を出し切って、それでも負けて、

 悔しかっただろうな、それで最後に言う言葉が、くっ殺せだ」


と言うと、

今度はリーディアが、「それが、そんなに好きなのだな」と言った。


俺が「もちろんだ、男のロマンだからな」と答えると、


「そうか」と言って納得したようだ。

何かダメなスイッチが入ったようだ。



「く、ふふフハハハ。ついにワタクシの時代が来たようね。

 最強の騎士であるこのワタクシが最高のくっころをお見せしますわ」


なんか、ものすごく駄目な感じがした。


「さあ、どこからでもかかってきなさい」

「さあ」、

「いざ」


時代劇かよ。


いや、”くっころ”は、そう言うのじゃないから、あれが素で出ないと駄目だ。


超歓喜の表情で言ってもダメなんだぞ。


って言うか、俺の”くっころ”は1つで十分なのさ。


それはそうと、俺を撃破するのは無理とかリーディアが言ってたが、あれって、大軍フラグなんじゃねーか?と思った。


……もちろん大軍フラグは立ってた。

挿絵(By みてみん)

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