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5-2.迷宮ボスの100年問題と勇者装備

よく迷宮の奥に巨大なボスがいますが、彼らの衣食住……というか、衛生面とかどうなっているのでしょうか?

今回は死の可能性も感じながら挑んだトルテラですが、どうなってしまうのでしょうか?

挿絵(By みてみん)


正直、今回は俺は死ぬかもしれないと思っている。

日本の基準で考えたらまだまだ死ぬには早いが、この世界の基準で言ったら俺は長生きしすぎだ。

正直、俺は俺が死んでもそんなに悔いはない。


俺は若いこの娘たちを巻き込みたくないんだよ!


本当は迷宮に連れて行きたくないのだが、仕方がないので連れてきた。

女達はお気軽で特に命の危険は感じてないようだ。


”俺がこんなに心配してるのに!お前らのせいで俺が禿げるわ!ボケー”と叫んだ。心の中で。


「ボス部屋に入るのは、俺一人だぞ。

 お前らが離れるまで俺はボス部屋には入らない。これだけは絶対に守れよ」


「それ、さっき聞いた」


俺も、さっき言ったことは覚えているよ!!

大事なことだから何度も言ってるのだ。

「守らなかったら、生きて帰れても一生口きかないからな」と言うと、

「一生口きかないって恐ろしい言葉だな」とリナが言う。

ここではあまり使わない表現のようだ。

「とにかく、それだけは絶対に守れよ」と念押しすると、全員が頷いた。


「よし。じゃあ行くか」


迷宮内は雑魚が若干残ってたが、女達の練習用にした。

相変わらずテーラの攻撃はまともに当たらない。

ある程度大きな敵なら当たりはするのだが、ダメージに繋がらない。

小さいやつには当たらない。

テーラの力じゃ盾振り回しても、たいしたダメージ与えられない。

このパターンは雑魚にも弱い。


エスティアと組んで、欠点を補うようにしたほうが良さそうだ。

エスティアは器用貧乏で雑魚に強いし、弓も持っているが、守りも一撃の強さも無いので、大物には弱い。

これでもうちの連中は平均レベルと比べれば、だいぶ強めらしいが、もし俺が居なくなったら、なるべく安全な仕事を選んでほしいと思うのだ。


========


迷宮内はほとんど敵がいなかったので1時間くらいで着いてしまった。


再びやってきた。

俺が扉を開いたせいでいろいろフラグが立ち、再び来る羽目に陥ってしまった。

迷宮深部のボス部屋の前だ。

俺はあの時、扉はスルーしようとしたのに……


聞いた話しの通り、この扉は俺にしか開けないようだ。

皆に試してもらったが、誰も開けることはできなかった。



ボス部屋を前に、アイスが竜のウ〇コの話をしていた。

”俺が死ぬかもしれないと思ってるときに何故!”と思ったが、けっこう切実な問題であった。


「でっかいドラゴンのウ〇コってどのくらいでかいのかな」と言い、

「まあ、このくらいだとする……」とアイスが両腕で大きな輪を描く。

「……で、迷宮に100年いたとする。

 そうすると当然、100年分たまってるはずだろ」


まあ、確かにそうかもしれないが、そんなに真面目に話さないで欲しい。


「どんだけの量になるか。本当に100年居たら、そんなのほとんどウ〇コ迷宮だろ。

 そんなところで戦いたいか?」


まったく、そのとおりだ。

どう考えても、そんなところで戦いたくないし、俺はそんなところで死にたくない。


とても下らない話ではあるが、本当にそんな状態だったら、ボス部屋入ったら、

臭すぎて戦う前から死んでしまうかもしれない。


そう言えば、日本に住んでたときも、外国には蝙蝠の糞尿が毒ガス化して、

入ったら死ぬ洞窟とか有ったような気がする。


そこで「前に行ったとき、臭くなかった」とテーラが言う。


そういやそうだった。以前、ボス部屋の扉を開けたことがある。

テーラは少しだが入ったこともある。

皆、入り口から中を覗いていたはずだが、確かそんな酷い臭いはしなかったはずだ。


どういう仕組みなのだろう?

ボスは、ずっと休眠状態でその間は飲まず食わず……とかだったら?100年眠る?

日本だったらあり得ないけど、ここは魔法がある世界だからな……


そんなことを考えつつ、ボス部屋の扉を開ける。やはり俺は簡単に開けられる。力の問題ではない。


別に酷い臭いはしない。

硫黄っぽい臭いはあるので、まあ多少は臭いと言えば臭いが、温泉とかそんな感じの臭いだ。

そりゃそうだよな。前に来たときも、そんなに酷い臭いがした記憶はないからな。



女たちは暗視と遠目で見ているようだ。

「ヤバい、う〇こドラゴンだ。喰われたらう〇こになるぞ」とアイスが言った。

何に食われても一緒ではあるが、おもしろい表現だなと思った。

やはり奥に巨大なやつが居るようだ。

俺はまた裸の女が出てきて事故が起きると困るので、暗視が使えないのだ。


とりあえず、扉を閉める。閉める方は誰でもできるようだ。


ボス部屋まで来たは良いものの、どうすれば良いのだろうか?

いきなりアレのところまで行けばいいのか? あのでかいやつのところに。

あんなのと戦闘になったら絶対勝てない保証付きだ。


========


とりあえずは、扉の仕組みを調べることにした。


扉を俺が少しだけ開けた状態から開くことはできるか試したところ、閉じ切らなければ俺以外でも自由に動かせることが分かった。


そうこうしてると、ボス部屋の奥から何かがやってきた。

俺は気配は分かるが、暗視や遠目は事故が起きるとまずいので使っていない。


「誰か来るぞ」。リナが言った。暗視で見えてるようだ。

扉を閉じようとすると「待ちなさい」と言うのが聞こえた。

正直、ボス部屋まで来たは良いものの、どうすれば良いか困っていたので、話を聞くことにした。


すると、女が現れた。前回見た裸の女だった。今回は普通に服を着ているが。


「扉の前で止まれ」と言うと、止まった。


戦うような服装では無く、普通の服。

スカートの丈が長く、村民よりも少し高貴な人の普段着とかそんな感じか。


この女は冒険者では無さそうだ。

竜が人間を従えてるのか、その割には前回は裸だったし堂々して見えた。


もしかして、竜は人間に化けることができる? そんなラノベレベルの話があるだろうか?


その女は言う「今はまだここに来るべきではありません」

「まずは、勇者の装備を集めるのです」……と言う。モブキャラか?


どう見ても見た目には強そうでは無いどころか武装も剣を持つだけ。

だが、たぶん強いということはわかる。

敵対する感じでは無く、訪れる順番があって、今は戦う場面では無さそうだと思った。


迷宮の竜が導く……だったはずだが、勇者が来る迷宮だったようだ。来る迷宮違ったのかもしれない。紛らわしいな……と思ったが、でも、ここだよな……奥にでかいやつ居るし……と思って


「迷宮の竜が導く」と言ってみた。


女が思い切りビクっとなった。


「わら……しは、ここを守るもので、あなた方に、き、危害を加えるつもりはおじゃ……りません」と答えた。


わらし?(わらし)?おじゃ?なんだ、この残念な感じは。


もしかしたら俺と同じように人間の形をした竜だか、竜の遣いかもしれないと思って、

「あなたは竜ではありませんか?」と聞いてみた。


「そ、そんなことは、無いでおじゃ、ありません」


「にんげ、……こ、この国の言葉は慣れておら……」


話が進まないので、直に聞いてみた。死ぬ覚悟して来たのにコレなので、俺はすっかり気が緩んでしまったのだ。


「この奥の竜のところから来ませんでしたか?」、

続けて「俺を100年待ってたのでは無いのでしょうか?」と聞くと、


「竜などおら……おりませ」

「竜などおりません。100年待ってたわけでも」

「100年分のう、う、うん、うう泣き出した」「久しぶりに話す言葉がう、ううん、酷いのじゃ」


ああ、悪いことした。100年分のう〇この話聞いてたのか。


気の毒に思って、心にもないことをサービスで言ってしまう。


「竜が人間に化けて、すげー美人だったりとか、すげーありがちだよな」と言ってみた。


すると、

「わ、妾は美人かもしれないが人間なのじゃ!」と言った。


ヤバい、コレ残念なやつだ。関わらないようにしないと。


振り返ると、皆が頷いた。

みんなの心が一つになった。


「遠目で見たけど、奥に居るのはこの世のものとは思えないほどすげー立派な竜だったな」と俺が言うと、


他の者も話を合わせる。


「あんな存在が実在したとは」

「一目見れただけで、満足だ」


「ほっほっほっ。そうであろう。そうであろう」

竜が化けてそうな女は瞬時に復活した。


「お主らはなかなか見どころがある故、特別に教えてやろう」

 

「何を隠そう、妾が竜の分身であるぞ。」


「おお、やはりそうでしたか」


大袈裟に驚いて見せる。竜が化けたのではなく分身らしい。こいつが竜の遣いか?


「いや、我々のような小さな存在が、偉大な竜の分身と話をするなど恐れ多い」


「良い物を見た」


「末代まで語り継ごう」


と言って、その場を去ろうとする。



「お、ま、待つのじゃ、妾が一つ良い提案を」


「いや我々のような小さな存在が偉大な竜の分身さまと話をするなど」

と言って去ろうとすると、


「待て待て、これならどうじゃ」と金貨やら装飾品などを見せびらかす。

はじめから宝で釣るつもりだったようだ。



「どうする? 一応聞いとくか」


俺は、たちまち宝に釣られた。

実は、ちょっと聞いておきたいこともあったのだ。


「お主、前にもここに来たであろう」


いきなり語り始めたので、説明用のモブキャラみたいなモノなのかと思って、とりあえず話を聞いた。


「扉が開いたのでそろそろ起きようと思ったのじゃが、低血圧での。

 近付いてくるのを待っておったのじゃが、一向に近寄ってこぬ」


低血圧なんて言葉があるのか!


「扉を開いておいて入ってこないとは、なんと無礼なやつと思わんでもなかったが、

 魅力的な魔力を感じた故、人の姿で様子を伺おうとしたのじゃが、

 脳天まで痺れるような甘美な匂いを感じた故、急ぎ捉えようと思ったときには、

 香りを残して居なくなっておった。

 惜しいことをしたと思っておったが、間近に見れば、これはまた凄まじい」


なんか、いきなり食われそうな勢いなので、俺はちょっと引いた。


匂いって、皆が良い匂いって言ってるやつだよな……俺にはその匂いは分からんが。

今も匂いしてるんだろうか?


それはともかくとして、竜の分身でもその匂い好きなのか。

まずいな、人間以外の生き物にも好かれるとなると、俺が”くっころ”言わなきゃならない日が来るかもしれない。


「匂いって、美味そうとかそういうものか?」と聞いてみた。


「そうじゃのう。美味そうでもあるが、好きな匂いの男と子を成したいと思うのが普通じゃ」


なんか、女達が深々と頷いたのを見て俺は身の危険を感じ、逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。

でも、話を聞かないことには、逃げれない。


「その匂いは魔力の強さと性質の影響を強く受ける。

 良い匂いと感じるなら、その性質を欲している相手というわけじゃな」


「雄が恋をしたとき匂いは強くなるのじゃが、日頃から匂いがすると言うのも変じゃのう」

「元々匂いが強いのかのう?」


俺は臭いが強いのか……やっぱり、俺は一人山奥で暮らしていこうと思う。


そういえば、子供の頃に見た少女アニメでも本編と全く関係ない見えそうで見えない絶妙なエンディングで香りはマジックって言ってたな。などという考えが頭に浮かんだ。


やっぱ、香りはマジックなんだ!


「実は妾は適齢期での、同族と出会うことは滅多に無い。相性というものもある。

 お主となら妾と子をなすこともできようぞ。どうじゃ?」


もしかして、竜の遣いが大鎧の遣い捜してる理由ってこれなのか?


”婚活?”


竜の分身は竜の分身同士で子を作るのか?

もしかして、俺は人間でも竜でもなく竜の分身?


「トルテラはやらん。コイツ、食うつもりなんだよ」とアイスが言い、剣を構える。


まずいな、ボス部屋に入らずに戦闘になるとは思わなかった。

戦闘に備える。


「待て待て、お主らと戦う気は無い。宝を持って帰ってよいぞ」と竜の分身という女が言った。


ずいぶんとあっさり。いや、あっさりしすぎだ。


「ずいぶんとあっさりしているな。何か隠してるだろ」と言うと、


「ほう気付いたか、勘も良いのう。お主は再び妾と会う」と言った。


だから、今急ぐ必要は無いのか。

でも、あんまり会いたいとも思わないのだが。


「まずは勇者の装備を持って参れ。話はそれからじゃ」


だから、勇者の装備が必要な理由がわからねーんだよ!と思ったが(こら)える。


なんとか落ち着いて「なぜ勇者装備が必要なのでしょう?」と聞くと、「お主のような者が、勇者の一人も持たずどうする」と言う。

「まずは勇者の装備を持って参れ。話はそれからじゃ」


余計にわからなくなった。必要なのは勇者装備なのか勇者なのか。

もう1つ聞いておきたいことがあるので勇者装備の方は諦めて、そっちを確認する。


「あなたは竜の遣いですか?」


「そう言えば、そのように呼ばれた気もするのう」


「トート森の領主と約束したという」


「おお、それはそうじゃな」


コイツだ。先代領主と約束したという竜の遣いだ。

本人は竜の分身と言っている。


「ほれ、約束の品じゃ」と言って、財宝の入った袋をくれた。巻物みたいなモノも入っている。

「勇者装備を集めてから来るのじゃぞ」


……………………


本当に追って来ることも無く、あっさり帰れた。


俺はこれで終わりにしたい気持ちでいっぱいなのだが、勇者装備とか探さないとダメなんだろうか?


あいつは同族に出会うっことは滅多に無いと言っていた。俺は竜の分身なのか?

それとも人型の竜って意味なんだろうか?


よくわからないが、俺は勇者を持ってないとおかしいらしい。

貰った財宝は、勇者装備の捜索費なんだろうか?


女たちは財宝確認して騒いでいる。

「スゲー。俺金貨こんなにたくさん見たこと無いよ」

「なんか見たこと無い金貨があるぞ。いつのものだ?」

「これなんだろう?高そうに見えないな」

「こんな暗いところじゃなくて、あとで確認しよう」


なんか財宝いっぱい貰っちゃったけど、俺は勇者装備だか勇者を探さないと駄目なんだろうか。


そういえば、大鎧の書には、脈絡もなくいきなり勇者が出てくる。

あれは、このことだったのか。

大鎧の書が正しいとすれば、神殿跡地に住んでる俺は神。

大鎧の書でも勇者本でも、勇者を決めるのは神だ。


迷宮の竜が導くと言ったが、俺は勇者になりたくない。

もちろん神にも。勇者は神が選ぶもの。

勇者なんか選んでしまったら、ますます神に近付いてしまう。


でも、竜の分身とか言ってた女の話を思い返してみると、俺は神で勇者を持って無いことがおかしいと言われたような気もするのだ。

全ての出来事は、俺に神フラグを立てさせるためのものなのだろうか?


そもそも勇者装備ってなんなんだろうか?

勇者本には鎧しか書いてなかったけど他にもあるのだろうか?

また(性的な意味で)悪戯されそうで、ちょっと怖いがキャゼリアに聞きに行くか。


それにしても、俺は仲間探しもレベル上げも、ほとんど何もしてないし動機もないのに、なんで神なんだよ。


俺は絶望した。


挿絵(By みてみん)


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