3-10.匂い暴発実験の惨劇
やっと迷宮とか竜とかありがちな展開になってきましたが、そこに匂い暴発とひっつき虫です。
あんまりありがちではありませんね。でも、こんな展開にして話を継続させることは可能なのでしょうか?そっちの方が気になりますね。
今回は、ひっつき虫現象を調べる話です。またあの医者のところに行きます。本当は変態では無いのです。トルテラが変態だと思っているだけなのです。
「そんなの聞いたこと無い。調べてもらった方が良いかも」
テーラたちがテーラのお母さんのシートに引っ付き虫のことを話すと、それはおかしいから調べてもらえということで、またあの病院で見てもらえと言う。
「あ?もしかして、またあのへんた……医者?」
「だって寿命が減ったかもしれないでしょ」
また変態医者に変なことされると思って俺は凄く嫌だったが、今回はかなり切実な問題だということで説得され、結局行くことになった。
相変わらず、俺の発言はとても弱いのだ。
「寿命より、人間かどうか。とにかく、おかしいから調べてもらった方が」 シートが俺に酷いことを言う。
でも、俺もちょっとだけ気になっていたのだ。たぶん、俺はここの普通の人とは違う。
違うのはともかく、何が違うのか知りたい。
それと、伝承との関係も。
トート森周辺には、大鎧の伝承がある。大鎧はトート森周辺の守り神だ。
既に俺はトート森の守り神テラでトルテラだと認識されてると言うのだ。
この世界には、恋の匂いと言うものが存在するが、男は恋をすると寿命が10年くらい縮んでしまう。
女がくっついて離れなくなるほど、匂いが出るのに老化が進まないとすると、そもそも人間ではない可能性がある。
大鎧は竜が人になった者と言われている。つまり、竜は人に化ける可能性がある。
伝承が本当であれば、俺は竜かもしれないというのだ。
俺のどこが竜なんだよ……と思ったが、人間に化けてるのかもしれないから、わからないのか。
でも、竜だったら人間の裸に興味無いと思うのだ。
いくら変態でも、人間の医者に竜かどうか判断してもらうのは難しいと思うのだ。
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俺は元気だが、またロバの荷車に乗せられた。意味が分からない。
それと、テントは俺専用が追加されて、道中は皆とテントが別になった。
今までとはかなり状況が違うようだ。
俺の匂いは加齢臭ではなく、恋の匂いらしいのだ。
加齢臭もするかもしれないが、よく指摘されてたのは恋の匂いの方だったようなのだ。
また、ひっつき虫が出るとまずいからと皆と隔離されてるのだ。
一人で寝るテントはびっくりするほど寂しく、いつもの狭くて寝返りだけで腹ドン、足ガン、みたいな殺伐とした環境が恋しくなった。
俺は、知らぬ間に変態になってしまったのかもしれない。
寂しくてあまり寝れなかった。
3日かけて、砦の町マータルレバーまで来てしまった。
冒険者ゴッコの勇者みたいなコスプレが多くて萎える街だ。
医者の名前はメリー。
俺的に変態疑惑のある医者だ。たぶん変態なのだ。
受付は不愛想なお姉さんに変わってた。
前の愛想が良すぎるのもなんかイラっとしたが、不愛想なのもなんかテンション下がる。
診察前に、男厳禁みたいな感じで、女だけでぞろぞろと診察室に入り、何やら相談事をしているっぽい。
俺やっぱり変なんだよな。
わざわざ、こんなところで、2回も検査しなきゃならないなんて。
匂う匂う言われて、加齢臭だと思って凹んでたのに、その臭いが良い匂いでそれも迷惑って俺産廃だよ……と思った。
良い匂いが出ると、それはそれで女が困るのだそうだ。
もうあの殺伐としたテントで、皆と一緒に寝られないのだ。
俺はもう、生きてるのが本当に嫌になってきた。
樹海というキーワードが浮かんだが、気配察知のあるこの世界で森で死ぬのは難しそうだ。
死ぬ前に、きっと誰かに見つかる。
それに、今の俺だと森の中でも普通に生活できそうだし。
むしろ熊とか駆逐して森の王者みたいになってるし、もはや樹海で死ぬのも難しい体になってしまったのだ。
国際救助隊にお願いして、あのドリル付いたマシンで穴掘ってもらって地下300mに封印してもらいたくなった。
でも気付いたのだ、救助隊だから封印とか断られそうなのだ。
俺はもう、”毎回、椰子の木倒れて悠長に発進してる場合じゃねーぞ”と思った。
発進シーンが長い時は、曲が終わっても、まだ発進していないことがあるほど長い。
それに、一番人気が輸送機ってのも、ちょっとアレな感じがする。
それにしても、長い。
…………………
…………………
ずいぶん長く待たされて、やっと案内された。
皆は思いつめたような顔をして、ぞろぞろと別の部屋に行った。
やっぱり今回は特別なんだな……と思った。
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地下に案内された。異様な圧迫感を感じる部屋だった。
そこには、気配察知ができない壁と言うのがあった。
壁自体に生き物のような気配があって、裏側の気配は察知できないのだ。
部屋自体、気配察知をできないようになっているようだ。
今は、メリーの気配しかない。
近くに居るはずのエスティア達や、受付のお姉さんの気配もわからない。
試しに歩いてもらうと確かに、壁の裏側を通るときにはメリーの気配が察知できない。
俺が裏側に回ると、メリーの気配がつかめなくなった。
なるほど。木を隠すなら森みたいな感じの道具なんだなと納得した。
今日は、これを使ってテストすると言う。
壁の向こうに誰が居るか当てる試験だという。
なんで、引っ付き虫検査に来て、そんなのやるんだよ!!と思う。
部屋から出て、少し待って部屋に入ると、メリーに
「壁の陰に人が居ます。誰だかわかりますか?」と聞かれた。
不思議とわかった。
エスティアだ。壁で使えなくなるのは気配察知の魔法だけで、それ以外の何らかの方法で気配と言うのはわかるものなんだなと思った。
「エスティア」 そう答える。
壁を横に避けると、幕付きの試着室みたいなのがあった。
幕をめくって見せる。中に居るのはエスティアだった。
凄く恥ずかしそうにしていた。
当てられると、恥ずかしくなるような、テストなのか?
もしかして、匂いで判別できるかのテストで、好きな子は匂いでわかっちゃう、みたいなやつなのだろうか?
次にまた同じテスト。部屋から出て少し待って入る。
この間に、人の入れ替えをしてるのだろう。
壁の向こうは……普通に考えればリナかテーラかアイスか……だが……その3人の誰でもない気がする。ただ、人はいるような気がする。
……これで本当は3人のうちの誰かで、エスティアを当てて、次は当てられないと何か問題が有ったりするのだろうか?なんて緊張してきた。
でもやっぱり、仲間の誰でも無さそうだ。
「知らない人」 そう答えた。
壁を横に避けて、幕をめくって見せる。受付のお姉さんだった。
すごく迷惑そうな顔をしている。この病院ではダミー役が受付の人なんだな……と思った。
次にまた同じテスト。
今度はすぐにわかった。リナだった。
壁を横に避けて幕をめくると凄く居心地悪そうにしていた。
当てちゃいかんかったんかーい!と思った。
次にまた同じテスト。
順番的にはテーラかアイスということになりそうだが……空っぽな感じがする。
「誰も居ない」と答える。
メリーは壁を横に避けて、幕をめくって見せる。誰も居ない。
このあたりで、メリーの反応が、ちょっとおかしくなった。
次にまた同じテスト。
すぐにわかった。テーラだ。
壁を避けて幕をめくると。凄く緊張した様子だった。
なるほど。
よくわからんが、俺は、気配察知が使えない状況でもけっこうわかるんだなと思った。
残りはアイスか……と思ったら、終わりだった。
メリーがだいぶ深刻な表情だったので、当たった子は好きな子で、全員大好きな俺は変態の中の変態、つまり変態王とか判定出ちゃうのかと思ってドキドキした。
少ししたら、部屋の外に出ろと言われた。
俺は一度部屋の外に出て、少し待つと入れと言われたので入る。
また同じテストだった。
壁の向こうに誰が居るか? と聞かれる。
壁の向こうに居るのは1人ではない。
これは試験内容はわかりやすい。複数人でも当てられるかだ。
2人のような気もするが3人以上。
……エスティアとリナとテーラと……アイスは居ない?
さすがに複数人になると難しい。気配察知も塞がれた状態ではわからない。
迷っていたが、「エスティアとリナとテーラ」と答えると、答えはさほど重要ではないようで、メリーが頷く。
壁を大きく避ける。3人居るからだろう。
メリーが幕をめくると、そこにはなんとパンツ一丁のエスティアとリナとテーラが立っていた。
アイスは居ない……
3人は、顔は背けてて、耳や頬どころか全身真っ赤くらいに勢いで恥ずかしがってる状態だった。
俺は今まで全力で見ないようにしてたのに、丸見えだよ!!!!
俺の世界の普通の男は喜ぶと思うけど、俺にとっては危険物なんだよ!!!
なんだ、その柔らかそうな魅力的な膨らみは!!!
ぐふ……
不意打ち食らって目が釘付けになる。
何見せやがるんだ、と思うが、目が離せない。
わざわざ魅力的に見えるように膨らんでいるのだろうし、俺も好きではあるが、それ以上に、見ると死にそうになるんだよ!!!
そんな危険物が一気に3人分も!
やばい、見たら死ぬ、見たら死ぬ。いや、見てしまった。
心臓がバクバク言い出して気が遠くなる。死ぬのか?
過呼吸、酸欠?? わからないが耳鳴りがして目の前真っ暗に。
冷や汗がどっと噴き出す。
本当に死んでしまうかもしれない……と思った。
すぐカーテンが閉められたので助かったが、集中しても目をそらせなかった。
カーテン閉められなかったら気絶したと思うが、気絶するまでに少し時間がかかるようだ。
たぶん、見てたのは2~3秒程度の時間だったのだろうか?
一瞬だったかもしれない。ただ、凄く長い時間に感じた。
僅かな時間で汗でびしょびしょになり、貧血か回復した後の体がじーんとする感じと、脱力感に襲われる。
それから10秒とかそのくらいの時間しか経ってないと思うが、ぐったりしつつも3人が消えているのを確認した。
予め打ち合わせ済みだったようで、エスティア達は知らぬ間に消えていた。
俺の中で何かのスイッチが入っていて動けなかった。
ゲーム機のポーズボタンみたいな感じだ。このスイッチが入っていると自由に動けない。
たまにスイッチが入ってしまうのだ。
ブレーカーみたいなもので限界超えるとカチっと入る。
呪いとでも呼べそうな強力な何か。俺には強力な呪いがかかっているのだ。
女の子の裸を見ると死ぬ呪い。
本当に死ぬかと思った。
……………………
動くものが目に入ったので見ると、
メリーが悶絶してよろけながら、階段を上がっていくのが見えた。
ついに、はっきりと見てしまった。
覗きではなく同意の上……と言って良いと思う……いや、俺は同意していないが、女たちは見られることに合意していたはずだ。
今日は、なんだか、もう成仏できそうな気持でいっぱいになった。
もう、この世に未練をあまり感じなくて、どうでも良い気持ちになっていた。
でも、ここで倒れたら、変態医者にお医者さんゴッコで変なことされてしまう可能性が高いと思って耐える。
普段一緒に生活していると、なんだかんだで、裸が見てしまうこともある。
特に暗視や遠目を使っていると、望まなくても見えてしまうことがある。
ただし、あれはイメージ的なもので、直接見るのとはまったく情報量が違う。
暗視が30万画素、遠目が10万画素だとしたら、あの距離での直視は1億画素くらい、そのくらい違う。
しばらくすると、ガスマスクを着けた人が入ってきた。
メリーがガスマスク装備で戻ってきたのだ。
大袈裟だな、と思いつつも、肩を借りつつ、階段を上がり、家の裏の壁の陰になって目立たないベンチに寝かされる。
何か言ってるが、マスクのせいで何言ってるかはわからなかった。
まだ頭がジーンとしていて、俺の聴力が下がっていたのかもしれない。
たぶん3時間くらい待たされたんじゃないかと思うが、とにかく長かった。
内容はあまりよく聞こえなかったが、ああでもないこうでもないみたいな話をしているのが聞こえた。
しばらくして、メリーが現れ、走って近寄りマントを2枚俺に手渡してから、また走って離れて、それを着ると匂いが隠せるからと、2枚重ねで着ろと言う。
フード付きだったが、サイズが合わないのでフードは被れなかった。
なるべく早くサイズの合うものを作れと言うことだった。
マントは股くらいまでの長さしか無い。
傍から見ると幼児のスモックみたいな感じに見えるのではないかと思った。
表側に行くと、皆が居た。
服は着てたけど、相変わらず真っ赤になってるエスティア、リナ、テーラが居た。
アイスはいつも通りだ。さっきの光景が目に浮かび、また心臓がバクバクしてきた。
まずい、死んでしまうかもしれない……と思いつつじっと耐えた。
その反応からエスティア達は俺がさっきの光景を思い出してることを理解し、なんだかとっても恥ずかしくなり悶絶していた。悶絶集団と化していた。
ただ、この町ではそういう恥ずかしい人たちが多いのでさほど目立たなかった。
なんとか立ち直り、平静を装うが、皆揃って俺とは距離を置き、5m以内には近寄ってこなかった。
前に来た時と同じように、荷車に寝転がり、寂しく揺られて帰った。
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後からなんでアイスだけ居なかったのか聞いたところ、アイス曰く「トルテラは俺のパンツ見ただけで興奮しちゃうから刺激が強すぎる」と言って辞退したそうだ。
いや、むしろアイスは刺激控え目だろ……と思ったが言わなかった。何故なら俺は紳士だからだ。
あのみすぼらしいパンツに興奮は誤解なのでなんとかしたいのだが、いくらアイスでも傷つきそうだから言えないのだ。俺は紳士だから仕方が無いのだ。
そんなわけで、誤解とは言えアイスが辞退したので残りの3人は誰かに押し付けることもできず、セットで実験台になった……というわけだった。
誰か一人だけだと意識してしまうのでセットで出てくれて助かった。
それはそうと、あの医者変態だから、俺のことパンツ好きの変態同志みたいに思われたかもしれない。
あの変態医者に、同志を見る目で見られたら、俺は死んでしまうかもしれない。




