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3-4.インコの餌を固めたみたいなやつ

挿絵(By みてみん)


「ここがオリアン神殿跡地です」と、モブキャラA子が言う。


目的の神殿跡地に着いたようだ。


これが神殿跡地? 神殿跡地と言うが、俺には単なるストーンサークルに見える。

巨石と言うほどでもないが、人が運ぶのは難しいくらいのサイズの石が円形に並んでいる。


エスティアもリナも普通にしてるので、ここの人間にとっては、これが神殿跡地なのだろう。


ただのストーンサークルだが、こういうのって意外に神秘性を感じさせられるようで、なんか特別な場所って感じがする。


「祭壇に玉を置いてください」とモブキャラA子が言う。

モブキャラA子はサークル内には入らない。何かあるんだろうか?


真ん中には小さな祭壇があって、そこに玉を置く。……べつに、何も起きない。


あとは、このまま1日見張ればよいはず……だったのだが、夜が明けたら、持って帰って良いという。

1日ではなく、一晩で良いらしい。

少し離れたところに、監視小屋があって、モブキャラA子は、そこに泊まるようだ。

3日仕事だと思っていたのに、2日仕事で済む。ラッキー!


ところが、よく考えたら、祭壇に一晩滞在って、”これって生贄パターンじゃないか?”と思い、血の気が引いた。


「ちょっと嫌な予感がする。

 一晩で良いって、俺たちに、朝までに何かが起きるってことじゃないか」

と言うと、意味を理解してもらえたようでリナが「一応警戒しておこう」と答える。


「サークルからは、少し離れていてくれ。

 それと、どの方向から襲われても逃げられるように」

サークルと祭壇が怪しそうなので、エスティアとリナにサークルから離れて最大限注意するように言い、さらに、どの方向から襲われても逃げれる準備をするように伝えた。


ゲームだったらサークルから巨大な竜が出たりしそうだが、現実だと周りを囲まれそうだ。

モブキャラA子は監視小屋で、特に目立った動きはない。

モブキャラA子が戦闘要員だとは思えないし、誰かと連絡を取り合っている様子もない。

もしかしたらサークルの中に入ると吸い込まれるとか?


サークルに入らないで外から調べるが、何も無さそうだ。

周囲にも特に気配はない。

とりあえず、周囲とサークルに変化が無いか回りながら調べ続けた……のだが、特に何もなく夜が明けた。すげー疲れた。


十分明るくなると、モブキャラA子が、スタスタとサークル内を歩いて玉を回収した。

え? 何も無いのか?

俺は無駄に警戒しただけだったらしい。


また元のように包んで箱に入れた。


たしかに、いくらなんでも、たったの銀貨3枚で生贄は無いよな……と思った。

となると、銀貨3枚払う価値はどこにあるのだろう? と思ったら、やっと種明かししてくれた。


「これには、何の意味が?」

「神殿跡地には神様が住んでいて……」

何で俺達が指名されたかというと、神殿跡地には神様が住んでいて、玉を持って行くと、大鎧様の遣いかどうかがわかるのだという。


先に言えよ!!!!と全力で思った。


俺は、フラグ立てたくないんだよ! 俺は勇者とか守り神とか嫌いなんだよ!

金に釣られて見事にフラグが立った感が凄くて、その場でヘナっと倒れてしまった。


「どうしたの?」とエスティアが、

「遣いだとまずいのか?」とリナが言った。


フラグの概念無いだろうし、説明しにくかったので、

「大鎧の遣いかどうか調べる仕事なら、受けたくなかった」と答える。


挿絵(By みてみん)


そうするとエスティアが優しく介抱してくれたので、俺のエスティアに対する忠誠度が10くらい上がった。

リナはあんまり心配してくれないので、リナに対する忠誠度は5くらい下がった。

このとき、エスティアとリナは、トルテラには何か思い当たることがあって、大鎧様の遣いかどうかを調べるのが嫌だったのだと考えた。


調べられると、大鎧の遣いだとバレてしまうとトルテラは心配してるのだろうと思ったのだった。


エスティアに介抱してもらってる間に、

「そもそも神殿跡地に住んでる神様と、大鎧様との関係は何なのだろう」と言うと、

エスティアもリナも大鎧様はカリオ神殿跡地に住んでると言う。


「大鎧様は、カリオ神殿跡地の神様よ」

「じゃあ、ここの神様は?」

「それはわからないな」


そういう伝承があるのだと言う。

ここの神殿跡地の神様が誰だかは、知らないという。


俺は、住んでるのに跡地で良いのだろうか? とか、神殿建てないとまずくないか?と思った。

それに、大鎧様が住んでいるカリオ神殿跡地ではなく、何故別の場所で大鎧様の遣い判定するんだろうか? といろいろ疑問が出てきた。


そもそも俺はエスティア達に拾われる前、カリオ神殿跡地の森で、アイスに拾われてるのだ。

絶対に大鎧と何か関係がある……そう思った。



エスティアに介抱してもらってるとき、エスティアの腹が鳴った。

「何か食べよう」「うん。おなか減ったね」

「水が欲しいな」

水場を探して食事をすることにした。


昨日は生贄にされると思って、あまりちゃんと食事できなかったのだ。


種明かしの時に説明用モブキャラA子的な説明女が玉を持って帰ったので、後は報酬を受け取りに行くだけで良いので、のんびりしててもかまわないのだ。


モブキャラA子は、30歳過ぎ……くらいの主婦って感じの人だった。

俺から見たら、手が届かないほど若い子だが、この世界では、けっこうあのくらいの年の人にも孫がいたりする。

機械的に説明する村人って感じでは無くて、説明専属のガイドさんって感じで手馴れていた。

同じこと何度も繰り返してるのだろう。

その仕事でいくらくらい稼げるものなのだろうか? 俺達より裕福に見えるのだ。

既得権益ってものがあるのだろう。

※有ります


俺がパンツも買えずに困ってると言うのに、あの説明でけっこう儲かってそうなのだ。

不公平感を感じた。


========


この世界の行動食は、”インコの餌を固めたみたいなやつ”とか、妙に塩辛い干し肉とか、ろくなものが無い。

大芋も干せば保存食になるが、相当まずい。

元からまずいが、干したらヤバい。

妙に臭くなるのだ。食い物の味じゃないと思う。

しかも、それでも一応保存食になるところが厄介だ。


行動食用の”インコの餌固めたみたいなやつ”を湯で溶くとスープになる。

俺がこの世界に来ていきなり遭難してエスティアとリナに助けてもらったとき、作ってもらったスープがこれだ。

塊をそのまま食べると、かなりまずいが、湯で溶くとけっこう行ける味になる。

塩味とか、お湯の量に合わせて調整する必要はあるが。


このあたりにも大芋はあるので、そこらで見つけた時に少し掘っておく。

美味いものではないが十分食える。俺たちの主食だし。

水さえあれば、けっこうまともな食事ができるのだ。


このインコの餌みたいなやつはたくさん採れるのだが、実とクズを分離するのが難しくて、俺は発狂しそうになるので、テーラにやってもらう。

テーラはこの作業が特別うまい。

元々テーラは薬草採集と加工が仕事なので、こういう作業は得意なのだ。

エスティアとリナがやると、けっこうクズが混ざる。

けど、食感と風味が少し悪くなるだけで十分行ける。


俺とかアイスがやると、クズだらけでクズ味になる。

でも、実はだいぶ違うのだ。

完成状態を比較すると大差ないように見えるけど、俺は頑張ってやってもクズだらけなのに、アイスはガガガガと一気に荒っぽくやっても俺と同じくらいの出来なのだ。

俺の30分とアイスの1分は同じ価値しかないのだ。

俺は、なんて駄目な男なのだろうと、悲しくなってしまうのだ。


俺はテントの湿気取りしか、取り柄のない男なのだ。


そんなこと考えてて気分が凹んでる上に、さらに、フラグ的にも気が向かないが、金は欲しいので報酬を受け取りに行く。


========


大鎧なんたらの屋敷というところで、ここは通路が無駄に多い建物とか妙な作りの建物が4棟ある。

今回は無駄に通路が多い建物に連れて行かれた。

既にアイテムは鑑定済みで、俺たちは大鎧様の遣いだと言われた。

予定調和とかそういうのだと思うのだ、もしかしたら本当は鑑定とか関係無くて、詐欺なんじゃないかと思った。


しかも、その部屋に大鎧様の鎧という大鎧が置いてあって、どう見ても、ここの人間のサイズではなく、俺サイズなのだ。

しかも、俺は以前、アイスにカリオ神殿跡地で拾われてるのだ。


まずい、これは絶対にまずい。……と思ったが、空振りだった。


俺はいきなりこの世界に来て、守り神とかやらされるのかと思ったらそうでもなかった。

大鎧様の遣いは遣いであって、大鎧本人ではないのだという。


そういう設定あるなら先に言えよ、なんて紛らわしいことしやがるんだと思った。

寿命が縮んだ。



銀貨3枚もあれば、パンツくらい買えるかと思ったのだが、俺は小遣い貰えただけで、パンツが買えるような金額にならなかった。


俺はいつか、パンツを買う。俺は心に誓ったのだった。

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