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3-3.大鎧信仰と勇者信仰

漏れなかったり漏れたりと平和な時間を過ごしていたトルテラ達ですが、遂にフラグがあちこちにばら撒かれてることに気付いてしまいます。

とっても危険な匂いがプンプン漂ってきます。もはや加齢臭とか言ってる場合ではないのでしょうか。ところが主人公の目標はパンツを買うことに変わっています。またしても、なんて残念な話なのでしょう!

挿絵(By みてみん)


冒険者の仕事は、冒険者組合で貰ってくるのだが、村や町から離れたところに住んでるので、町まで行かないと冒険者組合が無い。なので、たびたび町に行く。


俺は正直、町はあまり好きではなかった。


エスティアとリナと俺の組み合わせは、つまり、冒険者と老人の組み合わせは、産廃+貧乏人の負け組抱き合わせセットみたいな扱いだったのだ。


ところが、近頃は町に行くたびに、だんだん俺が森の守り神みたいな扱いになってきたのだ。


町に行くと、いろんな人が、いろいろくれる。

あまりに見窄らしいから恵んでくれてるのか?

でも以前と変わらないよな? と思ったら、お布施なのだと言う。


知らぬ間に、俺は熊を退治し森を守る守り神になっていたのだ。


熊殺しは単なる俺の趣味。

ただの逆切れだし、けっこう悪趣味だという自覚がある。

なのに、誰も罵ってくれないどころか、お布施まで貰えるようになって、なんだか恐くなって俺は逃げたくなった。


「トルテラ大人気だな」とアイスが言う。こいつはいつもお気楽で他人事なのだ。

「ああ、まあ……」俺が微妙な感じで居ると、

リナが「まあ、以前よりずっといいよ」とフォローしてくれた。

エスティアはあまり機嫌が良くない。

なんか、あとで八つ当たりされそうな気がするのだ。


まあ、今まであんな扱いだったのだ。

急に掌返しされても、それが良い方向であっても、素直に喜べないこともあるのだ。


この町の人はともかくとして、酷いのは、キノセ村だ。

キノセ村では、エスティアとリナは、守り神を奪って逃げた悪党になってるらしく、わざわざ抗議されたことがあるのだ。


俺は、それが許せない。


確かにキノセ村の人は俺に出て行けと言ったわけではないが、文句言わなければ、定住する気だったのに、貧乏冒険者……つまり、エスティアとリナに男囲うなと文句言うから仕方なく村を出たのだ。


腹が立ったので、テーラの家の近辺で猿が出たら、キノセ村方面に追い払うことにした。

猿は邪魔だが死人は出ないから、このくらいなら問題無いだろうと思ったのだ。


========


熊の生態もわかってきた。


この森に棲む熊は、日本のツキノワグマ的な感じで、人間を餌にしてるわけではなくて、熊の餌を人間が取るから襲ってくることが多いのだという。

そういう話を聞いたわけではなく、食うために人間を襲うことは少なく、森で食べ物を収穫していると襲われるようなので、俺がそう思っただけなのだが。

積極的に人間に害を与えるつもりは無い。

そう考えると、熊から見たら俺は凄い悪役だなと思った。


ただ、実際には熊視点ではそうでも無いようで、単純に、ここいら一帯が全部俺の縄張りで、俺の縄張りの外に逃げただけ。という認識をしているっぽい。


逃げた先で、悪さするので、俺に熊退治の依頼が来た。

俺が原因かもしれないので早速追い払ったのだが、それにはあんまり意味のないことが分かったのだ。


追い払っても別の熊がきてしまうのだ。

熊的には、俺の縄張りの外なので、そこは自由に熊が住んで良いところという認識らしく、追い払っても次のが来るので意味がないのだ。


結局、俺が住んでるテーラの家からある程度の範囲が、熊から見た俺の縄張りになる。

その範囲内を守る守り神ってことだ。まあ理屈はわかる。


でも、守り神とか不吉だからやめてほしいのだ。

俺は守り神より、普通の村人Aになりたいのだ。

村は追い出されたわけで、村人ですら無いのだが。


おっさんAとかでいいから、とにかく放っておいてほしいのだ。


========


冒険者組合は、普通の人がやりたがらないような、ちょっと危険な仕事を紹介してくれる。

そのかわり、元手がかからない割には報酬が大きい。

あくまでも他の仕事と比較しての話だ。基本人件費の安い世界なのだ。


村にいたときは、冒険者仕事する人の数が少ないので、好みの仕事とか難易度が合いそうな適当なのが勝手に割り振られたのだが、村を出たので、町まで聞きに行って、良さそうなのがあれば受けるという手順になった。


今日は、よく見かける受付の人に「あんた達に大鎧様のところから依頼が来てるよ」と声をかけられた。

俺を見て言ったように見えた。


「なんだろう?」とエスティアが言って、依頼の内容を聞いた。


先に概要だけ聞く、依頼主は大鎧信仰会で、神殿跡地にアイテムを持って行き、アイテムを設置して1日経ったらアイテムを回収して戻ってくる。3日仕事。


「エスティア、一応聞くけど思い当たることある?」とリナが聞く

「トルテラ以外には特に無いと思う」とエスティアが答えた。

そりゃ皆同じことを考えたに違いない。


今回は町の冒険者組合に行ったら、なぜか突然名指しで依頼が入っていた。

エスティアが名指しで、俺では無いがエスティアも俺以外に思い当たることがないと言っている。


熊殺しのせいだろう。あれは単なる俺の趣味なのだ。

俺は心の中で全力で”放っておいてくれよーーーーー!”と思った。


「熊殺し」とテーラが言う。いや、言わなくてもわかってるから。


一応依頼の詳細を聞く。

基本概要と変わらないが、見張りの同行人が付くことと、報酬は小銀貨3枚という情報が分かった。


ついさっきまでは全力で嫌だったのだが話を聞いたら気が変わった。経済的な理由なのだ。

凄く報酬が高いのだ。

報酬が高額なので、うまい話にはなんたらってのを考えたが、結局金に釣られて受けることになった。

俺が乗り気だったからだ。


俺は娘に新しいキレイなパンツ買ってやるくらい金持ちになりたかった。

ボロボロパンツは、俺の心に優しくないのだ。



オリアン神殿跡地と言うところに、アイテムを置いて1日見張り、回収して戻ってくるという。

危険があれば途中で放棄しても良いが、同行者つまり見張りがつく。


3日かかるが、小銀貨3枚という破格の仕事だ。その程度の内容であれば普通はその半分でも高いくらいだ。小銀貨と言うのは俺的には1万円くらいだと思ってる。


何人で行くか迷ったが、エスティアのチームは、エスティアとリナの二人組で登録されてるので、俺を含めた3人で行けという。

「俺登録されてないから行かなくて良くないか?」と言ったら、俺が追加登録されてしまった。


なんでチームのことに口出しできるんだよ!と思った。


帰ってから、アイスとテーラに話したら、髭剃りの順番が狂うと抗議された。

俺は全力で”知るかボケーーーーーー!”と思ったが何も言わなかった。


何故なら、俺は紳士だからだ。


========


翌朝、出発時に神殿跡地に置くためのアイテムを受け取る。


狼の模様の入った偉そうな箱に、また偉そうな布に包まれた偉そう……でもない、ガラス玉のようなやつが入ってる。水晶玉なのだろうか?

俺にはガラス玉に見えるが、ここではすごく貴重な物なのだろう。


同行者は、見張りというよりは、ストーリー説明のモブキャラって感じで、大鎧様というここいらの神様の話をしてくれた。

そんなの聞きたくないけど、聞くのも含めて依頼みたいなのだ。

ジンクスと言うか、余計な話聞くと、なんかフラグが立ちそうな気がするのだ。


狼の模様は、狼ではなく竜なのだそうだ。

なんだよ、情け無用でウルフのマークのアイツじゃないのかよ、と思いつつ、俺の知ってる竜とだいぶ違うが、まあ、こっちの方が現実的で良いと思った。


ここはファンタジー世界だが何でもスケールが小さい。


俺はそこが良いところだと思うのだ。

火の魔法が普通に頑張るとローソクに火が点きますの世界なのだ。

竜が狼でも良いと思うのだ。


何で竜の模様かというと、大鎧様は竜が人になったものだという。

守り神と言うので凄く嫌な予感がしたのだが、熊を退治する神様では無かった。


大鎧様が何から守ってくれるかというと、悪魔からなのだが、悪魔という生き物が存在する訳ではなく、他所の地域に勇者信仰というのがあって、その勇者と戦うらしい。

勇者はこっちでは悪魔と言うことになっている。


俺は宗教とか興味無いが、少なくともこの地域では宗教と言っても、そんなに真面目にやってるわけでは無く、漠然と神様が居るって話を皆が知ってると言う感じだった。

日本に居た時も、八百万の神とか言ってて、神様の話はあったので、それと大差ない感じだ。


エスティアとリナは、大鎧様の話はだいたい知ってたと言う。

というか、悪魔が他の国の勇者だというのはエスティアに教えてもらった。


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