3-2.漏らしちゃう男
おっさんの便利生活魔法シールドが開花し、雨の日もテント内が快適になりました。
漏らさない男になったのです。ところが、今回は漏らす男になってしまいます。
俺は最近、熊退治が趣味みたいになってる。
熊が悪いわけでは無いので、逆切れになるが、リナが大怪我したのは、熊を避けて迂回したからだった。
そのためか、熊の気配に敏感になった。
かなり遠くからでも、気配察知で探し出せるようになったので、奇襲をかけ、殴っては逃げるを繰り返していた。
真正面から戦い続けると大怪我するが、奇襲で”一発殴って逃げる”を繰り返すと、怪我せず倒せることがわかったのだ。
熊は、不利な状況で攻撃受けると逃げることが多い。
俺みたいに、異様に怪我の治りが早くないので、何度か叩けばそのうちどこかで死ぬ。
手負いの獣ってやつなので、中途半端な怪我させると危ないので、見失わないように、人里や道から離れたところに追い込み何度も奇襲をかける。
逃げ切れないとわかると、立ち上がって攻撃してくるので、脇腹に大ナタで切り付けると、それが致命傷になる。
逃げる熊の背中とか尻とか斬りつけても、なかなか致命傷にならないのだ。
死亡確認が取れただけでも、10頭以上。
殴られて、縄張りを捨て逃亡した熊も多かったのだろう。
ほんの2か月ほどで、周辺の熊を駆逐してしまった。
自分でも、ちょっと気になる。なんか俺、最近やけに強くないか?
体感できないだけで、ピロリン♪とか、レベル上がったりとか、してるのだろうか?なんて思う。
イノシシも獲りつくしてしまったかもしれない。
しばらく気配を感じる範囲に入ってこない。
俺が「イノシシ見なくなったな」と言うと、
「狩り過ぎだ」とリナが答えた。
「そうかな?」と答える。
見つけたら狩ってるが、逃げられることが多いし、まだそんなに狩ってないと思うのだ。
イノシシは駆除が目的ではない。あれは美味いし売っても儲かるのだ。
ちょっと前は、イノシシ相手で死にそうになってたのに、今では、ただの獲物になっている。
「トルテラが居るから」とテーラが言った。
どういう意味だろう?俺は足音がうるさいから気付かれる?
いや、臭いか? もしかして加齢臭なのか?
勇気を出して聞いてみる。
「なんでだ?」
すると一言「天敵」と言った。
なんで俺がイノシシの天敵なんだろう? と考えてたら教えてくれた。
「普通の人は大きなイノシシに殴りかからない」
俺は殴ってない。ナタで斬りかかるだけだ……けど、俺以外は大イノシシ獲らないのか。
知らなかった。美味いし高く売れるから、皆獲るものと思っていた。
確かに、俺しか攻撃しないなら、俺が居ないところに逃げるよな。普通に考えて……と思った。
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雨避け魔法のシールドで、雨の日でもテントが雨漏りしなくなったのだが、雨漏り事件が起きてしまった。
シールドと言ってるのは、魔法の一種で、雨避けの魔法だ。
正確には雨粒を寄せ付けないみたいな魔法なので、既に濡れたものから毛細管現象で染み込んでくるようなものは防げない。
普通は、体に接したものくらいまでしか効果範囲が無いのだが、俺のシールドは特別で、狭い閉鎖空間であれば丸々効果範囲になる。
実は、雨の雫は目に見えるものだけでなく、落ちて飛び散るときに微細な粒になって、これが上からではなくあちこちから入ってくる。
俺のシールドだとこれがテントに入ってこないので、テント内の湿度がちょっと低めになる。
それだけで、雨の日がだいぶ快適になるのだ。
もしかしたら、湿気自体を追い出す効果もあるのかもしれない。
魔法を使うと静電気の反発空間みたいなのができる。
俺はそれをやってるだけで、テント内が勝手に快適になるだけで、詳しい仕組みはわからないのだ。
一度雨漏りしない環境に慣れると、雨漏りするテントでなんて寝られない。
俺が居れば、雨漏りしない。
これが知られると、非常にまずいので、このことは絶対秘密になった。
一応、エスティアが、強力なシールドの持ち主と言うことにしてある。
以前、貧乏冒険者のくせに男連れなんて!と反感を買い、村を追い出されたことがある。
冒険者も俺も立場が弱いので、目立っちゃいけないのだ。
俺は、この世界では珍しい超高齢超巨大老人なので、目立つなと言われても無理なのだが。
俺の住んでいた世界には魔法なんて無かったが、俺は魔法が使えるようになった。
魔法が使えない世界から使える世界に移ってきたのだから、使えるようになってもおかしくはないと思っていた。
だが、魔法の効果が他の人と違っていたりするのはなぜだろうか?
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雨の日でもテント内の湿度が低い。
これは本当にすごいことで、雨の日は行動できないので洗濯とか、移動日にはなかなかできないことをやってしまいたいのだが、雨の日に洗濯しても、ぜんぜん乾かない。
それが、俺が居るテントでは乾かすことができるのだ。
そこで問題が起きた。
パンツが干された時だった。
この世界では布は高く、下着はデザインなんて度外視だ。
なので、元からあまり、そそるものではないのだが、使い古されて穴開いてたり、継ぎ接ぎだらけで、むしろ汚い……と言っては申し訳ないが、まあ、不潔ではないが、見た目的に、けっこう汚いパンツが干してあった。
俺は、べつに、それを見て興奮したつもりは無いのだが、それでも急速に衰弱して雨漏りしはじめたのだ。
だって、あちこち擦り切れてるし、黒ずんでるし、継ぎ接ぎしてあるし。
それを洗って干して、まだまだ使う気満々なのだ。
こんなお年頃の女の子に、下着もろくに買ってあげれられないのかと思うと、俺はなんだか切ない気分で胸がいっぱいになってしまったのだ。
その結果、そのボロボロパンツで興奮したと思われてちょっと凹んだ。
ちなみにアイスのパンツだった。
さすがにエスティア、リナ、テーラは、そのあたりのことは知ってるから、パンツは干さずにいてくれたのだが、アイスは気付いてくれなかった。
雨漏りしたとき、アイスに、”俺のパンツで興奮しちゃったのか、ウリウリ”……みたいな感じで、いじられて、なんだか、ますます切ない気持ちでいっぱいになって、一気に雨漏りして半日くらい回復しなくて大変なことになった。
俺は凹むと、漏らしちゃう男になってしまうのだ。
シールドの強さはメンタルと関係が強い。
それからは、”テント内でパンツ干しダメ絶対”の決まりができた。
それにしても、年頃の女の子が、ボロボロのパンツしか穿けないのはとても悲しい。
やはりここは、俺がパンツ買ってやるべきなのだろうか。
俺はろくに収入無いのだが。




