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2-6.余命診断に行く

元々この世界の男性としては極端に高齢なトルテラがリナの治療で衰弱してしまいました。そこで、あとどれくらい寿命があるのか、恋はできるのかできないのかを調べに行くことになります。

今回はそんなお話です。

挿絵(By みてみん)


その日の夕方になって、やっとトルテラは普通に話ができるようになった。

体は、まだまだだが、明日には家に帰ることくらいはできそうだ。


いつでも話はできるが、早い方が良い。このタイミングで伝えておこうと思う。


トルテラが一緒に行動できないほど衰えていた場合、足手まといになることを嫌って、どこかに身を隠すかもしれないと思ったのだ。


自分のせいで、寿命を削ったのであれば、自分が責任を取るべきだとリナは考えていた。


----


リナがやってくるといきなり言う。

「済まない、トルテラ、私が一生面倒みる」


命の恩人だからってことか?

だったら、はじめに拾ってもらった俺が一生面倒見るべきなんじゃないか?と思った。


話が良くわからず、「どうした?」と答える。


「あの大怪我が一晩で治って、代わりにトルテラが昏睡するほど衰弱したんだ。

 一晩中治療し続けたってことだろ」


そうか、怪我したのはリナだもんな……

なのに、俺が衰弱した。


リナが続ける。

「寿命が減って、もう一緒に冒険者できないかもしれないから」


ああ、そう言えば、男は魔法使いすぎると寿命が減るって言ってたな。


使ってたのか……治療魔法。俺は手を握ってただけだと思ってたのだ。

若い男でも魔法使いすぎると死んでしまうんだから、俺はもうダメかもしれないってことか……


「俺はいいよ。リナが元気なだけで十分だから」と答えた。

なんかもう十分生きた気がした。


エスティアは、やっぱり、この人、安心すると逝っちゃう系の人だ……と思った。

頬をペチペチ叩いて、寝るな、死ぬぞ……みたいなやりとりを繰り返す。


========


トルテラの体力はかなり落ちていて、崖を上るのに苦労しつつ、休み休み、なんとか家に帰りつく。


それからは、リナが一生懸命看病した。

今までは、トルテラを甲斐甲斐しく世話するのは、テーラとシート母娘だったが、

リナが頑張りまくって、むしろ他の女を近付けないくらいの勢いだった。

恩義を感じてるのはわかるが、それにしても……という感じだったが、


シートが言った、

「今まで素っ気なかった女がいきなり甲斐甲斐しく男の世話をはじめ。

 男は極端に衰弱。傍から見たら、どう見てもアレよね。

 もしかして、2人で何かしちゃって、しばらくしたらリナが子供産む……なんてこと無いわよね?」


……などと不謹慎なことを言い、3人に怒られまくっていた。

シートはトルテラの瀕死の状態を見ていなかったから、そんなことが言えたが、

3人は見ていたので温度差が凄かったのだ。


----


そんなやり取りを見て思う。

男が急に衰弱すると子作りを疑われるんだな。

確かに、この世界では、子供作ると男は急激に老化する。

それを考えると、そのくらいのことはありそうだな……と思った。


子供作るかわりに、リナの命が救えたなら、それはそれで俺は構わない。


========


2週間ほどで体調は良くなった。

日常生活は問題ないが、すっかりもとどおり……とはならなかった。


テーラのお母さんが「臭いしなくなったわね。枯れちゃったのかしら?」と言う。

やっぱり、寿命が大幅に縮まったのだろう。


そこで、余命を調べてもらうことになった。

男の余命は診断できるのだ。ただし、その対価が高額なのだ。


日頃から貧乏貧乏言ってるリナが、どこかから金を用意してきて、見てもらいに行こうと言う。

「変なお金じゃないから、心配しないで。

 私だっていざというときのために、これくらいは持ってる」と言う。


どんな手段で金を用意したのかわからないが、それがリナにとってどれだけ大きな金額かを考えただけで申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


そんな金を俺のために使われたら、俺はこれから先いったいどうすれば良いんだよ……


でも、もしかしたら、テントの買い替え貯金なのか? 密着するために買い替えなかったやつ。

俺はちゃんと覚えているのだ。リナの辞世の句みたいなやつを。


リナはクールに見えて口には出さないが、中身はけっこう、お茶目な女の子なのだ。

俺は、今までよりも、ずっとリナを身近に感じるようになった。


========


結局、余命診断とやらに行くことになった。

調べたところで、寿命は延びない。

俺はあまり乗り気ではないが、だいたい俺の意思は尊重されないのだ。


余命診断はけっこう遠くの町でしかできないらしく、ロバに引かれた小さな荷車に乗せられ3日掛かりでやってきた。

情けないが、今の俺ではこの距離を自分で歩くのは難しいかもしれなかった。


砦の町マータルレバー。モータルレバーなのかな? いつものごとく、地名の類は俺にはうまく発音できないことが多い。砦と言っても町側には検問があるだけで砦は見えない。


今回はテーラは用事があるからと、エスティアとリナと3人で来た。

俺的にはテーラが合流する前と変わらないのだが。



シートから”訳ありに強い医者”を紹介してもらい、遙々やってきたのだ。

シートの旦那、テーラのお父さんは訳ありだったみたいだから、こういう方面に伝があるだろうか?


この世界は女が多いし、普通の男は役目を果たせば死んでしまうから、俺のように中途半端に枯れた男は滅多に居ない。

そのため、慣れてる医者も限られるので、わざわざ3日もかけて、ここまでやってきたのだ。


ここは砦があり、度々戦いがある。

戦いの多いところでは子を残さず老化する男が多いのだと言う。

普通に考えれば寿命削って治療しまくり……だけど、人数比率的に考えて、男をそんなことに使うかな?

理由が良く分からないが、こういう話は聞いても教えてくれないのだ。


言いにくいことだろうから、敵国の男を凌辱しまくるとかそんな感じなのか?

でも、性的な意味では女が男を襲うのは難しいんじゃないかと思うのだが……でも、拉致して自国民と無理やり結婚させるとかならできそうだな。

でも、それだったら子は残すよな……


……とかいろいろ考えながら来たのだが、街自体は平和そうに見えた。

まあ、街って感じで、キノセ村とは大違いだ。


びっくりしたのは、若い男女混在のパーティーが多いことだった。

しかも、女は露出が激しい。


「なんだ、滅多に居ないと聞いてたのに男女ペアの冒険者けっこう居るじゃないか」と言うと、「ここはそういうのは多いのよ」と言う。

良く思ってないのが、ありありと見える。


嫉妬……ではなく、バカにした感じか?


「それにしても凄いな。冒険者なのに肌出しまくりか?男と一緒なのに」と言うと、「あれは冒険者じゃなくてファッションだから」と言う。


エスティアがファッションとか言うのを初めて聞いた。

この世界でもファッションという言葉が通じるということにも驚きだが。

エスティアの性格からすると、ああ言うのは冒険者の行動としては不誠実なことなのだろう。


若い男と露出の多い女が一緒に行動すればどうなるかはわかりきっているが、

そもそも恋する前提で見せびらかすのが目的なので、ああいうのは多いらしい。

ここは弱い獲物が多く、一種の観光みたいなものらしい。

※餌付けしてるので、素人でも獲物と遭遇しやすく、崖等のアトラクションも多い


装備がピカピカでろくに使い込まれた様子は無いし、

実用性に欠ける目立つ装備で、まるでRPGの勇者とヒロインだ。

まあ、真面目にやってるようには見えないよな。

ハネムーン旅行って感じなんだろうな。


真面目にやってるエスティアやリナから見ると、あれは相当目障りなのだろう。

服なんかも、継ぎ接ぎだらけで、余裕があれば新しい服を買ってあげたい。


服さえも継ぎ接ぎで我慢して使ってる状態なのに、一回視てもらうだけで銀貨5枚。

頑張っても貯めるのに半年かかるほどの大金だ。

服だったら安いのなら2着買えそうだ。

でもリナがどうしても、と言うので診てもらうことになった。


銀貨と書いてるが、実際には銀貨と同じ価値の、”高額銅貨”というやつで本物の銀貨ではない。

本物の銀貨は庶民にはあまり出回らないのだ。


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