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2-3.髭を剃ってもらう

ようやく男は女と一緒に居ると寿命が縮むと言われる意味がわかってきました。

日々寿命が削れてるのかもしれません。

それでも、やっぱり一緒に寝るのはやめましょう……とはならないのですね。

今回もそんなお話です。


挿絵(By みてみん)


まずは、薪置き場を追加で作った。


薪というものは、実は、長期間乾燥させる必要がある。

ここでは常識らしいが、マンション住まいだった俺は、日頃の生活で薪なんか使う訳もなく、当然知らなかった。


もちろん、生木を燃やすわけ無いことは知っているが、枯れた木の枝を拾ってくるので、1か月もあれば乾きそうに見える。


テーラの家の周辺は、湿度が高い。

そのため薪も乾きが悪い。

そのぶん、長く乾燥させる必要がある。

住む人が増えると使用量も増える。

なので、今のうちから、将来に備え薪を乾燥させるのだ。


増えた薪小屋の分、薪を補充する。


俺は、ここでは力がある方なので、けっこう太い木も運べるのだが、調子に乗って運んだは良いが、切るのが面倒だった。

チェーンソーでもあればたいして時間もかからないのだろうが、切るのに手間がかかるので、適度な太さの木を探して集めるほうが結果的には早い。

適度な木を探して集めてもらって、俺が運ぶって感じのやり方になった。


背丈の分だけ、俺は長い枝を一度にたくさん運べる。

木と木の間を進むので、そっちの都合で長さ制限に受けることもあるが、まあ、見た目的にもインパクトがあるようで皆、大喜びだった。


この程度のことで、喜んでもらえるとは思わず、俺はちょっと安心した。

何も取り柄がないと、とっても肩身が狭いのだ。


========


テラのお母さん、シートと言う名前なのだが、以前から知りたかったことを教えてもらった。

子持ちなので、男のこともよく知ってるだろうと思ったのだ。

それに、年齢的にもリナたちに聞くよりは聞きやすい。


そもそも冒険者のリナとエスティアが、そんなに男に詳しいわけが無いのだ。

冒険者と言うのは夫も子供も持てない可能性が高いのだ。


「以前、リナたちに不能者でなければ、一緒に暮らすと死ぬと言われたのですが、

 どういうことでしょうか?」とストレートに聞いてみた。


「そうね。恋をすれば子を作る準備ができるでしょ。

 そうなったら、子供を作らなくても寿命は縮むの。

 あなたくらいの年だと死んじゃうかもしれないわね」


そうか、若い老人から話を聞いたとき、”子供が作れる男は寿命が短い”と言ってたが、同時に、”女から隔離すれば長生きできる”とも言ってたのは、そういうことか。

子供作ると短くなるんじゃなくて、恋をするから短くなるのか。


だから、リナたちが不能者かどうか気にしてたんだな。


でも、たぶん俺は不能者なのだ。

俺の股間はこの世界に来てから、まったく無反応なのだ。


シートは、俺は不能者ではないだろうと言ったが、どっちが本当なのだろう?

俺が発情するなら、テント泊で散々発情しまくってると思うのだ。


俺は、恋愛対象としてではなく、エスティアとリナを本当の娘みたいに大事に思っている。

気持ちが親子である限り、恋をしたりはしないのかもしれない。


俺は、俺自身が思ってるよりも、ずっと紳士なのかもしれないと思った。



でも、思い当たることがあった。

俺はテントでエスティアとリナにくっつかれると、あまりにも興奮しすぎて、死にそうになって気絶してしまうのだ。


「興奮しすぎて気絶すると、どうなるのでしょう?」


「さあ? 私もそんなに男の人に詳しいわけでは無いから。

 でも、恋してると、そうなるような話は聞いたことがあるわ」と言う。


そして「そこまで行くと相当危ないと思うから、そうならないように避けた方が良いと思う」と言われた。


そうか、股間が反応しないから恋してないと思ってたのだが、そういうものでもないのかもしれない。


そこで俺は閃いたのだ。

もしかして、添い寝してると子供ができる世界だったら?

聞きたかったが諦めた。


だって、昨日今日知り合ったばかりで、居候させてくれると言う優しい女の子……年頃の娘が居ても、俺から見たら余裕で女の子に、「えへへ奥さん、股間が反応しないんです。子供の作り方教えて」とか言ったら変質者もいいところだ。


駄目だ、俺は変質者の一線を超えることはできないし、俺のせいで居候できなくなったら、エスティアとリナに死んで詫びても足りなくなってしまう。

俺が死ぬのはともかく、村を捨ててまで、ここに来たエスティアとリナに申し訳が立たない。



俺がいくらエスティアとリナを娘のように思っていても、恋して死んでしまうかもしれないのか。

それどころか、もしかしたら、俺は気絶するたびに寿命が縮まってるのかもしれない。


元々女の子に対する耐性の無い俺が、いきなりミニミニテントで女の子と密着して寝てるのだ。


それで動悸と眩暈で気絶するのだから、俺は恋をしてるのかもしれない。

いや、たぶんしてるのだ。


気絶するほど興奮してるのに、股間が無反応なことを考えると、たぶん使わずに子供ができる世界なのだと思うのだ。

じゃあ何のためにそれが付いてるのかを考えると、わざわざ性差があるのだから使うはずだと思うのだが……


もしかして、この世界の男には付いてないのか?


もしかしたら、付いてないのかもしれない。

困った。滅多に居ない男にち〇こ付いてますか?なんて聞くのは難しい。


そうだ。魔法のあるファンタジーな世界に来たのだ。


添い寝して、俺の寿命が縮まると、キャベツ畑で赤ちゃんが収穫できるのかもしれない。

ここにはキャベツが無いから、スカスカのでっかい瓜畑からあかちゃんが収穫できる世界なんだ……きっと。


川上から、”どんぶらこどんぶらこ”かもしれないし、それか、コウノトリが配達してくれるのかもしれない。

そもそも、そういう世界が存在するから、日本にもコウノトリが運んでくると言う、妙な話が存在してるのかもしれない。

俺が日本からここに来たのだから、ここから日本に行く人もたまに居るかもしれないし……と思った。


俺は、エスティアとリナに恋をして……日々恋をして、寿命が減ってるのかもしれない。

それ自体は俺はべつにかまわない。ただ、老いて働けなくなって迷惑をかけるのは避けたい。


俺はエスティアとリナと一緒に暮らしたいのだ。

その結果、老いて迷惑がかかるようになったら、どこか森の奥を彷徨って死んでしまうのが良いのかもしれない。


でも、俺は、森で遭難しても、死なずに助けられた前科がある。

捜索するための手間が増えるだけで、迷惑にしかならないような気もする。


========


ここしばらく、毎日テーラに髭剃ってもらってる。


目立つから髭を剃れと言われるのだが、手頃な刃物がなくて困っていたのだ。

ここの刃物は切れ味が恐ろしく悪く、髭がうまく剃れないのだ。

ここでは普通男は髭伸ばしっぱなし。

と言っても、立派な髭が生える頃には枯れてしまうので、立派な髭を持つ男は少ないのだが、ここには鏡もないのでけっこう剃るのが難しい。

剃るのが難しいと言うのも、伸ばす理由なのではないかと思う。


自分で剃れず困っていると、シートが剃ってくれるというので、試しに頼んでみたら自分でやるよりずっときれいに剃れたのだ。


髭がきれいになってるのを見て、エスティアが誰にやってもらったのかと聞くので、「シートに剃ってもらった」と言うと、エスティアは「シートはダメだ」と言うので、それからはテーラにやってもらうようになった。

男の仕事で髭が重要な役職とかもあって、その場合は手入れは妻がやるのでシートにはやらせたくないのだと言う。

既成事実を積み重ねるつもりだろうと言うので聞いてみたが、テーラもそうだろうと言った。


シートは自分の娘にも信用されてないのかよ!と思った。

そんなに、無節操な感じはしないんだけどな。


テーラがやっても既成事実が積み上がると思うのだが。

シートより信用できるってことだろうか?

と言うか、年齢的に問題無いのかもしれない。


テーラと俺だと、孫とお爺さんレベルだもんな。


========


魔法の練習は続けている。

呪文を唱えると、いきなりバババーンと出るようなことは無く、練習しないと出ない。

あと、呪文とかは無い。


「男の魔法は強すぎなんだ。そんなに強くしない。

  弱く絞って、同じ場所に当て続けることに集中する」


リナに点火の魔法を教えてもらってるのだ。

遠目とか暗視は割と簡単なのだが、俺は点火が苦手で、狙った場所に火が点かないのだ。


男は、魔法をかけ続けることができてしまうので、調子に乗って使い過ぎないよう言われる。

魔法は基本、男の方がだいぶ強いのだと言う。

ゲームだと女の方が魔法向きにしてあることが多いと思うのだが、ここでは逆なのだ。

普通に何倍かくらいは男の方が強いらしい。


その上、男は魔力が無くなっても魔法をずっと使い続けることができるという。

寿命を削って魔法が使えるのだと言うのだ。


そのとき凄く納得できたのだ、そうだ、恋と魔法は同じで、子作りは寿命削って使う魔法の一種なのではないかと思ったのだ。

股間反応しなくても恋してて、俺はたぶん寿命が日々削れてるのだ。


俺がそう思って冷や汗かいてると、

「まずい、魔法使いすぎた。今日はここでおしまいにしよう」と言った。


使い過ぎたわけでは無いのだが、今日は終わりにした。


========


最近は熊の死体が、よく転がってる。

俺が一撃離脱してるやつが、そのうち死ぬのだ。


すると鹿とかが増えてきて、ますます狩りが捗る。

と言っても、俺は鹿は獲れないので、エスティアとリナに弓で打ってもらうのだが。


歩き回って、薬草採ったりキノコ採ったりしている。

キノコは俺でも見分け付くやつが3種類あるので、俺はそれだけ採る。

やっぱりこの世界でも毒キノコがあって危ないのだ。


俺は、野草風味の大芋よりキノコの味の方が好きなのだ。


鹿は俺でも食えるくらいおいしい……というか、さほど臭くない。

イノシシは別格だが、鹿はまあまあ、その他の獣肉は、臭くて俺は凄く苦手なのだ。

俺は肉が嫌いなんじゃないんだ! ほとんどの肉は臭すぎて嫌なのだ。

と思いつつ今日は鹿が取れたので嬉しかった。


味は筋っぽい赤身で油はあまり無い。

でも、そんなに臭くないのだ。まあ少し臭みはあるんだけど。だいぶ慣れた。

そういえば、ウサギもうまい。鹿の3倍くらいは旨い。ただ、たくさん居る割に滅多に獲れない。

さらに、うまいけど食うとこ少ない。


日本では昔、ウサギはケモノ扱いせずに、食って良しにしていたと聞いたが、食うぶんには、確かに鳥に近いかもしれない。


鹿は毎日獲れそうなくらいいるが、1週間に1匹くらいのペースで獲っている。

5人じゃ毎日獲ったら食べきれない。


それに、やっぱり加工は慣れない。

ここは水量の多い川があるから助かるが、他のところで捌きたくない。


問題は他にもあった。


テーラの家周辺で活動する限りは、テント泊が無いので安心だろうと思っていたのだが、俺がでかくて部屋が狭いと言う理由で、でかいベッドが1個だけ置かれて、家でも一緒に寝るようになったのだ。

しかも、絶対わざとだろと思うくらいくっついてきて、俺が気絶してると、テーラやらシートも来てて、俺の寿命は毎日削れてると思った。


たぶん俺はそう遠くないうちに、老化が進んで死ぬと思う。


シートが言ってたのだが、恋と言うのは1度始まったら子供作るまでかなり長期間続くので、俺のは恋とは違うかもしれないと言う。

でも、寿命は削れてるかもしれないと言う。


だったら自重しろよ!!!……全力で叫びたかったが、未亡人だし寂しかったりするのかもしれないし、たぶんこれが家賃代わりなのだ。


俺の寿命が家賃なのだ。たぶん。


エスティアとリナには助けてもらった対価を、テーラとシートには家賃を俺は体で払ってるのだ。

こんなおっさんでも、需要があるだけマシなのだと思って我慢している。


俺が以前住んでた世界と価値観が違い過ぎて、頻繁に驚く。

ちょっと前には処分処分言われてたのに、今度は体でいろいろ払わされてるのだ。

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