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1-17.すぐ治るけど服が血だらけになる

挿絵(By みてみん)


イノシシ戦でコツを覚えたのか、俺は、大型の動物相手でも反撃を受けなくなった。


イノシシ戦以前から、大概の動物は反撃してきても(むしろ、反撃してくれれば)倒すことができたが、俺は基本避けるのが苦手なので、一撃の大きい相手は、ダメージがでかかったのだ。

はっきり言って、人間の動きは遅い。接近戦用の武器は、攻撃してくる相手にしか当たらない。


それと、うまく当てないと一発で倒せないような獲物の捕り方もわかってきた。

だいたい相手は不利だと思えば逃げる。むしろ、逃げる隙を作るために攻撃してくることが多い。


だから、最初の一撃がうまく入らないと、一発当てると逃走する獲物を狩ることはできないと思っていた。


ところが、一発でも当てておくと追いかけることができる。

逃走速度が遅くなったり、しばらく追いかけると倒れていたりするのだ。

その場で倒れてくれないことが多いが、その場で倒れるほどの打撃は必要なかった。


見た目では、どの程度のダメージが入ったのかぜんぜんわからないことが多い。

余裕で逃走するので、追っても無駄に見える。


……というか、反撃受けたら怖いからあまり追わなかった。

ところが、意外に効いていることがある。


特に大物は追跡しやすいので、その場で仕留める必要が無い。

一撃が効いているうちに、追い打ちかけて仕留める方法だけでなく、ダメージを与えておいて時間が経って弱るのを待った方が良いパターンと2通りに分かれるのだ。

俺は、逃げられたら追いつけないとばかり思っていた。

実際に、傷が浅いと追いつけないのだが。


大型動物以外は、そっと近付いて弓で打つ。

これがエスティアとリナの仕事。


逃げる獲物を、接近戦用の武器で捕まえるのはほとんど無理だ。

大型動物は、逃げられないと思うと攻撃してくることが多いので、そのときに一発入れて逃げる。

こっちが俺の仕事になった。


鹿のような獲物は、後ろから近寄ると蹴りを食らうことがある。

予想外にリーチが長く、当たると相当痛い。

もちろん正面からでも痛いが、正面から来てくれれば当てやすい。


鹿は基本はエスティアとリナが弓で弱らせて、追いかける。

ただ、逃げられないと思うと反撃してくることがあるので、それは俺が受ける。

以前はそうなったら逃げるようにしていたが、木の裏側に隠れても、蹴られることがある。

後ろにも目がついてるんじゃないかと思うほどだ。

今は、正面から勝てるので正面から受けている。


物理攻撃は何といっても体重だ。

もちろん、筋力もあるが、重さと力は概ね比例する。

人間同士であれば練習量が同じなら体格がものをいう。

個々で見れば例外もあるが、格闘技が重量別になっている理由がそれだ。

個人差が支配的で体格など関係無いのであれば重量別にする意味が無い。


リーチと一発の威力は、エスティアとリナより、体の大きな俺の方がだいぶ有利だ。

100kg以下のイノシシなら、うまく当たれば1発で倒せる。

まあ、うまく当たらないのだが。


熊は、さすがに強者の自覚があるようで、近くで遭遇してしまうと攻撃してくることも多い。

それに、ほかの動物と比べてかなり頑丈だ。

なので、熊の場合、一発当てた程度では倒せないが、意外にも反撃受けると逃走することが多い。

このあたりでは生態系の頂点に居るので、反撃を受ける機会があまり無いのではないかと思う。

一発当てると戦意を失って逃走することが多いことが分かった。


熊はまずいし、金にならないから倒す価値が無い。

基本は、やり過ごすが、ときどき襲ってくる。


熊は襲って来たら、逃げるより、反撃するほうが楽にやり過ごせる。

逃げるのは相当難しい。


熊と猪は村でもときどき犠牲者が出る。

話を聞く限り、即死という感じでもないのだけど、たぶん、出血多量で亡くなっているのだと思う。

俺が猪にやられたときも、死んでないのが不思議なほど出血があった。

ここには輸血の技術が無いし、血液型も知られていないようなので、出血多量で亡くなる人は多そうだ。

この世界の人間に、輸血可否にかかわる血液型が存在するかはわからないが。


狩りをするのに、刃物振り回すのは非常に非効率で、実際のところあんまり役に立たない。

奇襲が成功すれば効果あるが、刃物が届く距離まで獲物が気付かないなんてことは、まず無い。

ただ、逆に、こっちが襲われた時には極めて有効だ。

なんらかの武器が無いと追い払うのが難しい。だから、1人くらいは長い刃物を持っていた方が良い。

刃物である必要があるのかはわからないが、やっぱり鉈が便利だ。

邪魔な枝を刈りつつ進むのにも使える。


森に入るのに刃物は必須だが、こちらから積極的に近寄らない限り、動物に攻撃される機会は少なく、道具としては少し長めのナイフという感じの奴が使いやすい。

なので、森に入るような人は、何らかの刃物を常に持ち歩くのが普通に見える。


弓はやってみたが、性に合わないというか、俺の良いところを生かせないのでやめた。

体がでかいからか、有効射程に近付く前に獲物に逃げられるし、反撃されたとき3人で逃げ回るのも大変なので、俺は鉈を持って、向かってくるやつだけを叩く。

こうすれば、反撃がエスティアとリナに向くことはあんまりない。

元々、俺は目立つので囮には向いている。


魔法は継続して練習してる。俺は魔法の力はかなり強い。

男は一般的に強いそうなので普通なのかもしれない。


魔法の強さと言うのは、車に例えると最大馬力がいくつとか、そんな感じの数字が高そうという話であって、魔法を使いこなせるかはわからない。


========


俺は、すばしこい動物と戦うのが苦手で、よく怪我をする。

怪我すると血は出るのだが、すぐに治る。

最初は治療の魔法スゲーと思ったのだが、俺はすぐ治るが、エスティアとリナはすぐ治ったりしない。

俺だけ特別なようだ。


はじめの頃は、俺が怪我するとエスティア達が心配してくれたのだが、あんまりにも簡単に治るので、ぜんぜん心配してくれなくなって寂しい。


怪我がすぐ治ると言うのは凄いことで、怪我前提で噛ませて捕まえたりできるのだ。

RPGとかだとHPが減っていても能力は下がらないが、実際は怪我すると行動制限が発生してめんどうなことになる。

なので、怪我をしないように行動する。怪我をしたら、すぐに下がる。

まあ、実際それが普通だと思う。怪我人は後方に下げる。

俺の居た世界の軍隊でもそうだったと思う。


ところが、俺の場合は、少々の怪我であればすぐ治るので気にする必要が無い。

狼みたいなやつを捕まえるときは、腕を噛ませて押さえつけて、エスティア達にトドメを刺してもらう。

狼の類は、武器が口しかないので、口を塞いでしまえば雑魚レベルなのだ。


「噛ませた、早く、早く」

「動くなよ……」

そう言って、リナが小剣で突く。

ところが、ぜんぜんトドメにならない。

"ウォン"

狼が吠える。暴れる。


「痛、たたた」


狼が暴れると、牙が刺さって俺が痛い。

もう少し丈夫な防具が欲しい。

これって防具か?って感じの革の防具なのだが、ここの革製品は(くさ)い。

(くさ)いし、汗かくし、イマイチ防具としても弱いという、使い勝手の悪い品だ。


それを我慢して使ってる。まあ、無いよりは遙かにマシなのだが。

噛まれて傷ができると、なんか病気になりそうだ。


この狼みたいなやつは、うまくないので肉は価値がないが、毛皮に価値があるらしく、このやり方だと毛皮に傷がつかず、けっこう儲かる。

普通は背中側に傷がつくので、毛皮にしたとき中央寄りに傷が付きやすく、価値が下がってしまうのだ。


狼っぽいやつは、がっちり噛みつくので捕りやすいが、もう一回り小さくて、少数で行動するやつは、あんまりがっちり噛みつかないので、捕まえにくい。


怪我しないように戦うのが難しいだけで、怪我してOKならとても簡単に獲れる獲物も何種類か居るので、とても便利だ。


「また血だらけになったな」

「本当に大丈夫なのかしら?」

「俺は怪我より服の方が」


怪我は治るから問題ないのだが、服が自分の血と獲物の血でいつも血だらけで、それが凄く困るのだ。

俺は獲物の血の臭いが、大嫌いだのだ。


それと、傷は治っても血は足りないみたいで、出血しすぎると相当辛い。

血肉になりそうなものを食べると良いのだろうが、獲った獲物の多くは、正直臭くてうまくない。


この村の人は普通に食べてるが、俺はあんまり好きでは無くて、血肉になるような、もうちょっと食べやすいものがあるといいな……と思ってるのだ。


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