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1-15.リナ

今回はリナさん視点でリナさんの過去と現在の心境についての話です。

マータルレバーは地名で、2章で出てきます。

エスティアにも話したことは無かったが、リナも、元はちょっと良い家の出で”訳ありの子”だった。

リナは、お母さんと、年の離れたお姉さん2人と暮らしていた。


そこに、後から男が1人増えた。


お姉さん達には1人の夫がいた。

そして、お姉さんたちには女の子の子供が1人ずついた。

姉妹で1人の夫というのは、この世界ではとてもよくある話なのだが、この男が老人だった。


だから、リナは、子供を抱えて、年取った男の世話をするのは大変なことだとよく知っていた。


この男は若い頃は冒険者をやっていたというので、リナは大きくなったら自分も男と組んで冒険者をやってみたいと思っていた。

ただ、少し大きくなってから、この男の言う冒険者は”マータルレバーのアレ”だったことに気付いた。

新婚旅行のイベント的な冒険者ゴッコだ。


※金持ちは新婚イベントをやることがあります。

 マータルレバーは後で出てきます。


それまで何度も聞かされた自慢の冒険話は、実は冒険ゴッコだったのだ。

それからは、リナはこの男が大嫌いになった。


実際の冒険者は、この男の話のようなものでは無く、下層の人たちの仕事だった。


……………………


この男には5人子供がいる。

下の2人が、今リナと一緒に住んでる姉の娘2人。

上の3人は、母親違いの姉2人に男の子が2人と女の子が1人。


※日本と違って、兄弟が何人いるかは父方と母方で別に考えないとわかり辛いです。

この世界では普通は母方の方で数えます。


リナは母方で数えると3人姉妹の末っ子だ。


(父方の)上の姉は別の夫を貰っていて、お下がりがリナの母が生んだ姉に回ってきたのだ。

上の姉のお母さんと、リナのお母さんは仲の良い友達同士なので、おそらく、本来は夫を持てないところに、お下がり回してもらったという感じだったのだろう。


この男と冒険者をやっていたのは、母親違いの上のお姉さんで、家も格上なので、男はリナの家を見下しているところがあった。

家の格を上げる行為は一切しないのに、見下すだけ。


リナは大きくなるほどに、ますます男が嫌いになった。


========


リナのお母さんは孫を大変可愛がっていた。

そのせいでリナはお母さんに十分甘える前に、お姉さんとしての働きを期待された。

物心ついたときには、お姉さんとしての行動を求められていたのだ。


この家でのリナの扱いは、ちょっと理不尽に感じていた。

姉二人と姪2人は、お母さんから優遇されていて、リナばかり我慢させられるように感じていた。


上の姉2人は魔法に強く、リナは並みだった。

年も離れてるし、本当は父親が違うのかもしれないと思っていた。


姉たちの夫のあの男が家に来たばかりの頃は、姉たちも母も大喜びで、あの男もまだ元気だった。

その後子供ができて、男は老人になった。


あの男も嫌いだったが、男女関係も嫌いだった。

男は恋をすると、しばらく部屋から出なくなった。30日くらいだと思う。

その間、姉達もお母さんも男の部屋に頻繁に訪れる。


食事を運んだりいろいろしてるので、世話をしてるのはわかるが、まだ子供のリナが自分で食事をして、姪の面倒を見ているときに、男は3人の大人の女に世話されているのだ。


男が部屋から出ると100日程度で一気に歳を取る。

男は子供を作ると老化するのだ。


リナが世話してもらえない上に、姪の面倒まで見させられたのも不満だったが、除け者にされたことが嫌だったのかもしれない。

リナをあの男から遠ざけたのには今思えば大人の事情もあったのだろう。


だが、当時のリナは、この家が嫌いだった。早く家を出たかった。


まだ十分とは言えないうちから冒険者をはじめ、エスティアと出会った。

冒険者になったのは、それしかできる仕事が無かったから。

親の協力があれば織物職人に弟子入りしたり選択肢はあったと思う。


リナが単独で始められる仕事に選択肢はほとんどなかった。


冒険者は派遣登録みたいなもので、少し裕福な人が自分でやるのを嫌がるような、少し危険な仕事が紹介される。


元手無しに誰でもはじめられる割に収入が良い。

すぐに始められて、自活できる。ただそれだけが理由だった。


自分で稼げるようになってすぐ家を出た。

エスティアとの出会いが大きな後押しになった。

同年代の女の子が住む場所を提供してくれたのだ。


冒険者になれば、おそらく男との接点は無くなる。

それは多くの者にとって諦めであったが、リナはむしろ男と関わりあいたくないと思っていた。

リナは男、特に老人が嫌いだった。


あるとき、森で行き倒れている老人を発見し、村まで連れて行った。

ところが不思議と、リナはこの老人にはそれほど大きな嫌悪感を感じなかった。

老人だが、姉達の夫とは、あまり雰囲気が似てなかったから。

ただし、養うとなれば別だ。


エスティアが、引き取ると言うので困った。

それに対しトルテラは、なんでもすると言いだした。

本人は100期(50歳)だと言う。

それが本当かはわからないが、この年で元気なのだから、恋はできないと思っていたが、恋がなんだかわからないと言う。


だとすれば、不能者。子作りできない男も稀に存在すると聞いたことがあった。


ところが、箱入りだったようだ。

ところが、初日からいきなり、体を洗ってくると言い出す。

引き取った初日から、そんなことを言い出すとは思わなかった。

エスティアとどうするか相談したが、リナとエスティアには、男がどういうものかよくわからなかった。


……が、トルテラはそのまま寝てしまった。

本当に体洗いたかっただけらしい。

紛らわしいことをするな……と思った。

ただ、一緒に暮らして分かった。

トルテラはとてもきれい好きで、凍えながらでも水浴びをする。

※臭いと言われることを死ぬほど恐れていたからです!!


それに、年齢に反して、体力的には異様に若かった。

当初は疑っていたが、本当に100期(50歳)の老人である可能性が高くなった。

とにかく、いろいろと普通ではなかった。

もう、ろくに働けない老人だと思っていたのに、トルテラは力があり、老いを感じさせなかった。


今のトルテラは好きだ。

今でも十分年寄りだけど、一緒に居ても良いと思った。


しかし、今は元気でも子供を作れば老いる。

エスティアがトルテラの子を産んだら、トルテラは自分では何もできないほど老いるだろう。


そのとき自分は支えることができるかわからない。

だから、早く手放してしまおうと思っていた。


ところが、トルテラは、本当にこの世界で100期も生きてきたとは思えないように感じた。

妙なことをよく知っている割に、トルテラは点火の魔法も知らなかった。

魔法自体を知らないと言う。

恋もわからないと言う。

そんな人間が居るのだろうか?


普通の男は、世間知らずだが魔法くらいは使える。

トルテラは、リナの思う男とは、別の生き物のように思えてきた。


そして、トルテラは年齢以前に人間離れした怪力の持ち主だった。

大きな荷物も難なく運べる。

3人で冒険者やって、重い荷物持たせたり、魔法教えたり、狭いテントで3人で寝てるうちに、なんだか、手放すのが惜しくなってしまった。


情が移ってしまった。

リナは自分も手遅れになったのだと思った。

一度関わると手放すことができなくなる。

だから、貧乏人は男と接触してはいけないのかもしれない。


トルテラは密着すると緊張するみたいだが、凄く安心する匂いがするときがある。

姉たちは、男は恋をすると良い匂いがすると言っていた。

だから、リナはトルテラは恋ができる体なのかもしれないと思った。

だとしたら、本当は密着したりしてはいけないのだろう。でも、匂いを嗅いでみたくなるのだ。


いつか母や姉のことを、理解できる時が来るのだろうか。


挿絵(By みてみん)


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