1-14.毛布を買ってもらう
今日はエスティア達が、街まで用事があると言うので、それに付いていった。
エスティア達の話では、けっこう栄えた場所で【街】のイメージがあったが、俺的には【町】って感じだ。
貨幣、通貨が存在するくらいだから、もしかしたら、栄えたところもあるのかもしれないと思ったのだが、なんとか町かもしれないと思うレベルで、俺の思う町とは違っていた。
キノセ村と比べたら、これでも町かもしれない。店が何件かある。
たぶん、これでもこの世界では、まあまあな規模の町なのだろう。
こんな経済規模でも通貨が存在しているということは、経済が発展しているから通貨があるわけではないのかもしれない。
税の都合だろうか?
俺は街は好きではない。
だが、村は自給自足に毛が生えたような生活なので、皆、あまり買い物をしない。
なので、店の品揃えは酷い。
村で買えるものが少ないなら、街に行けば売っているかと思ったのだ。
金で買えるものがあまり無いなら、通貨が存在する理由が無いのだから。
ここではないが、他に大きな町が存在するのだろう。
まあ、それは置いておくとして、なんというか、じろじろ見られている。
俺はこの世界では見世物になってしまいそうなほどでかい。
そこに居るだけで目立つ。
エスティアとリナは気にしていないように見えるが、俺的には他人の視線が痛い。
単に珍しいから見ているというわけでは無いように思える。
この世界は、男が少なく、金持ち順に男が割り当たる。
以前から聞いてはいたが、村人は特定の相手を持てないことが多いという。
エスティアやリナのように冒険者をやってるのは、怪我が残ったり、死んでもかまわないということでもあるのだ。
子供がいたら冒険者なんかやってない。
逆に言えば冒険者は子供を持てない。
日本……俺が住んでいた国も、少し前の時代には、家庭を持てるのは裕福な人たちだけで、残りの人たちは結婚したり子供を持ったりはできなかったようだから、そうなってしまうのは仕方がないのだろう。
なので、男連れの人間がやらないような職の人が男を連れてると目立つ。
その上、俺はここでは極端に背が高いので目立つ。
どこに行っても微妙な目で見られた。
貧乏そうな冒険者と、おっさんの組み合わせは、いかにも”負け組抱き合わせ”みたいなもので、憐れみを感じさせるようで、傍から見ると産廃連れて歩いてるようなもの……と聞いてて自分のことながら、とても辛い。
俺もまだ1回も見たことが無いので相当珍しいのだと思うが、冒険者にも、おっさん連れは、たまに居るらしい。
情がわいて棄てられなくなったり、やっと手にはいるのが出涸らしのおっさんだったり、ただ、それすら手に入らない人も多いわけで、この視線は、嫉妬でもあるそうなのだ。
情がわいて捨てられなくなった出涸らしのおっさん……人からは俺はそう見えてるらしい。
なんかもう、俺はこの世界から消えてしまいたい気持ちでいっぱいになった。
でも、町に来て良いこともあった。
今使ってる毛布がだいぶ傷んでる上に、俺にはちょっと小さい。
お子様サイズかよ!と思うが、この世界の毛布はそういうサイズが標準なのだ。
俺サイズの毛布なんて無いし、有っても高くて買えないので、サイズは変わらないが、比較的状態の良い毛布を買ってもらった。
中古だけど新しい毛布ゲットだぜ!
古い方は、幕営に持ち歩く専用にする。
泊りで行動するとき、テントで寝るが、三角柱を横倒ししたような形なので真ん中だけ天井が高い。
なので、背の高い俺は真ん中でしか身動き取れないので真ん中になる。
すると、両手に花状態で寝ることになる。
普段から家で3人で一つ屋根の下で寝てるとは言え、一人一人バラバラに寝ている。
テントでは、ほぼ密着状態で、緊張しすぎて気が遠くなって気付くと朝になってる。
緊張すればするほど密着してくるように感じるのだ。
わざとなんだか気になっているのだが、聞く勇気が無い。
それはそうと、雨が降ると水滴が落ちてくるのだが、真ん中に落ちる。
テントは頭側と足側を吊ってるのだが、弛んで真ん中あたりが低くなる。
必ずそこから雫が落ちるので、俺の毛布が濡れてしまうのだ。
家に帰ってもそのまま同じ毛布を使ってるので、できれば分けて使いたいと思っていたのだ。
なんかもう、濡れた犬の臭いみたいになってて不快だ。
エスティア、リナ、済まねぇ。
いや、水滴落ちるから、俺が真ん中なのか?
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俺も稼げる手段が欲しい。
生活に必要なものを自分で買えるようになりたいと思っていた。
ここは科学が進んでいないので人力でやることが多い。
なので、単純作業でも稼げる余地があるはずなのだ。
この世界にも水車はある。
ところが、キノセ村には、たくさんの小川があるが村の沢だと水量が少なく、水車が回せない。
そこで粉挽きは人力に頼っている。
だから、ここでは粉物があまり手に入らない。
固くてそのままじゃ食べられないような穀物がある。
これは臼で挽くと、小麦粉のような感じになる。
臼で挽く手間がかかることもあって、あまり積極的に収穫されないので、森を歩き回っているとけっこう穫れる。
放っておいても、こんなにあるのだから、栽培すれば大量に収穫できそうな気がするのだ。
この固い実を挽くことができる臼は、かなり力が必要で、通常2人で回す大臼が、体の大きな俺は1人でゴリゴリ回せる。
1人挽きと2人挽きの臼では品質も時間当たりの生産量も3倍違う。
「それを仕事にすれば、儲かりそうだな」
「俺でも儲かる仕事が?」
「そうね。でも、臼が無いと」
「これっていくらくらいするんだ?」
「村で一つしかないくらい。小さな家より高いんじゃないかしら?」
ぬう。それじゃ結局開業できないではないか!!
これは儲かる!と思ったが、資本が無いと何もできないのだ。
俺も臼が欲しいが、アホみたいに高価でまるで手が出ない。
いつか臼を買えるほど金持ちになろう……と思った。
それまでは、臼を回して手間賃貰う形式で金を得ることができるのではないかと思った。
俺でも、金を稼ぐことができるかもしれない。




