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育成開始2

病院で健康状態とニキビ用の錠剤と塗り薬を処方され、私達は父のジムに向かった。

ジムへ到着すると父がフロントから出て須賀君を上から下へとじっくり眺め手を差し出した。



「初めまして。純の父で四ノ宮礼二しのみやれいじといいます。君が須賀君だね。昨日、小雪と純から話は聞いてるよ。純に色々巻き込まれたみたいだけど折角だから理想の体型になるまで思う存分気耐え抜いてってくれ。」




「あっ、須賀紫音と申します。俺、こんな身体なんで持久力とか全然ないですし、

運動も苦手なんで色々とご迷惑を、おかけしてしまうかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。」



父から自己紹介された須賀君は慌てて挨拶をし、父の手を握り返した。



「うん、しっかりとした挨拶のできる良い子だな!でも、そんなに自分を卑下しなくてもいいぞ。誰だって始めはちゃんと出来ないし、持久力もない。音を上げたり逃げたくなるのも当たり前だ。だけどそれをうまくフォローして導くのが私達の仕事だからなにも気にすることはないよ!あっ!でも、純を嫁にしたいなら私を倒してからでないとやらないからな!!」




「……はっ?」



「ちょっ!!お父さん何言ってるの!!須賀君は彼氏でもなんでもないから!」



ちょっとー?!変なこと言わないでくれ~。須賀君の目が点になってるよー



「ごめんね須賀君、お父さんて昔からこうなの。私の周りにいる男の子にはいつも、嫁にしたいなら私を倒してからにしろー!って言いふらしてて…まぁ、一種病気だと思って相手にしなくて良いから!!」



「なっ!!酷いぞ純!お父さんは純の将来の事を思ってだな…」



「ハイハイハイ…もぅそんなことばっかりされたら、私はお父さんが死ぬまでずっとお嫁に行けないでしょ!」



「私を倒せる奴が来たらすぐに嫁にいけるぞ」


「だーかーらー、剣道二段と柔道黒帯とジークンドーのインストラクター資格保持者を倒すのって、オリンピック選手でもないと無理でしよ!!」


「むっ!純はオリンピック選手が良いのか!?なら、今習ってるカリの資格を取ったらオリンピック選手を倒せるように違う資格を取らねば!」




「人の話を聞け!!私はオリンピック選手に好きな人なんかいないから。もう、それ以上余計なことしいで!!」



ほら見ろ。須賀君が思いっきり引いちゃってるじゃないか。


須賀君ー!気にしないでねー!こいつはただのスポーツマニアなだけだよー。

須賀君には無害だよ~。



「剣道と柔道とジークンドー…」



「純は父さんに対する扱いが酷いと思う!父さんはただ純が心配なだけなのに……。まあ、須賀君が純の婿候補でないなら別に良いんだ。須賀君、もし私のやっているもので興味があったら教えて上げるから遠慮なく言ってくれ。」



「あっ…ハイ、よろしくお願いいたします!!」



「よし、じゃあ早速ウェアに着替えて始めようか!!」






********






須賀君がジムに通い始めて1カ月が過ぎた。

最初の頃はトレーニングの後、毎回筋肉痛に悩まされ学校では燃え尽きたボクサーの様に項垂れていたが、最近では大分身体も馴染んで来たのか、一般の人並みにトレーニングを受けられるようになり、体重も減って、顎周りがスッキリしてきた。


顔のニキビも病院から処方された薬を使用してこまめにケアしていたお陰でかなり少なくなった。



須賀君本人とその家族も少しずつ出来る事が増え、体重も減っているのが解るせいか、俄然やる気を出している。



髪型と眼鏡は敢えてそのままにしてもらっている。


それにはある狙いが有った。

私と父の予想では、後2ヶ月程で須賀君は身長178㎝の平均体重まで痩せられるだろう。顔のニキビもその頃には綺麗に消えているはず。

そうなると、自ずとクラスメイト達は須賀君が“痩せるとイケメン”だと解る筈だ。

だが、徐々に解っては面白くない。

どうせなら漫画のように、長期の休みから久しぶりに登校してきた、冴えない筈のクラスメイトがイケメンになって来た!というシチュエーションにしたい。


その企画の結構は夏休み明け。

それまでは極力須賀君には冴えない男子でいてもらわなくてはならない。

その為、髪型と眼鏡はそのままにし、顔を隠すようにしたのだ。




「おはよう須賀君!今日から衣替えだね。昨日お願いした通り大きめのパーカー着てきてくれたんだね!」



「おはよう四ノ宮さん。言われた通りパーカー着て体型隠してるけど、ずっとは隠せないと思うよ?暑くなってくれば半袖になるし、体育の時は薄着になるから、皆気が付くんじゃないかな?」



「うん。それは解ってるよ~。ただ、出来る限りは隠しておきたいじゃない?だから、須賀君最近かなり体力付いてきたと思うから、体育の時とかは真面目に授業しないである程度適当にやってね。あくまで夏休みまでは冴えない須賀君でいて!」



「リョーカイしました四ノ宮先生。」



須賀君がにっこり笑って敬礼した。

ボサボサの頭とダサい黒縁眼鏡から覗く、垂れている目元が更に下がって凄く可愛い。

思わず胸がときめいてしまった。

やるな…須賀君。

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