ターゲットNo.2ロックオン
「おー。ロキソニン氏、久しぶりー。その子が例の子?」
お友達のサークルに行くとそこには小柄なモサッとした男の子がいた。
須賀君のハンドルネームを呼んでいたからこの日とが須賀君の友達なのだろう。
身長はヒールを履いた私よりいくらか小さいので165㎝位だろうか。大きな瞳とシルバーフレームの丸眼鏡、長い髪を一つに縛りミーニャTシャツに身を包んだ細い男性。
うわっ!この人よく見たら凄い良いパーツ持ってる!須賀君並み………いや、それ以上かも!
「おー!バファリンさん久しぶりです!今日はよろしくお願いします。そうですよ彼女がこの間言ってた四ノ宮純さんだよ。……四ノ宮さん、紹介するね。この人はバファリンさん。俺の小学校時代の先輩なんだ。本名は七瀬紅牙さん。御年23歳の社会人で、地元では有名な中古車販売店の社長子息であらせられます。」
ええっ?!にっ23歳ですと?!そんなまさかぁ~!どっからどう見ても高校生位にしか見えない!それが私より6歳も歳上なんてっ!
ああそれにしても、なんてもったいない。この、少年とも言える童顔、スラッと細身の体躯。ぱっちりと大きな瞳……………変身させたい。
ショタっ子属性にしたい。コスプレさせたい!
「………あの…………四ノ宮さん…?」
「はっ!…………っとごめん。はじめまして四ノ宮純と申します。今日はよろしくお願いいたします。」
マズイマズイ。七瀬さんに見とれて挨拶が遅れた。須賀君にも怪訝な目で見られてるし初っぱなから失敗した!
「はじめましてバファリンです。本名はさっきロキソニン氏がばらしちゃったけど、某のことはバファリンて読んで。…………其れにしても可愛いね!ミーニャのコスプレよく似合ってる!萌えるわー。あっ!後で写真撮らせてもらっても良いかな?」
「はい、良いですよ!あ、そしたら私のカメラでも撮影お願い出来ますか?」
「えっ!写真なら俺が撮るよ?」
須賀君が小さく挙手して私とバファリンさんの会話に混ざってくる。なんか、構ってほしくてアピールするでっかいワンコみたいだ。
「え?でも、須賀君が写真撮っちゃったら一緒に写れなくなるよ?」
「あっ!そうか、そうだよね。…バファリンさんしっかり俺達を撮影して下さいね。」
「えー。ミーニャは良いけど光太はなぁー。コスしてるのロキソニン氏だしなぁー。」
「ちよっと!バファリンさん頼みますよぉー。」
バファリンとロキソニンがなんだか言い合っている。………………須賀君もそうだけど、なんでPNないしHNが鎮痛薬なのさ。
流石に須賀君の名刺を作ったときはコスネームをロキソニンから二文字取ってロキにしてもらったけど、この人のコスネームはどうしよう。
え?まだこの人はコスmen☆になって欲しいって言ってないだろって?
そんなもん私の中では既にコスmen☆決定ですよ。
なってもらいましょう?……………うふふふふふふ!
「しっ……………四ノ宮さん?!急にニヤケてどうしたの?!」
おっと、つい七瀬さんのコスプレを想像して須賀君と並べてたらニヤケてしまった。
「あ、ううん何でもない。あっ!そろそろ開場ですよ。売り子の引き継ぎだけするのでそれが終わったら二人でお買い物どうぞ?」
さっと話を反らし販売物にに目をやる。
……………おおぅ。18禁ですな。ピンク色の表紙にあられもない格好のミーニャがいる。その隣の本はライバルキャラの女の子の際どいアングルの表紙。これが新刊ね。あとは既存の本が三冊、結構あるな………。それと、ラミカとピンバッチね。金額は全部ポップが置いてあるから大丈夫っと。
「あの、お釣りとか現金を入れる箱とか有りますか?」
「ああごめん。これがお釣りね。あと、こっちはコインカウンターと電卓。………あとは何か必要なもの有ったっけ?」
バファリンさんに問いかけると机下のキャリーからお釣りとコインカウンター、電卓を受け取る。うん!これさえあれば大丈夫。
「大丈夫そうですね。あっ!スケブとかの受付は無しでいいんですよね?」
「うん。スケブは今回は無しだね。某の予定としては目当ての本を買ったらすぐ戻ってくるからそんなにかからないと思う。それまで店番頼むね。」
バファリンさんがパンフレットをヒラヒラと振ってニコリと笑う。
はぅっ!ざっ、残念だ!折角モトは良いのに全体のモッサリ感が全部を台無しにしてる。
「はい、任せて下さい。須賀君とバファリンさんがいない間、売って売って売りまくりますよ!折角ミーニャコスもしてるので有効活用します!私は最後の方で写真さえ撮れればいいので、二人はゆっくり眺めてきてください!」
「そういってもらえると助かるよ。じゃ、お言葉に甘えて某は少しうろついてから帰ってくるね。」
「おっ、俺はすぐ帰ってくるから一寸だけ待っててね!」
アナウンスで開場が告げられると二人はそそくさと目的の本を買うため場所を離れていった。
二人が居なくなりのんびりとイスに座ってお客様が来るのを待つ。
少しすると此方をチラチラと見てはパンフレットを確認する男性が現れた。売っている本が18禁なのと売り子がミーニャコスの女で、購入を躊躇っているのだろうか?思いきって声をかけてみる。
「いらっしゃいませー。ミーニャ受け新刊ありますよー。」
ニッコリと笑って男性に声をかければ顔を赤らめた男性がスペース前にやってくる。
「あっ、あの、新刊とこのピンバッチ下さい。」
うん?新刊てどっちだ?新刊二冊有るからどっちか聞かないと。
「えーと、ミーニャ受けとヴァネッサ受けが有りますがどちらの新刊ですか?」
「あ、こっ、、こっちで。」
ミーニャの本を指差して来たので本とバッチを取ると金額を告げる。
「870円になります。」
相手が千円を出してきたので、先に商品を渡しお金を受け取り、お釣を取り出す。
「130円のお返しです。ありがとうござ「あの、写真お願いしても良いですか?」
最後まで言い切る前に写真をお願いされた。
おっほぅ。初っぱなからですかぃ。
「あっ、すみません今、ご覧の通り店番中なので店番が終わってからでも良いですか?」
「あ、全然構いません。じゃぁ、後でまた声かけるんでよろしくお願いします。」
「はい。あ、これ良かった名刺です。声掛けるときにどうぞ。」
そう言って名刺を渡す。
名刺をには私のコスネームとコス画像投稿大手サイトの会員番号、撮影した写真はサイトや掲示板等への掲載禁止と記載されてある。
「伊織さんですね。じゃあまた後で写真お願いするのでよろしくお願いします。」
名刺を受け取った男性が離れて行く。
伊織…。そう、私の前世の名前だ。転生してもうすぐ1年になる。
長年愛着のあった私の名前………。もう、私の名前を呼ぶ人は居ないのだと思うと自分は何者なのかと不安になる。
だから前世の名前をコスネームにした。私が伊織であったと自分に理解させるために。
私は私だ。伊織の記憶を持った四ノ宮純。
大丈夫、私はここで生きている。
「あの、すみませんいいですか?」
お客様に声をかけられてハッとする。
こんなことをしている場合では無い。店番に集中せねば。
それからは途切れずお客様が来てあっという間に本が売れていく。慌ただしく売り子を務め、暗くなる思考は消えていった。
「っお待たせっ………戻ってきたよ!」
丁度人混みがはけて一息ついた所で須賀君が戻ってきた。大分息が揚がっているがどうしたのだろう。
「おかえりなさい。そんなに息切らせてどうしたの?」
「ふぉっ!…………あっ、その、四ノ宮さん大変だろうなって思って速攻で買い物終わらせてきたんだ。」
「えっ!そんな、ゆっくり買い物してくればよかったのに。折角のオンリーイベントなんだよ。ここで萌えを補給しなくてどうするの?」
須賀君の顔と戦利品を見ながら言えば、須賀君は困ったような顔をして笑う。
「萌えも大事だけど、それより大事なものが今は有るから…。」
え?なにそれ、萌えより大事なもの?そんなの有るの?なんだろ。私が首をかしげていると、須賀君は思いきったように顔を引き締めた。
「それは、四ノ宮さんだよ」
あ?私?萌えより大事って……………………あっ!コスプレか!折角一緒にコスプレしたのに写真も撮ってないんじゃアレだわな。
須賀君、私のミーニャコスかなり気に入ってくれてたし、写真撮りたかったのか!
「そっか!うん。じゃあ、バファリンさんが戻ってきたら一緒に写真撮ろうね!」
「四ノ宮さん……やっと俺の気持ち伝わったんだね…………」
須賀君が満面の笑みで私の手を握ろうとした瞬間
「ロキソニン氏、多分それ勘違いだと思う。」
須賀君陰からひょっこりと七瀬さんが顔を出して須賀君の肩を叩いた。
いつの間に帰ってきたのだろう。全く気がつかなかった




