衣装作成!
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴る。
扉を開けると、目の前にイケメンが立っている。
うへへ。朝から眼福じゃあ~。
「おはよう須賀君!昨日はお疲れ様!」
「おはよう四ノ宮さん。こっちこそ昨日は遅くまでありがとう。寝不足じゃない?大丈夫?」
「ううん。大丈夫だよー。ほら、上がって~。」
「あ、お邪魔します。」
リビングに須賀君を連れていくと、ラグの上に寝そべった父がバランスボールと戯れていた。
「おおー。おはよう須賀君。大分雰囲気変わったなぁ!」
「ちょっとお父さん!ゴロゴロしながら挨拶しないで!須賀君も居るのに、だらしないでしょ!」
「礼二さんおはようございます。今日は、お休みですか?」
「んぁ~。今日は夕方から仕事だよ。昨日も遅かったし、小雪も夜勤明けでそろそ帰ってくる筈だから待ってるんだ。」
「もー!お父さん、朝ごはん食べたんならシンクに持っていってって何時も言ってるのに、また置きっぱなしにしてる!」
「んぁ~ごめんごめん。純、頼んだ。」
相変わらずバランスボールで遊んでいる父に文句を言いながら食器を片付け、須賀君にお茶の用意をする。
「四ノ宮さん、俺手伝おうか?」
「あ、いいの?じゃぁちょっと手伝って貰おうかな。」
須賀君が荷物を置いてキッチンにやって来たので、お盆に茶器を乗せ運んでもらう。
その間に食器洗いを済ませ、茶菓子を持ってリビングに向かうと須賀君が父にお茶を渡しているところだった。
「あ!須賀君、お茶入れててくれたの?ありがとう!」
父はのほほんとお茶を啜り、須賀君お茶いれるのウマいねー。などとのたまっている。
「いつもお世話になってるから、これくらいはさせてもらわないと。」
須賀君が困ったような笑顔で私の分のお茶を手渡す。
うほぉー!イケメンになった須賀君はお茶渡してくれるだけでなんだかサマになってるなぁ!
「ありがとう。…あ、お父さんが言ってた通りこのお茶美味しい!」
「俺、家では毎日食後のお茶当番なんだ。」
「そうなんだー!だから美味しいお茶が淹れられるんだね。」
「父さんと、母さんは紅茶とか珈琲はあんまり気にしないけど、緑茶には煩いんだよ。日本人なら緑茶だーとかってよく騒いでる。」
「へぇ、私も紅茶とか珈琲より緑茶が好きなんだ!特に玄米茶が好きなの。」
「っ四ノ宮さんが緑茶好きなら、今度美味しい玄米茶買ってきて淹れるよ!」
須賀君がキラキラの笑顔で私に話し掛けてくる。
「本当?!嬉しいなぁ!ねぇお父さん!須賀君が美味しい玄米茶を今度淹れてくれるって!お母さんも玄米茶好きだから皆でご馳走になれるね!」
あれ?お父さんが生暖かい目で須賀君を見てる。
というか、なんで須賀君は落ち込んでお父さんに肩を叩かれてるんだ?
「純…お前は恐ろしい娘だな……。お父さんとしては安心たけど、須賀君の立場になったら泣いているかもしれない。」
は?え?なに?なにが?何でお父さんが泣くの?意味がわからない?私、なんか変なこと言った?
「須賀君…俺は純の父親としては応援しないが、同じ男としては応援しているよ…。」
「アリガトウゴザイマス…礼二さん」
男二人でウンウン頷いてる。もう、なんなのさ…。
「まぁ、いいや。今日は午前中に夏休みの課題を進めて、午後は衣装を作るからお父さんは邪魔しないでね。」
「邪魔だなんて、何てひどいことを言うんだこの娘は!」
「もうすぐお母さん帰ってくるんだから、お母さんとイチャコラしてればいいでしょ!」
「なっ!夜勤明けの小雪は機嫌が悪いときの方が多いんだぞ!ただでさえ眠いところに父さんが行ってみろ。物凄く冷たくあしらわれて、父さんが立ち直れなくなるだろう!」
なにを必死になって言ってるんだこのオヤジは。
「そんなん知らんわ!…須賀君、こんな奴は無視して勉強始めよう!」
そうして父をあしらいながら須賀君と勉強を始めると母が帰ってきたので、母の面倒を父に任せ、勉強を進めた。時計が正午を告げると父が昼食を準備してくれた。母は寝ているので3人で昼食を食べると父は昼寝をすると言い、母の居る寝室に向かった。後片付けをして午後の衣装作りに取りかかる。
「じゃあまずは大まかなサイズを測っちゃおう!」
メジャーとメモを取り出して須賀君の前に立つ。
「よし、じゃあ須賀君。両手を広げてー。」
「あ、うん…………って四ノ宮さん?!」
須賀君の胸囲を測るため抱き付くように背中へ手をまわす。
「あー、動かないでね。サクッと測っちゃうから!」
胸囲、首回り、肩幅、裄、胴回りと上半身を計り、下半身を測ろうと膝まづいてメジャーをかざしたら須賀君に止められた。
「しっ、下は俺が自分で測るよ!」
「えっ、でもここまで来たら直ぐだよ?」
「っいやっ!下は俺がやるから!ほっほら、それにパンツ系は市販のものでもなんとかなりやすいし、ねっ??」
須賀君が必死に言ってくるので下半身の計測は諦め、型紙の作成に取り掛かる。
「私のやり方なんだけど、市販の雑誌に付いてる型紙をアレンジして衣装を作っていくの。最近はメンズ用の型紙も多いし、特殊な形のものは自作ゴスロリ系雑誌の型紙を参考にすると大体作れるかな。」
今回作るのは「紺碧のミーニャ」のヒーロー、光太のバトルモードコスチュームだ。
紺色の燕尾服のような上衣にに金と赤の装飾が施された衣装を作る。
市販の型紙を広げその上に障子紙を敷き元となる型紙をなぞっていく。
「障子紙を使って型紙作るなんて初めて知ったよ!」
「ああこれね。私、ちゃんとした型紙って起こしかた分からないんだ。だから市販の型紙使ってそれをなぞって描いてからアレンジして型紙にするの。障子紙って結構頑丈で何回も使えるし、透けやすいから凄く便利なんだよ!」
「へぇ、勉強になるよ。あ、俺もやってみていい?」
「うん。じゃあコレお願い!私は写した方をアレンジしてくね。」
二人で分担しながら型紙を完成させると今度は生地の上に型紙を乗せピンで止め、生地にチャコシートを使い縫い代を付け裁断をする。
一度裁断の見本を見せて残りは須賀君に任せ、切り上がったものから縫製に入る。
「いやー、須賀君が手伝ってくれるから今日の衣装作りは速いわ!あっという間に上衣の本体ができちゃったよ!」
「服を作るのって結構大変なんだね、俺、ミシン少し使わせてもらったけど指まで縫っちゃうんじゃないかって気が気じゃなかったよ。一番遅いスピードで縫っても怖かったのに、四ノ宮さん高速で縫ってくんだもん、凄いよね。」
「あー。私も初めてミシン触ったときはそんな感じだったよ。後は慣れだよ。あ、このジャケット一回着てみて?」
須賀君にジャケットを羽織ってもらうと修正箇所を確認する。うーん。全体的にokっぽいけどウエストはもう少し細くした方がカッコいいかも…ダーツを少し入れようかな。
「四ノ宮さんどう?俺的には言いと思うけど。」
「うん。ほぼ良いかな。ただあと少しだけウエストを絞った方が須賀君の体のラインを綺麗に魅せられるからソコだけ直すよ!」
須賀君からジャケットを受け取りウエストにダーツを入れると再度羽織って貰う。
「あっ!さっきより締まってみえる!」
「うん。ちょっと弄るだけでも雰囲気変わるよねー。よし、後は装飾を付けてけばジャケットは完成だね!」
「そうだね、後は中のシャツとパンツかな?」
「うん、シャツは市販のをアレンジすれば直ぐだから大丈夫。パンツも縫ってあるけどジッパーとボタン買い忘れたから試着は今度で良いかな?」
「うん。あ!ジッパーとボタン買いにいくときは言ってね!俺も一緒に行くよ!」
「うん、分かったー。その時は連絡するよ。」
返事をすると須賀君は凄く嬉しそうに微笑んだ。
そんなに生地屋さん行ってみたかったのかな?まあ、でも楽しいよね生地屋さん。いろいろな材料が沢山有るから見てるだけでもあっという間に時間過ぎちゃうし。
「絶対連絡してね!俺待ってるから。あ、それ買いに行くときは折角だから一緒にどこか遊びに行こうよ!」
「そうだね、折角夏休みなのにオタクイベントばっかり参加だと須賀君のリア充になるための予行演習が出来ないから調度いいね!」
「予行演習………。」
あれ?須賀君が笑顔のまま固まってる。
「須賀君?」
「いや………。うん。とにかく、一緒に遊びに行こうね。」
なぜか須賀君が急に大人しくなってしまったが、気にせず衣装の装飾に取り掛かる。
暫くして父と母が起き出してきて、母は夕食作り、父はジムへ向かう準備をし始めた。
「おっ!かなり衣装出来たなぁ!俺はそろそろジムに行くけど、須賀君はどうする?そろそろトレーニングの時間だろ?一緒にいくか?」
「あっ、そうですね。ご一緒して良いですか?」
「ああ。じゃあソレ片付けたら行こうか。」
須賀君が裁縫道具を片付けようとするのを手で制止する。
「あと少しで完成だから私が全部終わってから片付けるよ。須賀君はお父さんとジムに向かって良いよ。」
「そうか?なら行こうか。須賀君。」
父が須賀君の荷物を持って玄関を開ける。
「あっ待ってください、荷物は俺が持ちますから!四ノ宮さんごめん、今日もいろいろありがとう!ジムが終わったら連絡するよ!」
「了解!トレーニング頑張ってねー!」
父が出ていこうとするのを慌てて追いかける須賀君を見送ると、私は再び衣装の作成に取り掛かる。
完成まであと少し!頑張るゾッ!!




