ほっぺにチューはアリなんだろうか。
遅くなっちゃったけど、明けましておめでとうございます!
更新に大分掛かってしまいました。
なかなか思うように書けず難産でしたがやっとアップ出来ました。
年明け最初っからオネエ全開ですが、どうぞご覧ください(笑)
それから三時間が経過し、私は葵ちゃんにサロンへと呼ばれた。
そこに立っていたのは、亜麻色の髪を無造作に跳ねさせた爽やかなイケメンだった。
芸能人です!何て言ったら確実に信じるくらいイケメンだ。
もう一度言おう、とにかくイケメンがいる!
最初に出会った太くてダサ眼鏡で冴えない須賀君は何処にもいない。
引き締まった身体に甘いマスク、お洒落で優しい性格。どこを取ってもパーフェクツ!
ウホッいい男(笑)
「スッゴい格好良くなったよ須賀君!!見違えた!」
「でっしょーう?何てったってア・タ・シが直々にカットとカラーとセットをやってあげたんだから、格好良くなるに決まってるじゃない!」
「んも~葵ちゃんウルサイ!須賀君は元が良いから格好良いのー!葵ちゃんの力も確かにあるけど、須賀君が一生懸命努力してきたから格好良くなったんだよ!」
「四ノ宮さん、何から何まで本当にありがとう。葵さんも、こんな素敵な髪にしてくださって本当にありがとうございます。」
そう言って須賀君はウルウルとした目を細めて笑うと頭を下げた。
うぅー!ナニこのでっかくて可愛い生き物~!
「んまぁ~!可愛いわねぇー。須賀君たらホントイイコだわぁー。可愛すぎてもっとお話ししたいけど、そろそろ帰らないとダメな時間よね。送ってってあげるから、ちょっと待ってなさい。」
「あ、いえ…そんなお気遣い頂かなくて大丈夫です!
」
「あら、遠慮しないで?どうせお店はもうクローズしたし、荷物も沢山有るでしょ?須賀君が大丈夫でも、一応女の子の純ちゃんもいるから送ってくわ。」
「あ、そっそうですよね…」
「葵ちゃん!一応女の子ってなに?!失礼な!」
「私のお腹回りにお肉が付いたって言った罰よ!」
なんだ、気にしてたのか…スルーされたからなんとも思って無いのかと思った。
「むー。葵ちゃんネチッコーイ。ま、いいや須賀君、葵ちゃんが送ってってくれるから、先に駐車場に行ってよう!」
「う、うん。」
店の奥で車の鍵を投げてよこしながらダレがネチッコイですって~!伸びた髭で頬擦りするわよー!と、葵ちゃんが叫んでいたが無視して車へ向かった。
「ごめんね四ノ宮さん。」
「え?なにが?」
「こんなに遅くなったのに電車で帰ろうとなんかして、良く考えたら女の子とこんな時間まで出歩くなんて良くないよね…」
「ええっ?そんなことないよ!誘ったのは私だしどっちの両親にも話しはしてあるし、私も電車で帰るつもりだったもん。っていうか、私達あと一年しないと免許取れないからねー。移動手段なんてたかが知れてるよ。」
「でも、俺全然気が回らないし、四ノ宮さんにお世話になってばっかりだし…」
「そんなに気にしなくていいよ!私だって全然気がきかなくて怒られてばっかりだし、須賀君は優しいよ?今日だって必ず道路側歩いてくれたし、荷物も全部持ってくれたし、お昼のドリンクバーも取りに行ってくれたし、プレゼントまでくれたんだよ?私の方がお世話になってばっかりだよ!」
きっと須賀君のことだから電車で帰っても家まで送ってくれようとしただろう。
高校二年生のエスコートとしては完璧じゃなかろうか?
何故そんなに卑下するのだろう…まだ、自分に自信が持てないのかな?
「須賀君はちゃんと気のきく素敵な人だよ?」
「…ありがとう四ノ宮さん…あっ、もし俺が車の免許取ったらその時は俺に家まで送らせて?」
須賀君が手を握って話しかけてくる。
え?なんでそんなに私を送りたいの?
もしかして、そこいらで迷子になりそうとか思ってるのかな?
あ、もしかして彼女が出来たときの練習で送り迎えしたいのか?
ふむ。なら仕方ないなぁ誰でも最初は運転が拙いから練習台になってあげよう!
「うん。その時はよろしくね!あ、でも私の方が4月生まれで誕生日早いから先に免許取っちゃうかもね。その時は須賀君の送り迎え私がしてあげるよ!」
「えっ!四ノ宮さんて4月生まれなの?!じゃあもう、誕生日過ぎちゃったの?!っていうか、免許先に取って送り迎えって…………。」
須賀君が頭を抱えてしゃがみこんでしまった。
あれ?なんか変なこと言ったっけ?
そうこうしているうちに葵ちゃんがやって来た。
「さぁ、帰るわよー!…ってアラどうしたの須賀君?」
「いえ……気にしないでください…」
「あらそう?それより純ちゃん、なんでアンタ達車に乗ってないの?鍵渡したわよね?」
「あ。話しに夢中で忘れてた!」
「おバカねぇ、須賀君沢山荷物持ってるんだから早く降ろさせてあげなさいよ!んもぅ、気が利かないコねぇー」
「ごーめーんーなーさーいーぃ。」
葵ちゃんに鍵を渡し、ドアロックを開けてもらうと須賀君の荷物を積んで後部座席に乗り込んだ。
「じゃあ先ずは須賀君の家ね。場所教えてくれるかしら?ナビに入れちゃうから。」
須賀君が住所を伝えるとナビに打ち込み、葵ちゃんは車を発進させた。
*****
「さあ着いたわよ。私は車で待ってるから、純ちゃんは須賀君の親御さんにお話ししてらっしゃいねー♪」
須賀君の家に到着し、須賀君が玄関のドアを開けようとしたら内側から勢い良くドアが開いた。
「うわっ!あぶなっ」
「お帰りなさい!待ってたのよー!って、あ~らぁ~かっこ良くしてもらったじゃなーい!で?純ちゃんとのデートはどうだったの?ちゃんと送ってきたの?」
須賀君のお母さんが一気に捲し立てて須賀君に話しかける。
「っっっ!デートじゃないよ!買い物に付き合って貰っただけだって!四ノ宮さん居るんだから変なこと言わないでよ!」
「えぇ?!純ちゃんが居るの?…あらっホント!純ちゃんこんばんは。今日は紫音が迷惑かけたでしょう?ごめんなさいねぇ。しかもこんなに格好良くしてもらっちゃって…何もかも純ちゃんのお陰だわ!」
「いえ、そんな…今日は、私が須賀君と買い物に行きたかったので…。それに須賀君には色々と助けてもらったり、素敵なプレゼントも頂いてしまって、私の方こそ感謝しています。」
私はドアの陰になっていたので須賀君のお母さんが外に出てくると、笑顔で話しかけてきた。
咄嗟に返事してしまったせいで挨拶をし損ねた…うぬう。このまま誤魔化そう。
「まぁ!紫音がプレゼントを?!」
「はい。このチョーカーです」
「あら…紫音にしては頑張ったじゃないの!純ちゃんに良く似合ってるわぁ。…でも、こんな時間になって純ちゃんを送っていかないとはどういうことなの?!このバカ息子!!」
「いだっ!!」
須賀君が背中をビダーンと叩かれる。うん、良い音がしたから絶対背中にモミジが出来てるっ!
大変だ!フォローしてあげないとっ!
「あのっ、今日は最後に行ったヘアサロンのオーナーが私の知人で送ってくれたんです。今も駐車場で待っていてくれてるので、そろそろ失礼しますね。」
「まあ、そうなの?じゃあその方にもご挨拶しなきゃ!紫音は荷物置いてきなさい。」
「あっ、いえ、ご挨拶とかは大丈夫だと思います。彼もそういったことを気にして駐車場で待っているんだと思いますし…」
私がそう言ったとたん須賀君のお母さんの目がキラリと光った。
「…彼?もしかして、純ちゃんの彼氏とか?!」
「彼氏?!そっそんなのじゃありませんよ!母の後輩なんです。それに私、彼氏なんて居ませんよー!」
それに、葵ちゃんはオネエなので女の私は範疇外なんですー!
「そうなの?…良かったわね紫音!」
須賀君のお母さんがまた背中をバシバシと叩いている。え?なにが?何が良かったの?…あっ、もしかして、須賀君てソッチの趣味が…?
「ちょっと、やめろって母さん!四ノ宮さんも困惑してるし、そろそろ帰らないともっと遅くなっちゃうから!」
「ああ、そうよね、これ以上オーナーさんを待たせちゃ悪いわね。じゃあ、駐車場まで送っていくわ。ほら、紫音も来なさい。」
「いえっ、本当に大丈夫ですから!」
「まあまあまあまあまあ、いいからいいから、ほら純ちゃんも紫音も行くわよー。」
そうして須賀君のお母さんに引きずられ、葵ちゃんの待つ駐車場に連行された。
須賀君の家から私達が出てきたのを確認した葵ちゃんは車から降り、私達の方にやって来る。
「こんばんは。はじめまして、hair spirit ONEのオーナーで一ノ瀬と申します。本日、御子息のカットを担当させていただきました。このような遅い時間になってしまい申し訳ありません。」
おお!葵ちゃんが接客モードになってる!
オネエ言葉じゃないの久しぶりに聞いたー。あ。須賀君がビックリした顔してる。
まあ、仕方ないよね。私や須賀君辺りなら素でも大丈夫だろうけど、流石に須賀君のお母さんにオネエ言葉はキツいだろうからなぁ…。
「ご丁寧にご挨拶ありがとうございます。紫音の母の須賀円と申します。こちらこそ今日は、息子が大変お世話になりました。親の私が言うのもなんですが、息子をこんな素敵にしてくださって、とても嬉しく思います。しかも、わざわざ家まで送っていただいて…本当にありがとうございました。」
「いえ…、私の仕事の都合でこのような時間になってしまったので気になさらないで下さい。それに、御子息は元々良い素材をお持ちでしたから、格好良くなるのは当たり前ですよ。…それに、お母様の円さんもお美しい。御子息が素敵なのはきっとお母様のお陰ですね。」
「まぁ…」
おおおぉぉぉぉぉ!葵ちゃんのキュラリラ☆スマイルが発動したぁ!須賀君のお母さんが頬赤らめてるよ!
「あ、これ名刺です。よろしければ円さんも是非当店にお越しください。今でも充分お美しいですが、私共スタッフが更に美しくなるようお手伝いさせて頂きます。」
あ。さらっと営業もしてる。抜け目無いな葵ちゃん。
「では、そろそろ帰らないといけませんのでこの辺で失礼します。さ、純ちゃんもご挨拶したら車に乗って。」
「あ、うん。須賀君、今日は1日ありがとう。このチョーカー大切にするね!須賀君のお母さんもお見送りありがとうございました。それじゃ、失礼します。」
須賀君とお母さんに礼をして車の助手席に乗り込み窓を開ける。
「こっちこそ、今日は本当にありがとう。気を付けて帰ってね。………おやすみ……四ノ宮さん…。」
「うん。おやすみ、須賀君。」
車が動き出したので手を振ってから窓を閉める。
サイドミラーを見ると、須賀君は車が角を曲がるまでずっと見送ってくれていた。………律儀だなぁ…。
しばらく車を走らせていると葵ちゃんが話しかけてきた。
「須賀君てイイコねぇ…純ちゃんは須賀君みたいなタイプのコどうなの?」
「え?どうなのってなにが?」
「だーから、彼氏したい?ってこと。」
「…うーん。客観的に見て、須賀君は彼氏にするなら理想的なんだろうけど、私はどっちかって言うと須賀君にコスプレして欲しいからなぁ…。」
それに、恋なんてまだしなくていい…。
「ふぅん。恋よりコスプレってことね。ホンットお子ちゃまなんだから。」
「どうせ私はお子ちゃまデスヨー。」
「早く大人になんなさい、そしたらこの葵様が手取り足取り男のオトしかた教えてあげるわ!」
いや、精神年齢的には充分大人なんですよ。なんてったって転生前は結婚もしてたし、子供だっていましたからね。
ただ、今はまだ恋とか愛とかそういうのはしたくない。
まだこの世界に来て一年も経ってない。死ぬ前の記憶だって死んだあとの記憶だってまだ鮮明に覚えてる。
"あの人"は"私"を愛してると言っていた、ずっとずっと愛し続けると。
でも、私が死んで三年、あの人は再婚した。
その時思った。"ああ、この人が言うずっと愛してるはこんなものだったのか"と。
たった三年ぽっちで私は他の女に妻と母親の座をすげ替えられるような存在。
再婚に悩むあの人に"亡くなった彼女だってお前の幸せを望んでる"なんて言う周りの人。
確かにあの人の幸せを願っていた。ちゃんと私の死を悼んでくれた。私が死んでも愛してくれているのも分かった。だから私の死を乗り越えて前に進んで欲しいと思った。
でも、辛かった。
何も出来ず、何も伝えられず、ただあの人の周りに漂って、あの人が再び恋をして再婚するのを見ているのが…。だから思った。あの人が再婚して幸せそうならもう消えようと。あの人が幸せならきっと子供達も幸せになってくれるはず。
死んでも尚、あの人を愛し、再婚に嫉妬して不の感情を持った私がいてはいけない。
せめて晴れやかで、潔い気持ちで消えよう。あの人と子供達の為に………。
そうして私はここに来た。
醜い嫉妬心はもう無い。あの人が再婚相手と幸せになってくれればとも思う。…でも、やっぱり少し寂しい。そして怖い。
新しい恋をするのは問題無い。でも、付き合った後、相手が他の誰かに気持ちが向いてしまったら、自分がどんな黒い感情に支配されるのか解らないのが怖い。
だから、自分の心がうまく制御できるようになるまでは恋なんてしない。
してはいけない。
今の私は四ノ宮純。わたしであって私でない。
まだ、純粋な17歳の女の子。明るく楽しく快活な生活を送るべき年頃に40代の酸いも甘いも知った大人の感情はイラナイ…。
「………ちゃん………純ちゃん!………どうしたの?……大丈夫?!」
「…………っ、ごめん葵ちゃん、ちょっと考え事してた。なに話してたんだっけ?」
「…もぅ、急に黙り混んだから心配しちゃったじゃない!…………何か悩み事があるなら聞くわよ?」
「………えっ?悩み事?そんなの無いよ!ナイナイ!大丈夫だよ!」
しまった。思い切り否定しすぎた…。これじゃあ悩みがあるって言ってるようなものだ。
「…そう……ならいいわ。でも、何か困ったことがあったら、この葵様に言いなさい。特別に相談に乗ってア、ゲ、ル!」
「うげ、葵ちゃんキモい!!その大きな身体でシナ作らないでよ!」
「なんですって?!この小娘!!今度ウチのお店来たときには虎刈りにしてやるから!」
「きゃー!それはヤメテー!」
葵ちゃんは、私が下手に誤魔化したのをスルーしてくれた。
精神年齢は私の方が年上のはずなのに…。ごめんね葵ちゃん。
それから少し経って、私の家に到着した。
「さ、着いたわよ。玄関まで送ってあげるから準備なさい。」
「えー。上がっていったら?遅くなっちゃったけど夕御飯出すよ?」
「気持ちは嬉しいけど、小雪先輩は仕事でしょ?お父さんもまだ、ジムに居るだろうし、一応生物学的には男の私がこんな時間に、一応年頃の、生物学的には女の子の純ちゃんと一緒に二人きりで居るのは不味いもの。遠慮しとくわ」
「葵ちゃん、私の"一応年頃の、生物学的には女の子"は要らないんじゃないかな…?」
「あらそう?てっきり気づいてないから教えてあげようかと思って。」
「んもーっ!葵ちゃんのバカー。」
そう言って前を歩く葵ちゃんの背中をポコポコと殴った。
「これだけ元気が有れば大丈夫ね。さ、早くお風呂に入ってご飯食べて寝なさい。夜更かしは美容の大敵よ!」
玄関前まで来た葵ちゃんは振り返って私の頭を優しく撫でた。
「葵ちゃん……今日は色々とありがとう。」
葵ちゃんは笑って頷く。
「どうってことないわ。」
「じゃあ、おやすみ葵ちゃん。帰り、気を付けてね!」
「ええ。おやすみなさい。……………ってあ、忘れてた!」
「えっ?なに……が………」
何か忘れ物が有ったのかと聞こうとしたら頬に柔らかい感触。
一瞬だけ触れたそれは葵ちゃんの涼やかな香水の香りと共に不思議な余韻を頬に残した。
「ちょっ!なっ!ああああ葵ちゃん?!」
「んふふ。色んなヤな事を忘れるオマジナイよ!どう?色々吹っ飛んだでしょ?」
得意気な顔をして葵ちゃんがバッチーンとウインクをする。
「確かに色々吹っ飛んだけど、葵ちゃんにチューされたと言う新たな悩みが…」
「んまっ?!なんて失礼な小娘なのかしら!この私のキスなんて、男どもが挙って希望するのに!」
「そんなもんいらんわっ!」
「冗談よ!冗談。じゃあねーおやすみ~。」
再び殴りかかろうとする私を器用に避け、葵ちゃんは颯爽と帰っていった。
玄関に一人取り残された私は
「オネエの葵ちゃんは頬っぺにチューまでなら女の子でもアリなんだろうか…。」
と呟き、脱力しながら玄関のドアを閉めた。
その頃の須賀君。
母「ちょっと!あの一ノ瀬さんて方、とっても素敵ねえ!純ちゃんと並んでも美男美少女でお似合いだったわぁ…アンタもっとしっかりしないと純ちゃんかっ拐われちゃうわよ!!」
須賀君「そんなの解ってるよ!今日だって色々と凹んで来たんだって。大人の行動と思考は違うなって思い知らされた。」
母「それが解ってるならもっとシャッキリしなさい!明日も純ちゃんに会うんでしょ?!もう、徹底的に口説き落としてきなさい!」
須賀君「色々と頑張ってるけど上手く行かないんだよ!!てか、母さんは黙ってて!」
母「お母さんはアンタの為を思って言ってるのよ!」
須賀君「あーもー、ウルサイ!もう寝る!」
母「あ!紫音!ふて寝したってなにも変わらないのよ!コラッ!」
頑張れ須賀君!純の頬っぺチューは葵ちゃんに持ってかれちゃったぞ!!
負けるな須賀君!(笑)
葵「うふふ。純ちゃんも須賀君もカーワイイ(ノ´∀`*)」




