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プレゼントとオネエと腐女子

フィッティングルームに引っ込んでしまった須賀君を引っ張り出し、店を出る。


「大分買ったね~。須賀君重くない?やっぱり私も持つよ?」


当面の着替えとして大量の服を購入した為、須賀君の肩には幾つものショップバッグかぶら下がっている。何度かバッグを持つと提案したのだか、全て須賀君が持つと譲らなかったのだが、沢山の荷物を持った人が隣に居るとやっぱり気になるので何度目かの提案をしてみた。


「大丈夫だよ。毎日トレーニングしてかなり筋力付いたから全然重くないし、これ全部俺の服だし。四ノ宮さんには持たせられないよ」


「むー。なんか私だけ手ぶらだとなんか罪悪感が…」


「うーん。じゃあこの袋持ってくれる?」


そう言って須賀君がショップバッグの中から 小さな袋を取り出した。



「あれ?須賀君、こんな小さいのいつの間に買ったの?」


「んと、それ開けてみて?」


「え?でもこれギフト用に包装してあるよ?誰かにあげるんじゃないの?」


「…それ、俺から四ノ宮さんに。」


「ぅえ!?私に?」


「うん。いつも凄くお世話になってるし、今日も一日付きっきりで付き合ってくれてるし…こんなのじゃ全然足りないけど、良かったら受け取って欲しいな…」


袋を開けてみると三日月のモチーフにジルコニアの星が付いたチョーカーだった。先程須賀君のアクセサリーを買ったショップで私が見ていたものだ。でもそれはmen's用のネックレストップだったはず。決してレディース用の白いチョーカーに付いていた物では無かった。


「あっ…それ、四ノ宮さんショップでずっと見てたよね。もしかして気に入ったのかなと思って、俺も見てたら店員さんが話し掛けてきたんだ。カノジョさんにいかがですか?とかって言って…」


「えっ?」


「いや、あのっ彼女じゃないですよって言おうとしたんだけど、店員さんがカノジョさんに似合いそうなチョーカーあるんでトップだけ交換しますよー。って付け替えてくれてさ、それ見たら、確かに四ノ宮さんに似合うだろうなって…」


須賀君が赤くなってうつむいてる。そうだよね、付き合ってもいない女の子を勝手に彼女扱いされたら恥ずかしいよなぁ…。


「あー…なんか、悪いことしちゃったね。」


「そっそんなことないよ!…てか、むしろ嬉し…」


あ?なんか、須賀君がモゴモゴ話しててよく聞こえない。

でも、とりあえずフォローっぽいのしてくれてるみたいだし、純粋にこのプレゼントは嬉しいし、お礼を言おう。


「とにかく、須賀君が買ってくれたプレゼント、凄く嬉しいよ!ありがとう須賀君!」


そう言って貰ったチョーカーを首に着けた。

丁度今日の服は白いから合っていると思う。


「どう?須賀君、いい感じ?」


「うん…凄く、似合ってるよ。…可愛い」


須賀君がヘニャリと笑う。

ぐはっ!なんだその顔!?須賀君の方が可愛いわっっ!!下がり気味の眉が更に下がって目がキラキラしてる。

イケメンになった須賀君の破壊力は凄まじい。これで髪を切ったら更に破壊力は上がるんだろうな…。それまでに心臓鍛えておこう…。


「…すっ須賀君、とりあえず今日の最終目的地のヘアサロンに行こう!!」


「そっそうだね。大分暗くなってきたけどお店大丈夫なの?予約とかしなきゃいけないんじゃないの?」


須賀君のヘニャリスマイルに動揺してしまい、お礼もそこそこに話題を変えてしまった…。

須賀君は気にしなかったのかそのまま話にのってきてくれたので次の目的地へと案内する。


「サロンなら大丈夫だよ。うちの母親の友達がやってるお店で、私もずっとそこでお世話になってるの。須賀君の話をしておいたら、今くらいの時間が良いって先方が言ってたの」



「あ、なら大丈夫なんだ…。」


「うん、じゃあ次行こう!!…って、あ。これから行くサロンなんだけど、イロイロとアレな感じなんだ。須賀君、固まらないでね?」


「えっ?」





****





サロンに付いた須賀君は見事に固まっていた。




hair spirit ONE と書かれたドアを開くと、そこは別世界。オフホワイトを基調にした店内にはアンティークなミラーやソファが配置されており天井にはクラシカルなシャンデリアが煌めいている。これだけなら少し洒落たヘアサロンなのだろうが、店の右側にあるはずの壁は巨大な水槽になっており、中には色とりどりの熱帯魚達が泳いでいる。


「あらぁ!純ちゃんいらっしゃーい。待ってたのよぉ~。」


店の奥から出てきたのは漆黒の髪をオールバックにした180㎝程のイケメン。

この店のオーナーである一ノ瀬 いちのせ あおいだ。

彼は大きな縦長の体をくねらせ私達の前にやって来た。


「あー!葵ちゃん久し振りぃ~!待っててくれたの?私、凄く葵ちゃんに会いたかったの~!」


目の前に来た葵ちゃんに思いっきり抱きつく。彼は母の元仕事仲間で、父のジムの客でもある。180㎝という高身長に均整のとれた身体。服装はワインレッドのローズプリントシャツに黒いベストと黒地にラメで薔薇の暈しが入ったジーンズと、一見どこのホスト崩れかと思いたくなる格好だが、彼が着るとよく似合っている。


「やだ、ちょっと!いくら純ちゃんでも女の子に抱き付かれるシュミはないわ。どうせなら隣の可愛い顔した男の子とハグしたいわぁ!早く私に紹介しなさいよぉ~」


抱き付いたのをベリッと剥がされた。

なんだよ。もうちょっとその隠された腹筋堪能させてくれたって良いじゃん。


「むー。葵ちゃんのケチ~。私はただ抱き付いたんじゃないもん。身体測定も兼ねてるもん。葵ちゃん、前より腰回りのお肉柔らかくなってるよ。少し太ったんじゃない?


あっ、紹介するね。須賀紫音君だよ。須賀君、こっちは一ノ瀬葵ちゃんて言って、ここのオーナーなの。お母さんの元仕事仲間で、うちのジムのお客さん。さっきから見て聞いて解ると思うけど葵ちゃんはオネエなんだよ。あ、心配しなくて大丈夫。一般人は襲わない主義の人だから。」


「……………」


あれ?須賀君が私と葵ちゃんを見て青ざめてる。うーんやっぱり引いちゃったか?


「あらあら………ぅふっ妬いちゃった?……大丈夫よ。純ちゃんが私に抱き付くのは私を男として見てないからよ。私自身も高校生には触手が動かないから安心なさい…」


「あっ…そ、う、なんですか…」


「そ。なにより小雪先輩の娘に手なんて出したら鬼のジムオーナーが私を殺しに来ちゃうわ。わかるでしょ?」


葵ちゃんが須賀君の方に寄っていって何か囁いてる。須賀君がホッとした顔をしている。

ん?誤解が溶けたのかな?


「さあ、その荷物預かるから席についてちょうだい。」


「あ、よろしくお願いします…。」


「あー、葵ちゃん私も須賀君変わるの見てたい~隣座ってていい?」


「ダーメ♪アンタそっちで待ってなさい。折角この葵様がカットしてあげるんだから、出来上がるの楽しみに待ってなさい!!」



「ぶー。それって、須賀君独占したいからじゃないのー?須賀君がいけばだからって襲わないでよー」


「お黙り!!私は一般人は襲わないって言ってるでしょ!!まあ…多少は撫でたりつついたりするかもだけど…。」


なにぃ!?撫でたり突っつくだと!?

オネエだけど葵ちゃんはイケメンだからな…。須賀君と絡んだりなんかしたらリアルBLじゃないか…!!


「そんな美味しそうなもの見逃せるか!!絶対隣に居るからね!!」


「純ちゃん…欲望か駄々漏れてるわよ…。」


はっ!つい興奮してしまった。というか、腐女子っていうことをまだ須賀君に伝えてないんだった…。ああー、須賀君が怪訝な顔してるよ…。

うーん…そろそろ腐女子を暴露した方がいいなかなぁ…。


「あ、あの…須賀君、私ね、腐女子なんだ。オタクでコスプレイヤーなのはすぐに言えたけど、流石に腐女子なのはなかなか言えなくて…。」


「あ、ああ…うん。何となくは解ってたよ?」


「えぇっ!?嘘っバレないように気を付けてたのに!!」


「うーん…時々、芸能人とか格好いい男の人が二人で話してるとき、ニヤけてたし、本を買いに行ったときBLのコーナーをよくチラ見してたから、好きなんだろうな…って。」


あー。視線でバレてたのか…。


「やっぱり、引くよね…」


「あ、いや、ううん。引かないよ?俺だってオタクだし…」


「須賀君…」


「はいはいはい。お互い解り会えたところでそろそろ髪切るわよ。さ、さっきも言ったけど、そっちで待ってなさい。」


葵ちゃんに首根っこを捕まれ、スタッフルームまで連れていかれる。


「ちゃんと格好よくしてあげるから、イイコで待ってなさい。」


バチンとウインクをして葵ちゃんは須賀君の所に向かって行った。

仕方ない。大人しく終わるのを待っていよう。


…須賀君、どんな髪型になるのかな…。楽しみ!

本年の投稿はこれが最後です。見きり発車で始まった連載で、はじめての投稿にも関わらず多くの方々にご覧いただき、本当に嬉しかったです。

何分、スマホでの投稿で誤字脱字だらけで本当に申し訳なく思います。


感想のお礼もなかなか出来ず、自分の不甲斐なさを痛感しております。


来年はもう少しマトモな投稿とお返事が出来るよう頑張ります。


それでは、よいお年を!!

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