第97話 休み中
「それでは休み中の勉強会を始める」
長期休みが始まり、4日が経過した。
休みとはいえやることはあるが、普段の授業がない分、俺も研究に打ち込むことができて良いリフレッシュとなっている。そして今日は休み中の初めての勉強会だ。
「先公、どうして演習場での演習じゃないんだ!」
立ち上がって大きな声を出すゲイル。もちろんその両隣にはハゼンとザイクもいる。
こいつの口の悪さは相変わらずである。まあ俺以外の教師にはちゃんと対応するようになったし、問題のある行動は起こしていないようだからいいが。
休み中ということもあって、今日は十人ちょっとしか参加していない。いつもの放課後の参加メンバーも今日はシリルだけが参加している。
「もう少ししたら演習場へ移動するから安心するといい。時間の関係上、半日しか演習場を借りることができなくてな。その代わりに演習場は週2回借りられるようになったから、時間のある者はぜひ参加してくれ」
本当は週に一度一日中演習場を借りたかったのだが、残念ながら他の学年の生徒の関係上難しかった。この長期休みを利用して俺以外の教師も演習場で課外授業をしたり、第二学年から始まる部活のような活動で演習場を使用したりする。
この演習場は痛みのフィードバックだけで怪我をすることなく魔術の訓練ができるから使用率は高い。特に魔術競技会に力を入れている第二学年と第三学年の使用率も高いようだ。
ノクスの調査では他の学園に対しては少し厳しいようだが、ぜひ頑張ってほしいものである。俺も第二学年と第三学年に指導したいところだが、そちらの学年にも別の教師がいるため、第一学年の俺が勝手に指導をするわけにはいかない。
「次回からも演習場が解放される前の1時間はこの教室を解放して質問などを受け付けるから、自由に参加してくれ。今日は最初ということもあって、この長期休み明けに行われる魔術競技会のことについて少し話そうと思う」
「むっ、魔術競技会についてか……」
ゲイルも魔術競技会については興味があるようで、大人しく座る。他の生徒たちもやはり興味があるようだ。
「すでに説明を聞いている者も多いかもしれないが改めて説明すると、魔術競技会は学年ごとに分かれ、それぞれの種目で各学園の代表選手が競い合って総合優勝を決める魔術を使用した大会のようなものだな。特に第二学年と第三学年にとっては自分の実力を将来の就職先に向けてアピールするいい機会にもなる」
正直なところ、まだ入学したばかりでそれほど魔術の研鑽を積んでいない第一学年についてはあまり注目されていないが、第二学年と第三学年となった時にその経験は役に立つはずだ。
「もちろんこの勉強会に参加したからといって代表選手に選ばれるということはない。代表者は各生徒の希望を聞き、そこから教師陣で話し合って代表選手を選抜する。もちろん希望者の実力とその競技への適性のみで決める」
各生徒には3つの競技の中から第一希望と第二希望を聞き、そこから俺たち教師が生徒たちの希望と適性を話し合い、各競技の代表者を決定する。もしかするとこれまでは裏金の不正なんかがあったかもしれないが、俺がこの学園に入ってきた以上、そういった行為を許すつもりはない。
「第一学年は簡単に言うと魔術を使用したレース、的当て、戦闘の3種類の競技に分かれている。上の学年になると競技も変わって大人数の集団戦闘などの高度な競技になるが、今は置いておこう。各競技は5名ずつで各学園で合計15名ずつの参加となり、得点の比率的には魔術を使った戦闘の競技が少しだけ高くなっている」
そこまで大きな差はないが、実力者が戦闘の競技を希望することが多いみたいだ。
俺がこの学園に在学中の競技会でも戦闘の競技に出て勝ったか。
「ゲイル様はもちろん戦闘の競技を選びますよね」
「ああ、もちろんだ。ハゼンはどうする?」
「う~ん……たぶんエリーザ様もそちらにいくでしょうし、俺はレースの競技に出たいと思います」
確かに学年主席のエリーザは第一希望の競技に選ばれるだろうし、本人も戦闘を希望するといっていた。
競争率が高い競技を避けて希望を出すのもひとつの手段だ。魔術競技会の代表選手は長期休み明けに生徒たちへ希望をとるが、はたして誰が選ばれるだろうな。




