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【WEB版】異世界転生した元教師、【臨時教師】として崩壊した魔術学園を救う。『GA文庫様より11/15発売!』  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第67話 変わった男


「やあ、ギル。いや、ここではギークだったね。君と同じ職場で働けることがとても嬉しいよ!」


「「………………」」


 学園長室でアノンと一緒に俺がこの学園に呼んだ男を出迎える。


 ここでは俺がギルであるということは秘密だが、この学園長室からの声は外に漏れないから問題ない。おそらくこいつは分かっていてあえてその名を口にしたのだろう。


 長くサラサラとした金色の長髪を後ろにまとめ、ピシッとした服を着て、まるで女を口説くよう俺に向かって囁く優男。顔立ちの整ったイケメンだからこそ様になるようなセリフである。


 20代前半の線の細い男で、その笑顔は眩しく、キラキラと光っているようだ。


「無理を言って悪いな、ノクス」


「他ならぬギークの頼みだからね。ギークに頼られたのなら、どこからでも駆け付けるよ!」


「相変わらずいちいち大袈裟だな」


「………………」


 オーバーなリアクションをしつつ、こちらにハグしてきそうな勢いのノクスを止めて右手を差し出し、握手をする。


 なぜかアノンはその様子をジト目で見てきている。


「アノン、こいつはノクスだ。こいつも魔術師で、情報集めを生業にしているなんでも屋みたいなものだな。以前から情報を提供してもらったり、必要な素材の確保を頼んだりしていた」


「はじめまして、ノクスだよ。ギークとは恋人以上の関係だね!」


「なんじゃと!?」


「冗談でも気持ち悪いことを言うな! ただのギブアンドテイクの関係だろうが! 危ないところを助けたこともあって妙に懐かれてしまったんだよな……」


 初対面のアノンの前で何を言っているんだか。こいつとはお互いに頼み事をする程度で、友人くらいの関係だな。


「……一瞬ギークがそっちの道に行ってしまったのかと思ったぞ。アノンじゃ、この学園の学園長をしておる」


「話は聞いているよ。なんでも昔は名門だったこの学園を立て直しているみたいだね。ギークの頼みだし、しばらくは協力させてもらうよ」


「すまぬがよろしく頼むのじゃ」


 ノクスとアノンが握手をする。


 俺としては別のところで知り合った二人がこうして協力する関係になるとは思ってもいなかったな。


「先に言っておくが、この学園に通う生徒は貴族の子息や令嬢ばかりだ。生徒に手を出したらアノンにぶっ殺されるぞ。こいつはこう見えて俺よりも強いからな」


 まるで西洋人形のような少女の姿をしているが、アノンはエルフでまともに戦ったら俺でも勝てないくらい強い。以前アノンに言われたが、生徒に手なんて出したらマジで殺されてしまう……。もちろん生徒に手なんて出す気はないが。


「大丈夫、僕はギーク一筋だからさ!」


「そういった冗談はやめろとさっきも言っただろう」


「え~冗談じゃないのに!」


「……ギーク、本当にこやつで大丈夫なのか?」


「変わったやつだが、魔術の腕は確かだし、魔術薬学の資格も持っている。戦闘はそれほど得意じゃないが、この学園で生徒に教える分には問題ないだろう」


 冗談ばかり言うやつだが、魔術師としての腕はある。仕事を通して様々なことに詳しいから、知識の方も十分に生徒に教えられるほどだ。


「そっちの意味ではないのじゃがのう……。とりあえず魔術師としての腕は紹介してくれたギークのことを信頼しておるのじゃ。戦闘が得意ではないということならば、ギークが受け持っておる基本魔術の授業を受け持ってもらう感じで良いかのう?」


「そうだな。本当なら魔術薬学の授業を受け持ってもらいたいところだが、今は担当をしている教師がいる。そいつの授業の評判は最悪だが、さすがに今すぐにクビにするわけにもいかない。いろいろと問題を起こしている噂もあるから、情報を集めたうえで懲戒処分にし、そのあと科目を変更することが理想だな」


 ノクスはポーションや特別な魔術薬を作ることができる。理想を言うのなら魔術薬学を受け持って欲しいのだが、まずは現在の魔術薬学の教師をクビにしてからだ。


 ゲイルだけでなく他の生徒にもそれとなく聞いてみたのだが、この学園で生徒に物を教えるには力不足らしい。悪い噂もあり、俺の方でもいろいろと精査するつもりだったのだが、このところゴタゴタがあり過ぎてまだできていない。


「以前にギークから聞いていたアスラフのことだね」


「ああ。どうやら前学園長がコネで雇い入れた教師のようだが、魔術薬の知識や調合の腕がないようだ。ノクスにはその教師の身辺を最初に調べてもらおうと思っている」


「すでに調べてあるよ。ちょっと待っていてね」


「……なに?」


 いきなりとんでもないことを言うノクスは持っていた手提げカバンから紙の束を取り出し、机の上に広げた。


「アスラフ=フェルナンド、フェルナンド伯爵家の三男。前学園長のコネで入ったことは間違いないようだね。それに加えて、この学園に入学するために生徒の親から賄賂を受け取ったり、生徒や学園の情報を他所に売ったりしているみたいだよ。本当にろくでもない教師だね」


「「………………」」


 ノクスが広げた資料には魔術薬学の教師であるアスラフがこれまでに行ってきた様々な不正の概要と、その証拠までがセットで記されていた。


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