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【WEB版】異世界転生した元教師、【臨時教師】として崩壊した魔術学園を救う。『GA文庫様より11/15発売!』  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第45話 策略


「失礼します」


「……ああ、何か質問があるのか?」


 研究室の扉を開けて入ってきたのはひとりの女生徒だ。


 基本的に生徒からの質問は授業の間に受けているが、こうして放課後に研究室を訪れて質問してくる生徒も稀にいる。


 定時である17時を過ぎているが、生徒の魔術を学びたいという姿勢は最大限尊重されるので、当然質問には答えるつもりだ。……ただ、今回に限っては質問ではないと思うけれどな。


「ギーク先生、私と()()()()()()()()()!」


「………………」


 女生徒からの突然の愛の告白。


 前世ではまったくモテなかった俺だが、この世界では何度か女性から告白されたことはある。まあ、その大半は俺が好きというよりも俺の地位や才能を狙っての告白で、俺も魔術の研究に没頭していたからすべて断ったが。


 そしてこの女生徒の告白も間違いなく心からの告白ではないことがわかっている。


「すまないが俺は生徒と付き合う気はない」


「……それなら一度だけでいいので、私のことを()()()()()()()!」


 そう言いながら女生徒は自らの上の制服を脱ぎ、下着姿で俺に抱きついてきた。


 女生徒の柔らかな胸の感触が白衣越しに伝わってくる。


「……すまんがその気はない。君はもっと自分のことを大切にしなさい」


「そうですか、残念です……」


 俺が尤もらしいことを言うと、彼女はそれ以上何かするわけでもなく俺から離れた。


「君はまだ若いし、これから多くの素晴らしい男性との出会いがあるだろう。俺なんかよりももっと君に相応しい者がいるはずだ」


「……わかりました」


 そう言うと女生徒はあっさりと研究室から出ていった。


 魔術に関してはいろいろとアドバイスできるが、恋愛事にはからっきしな俺の言葉に素直に納得したわけではないだろう。


「ふむ、馬鹿な真似だけはしないでほしいものだ」


 彼女が本気で告白してきたわけでないことを、女性の気持ちなんてこれっぽっちも分からない俺が察したのには理由がある。


 彼女の名前はイザベラ=セラフィーナ――Sクラス在籍でガリエルの取り巻きであったロッフの元彼女だ。そして防衛魔術の実戦演習の授業に唯一参加していない生徒である。そんな彼女が俺に突然愛の告白なんてしてくるわけがない。


 おそらくではあるが、彼女の狙いはわかっている。一応対策はさせてもらったが、女生徒に告白されて抱き着かれたと俺から誰かに訴えることもできないし、せいぜい一時の恨みで彼女が愚かな選択をしないことを祈るとしよう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「さて、授業の準備はこんなものか」


 翌朝、教員用の寮から学園に出勤して、研究室で今日の授業の準備を終える。毎日放課後に翌日の授業の準備をしておくが、当日の授業の前にも再確認をしておく。特に俺の場合は防衛魔術と基礎魔術の2教科を教えているので、混ざらないようにしないといけない。


 授業で扱う内容を事前に確認しておき、難しい内容の部分はわかりやすく説明する準備をして、授業の流れや時間のスケジュールを計画し、必要な教材や資料の準備など、実際に教師が授業前に準備することはとても多いのである。


 ガチャッ


「アノンか。どうした、なにか用か? ……というか、事前にノックくらいしろよな」


 突然研究室のドアが開いたと思ったら、そこにはアノンの姿があった。


 俺がいる間は研究室のドアの鍵を閉めていないので、誰でも自由に入ってこれる。とはいえ、親しき仲にも礼儀ありだ。せめてノックくらいしてほしかったぞ。


「きき、貴様は何をしでかしたのじゃ!」


 ドアを開けるなり、アノンがいきなりこちらに詰め寄ってきた。座っている俺の胸ぐらを掴んでこようとするが、如何せん背が小さいので、つま先立ちしてやっと届く高さだ。


「ああ、その件か。ちょうどアノンには伝えておこうと思っていたところだ。セラフィーナ家から俺に対して何らかの訴えがあったのだろう?」


 昨日の今日でもう動いてきたのか。


「……その様子じゃと、ギルに乱暴されたという訴えは嘘のようじゃな」


「当たり前だ。そんな愚かな行為をする理由がない」


 女と現を抜かしている暇があったら、魔術の研究をしていた方がマシだ。


「……ふむ、魔術バカのギルがそんなことをしでかすわけがないとは思っていたぞ。それにもしギルがそんなことをしていたとしたら、証拠を残すわけがないと思っていたのじゃ」


「………………」


 嫌な信頼のされ方だったが、その通りである。当然ながら犯罪組織のアジトを潰したり、マナティの家を襲撃した時も俺やアノンのことがバレそうな証拠は一切残していない。


「俺がそんなことをしていないという証拠もある。騎士団の方からも訴えがあった感じか?」


「いや、セラフィーナ伯爵家から訴えがあったのじゃ。まずは学園側からの話が聞きたいと、昼頃に両親が学園へ来ると連絡があったのじゃ」


「ふむ、一応はこちらの話を聞く余地はあるということだな」


 もしかしたらこの間にも騎士団に訴えを出している可能性もあるが、出していなければまだ話し合いで解決できる余地もあるわけだ。


 少なくとも俺が手を出していないという証拠がある以上、訴えに負ける可能性はないけれどな。


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